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光波距離計(測量機)を説明して下さい。

過去の測量技術では、距離の測定には主に巻き尺が使用されていました。

具体的には、セオドライトの横軸の中心点から目標となる測点までの斜距離を直接測定し、その角度はセオドライトを用いて読み取られました。そして、それらの情報を基に三角関数を利用して水平距離を算出するという、一見単純ながらも手間と時間がかかる作業を、測定したい全ての測点に対して行っていました。

特に、長距離の三角測量においては、物理的な制約から巻き尺を使用することが不可能でした。そのため、既知の1辺の長さの端点から他の2辺の夾角をセオドライトで測定するという、より複雑で労力を要する作業が必要でした。

そんな中、空間を通過する光の波を利用して距離を測定する光波距離計の登場は、測量技術における革新的な進歩でした。この画期的な機器は、従来の手間のかかる作業を大幅に簡素化し、より正確で効率的な測量を可能にしました。

光波距離計の進化

光波距離計の進化は、その小型化の歴史とも言えます。初期の段階では、光波距離計はセオドライトの上部に取り付けられ、角度の測定はセオドライトによって、距離の測定は光波距離計によって行われていました。

セオドライトが電子デジタル式に進化すると、光波距離計とセオドライトは配線で接続され、水平距離や高低差を即座に計算できるようになりました。

さらにその後、光波距離計とセオドライトの望遠鏡が同軸型で一体化されることに成功しました。これにより、それらはトータルステーションの一部として進化し、現在に至っています。この進化は、測量技術の進歩を象徴するものであり、その精度と効率性の向上に大いに貢献しています。

光波距離計の方式

光波距離計は、位相波方式とパルス方式という2つの主要な方式で構成されています。これらの方式は、それぞれ異なる特性を持ち、測量機メーカーはこれらの方式を適切に選択し、それぞれの長所を最大限に活用しながら短所を克服するための独自の工夫を行っています。

位相波方式は、光波距離計から測点まで一定の周期で点滅する光波を発射し、その光波が測点から帰ってくるまでの波のズレを計算することで距離を求める方式です。この方式は、長距離測定には若干の弱点がありますが、その一方で、距離精度は非常に安定しており、高精度な測定が可能です。

一方、パルス方式は、光波距離計から測点まで短パルスを発射し、そのパルスが測点から帰ってくるまでの時間を計測することで距離を求める方式です。この方式は、長距離測定に強いという特性を持っていますが、短距離の精度が不安定になりやすいという特性があります。

光波距離計のプロセス

光波距離計の距離が表示されるまでのプロセスを簡単に記してみます。

①電源が入る
②源発信器が起動する
③スタートボタンが押される。
④送光ダイオードから光波を発射する
⑤反射プリズムで光波が反射する
⑥反射してきた光波を受光ダイオードが受け取る

④~⑥までの工程を外部・内部、短距離・遠距離のパターンを繰り返します。(仕様によって違う)

⑦光波のズレ(位相)を求める
⑧位相から距離に換算する

僕が測機舎(旧ソキア→現トプコン)に在籍していた約40年前の光波距離計の修理作業は、まさに試行錯誤の連続でした。一つの問題が解決すれば、次の問題が待ち構えていました。「距離がおかしいです」という修理依頼が来たとき、その原因は何処にでも存在する可能性がありました。それは、どの工程が問題を引き起こしているのか、それとも全く別の要素が影響を及ぼしているのか、常に不確定要素を含んでいました。

それは、まさに一つ一つのパズルピースを組み合わせていくような作業で、原因追及を含めて、とても大変な作業でした。

光波距離計の歴史は距離精度の歴史でもある。

いつのころだったろうか。おそらく2000年代初頭にあったと思う。その時、僕が目にしたニュースは、ソキアが世界で初めて正確な基線場を自社の松田工場内に設置したというものでした。

ISO9001がまだ、「品質保証の国際規格」として知られていたころの話です。距離のトレーサビリティを検討する過程で、ひとつの疑問に直面していました。その疑問が、「表示された50mは、なぜ、正確な50mと言えるのですか。」という問いへの答えを見つけることでした。その答えは、「国土地理院が正しいとしているから正しいのです。」という形で提供されていましたが、それが国際的な定義を満たすのかという疑問が残っていました。

この問いに対する追求を深めた時、1mの定義がレーザー波長を用いて存在していることを知ります。しかし、1mを超える距離の定義は存在しなかったのです。

この問題に対するソキアの回答は、レーザー波長を用いた1mを正確に100倍し、100mを定義するというものでした。そして、その定義を実際に計測できる基線場を当時の松田工場に設置しました。(今は、ありません)

この革新的な考え方は、後のISO規格の基礎となり、国際的な距離の基準を確立しました。そして、その基準は今日まで続いています。


最後まで読んでくれてありがとう。


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