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突然の別れ・軌跡

2022年7月10日「重苦しい長夜」

8ヶ月間、愛護センターに収容されてたホルン。
収容当初、27㎏あった体重は、
レスキュー時に17㎏しかなかった。

※2022年7月10日「宮崎県動物愛護センター」犬舎にて

原因となる要素はたくさんあった。
乳腺腫瘍、ヘルニア…

レスキューした7/10は
かかりつけ院が休みだったため、
「いのちのはうす保護家」ホスピス棟で
ホルンと朝になるのを待った。

今までもヘルニアの犬を保護してきたが、
ここまで腸が垂れ下がってる子は初めてだった。
散歩中、数秒毎にうんこポーズするけど
汁しか出てこない…

愛護センターで嘔吐ばかりする…とは聞いてたが、
明らかに、便が詰まっての嘔吐だろう…。

「ホルン…死ぬかもしれん」
急遽レスキューしたけど、
朝まで持たないかもしれない…
ネバーと同様、命の危機を感じ、
2人の部屋を行ったり来たりしながら
朝になるのを待った。

​(※ホルンと一緒にレスキューした首の骨が折れた瀕死状態だったネバー)​

夜がこんなに長く感じるなんて…


2022年7月11日「死のリスク」

朝一で病院へ連れて行くが…
「これはヤバい!!」
触診だけで声をあげた獣医師さん…

急いでレントゲン撮ると、
赤丸の中は全部うんこだった。

※腸が破裂しそうな程の数ヶ月分便

「1日遅れてたら死んでたね…
ただし…手術中に亡くなる可能性もある」

獣医師さんから手術の危険性を告げられた。
今日死ぬか?
手術中に死ぬか?
選択肢などなかった。
少しでも「生きる」可能性があるなら…と、
一ミリの迷いもなかった。

獣医師さんは急遽、病院を休診にし、
ホルンのオペを開始。
お腹を開けて便を取り出すと同時に
避妊手術、乳腺腫瘍摘出、
腸を中に戻すという
大掛かりな手術だったが、
ホルンは無事、生還した!

でも、これで安心…ではなかった。
鼠経ヘルニアの期間が長すぎたため、
腸の状態が非常に悪く、急死の危険性もあり
しばらくは入院生活との事。

※術後、麻酔でもうろうとしてるホルン

「あと一日遅かったら死んでたね」
獣医師さんから言われた言葉が
頭から離れなかった。

愛護センターでは、
出来る事への限界があるから、
愛護センターを責めるつもりは一切ない。
愛護センターの職員さん達も、
何もできず、きっと辛かったのだから…

ホルンをレスキューするとき、
見送りに出てきた職員さん達の
涙と言動全てが「答え」だと感じたから…

※職員皆さんが、できる範囲内で頑張ってくださいました


7月16日「猟犬種の強さ」

命の峠を無事越えたホルン。
退院して「いのちのはうす保護家」に戻ってきたが…
まだお腹を切ったばかりだというのに、
安静にしてくれない。
トイレでドッグランに出すと走り回るため、
長時間フリーにできない状態…

拘束(強制安静)時間が長すぎるせいか、
夜間~明け方まで吠え続けるホルン。
見守りカメラで24時間体制で
監視する日々だったが…

暴れすぎてとうとう、傷口が開いてしまった!

※血まみれなのに笑顔で朝ごはんの催促するホルン

直ちにに再入院となったホルン。
傷口が完全に塞がるまで
帰って来れなくなった…

ふと、有志である猟師さんの言葉を思い出した。
「強い猟犬は…猟で大ケガして走れない体なのに、
翌日には、自分も猟に連れて行けと言い張るんだよね」

そうか…
ホルンも猟犬だったのか分からないけど、
猟犬種の血が強い仔だからな…

改めて、猟犬種の強さを目の当たりにした。


2022年8月10日「群れデビュー」

※傷口もようやく閉じ、無事退院したホルン。

「いのちのはうす保護家」の犬たちは、
犬たちの間で代々受け継がれてきた
犬たちのルールが存在してた。

でも、そんな心配必要なかった!
皆がホルンをすんなりと受け入れてくれた。
むしろ、壮絶な過去を乗り越えたホルンを
歓迎してるようにすら感じた。

※嗅覚を使って脳の活性化へとつながる「おやつ探し」
ホルンの嗅覚はお見事でした!

ホルンは出会った日から
私に対しての警戒心もなく、
心と体を預けてくれた。
託してくれた。
だから、ホルンは人懐っこい性格だと思っていたが…

本当のホルンは、警戒心が強く、気が弱い性格だった。
なじみのない声がすると
「誰?!だれ?!誰なのーー!」
ドッグランの中を延々と吠えながら走り回るため、
「保護家に来たら、先ずホルンに挨拶してね」
と、ボランティアさん達にお願いしてたほどだった。
声の主が誰か分かると、
スっと落ち着きを取り戻すから。

ホルンの興奮状態を解除するためにあらゆる知恵と方法と時間を要したが、
ホルンが素の自分を出せるほどになったのだと嬉しい気持ちの方が大きかった。

もちろん、最終目標は「譲渡」だったが、
物音ひとつで「なんだなんだ?!」
原因判明できるまで吠え続けるホルン…
「番犬」にピッタリだろうけど、
私たちが、ホルンが求めているのは「家族」。
「番犬」なんて冗談じゃない!

とは言っても、希望者が来ても
人見知りで吠えながら逃げ回るホルンに
良縁は至難の業だったが、
ホルンの優しさ、子犬のようなあどけなさ、
ホルンの良さに気付いてくれる人が
必ず現れると信じ続けた。

※看取り期の犬を心配し、何度も様子を見に来るホルン


2024年2月「体調の異変」

毎日変わりなく走り回り吠えまくり
元気がない素振りは一切なかったが
「なんか最近食欲落ちたし、軟便が多いよね?」
何度か病院に連れて行ってたものの
食欲不振と軟便の原因は分からず
念のために…と、3月5日に精密検査の予約を入れた。


2024年3月4日「最 期」

いつも通りのホルンだった。
夕食後のおやつも、おかわりを欲しがるくらい
変わりないホルンだった。

3月4日 AM0:00
明日…明日が精密検査の日だ!
偏食と軟便の原因が分かる!

犬たちの寝床を見回りながら
「じゃあね、おやすみ!」
いつものようにホルンと挨拶を交わした。
まさかこのときの言葉が…
「じゃあね」「おやすみ」が
永遠の別れの意味になるなんて…

無理してでも検査日を早めるべきだったのか?
そうすれば、ホルンは死ななかったのか?
後悔と申し訳なさでいっぱいだった。

かわいい仔だったのに…
心の優しい仔だったのに…

ホルンの葬儀は、
仲間の犬たちが見守る中で行った。
ホルンが望んでいるように感じたから…

ホルンが荼毘に付す場所は、
毎日みんなと遊んだドッグランで行った。
ホルンがそう望んでいるように感じたから…

何度も何度も、ホルンに謝った。
謝ることしかできなかった。

ホルンの遺体解剖を申し出れば、
死因は判明するかもしれないけど…
今後のために希望すべきかもしれないけど…
未来の犬たちのことよりも、
目の前のホルンを尊重したかった。
「保護施設の代表」ではなく、
「ホルンの母ちゃん」という感情を
封印できなかった。
『動物たちの未来のために』そう謳ってる立場で
情けないと分かっているけど…

静かに旅立たせたかった…それだけです。











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