仮説思考再読

今回紹介するのは元ボストンコンサルティンググループの日本支社長であり、現在では早稲田大学商学学術院教授を勤めている内田和成さんの言わずと知れたベストセラー「仮説思考」です。

初めてこの本を手にした時は、当時の状況もあってか目から鱗の状態でした...。こんな人は是非とも手に取っていただきたい書籍です!

・仕事で圧倒的に努力しているのに成果が出ない人
・仕事のスピードを圧倒的に高めたい人

では、早速進めていきましょう。

<目次>
・そもそも「仮説思考」とは何か
・仮説思考の真逆の思考「網羅思考」とは
・仮説思考のメリット
・筋の良い仮説を立てるには

そもそも「仮説思考」とは何か

仮説思考における仮説とはなんだろうか。

本書では"現時点で「最も答えに近い」と思われる答え"と表現しています。

有名な例をあげるとすればこの「芝生」の話。

「朝起きると庭の芝生が濡れていた(事実)」→「 雨が降ると芝生は濡れる(普遍的なルール)」→「だから昨晩は雨が降ったのだろう(仮説)」

この事実→ルール→仮説という思考法はアブダクションと言われ、皆さんも日常的に用いている脳の回路を言語化したものです。ちなみにアブダクションと呼ばれる論理的推論方法になります。

例えばこんな例もあるでしょう。

「今日、恋人がなかなか目を合わせようとしない」→「恋人は怒っている対象と目を合わせようとしない」→「恋人は私に何か怒っている可能性がある」

こういった例も実は「仮説」なんですね。実はそんなに難しいことではありません。ちなみに、上の例で仮説が立てられていないと、恋人をさらに怒らせてしまう可能性があります。仮説って重要なんです笑

そして仮説思考とは物事の答えから考えることを指します。そして答えを考えるために「仮説」を用いるのです。例えばとあるメーカーでの売上が下がっているとします。その原因を解決し、売上回復の施策を考える際に「売上低迷の要因は、競合にシェアを奪われているからである」と答えを設定してから、検証を行なっていき、正解か不正解かを見極めるということになります。

どうでしょうか。私は最初は圧倒的に違和感を覚えました。「いやいや、しっかり調査して結論を出さなきゃだめでしょ!」って思いました。それ程、一般の感覚では受け入れがたいメッセージかと思いますが、これが本書のキーメッセージになります。

この仮説思考がなぜ大切なのかを分かりやすくするには、対象的な概念である「網羅思考」に着目をしてみると分かりやすいでしょう。

仮説思考の真逆の思考「網羅思考」とは

網羅思考とは"考え得るさまざまな局面から調査・分析を行ない、その結果をベースに結論を組み立てる"思考法のことです。

こんなに丁寧に調査・分析をしてくれる方は、信頼できるビジネスマンだ!と思えるかもしれません。

ただ、こう考えてみてはいかがでしょうか。

お腹が痛くなって病院の診察を受けた際に、ありとあらゆる観点から精密な調査を行い、検査費用で5万円を支払うことに。結果、診察結果は「お腹が冷えただけでしょう。」検査にかけた時間は2日間。これは果たして、正しい診察のアプローチなのでしょうか。

決してそうではないでしょう。重篤な症状を抱えている患者に対して、検査に時間をかけすぎた結果、病状を悪化させることもありえます。網羅思考は時間がかかりすぎるのです。

時間というものは、そのものに価値があります。診断スピードが早ければ、患者の命を救える可能性があります。ビジネスの課題解決のスピードがあがれば、「競合に先んじること」「他の課題解決への取り組み」もできます。網羅思考は「時間」という非常に大事な概念を無視した考え方と言えるでしょう。

だからこそ医師は素早く適切な診断にたどり着くために仮説思考を用いています。そこで患者の様子や、経験値から「この患者は〇〇の症状だろう」とあたりをつけます。あたりをつけてから実際の検証を行うわけです。

仮説思考のメリット

仮説思考のメリットは以下の2つです。

・先見性と決断力を身に付けることができる
・仕事のスピードがあがる、質が上がる

著者の内田氏は、ビジネスパーソンに必要な能力を「先見性」「決断力」「実行力」の三つであると著書の中で述べています。

個人的にはこの「先見性」と「決断力」は人生レベルにおいても重要だと感じますね。人生における意思決定「結婚」「住宅購入」「転居」など、抗えない荒波もあるのが人生ですが、それらの意思決定をした先を見通し、決断する力は現代の日本では必須の能力ではないでしょうか。

そんな「先見性」と「決断力」が身につくのであれば、仮説思考のコストパーフォーマンスの高さは圧倒的です。

仮説思考は理論ではなく実践の中で身に付けることができます。仮説を立てることで先を見通す先見性と、仮説の状態で実行まで行う実行力もその実践に伴って身につくものになります。言うなれば、料理や車の運転と一緒です。仮説を立て検証を繰り返すことで、仮説構築能力を立てることができるようになります。

仕事のスピードと質に関しては網羅思考と比較すれば一目瞭然です。

筋の良い仮説を立てるには

本書では「よい仮説は経験に裏打ちされた直感から生まれる」と書かれています。よって日常生活や実際の仕事の中で訓練を繰り返すと良いと書かれています。

ここに個人的に私の頭の中で付け足している点は2点です。

・仮説を立てるには知識もやはり必要
・帰納法的な思考も考える

仮説を立てるためプロセスは、文書冒頭で示したアブダクションの思考回路です。しかし「朝起きると庭の芝生が濡れていた(事実)」→「 雨が降ると芝生は濡れる(普遍的なルール)」→「だから昨晩は雨が降ったのだろう(仮説)」となるためには「 雨が降ると芝生は濡れる」というルールを知らなければいけません。このような普遍的なルールは、先人の知恵として体系化されているものが多いのです。例えば「ダニング・クルーガー効果」を知っていれば、人が浅薄な知識で自信満々でいる理由も仮説が立てやすくなるでしょう。

また、普遍的なルールを見つけることも重要です。それには帰納法的な考え方が求められます。例えば「雨が降った場合に芝が濡れた」という状態が、様々な地点で、様々な時間で観測された場合「雨が降ると芝生が濡れる」というルールが導き出されるでしょう。このように、複数の事実から普遍的なルールを見つけ出す手法を帰納法といいます。

この帰納法の考え方は、自身の会社の部署内でも利用ができますし、プライベートにも適用ができます。まさに「恋人は怒っている対象と目を合わせようとしない」というものは、長い間付き合ってきた恋人同士だから見つけることのできる普遍的なルールと言えると思います笑

このようにプライベートでも、業務においても常に「なぜ」を考え続けることでこのような思考が身につくのではと私は考えています。

最後に

本書は、他のビジネス書でも参照されることが多く、名著だと個人的に思っています。私は個人的に、この著作を読み、業務改善できたと実感するものの一人です。1日でも読めてしまう程なので興味があればご一読してみてはいかがでしょうか!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?