第10回 コミュニティ改名イベント開催!参加者殺到、会場のキャパシティを超過!
2019年12月20日、SCSKさんの会議室にて、リファレンスモデル分科会主催の「ローコード開発コミュニティ 改名記念イベント」が開催されました!ついにこの日がきましたね!当日は会場のキャパシティを超えた来場者数となり、足りない席数は授業参観形式で後方に椅子が並べられる形になりました。(やむを得ず…)
今回のイベントは、本ブログでも度々ご紹介させていただいていた「花束問題」のお題を以て各ローコード開発ツールで作成した「花束出荷システム」の発表がメインアジェンダとなっております。
まずは分科会座長、第一実業の金子さんより、分科会発足のきっかけから現在までの活動報告を含めたご挨拶がなされました。金子さん自身もCOFFEE SHOPというローコード開発ツールの開発者でもあり、別の機会で花束問題について発表をしてもらえることでしょう。
続けて花束問題の制作者、渡辺さんご本人により、「花束出荷システム」の業務要件についてのご説明です。入荷の単位は「単品」と定義、出荷の単位は「商品」であること、また物品などの入出荷システムとは違い花には鮮度があるため、システムは引き当てされていない単品ロットについて入荷日に基づき廃棄予定日を表示することが求められます。そして廃棄予定日を受払予定にコピーする動作を、在庫の入出荷が発生するたびにシステムが裏側で自動で行うことで、在庫推移のデータをリアルタイムで入手することが可能になるのです。このように異なる「テーブルを抽象化して一つのテーブルを見なす」ロジックはとても重要だと、本システムならではの押さえておく点を解説していただきました。
そしていよいよ、「花束管理システム」の発表です。
花束出荷システム発表その① 「Wagby」ジャスミンソフト社 贄さん
最初の発表は、ジャスミンソフト社の贄さん。ユーモラスな語り口で、システム開発に明るくない人でも分かるよう、花束出荷システムの要件を説明してくださいました。Wagbyでは渡辺さんから提供されたテーブル定義をそのまま取り込むことができたため、データモデルを1時間で高速に作成できたとのこと。ロジックはJavascriptの文法で書いて、計2日間の作業日数。一番時間がかかった作業は、「業務の理解です」と笑顔の贄さん。渡辺さんがX-Teaで作成した、実際に動く花束出荷アプリを見ることができたので、それがとても参考になったとも仰っていました。
廃棄予定と在庫推移を見て、この日に在庫がなくなると店長が判断して発注するという、全自動ではない点についても語られ、「中小企業向けならば問題ないと思います」とコメントされました。
花束出荷システム発表その② 「OutSystems」BlueMeme社-山田さん・立石さん
次はBlueMeme社のエキスパートエンジニア山田さんと、花束出荷システムの開発メンバーの1人である新人エンジニア立石さんによる発表です。今回の開発は新人エンジニア3名体制、開発期間1週間で設計と実装を行いました。アプリのアピールポイントは、「OutSystems 11 Oct.2019」でリリースされた「Reactive Web」を活用し、高いユーザビリティを実現したデザインへの拘りです。同じページ上で画面のレイアウトが変化するシングルページアプリケーションで、サクサクと動く操作性の良い画面が印象的です。
Reactへの知見が深いエンジニアを採用しなくとも、今までの設計技法に当てはめるだけで最先端の技術を享受できるOutSystemsのメリットについても解説されました。
立石さんは今回の開発で良くできた点として、「デザイン機能への拘り」「ユーザーの操作を最小限にし、業務を回すことができる」ことを挙げました。また反省点としては「業務理解に時間かかった」と述べました。
花束出荷システム発表その③ 「Genexus」ウイング社-佐久間さん
次はウイング社の若手エンジニア、佐久間さんによる発表です。
佐久間さん、開発の腕はお墨付きですが、登壇は初めてとのことで、やや緊張気味とのこと。「落ちついて頑張れ~」と観客席から声援が。
Genexusでの開発は、まずナレッジベースを作成することから始まります。単品を管理したい場合は単品のトランザクションを作成、ビルドのステップではテーブルを作ると同時に画面も作り、また必要な処理も作成していきます。
今回の開発にあたって、「WorkWithPlus」をふんだんに活用した、と佐久間さん。WorkWithPlusはGenexusの新製品で、デフォルトで共通のテンプレートを提供してくれる画期的な製品です。各プロジェクトに合わせて、さらにカスタマイズすることも可能です。
質疑応答では、「データベースを作成したと言っていましたが、今回はデータモデルありきで作成するはず。具体的にはどういったものを作成されましたか?」と踏み込んだ質問も。
佐久間さんは、「渡辺さんから受け取ったテーブル定義は、Genexusにそのまま取り込むことができなかったため、データベースを書き写しました。」と解説されました。
花束出荷システム発表その④ 「Web Performer」キヤノンITソリューションズ社-杉本さん
次はキヤノンITソリューションズ社の杉本さんの発表です。
キヤノンITソリューションズ社の切口は他社とは少し異なり、まず「2025年の崖」問題の提起、そしてそれによりIT人材の不足に直面することを見据え、国籍を問わず誰もが簡単に直観的に取り扱える製品での開発を目標としている旨を述べられました。人材育成に積極的に取り込んでいるキヤノンITソリューションズ社は、今回のアプリ開発も来日して4ヶ月のベトナムの方、タビーアウンさんに依頼。1ヶ月でWeb Performerを勉強してもらい、すぐ実践へ!花束問題の仕様に関する説明は口頭でサポートしたとのことです。
杉本さんはタビーアウンさんが作成した発注伝票と注文伝票の帳票機能をデモで分かり易く解説してくださいました。帳票はJavaで開発し、それ以外はすべて標準機能で作成したとのこと。延べ17日、設計5日、開発9日、テスト3日という開発のメトリクスです。46画面を5日間で、そしてビジネスプロセスは3日間で作成しました。Web Performerでは、生成ボタンを押すと、Javaのアプリケーションが出来上がります。
また特に「チャットボット機能」が来場者の関心を引きました。「受注」というキーワードを入れると、「受注しますか」という返事と受注ページのリンクが送信されます。チャットボット機能を使用はとても簡単で、チャットボット機能を有効化する上で、事前にFAQをCSV形式で作成し、指定フォルダに保存することで良いとのことでした。
花束出荷システム発表その⑤ 「ユニゲージ開発手法」USP社-茎田さん
最後はUSP社の茎田さんによる発表です。UNIXでコマンドとシェルスクリプトの組み合わせによりシステム開発を行う「ユニケージ開発手法」は、他のツールと大きく違う点があります。「花束問題」の特徴は、テーブル設計が既にできており、既存の設計に準じて開発をすることにあり、他社はそれによって素早く開発を行うことができました。しかし「ユニケージ開発手法」は定義されているテーブルを使うのではなく、テキストファイルでデータを加工していく、RDBを使わない開発手法です。そのため、今回は提供されたテーブル設計の便宜を受けることができず、今回のアプリの実装は50%に留まりました。またユニゲージ開発手法のメリットとして、データをテキストファイルで持ち、100種類程度の単機能コマンドを、パイプ、リダイレクト等と組み合わせて様々なデータ処理を行うことが特徴であり、リレーショナルデータベースを扱わないため、データへのアクセス数が数億であっても十分に処理ができることが挙げられました。
イベントの締めには、産総研の船生様より、発表者への激励の言葉が送られました。
「今日はすごく勉強になりました。花束問題をローコードツールで実証したデータを、直接見ることができる貴重な機会に居合わせることが出来て嬉しいです。ビッグベンダーはこういうデータを出してくれませんから。また次世代を担う若者たちが、こういった発表をしてくれることは本当に素晴らしいことです。未来の大きな力になると思います。」
イベント後はリファレンスモデル分科会の忘年会兼懇親会です。イベント会場付近の居酒屋で開催され、参加メンバーは30人越えの大所帯!普段あまり顔を出さない正会員も多く出席され、名刺交換と情報交換で盛り上がりました。
良いお年を!の声が飛び交う中、懇親会は盛況のうちに幕を閉じました。
本イベントにご参加・ご来場いただきました皆様、ありがとうございました。本年はついにリファレンスモデルの配布が開始されます。分科会の目的を果たすため、益々活発に邁進して参りますので、2020年も何卒宜しくお願い申し上げます。
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