『No surrender』epiosode.29『Coming Tragedy』

専門学校2年、最大のピンチが訪れた。
校内スピーチコンテストだ。

各クラスで選ばれた代表が、全校の前でスピーチをするというもの。クラスの代表になりたくなかった。みんなの前で原稿を見ながら、なにかを読むことが1番の苦手だった俺は、原稿を暗記して挑むことにした。それなら、記憶を探ることだけに意識が集中できるからだ。

それが逆効果だった。原稿を見ないで発表する姿が評価されてしまった。

俺は全校の前でスピーチする羽目になった。もう、終わったと思った。

それから俺は毎日祈りを捧げていた。
どうか、無事に終わりますようにと。

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バイトは漫画喫茶をやめ、看板持ちを続けていた。路上で看板を持っているだけでいいので、特に喋る必要がなかった。それはそれで辛いけど、俺にはもう、看板持ちしか仕事がなかった。

派遣は度々やっていたが、辛くて苦しかった。理不尽な怒りが飛び交う現場は俺には耐えられなかった。

この頃になっても音楽の趣味は、尾崎豊、V系バンド、洋楽だった。ジャンヌ(ABC)やアリス九號.(Alice Nine.)、彩冷える(AYABIE)、DIAURAの曲が好きだった。

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俺はストレスから逃れたくて、無謀な危険運転を繰り返していた。いつ命が無くなってもおかしくなかった。でも、それはそれでいいと思っていた。風を切り裂いて走り続けた。溜まっていたものを、闇に向けて解き放っていた。

仲間を乗せている時も、関係なかった。
俺たちの鬱憤は、危険運転で消化されていたんだ。

俺は1度、車を大破させている。
2度目の車は、事故によって何度も修理し、保険料は、異常なほど高額になっていた。ボコボコの車を庇(かば)う余裕もなかった。車屋の人は「こんな金額見たことない」と呆気に取られていたが、俺は頭が回らなかった。

俺はストレスでやられていた。
当時はおかしかったんだ。
友達を乗せて、山道を猛スピードで走っている時、(このまま崖めがけて突っ込もう)と考えていた。

俺に明日なんて必要なかった。

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