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ときどき旅に出るカフェ #読書の秋2020

ツップフクーヘン、ドボシュトルタ、セラドゥーラ… 主人公 瑛子さんの身の回りで起こるちょっとした事件の手掛かりは、行きつけのカフェ・ルーズで出会う世界のお菓子たち。そんなおいしいミステリー小説が、近藤史恵さんの「ときどき旅に出るカフェ」だ。謎解きの楽しさはもちろん、珍しいお菓子にまつわる小さな発見の数々が面白い。 私自身、旅先であっと驚くようなスイーツに出会った経験はあまりないけれど、海外の友達へきっと日本にしかないものを渡したくて、お土産選びをしたのはいい思い出だ。期待通

    • 年暮る

      その絵の前に佇むと、しんしんと雪の降る世界に引き込まれそうだった。 山種美術館で出会った東山魁夷の作品「年暮る」 日本家屋が連なる1960年代の京都、その瓦屋根の下からは年越しを迎える人々の営みが聞こえてくる。 時が流れても、人それぞれの想いをこめて除夜の鐘は鳴り響く。慌ただしい師走を駆け抜けてようやくほっと一息。歳の離れた可愛いいとこたちが遊びに来る賑やかな団欒。恋人や地元の友達と繰り出す初詣。お参りして御朱印を頂き、おみくじを引いて運試し… 冷え切った身体に染み入る甘

      • 弥立つ #旅する日本語

        あの時、あの場所に居合わせなかったら、今の自分はいなかったかもしれない ーそんな偶然の巡り合わせが人生で何度あるだろう。 遅咲きのひとり旅。方向音痴で地図もまともに読めないくせして、ずっと片想いしていた広島へ足を踏み出した。 宮島ロープウェイで、偶然乗り合わせた同世代の女の子ふたり。ぽつりぽつりと話し始めた私達は、終点に到着する頃にはすっかり意気投合。日頃の運動不足がちょっと悔やまれる山道も、3人で頂上へたどり着いた時の達成感はひとしおだ。 下山後も一緒にぷりぷりの牡蠣

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