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トータルステーション(測量機)を説明して下さい

トータルステーションとは、「光波距離計が望遠鏡視準線の同軸上に内蔵された電子デジタルセオドライト」の事です。

なので、過去の記事
①光波距離計(測量機)を説明して下さい。
②トランシット・セオドライト(測量機)を説明して下さい。
を読んで頂ければ、トータルステーションの理解が深まると思います。


SET3030R

一般的なトータルステーションの定義

①セオドライトの望遠鏡視準線の同軸上に光波距離計がついている。
②全てデジタル表示である。
③水平角の「0度設定」ができる。
④水平角・高度角・斜距離が同時観測できる。
⑤水平距離・高低差を表示(計算)できる。
⑥外部出力ができる。

の機能があれば、トータルステーション(測量機)として良いと思います。

トータルステーションでありながら、そうではない時期

かつて、測量機器のメーカーと国土地理院の間で、「トータルステーション」についての見解が一致しない時期がありました。

「基本測量の測量機器 国土地理院登録機種一覧簿」を参照すると、3級トータルステーションの登録番号【1】はSET5A(株式会社 ソキア)で、その登録年は平成6年(1994年)であることがわかります。

では、それ以前のトータルステーションはどう扱われていたのでしょうか。

例えば、SET3A(株式会社 測機舎)の場合、2級セオドライトの登録番号【3】 昭和61年(1986年)、2級中距離型測距儀の登録番号【8】 昭和62年(1987年)となっています。

これらの情報から推測するに、国土地理院が「トータルステーション」という概念を公式に認めたのは、おそらく平成6年(1994年)以降であると言えるでしょう。

それ以前の「トータルステーション」は、その名前ではなく、「セオドライトと光波測距儀の二つの機能をもった測量機」として扱われていたと考えられます。これは、その時代の測量技術の進化とともに、測量機器の定義や分類が変化してきたことを示しています。

基本測量の測量機器 国土地理院登録機種一覧簿
https://www.gsi.go.jp/gijyutukanri/seino.html

SET3000(ソキア製)の販売でトラブルを起こしてしまった記憶

国土地理院による認定の「2級Aトータルステーション」と、第三者による検定の「2級トータルステーション」は、名称は似ているものの、実際には異なる性質を持つものであるという事は、業界内ではよく知られています。

現代ではインターネットの普及により、これらの詳細な情報が容易に入手できるようになり、微妙な違いを理解することが可能となりました。しかし、約30年前、インターネットがまだ普及していなかった時代には、このような情報はほとんど公開されておらず、多くの部分が未知の領域、いわゆる「ブラックボックス」でした。

当時、こんなトラブルをおこしてしまいました。

2級Aトータルステーションの SET3000 (株式会社ソキア製)を販売して、そのまま、2級トータルステーション検定にだしたところ、検定不可になってしまいました。納得がいかず検定機関に電話をして事情を聞いたところ、SET3000が標準で内蔵しているデータコレクタ機能が、検定の基準を満たすことができないと言われてしまったのです。

そんな事知らなかったし、誰も教えてくれなかった。

お客さんに平謝りでした。

この時期は、技術革新の波が押し寄せる変革期でもありました。また、メーカーから提供される情報も必ずしも完全ではなかったため、トータルステーションの取り扱いには多大な苦労を伴いました。

野辺山パラボラアンテナと自動追尾

かつて在籍していた測機舎サービス課では、一般的な測量機器のメンテナンスだけでなく、特別な一品もの、いわゆる「ワンオフ」のメンテナンスも担当していました。その中でも特に印象的だったのが、野辺山パラボラアンテナのメンテナンスです。

天体からの電波は、アンテナ(お椀型の面)に当たり、そこで反射されます。その反射された電波は、副鏡(焦点)でさらに一度反射され、最終的に受信部へと導かれます。この副鏡には光波距離計が装備されており、僕はその調整のために現地に出向いた経験があります。

その際、先輩から興味深い話を聞きました。「この巨大なアンテナの中心には、測機舎の測量機が設置されており、それを使って角度を精密に測定しているんだ」とのことでした。これは、おそらく自動追尾の技術を利用しているのだと思います。

この話は今から40年も前のことで、現在の最新の構造については詳しくは知りません。しかし、この経験を思い出すと、自動追尾の技術は、実はかなり昔から存在し、その開発と応用に取り組んでいたことになります。


最後まで読んでくれてありがとう。


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