「20歳の自分に受けさせたい文章講義」は就活生にぴったりの書籍だった。

ひさしぶりの投稿です。


突然ですが、今回は「日本の大学生の国語力は低い」というお話です。
そして、そんな不平ばかり言ってもしょうがないので、今回紹介する本書を大学生のみなさんに読んでいただきたいな、と思い今回の記事を書いています。


私自身、実は関東の学生さんを中心に就活生の1000以上のエントリーシートの添削を行ってきた経験があります。

そこで私が気づいた大学生のみなさんが犯しがちな点に対し、本書では的確に示し処方箋を提示していると感じました。

ちなみに本書は、平易で読みやすく決してアカデミックな本ではありません。筆者のライターとしての経験値と、ライティングの勉強をしてきた筆者の知識を組み合わせ、筆者の中で体系づけられている学び・ノウハウを公開しているといったタイプの書籍だと解釈しています。


一部の学生には物足りないかもしれませんが、間違いなく95%ほどの学生には本書のノウハウは効くでしょう。


では、何点かの事例と共に、本書のノウハウを少し公開します。


事例1:情緒的、レトリックな文章で論理にかける


学生にありがちな事例として「一生懸命」「心がける」「満足の行く内容」「皆で心を一つにする」など感情に訴えかける精神論のような言葉をちりばめたESが全体の10%ほど存在します。


はっきり言いいますが、これはNG。


ついこう言った言葉は便利だから人は使ってしまいます。しかし、「こんなに頑張ってるんだから相手にも伝わるだろう」とう文章は甘えであり、読み手の立場に立っていないと考えます。


本書では、そういったレトリックな美辞麗句をやめ、論理的整合性のとれた文章を作成することの重要性を説いています。
それを筆者は正文と呼んでおり、その点に関して私は大いに賛成です。


論理的と言いますが、そんなに難しい話ではありません。

以下の2点に気をつけてみると良いでしょう。


1:論理の飛躍はないか

2:論理のズレはないか


この2点を意識するだけで、文章はぐっとレベルアップします。

例えば、論理の飛躍というのは「風が吹けば桶屋が儲かる」ということです。


このことわざの、概要は以下の文をお読みください。


風が吹くと、土ぼこりがたち、土埃が目に入り盲人が増える。盲人は三味線で生計を立てようと考え、三味線の胴を張る猫の皮の需要が増える。猫が減るとねずみが増え、ねずみが桶をかじるから桶屋がもうかって喜ぶ。


ちなみに、このことわざはあてにならないことを期待する例えですが、それと同じように飛躍した論理を文章にしている学生さんがいることは間違いありません。
その割合は半数を超えるのではないかと思います。


この飛躍を生まないためには本書には書かれていませんが「空・雨・傘」のフレームワークを身に付けるとよいでしょう。


事実:「空」空が曇っている

解釈:「雨」雨が降りそうだ

結論:「傘」傘を持って行こう


それぞれ3つが存在するからこそ、情報に意味がうまれ、メッセージが生まれます。事実だけでは、何の意味もメッセージも生まれません。事実と結論だけでは、飛躍が生まれ相手に伝わりません。解釈と結論だけでも、前提事実がわからず読み手を混乱させます。


この3要素をうまく文章内でバランスをとりつつ、この3つが論理の軸で結ばれているかどうかをチェックします。


学生のみなさんは自身のエントリーシートを使って、何が事実にあたり、何が解釈にあたり、何が結論になるのか自身の文章を色分けしてみましょう。

そこに無駄なレトリックはないか、それぞれが論理的に結ばれているのかをチェックしてみましょう。

大抵の学生さんは、改善点が見つかるはずです。


論理のズレに関しては、わかりやすく言うと以下のような形です。


「野球で試合に負けた、悔しいので、私はサッカーの練習を頑張った。」


驚くかもしれないが、このレベルの文章を書く学生が普通にいます。


例えば
「プレゼン大会で勝ちたい。勝つためには、プレゼンのコンテンツの質を向上させる必要がある。そのためにチームで定期ミーティングを開いた。」などです。

この文章に違和感を覚えなければ黄色信号。


定期ミーティングの内容にもよりますが、コンテンツの質を向上させる取り組みは「文献、先行研究調査の質と量の向上」であったり「有識者へのヒアリング」であったり「第一次情報の調査」という情報収集から、主張を導き出し、その主張を支える論理を組み立てる作業のことでしょう。


定期ミーティング内でそういったことをやっている上で、文章を書いたのであればまだ救いがありますが、そうでなければ、ただそれっぽいことを書いているだけであり、それは面接官に見抜かれます。


当たり前の論理で文と文を結ぶことで、文章は一気に読みやすくなり説得力が増します。
詳しくは本書に記載されています。是非とも読んでみて欲しいです。


事例2:フレームワークにただ当て込むだけの学生


他にも学生さんのエントリーシートの事例でよくあるのが「学生時代がんばったことなどのフレームワークにそのまま文章を当て込むこと」です。


フレームワークという言葉はビジネスの世界でそこかしこに存在ます。例えばマーケティングの世界では「3C」「SWOT」「4P」などもこれにあたります。文章を構成するフレームワークでは「起承転結」「PREP」など、提案などでは「SPIN」なども有名です。
フレームワークは「これさえ押さえておけば大丈夫、といった枠組み」のようなイメージで、ビジネス上では利用されます。


例えば私は学生さんには「結論」「前提説明」「課題・目標発見」「戦略・工夫・努力」「成果・結果」「学び」という流れで学生時代頑張ったことを書くと良いと伝えています。


しかし、その枠組みの1つ1つの要素にただ、言葉を当て込むだけで文章を構成してしまう学生がいます。


しかも、なまじっかフレームワークに入れているので文章としてはそれっぽいのができあがるので、違和感に気づきにくいのです。



本来は、課題をクリアするために確からしい戦略があり、その戦略を実行するための確からしい努力があり、確からしい努力をしたからこそ、成果がでるのであり、それが再現性に繋がるものであり、その過程が面接官の知りたいことのはずです。

しかし、ただ当て込むだけではただの事実の羅列になるどころか、論理的生合成の取れない文章になってしまいます。


なぜこういったフレームワークに当てはめるだけの文章になってしまうのか。

それは「フレームワークを使いこなせていないから」です。


なぜこのような構造にこのフレームワークがなっているのか、という本質を理解しなければ使いこなすことは不可能です。


結果、ただ要素を当て込むだけで満足してしまい、つぎはぎだらけのパッチワークのような文章になってしまうのです。


その点、本書では様々なフレームワークを紹介しつつ、その理由を丁寧に筆者の言葉で述べられています。筆者の言葉でわかりやすく書かれているの点もよいなと感じました。


つまりこの書籍は、文章を書く際のフレームワークの本質について学ぶことができるものだと感じました。


最後に


学生のみなさんは「伝えるための文章」についてこれまで勉強する機会がなかったかもしれません。
就職活動中、その点に苦しむ学生さんが多いことも事実です。
そういった不安に対して、解決に導いてくれるのが本書なのではと思います。

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