エロゲ序説

いわゆるPCゲームである。
そういうものがいつからあるのか知らないが、私がそれに出会ったのは20xx年頃、悪い先輩の押し付けによるものだった。涼宮ハルヒの憂鬱やらきすたといった初期の京都アニメーションが持て囃され、徐々に他人ともアニメの話ができるようになり始めた頃……今では考えられないが、深夜アニメというのは今で言うと「ジュニアアイドル」くらい他言無用のヤバい趣味であった。

そのような社会情勢で「エロゲ」がどのような立ち位置であったかは説明するまでもない。それを先輩はわたしの胸に押し付けた。DVDが入ってるだけのくせに不必要にバカでかい外箱をどうやって持ち帰れと言うのだろう。なんてったってそこには、そこには女の子の絵が(絵が!)印刷されているのだ。何としても隠さねばならないのだった。繰り返しになるが当時の感覚で「女の子の絵」は違法だった。例えるならまあ、チェンソーマンならいい。ポチタもギリギリでセーフ(ギリギリね)。だがマキマの描いてあるグッズや本はアウト。そのイラストが扇情的かどうかはもちろん関係ない。とにかく「女の子の絵」は違法であった。ほんとである。当時許されていた女の子の絵はワンピースのナミとロビンだけだった。これはほんとにマジでガチだ。

「エロゲはどっちかというと文学なんや」

文学が好きなお前ならきっとわかる、と真面目な顔で先輩は言うのだった。
わたしは、そんなことよりこいつをどうやって持って帰ればいいのか聞きたかった。


――――――ゴア・スクリーミング・ショウ――――――

先輩の言う通り、たしかに文学であった。しかも……どちらかというと。

私のカバンには当然入りきらなかったデカ箱は先輩が直接家まで持って来てくれた。そんなにしてくれる情熱を見せられればさすがにやらないわけにもいかず、そしてこれ、なんと言ってもエロゲ、ですから。ちょっぴりエッチなシーンを期待してプレイを始めたわけである。

http://www.cyc-soft.com/b-cyc-pro/gss/gss_Frame.htm

数年ぶりに地元へ帰った恭司が、ユカを名乗る幼い少女とその背後に佇む怪人ゴア・スクリーミング・ショウによって不思議で愉快で陰惨な世界に誘われていく。

これがエロゲか。と、当時1x歳のわたしはかつてない衝撃を受けた。(実のところ、エロゲの中でもストーリー性に寄ったものと「抜き」に寄ったものがあり、ゴアは前者だったのだが)
アニメやライトノベルでは絶対に表現不可能な描写と、背景、なにより画期的に思えたのは、「分岐」による各キャラクターの専用シナリオのおかげで世界観の奥行きであった。ヒロインA→ヒロインB→ヒロインCと何度も世界の別ストーリーを追いかけることによって形作られる人間性と世界性はたしかに文学らしい面白さがあった。



むちゃおすすめ。
Wikipediaのページもあるけどやる気のある人は読まないこと。

ちなみにぶらーちゃんの原型は間違いなく深園希依佳です。品行方正なのにえっち。


気が向けば続く。

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