インスタントフィクションその2

今日の仕事はこの周回が最後だ。帰りにスーパーに寄って、つまみと金麦で晩飯にしよう。

おや、ずいぶん目が赤い男が乗って来た。もしや別れ話でもしていたのかな。しかし、お客さんのプライベートに踏み込む職種でもない。気にしないことにしよう。

月のない夜でも、このあたりは一応都会で道はとても明るい。今日も大した問題が起こらずに仕事が終わって欲しい。家に帰って女性ニュースキャスターを肴に酒を飲むのだ。

終点が近い。乗客もまばらだ。いつもの火曜日。

火曜日。そういえばたまに遊びに行っていたロンドンナイトは火曜日だったっけ。僕の頃はもうクラブワイヤーだった。なんか今にして思うと素晴らしい音楽体験だったな。

なんて考えているうちに終点だ。今日も何も起こらなかった事に感謝だな。明日は半休だから気持ちがのんびりしている。

キミの事を思い出すんだ。何故かわからないけどね。赤い自転車。2人乗り。麦わら帽子。向日葵のような笑顔。

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