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ある日突然消えた飼い主
2023年6月5日
10才を迎える直前の
「あかね」という名の犬が
愛護センターに持ち込まれたが…
目を覆いたくなる程の
「乳腺腫瘍」でした。
![](https://assets.st-note.com/img/1719654195632-kfyqnKi3jL.jpg)
持ち込んだ人間は、
飼い主ではなく、飼い主の友人…。
飼い主は、一年前に癌がみつかり入院。
その間は、飼い主の友人が預かってたが、
日に日に進行する乳腺腫瘍、衰弱…
経済面で病院に連れて行けず、
もうこれ以上は限界だと、
愛護センターに持ち込んだのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1719654286992-wsRZruq4xu.jpg)
飼い主自身も、癌の転移と進行で
生きて退院できる日は来ないことを知り、
預かり先の友人に、
これ以上迷惑かけれない…と、
あかねの「殺処分」を承諾したとの事。
個人情報云々で飼い主と直接
連絡が出来ないので、
愛護センターに伝言を頼みました。
『安心して下さい』それだけを…
![](https://assets.st-note.com/img/1719656009809-Pp63eDDewO.jpg)
かなり酷い広範囲の乳腺腫瘍で
すでに衰弱していました。
それなのに、体に触れただけで、
唸ったり咬もうと必死に抵抗…
人間に強い不信感を抱いてましたが、
それは当然の事…。
大好きだった家族(飼い主)が
ある日突然居なくなり、
飼い主の友人に心寄せるも、
また居なくなる。
そうして連れてこられた場所が
愛護センターの檻の中ですから…。
どんな事情があったとしても、
人間に裏切られ続けたあかねが
人間を信頼できないのは当然の流れです。
![](https://assets.st-note.com/img/1719656678170-ZiMAyhZnMt.jpg)
「ここまで酷い乳腺腫瘍は初めてだ…」
かかりつけの獣医さんも驚いてました。
血液検査結果や、癌の進行、体力的にも、
摘出手術は難しい…との事でした。
このまま死なせたくない!
手術ができる体にもっていこう!
そう決心したのですが…
![](https://assets.st-note.com/img/1719656456975-RpC6HDEcoC.jpg)
あかねから伝わってきたのは…
「生きることの諦め」
「絶望」
飲まず食わず、下痢嘔吐、激しい衰弱…
寝たきり状態になっていきました。
その姿はまるで…
自ら命を絶とうとしてるように感じました。
こんなに酷い乳腺腫瘍だから、
どう頑張っても「死」を避けられない事くらい
分かっていました。
![](https://assets.st-note.com/img/1719664159677-2fDUef4zJI.jpg)
だけど、人間に裏切られ続け
淋しく悲しい気持ちを抱えたまま
あかねに死んでほしくなかったんです。
「死んでも良いけど『今』じゃない!」
あかねが抵抗しようが怒ろうが
知ったこっちゃない!…と、
三時間置きの強制給水を続けた結果…
![](https://assets.st-note.com/img/1719657924253-KxXyHzwODJ.jpg)
3日目…自分から水を飲み、
4日目…ご飯を食べました!
「もう少し生きてみようかな…」
あかねからはっきりと
そう感じたのです!
![](https://assets.st-note.com/img/1719658843061-i0Yros1cWt.jpg)
ぴょんぴょん飛び跳ねながら
「嬉しい」の感情も出すようになりましたが…
悔しいけど、食べれば食べるほど
癌が育っていく悪循環でした。
そして…
![](https://assets.st-note.com/img/1719664790462-7j2iK2Zkps.jpg)
恐れていた「腫瘍破裂」
それでもまだ、摘出手術はできない…
全身麻酔に耐えられない体のため、
「手術という名の安楽死」になってしまう。
それだけは絶対に避けたい!
手術ができる体になるまでは…と、
ストレスのない生活環境、
栄養のある食事管理、
腫瘍を腐敗させないよう衛生管理、
徹底管理の日々から30日後…
![](https://assets.st-note.com/img/1719662208861-CQ3KJwqxe4.jpg)
ようやく手術できる体へと回復しました!
だけど…
癌範囲が広すぎて全摘出は不可能。
レントゲンで転移は見られないけど、
目に見えないだけで転移してる可能性大。
その場合は死期も早い。
今転移してなくても、半年〜一年再発する。
再発しても、摘出手術は不可能。
それは…
「手術しても一年以上は生きられない」
という意味でした。
![](https://assets.st-note.com/img/1719661910006-6nbacNP3d7.jpg)
どうせ長く生きれないのなら、
リスクを背負ってまで手術の必要あるのか?
…自問自答のくり返しでしたが、
あかね本人が痛みから解放されるので、
摘出手術はあかねにとって必要だと思いました。
短い時間でも、あかね本人が痛みや不快感無く、
楽しい余生を送って欲しいから…
![](https://assets.st-note.com/img/1719662015841-pxLdFSnCS7.jpg)
無事、破裂した腫瘍摘出手術成功!
もちろん、これで終わりではありません…
![](https://assets.st-note.com/img/1719739209988-FNInxye42a.jpg)
腫瘍の進行と皮膚の状態をみながら
2回目、3回目の腫瘍摘出術が
控えてるのです…。
いつでも手術を受けれるよう
免疫力が下がらないように、
食欲不振にならないように、
病気させないように、
様々な面で気を付けてたのに…
![](https://assets.st-note.com/img/1719664729558-fCmkJPJkwN.jpg)
施設の作業を終え「療養の家」に戻ると
部屋中大量の血痕が…!!
![](https://assets.st-note.com/img/1719664758912-hSlrWborzw.jpg)
手術を控えてた腫瘍のひとつが破裂。
動かさないようケージに避難させての
かかりつけ病院に連絡。
緊急摘出手術になりました。
短期間で二回目の手術…
麻酔から目を覚ましてくれるだろうか…?
そんな心配をよそに、
あかねは、笑顔で帰ってきました!
![](https://assets.st-note.com/img/1719739404710-m5WGLu0we3.jpg)
そうして…時間をかけながら
乳腺腫瘍の全摘出成功!!
転移も見当たらず、安心したのですが…
獣医さんからこう言われました。
「転移しない可能性はほぼゼロ。
一年後位に再発するんじゃないかな?
完治はないんだよね…」
![](https://assets.st-note.com/img/1719740966464-sgm1RTOBaT.jpg)
だけど、癌根絶の可能性を…希望を拭えずにいました。
あかねの「譲渡」への道を諦めたくない…と。
うちに居る以上「その他大勢の1匹」…
「保護犬」のまま終わらせたくない!
そんな私の願いとはうらはらに、
あかねは「療養の家」が「自分の家」に
なりつつありました。
私以外の人に向ける強い警戒心…
唸ったり吠えたり、
咬もうとしたり、
誰にも心を開きませんでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1719740499399-UQWfOg6JSc.jpg)
日に日に高まる私への愛情…。
悪く言えば、執着や依存なのかもしれません。
私が歩けば、あかねも歩く。
私が止まれば、あかねも止まる。
いつもいつも、私の足元には
あかねが居ました。
![](https://assets.st-note.com/img/1719742032125-KEfmg98wCg.jpg)
ここが一般の自宅、一般家庭だったら、
それで良かったのかもしれない…
あかねが私を求めれば求めるほど、
私には辛さしかありませんでした。
ココは「療養の家」であり
最期を看取る「看取りの家」だから…
今、まさに、
最期を迎えようとする子を抱いてると、
あかねは嫉妬に狂ってしまうのです。
「その子をどかして!」
「私だけを見て!」
![](https://assets.st-note.com/img/1719742401749-MEkrgB6AEB.jpg)
私の日常は、夜間介護メインの
24時間体制が基本です。
睡眠時間は決まっておらず、
寝れるときに仮眠を取るスタンスですが…
あかねは私が横になることを極端に嫌がり、
横になることすら許しませんでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1719752080279-ly3htdctWd.jpg)
その背景にあるのは…
過去のトラウマからでした。
あかねの飼い主は…入院する前、
体が辛く横になることが多かったそうです。
その間、あかねは静かに過ごしてたのでしょう…
どんなに淋しくて退屈な日々だったろう。
そんな生活が続いたある日、
突然、目の前から消えた飼い主…
飼い主の闘病生活や入院は、
あかねにとって理解できない出来事。
私を寝かさないのも、
私の側から終始離れないのも、
あかねが経験してきた
「過去のトラウマ」からだろうな…
![](https://assets.st-note.com/img/1719752058556-noVoDwXzyL.jpg)
「療養の家」で暮らす子達の
穏やかな時間の流れを守るためには…
穏やかな最期を迎える子達のためには…
私しか頼る人が居ないあかねのためにも、
あかねの保護場所を、
「療養の家」→「母家」引っ越しを決意。
引っ越しとは言っても、
「療養の家」と「母家」は隣同士の建物であり、
保護施設の事務所です。
私と距離を置き、色んな人と関わることで
私以外の人にも心を開いてくれるのでは?
譲渡希望者さんが現れるのでは?
希望を持っての決断でしたが…
![](https://assets.st-note.com/img/1719753791889-fppMKIOy32.jpg)
頑なに心を閉ざし続けるあかね…
あかねが私を求め続けていること等
もちろん、分かっていました。
でも、私には応えられませんでした。
介護を必要とする子達を
優先しなければいけなかったから…。
「ここの人はみんな優しいんだよ?」
毎日毎日、諦めず言って聞かせました。
![](https://assets.st-note.com/img/1719754422555-CfepHsES3y.jpg)
それでも、毎日毎日
私が来る時間だけを楽しみに待ち続けるあかね…
スタッフやボランティアさん達が、
どんなにあかねを想っても
あかねに伝わらないもどかしさと
淋しい思いさせてる申し訳なさとで
胸が張り裂ける思いでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1719755164622-XOjOijLPCw.jpg)
「療養の家」に帰省させた夜もありましたが、
他の子達の介護で、忙しく動いてると、
構ってもらえないストレス「転移行動」で
自分の毛を噛みむしるようになりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1719756570743-OV8ExShw9Z.jpg)
あかねにとって
「こんなに近くに居るのに…なぜ構ってくれない?」
そんな思いだったのでしょう。
あかねにとっての私という存在そのものが
元凶になるのだと気付きました。
私が保護施設の人じゃなかったら…
私が普通の家庭のお母さんだったら…
自分の立場を恨めしく感じました。
![](https://assets.st-note.com/img/1719760627309-UZcH37EPDM.jpg)
あかねが望んでいるのは、
「療養の家」に戻ることではなく、
24時間ずっとずーっと、
私と寄り添い合うことだったから…
![](https://assets.st-note.com/img/1719756778462-FWPAVDT2IY.jpg)
私の立場上、あかねの願いが叶う日は
来ないと思っていました。
いいえ…来ない事を祈りました。
「24時間ずっと寄り添い合う」
これが可能となる意味は、
「看取り」…だったから。
![](https://assets.st-note.com/img/1719760166742-z7xsFfvrNF.jpg)
「あかねの願いが叶う日が
きませんように…」
私の願いは
打ち砕かれました。
![](https://assets.st-note.com/img/1719760205412-82aFLko2QM.jpg)
乳腺腫瘍全摘出手術から
10ヶ月後の今…
あかねの癌が、
脾臓や肺に転移したのです。
「末期癌」
あかねに残されたのは
緩和ケア…それだけ。
私とずっとずーっと一緒に居たい!
ずっとずーっと自分だけを見て欲しい!
あかねの願いが叶ってしまいました。
![](https://assets.st-note.com/img/1719760497987-jB9vEMZ0or.jpg)
日中の施設作業は休暇を取り、
24時間ずっとずーっと
あかねの側に寄り添ってます。
こんなあかねの願いなんて…
叶えたくなかったのに!
あかねは、いつからでしょう…
飼主への想いを捨てて
私と家族になることを夢見ていました。
![](https://assets.st-note.com/img/1719760689903-98SpDjJf3I.jpg)
いいえ…
あかねの中ではすでに
私が家族だったのかもしれません。
最期くらい、母ちゃんを演じよう…
あかねの母ちゃんとして、
あかねと寄り添いたいから…
![](https://assets.st-note.com/img/1719760539920-GX4x5eyb98.jpg)
~ あとがき ~
あかねと出会い、レスキューしての一年間、
SNS等で私自身、あかねを投稿したのは、多分…2回位しかないと思う。
一年間…ずっと一緒に居て、一年間…あかねとは怒涛の日々だったのに、
なぜ、あかねの存在を公にしなかったのか…?
なぜ、多額の手術費用の助けを求めず、あえて苦難の道を選んだのか?
私自身、あかねの存在を公にしなかった理由が分からないんです。
ただ、今、こうして記事にしているのは…
あかねが生きているうちに、あかねの存在を知って欲しい。
あかねの生き様を褒めて欲しい…そう思ったのかもしれません。
自分でもなぜ、今、こうしてパソコンに向かっているのか、
憶測でしか自分の言動を説明できないんです。
あかねの時間は
もうすぐ
終わりを告げようとしています。
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