絶対に未成年ってハナシ

少し長い話をします。
今日0時まで1人でトリスを浴びててふと「今日は外でてないぞ!」と思い立ったので荒川河川敷まで友達と2人でギターを弾きに行った。
いつものようにブラブラと今日のセッティングを探してたら首都高の常夜灯の陰に何やら男子3人が談笑中。近づくとギターを二つも持ってる!これは話しかけに行くしかないとニヤついた顔でさらに近づいていくと、不審者を見るような目で一瞥して目を逸らされたので「こんばんは。ギターやってんですか?」と真顔で接近。「そうですね。」と言われたので「自分もギターやりに来たのでお邪魔していいですか。」と聞いたらさっきの警戒はなんだったんだってくらいすんなり仲間に入れてもらえた。

見た感じの彼らは高校生なりたてか2年生くらい。最近ギターを始めたばかりらしい。「バンドとか組んでるんですか?」と聞いたら「これから始めようとしてるんで」とアイコスを蒸していた。「いいっすね〜〜」と流しながら俺もキャメルに火をつけようとするといきなり、「いくつくらいですか?」と聞かれたので正直に「19です!(嘘)大学生です!」と2人で元気に返事をした。「あぁ〜じゃあ年下だ」と舐めたことをいってきた。なんかムカつく。詮索されたらし返すものだとばぁちゃんに教育されていたので、いくつですかと聞き返すと「逆にいくつくらいに見えますか」と反撃を喰らったのでまだまともに信じていた俺は「23 4くらいすかね〜」と言っておいた。「おぉ〜近い近い(笑)」と言われた。ムカつく。なんだこいつら。
まぁいいやとギターを取り出してチューニングができないとか言ってるのでチューニングしてあげてやっと仲間に入れてもらえた。

話を聞いているとどうもきな臭い。音を出していると「その使ってるアンプいくらくらいなんですか?」と聞いてきた。あの学祭で使ったちっこいアンプのことだ。「クレカで3万くらいですね〜」と言ったらメチャクチャにびっくりしてた。「3万?!?!たかぁ?!そんなん手出せないよ」とか言ってた。社会人でも3万って手出しにくいのかなぁ、なんかイキったみたいになっちゃったなぁ。コミュニケーションとは難しい。少し社会人の彼を疑いながらも、自分のコミュニケーションを反省した。

しかし話を聞いていると、2人は社会人で1人はニート。千葉の佐倉に住んでいるらしい。
(え????千葉の佐倉からこの時間にこんな何もない新川河川敷まで来るか?普通。車で来ても2時間かかるぞ???)

だいぶ疑わしくなってきた。すると友達が「(…こいつら四つ木小で見たことあるぞ…)」と耳打ちをしてきた。はぁ?よく顔を見てみると俺がばぁちゃんちに住んでた時の登校班で見たことある顔だった。確か4つくらい下だった。こんちくしょう。だいぶ腹が立ってきた。これでは今夜よく眠れない。眼光鋭く奴らを睨みつけた俺は一芝居打って奴らの正体を暴こうとした。
それと同時に、ただそれを解って少し距離を縮めたかったのだ。高校生なのにタバコを吸ってるのを見られたらそりゃ誰だって嘘をつきたくなる。もう嘘ついてしまって後戻りできない彼らを認めてやりたかったのだ。
もちろん友達にも「(…こいつらの嘘暴こうぜ…!)」と耳打ちをした。

しかしその友達は激シャバ君で、こんな小癪な小僧に臆して声も一言二言しかかけていなかったし、大分居心地が悪かったのか、寒ぃだの帰りてぇだの言い出しやがった。それでも根負けするには後味が悪すぎるのでなんとかその場に居座り、正体を暴こうとした。友達はかなりでかい声で帰りたいだの喚くのでその時点で俺も居心地は悪かった。

クソったれ、ここまでか。居心地は最低に達した。
ボリュームをだんだんと小さくして、しれっと解散しようと動くと、社会人(笑)二人組とその友達で何やら盛り上がっていた。ニートくんは一生懸命さっき教えたマリーゴールドのCを落ちこぼれダブステップで鳴らしていた。何に盛り上がっているのかと耳を傾けてみると社会人の業界話をしていたみたいだ。
友達は音楽の専門を卒業して四月からアイドルのプロデュースをする。これはマジだ。そのアイドルの出張先の話や自分がどれだけ稼ぐだとかを自慢してた。それを社会人(笑)二人組は興味津々で第二次性徴の100点オーバーリアクションで聞いてた。鬱陶しい。
すると友達が聞いた。
「ハハハ…で、貴方たちはどんなお仕事してらっしゃる感じなんですか?」
おや?
お前さっきまで寒ぃだの帰りたいだの言ってたくせにいい接近の仕方するじゃねぇか。やるじゃん!自分から正体を曝け出していくことで相手の話を引き出しやすくするんだな。上手い話法だ。これでカマかけてボロが出たところを引っ張ってやればいい。すると、
「そうですね…会社勤めです」「僕もです(笑)」と答えた。まぁまぁそんな簡単には行かないと。だが、話は引き出しやすくなった。お手柄だ。こいつにばかり話を引き出してもらうのは申し訳ない。2人でこいつらの正体を暴くんだ。こいつらは絶対に高2だ!俺は話を引き出そうと何か口に出そうとした。
その瞬間だ。

「公務員…」
公務員?!??!、!?!深夜2時外出新卒公務員?!?!!?!!?!
変な空気になったのを感じた。絶対に友達は分かってた。絶対にこれはボロだ!俺たちはついにこの情けない高校生を大学生という立場から上から目線で社会を教えてやることができるんだ!やったぜ!友達!俺もツッコんでやる!さぁお前もツッコめ!言え!言え!
友達は口を開いた。

「へぇ〜(笑)もういいや、帰ろうぜ。」はぁ〜?????????????る????????
あぁ〜これはファックだ。クソヘタレだ。もう詮索する気もなくなった。死ね死ね〜。

「そんじゃどうもお邪魔しました。また"いつかここで"会いましょうね⭐︎」
俺らは帰った。クソだりぃ。
俺らはほぼ無言だった。帰りにセブンでビールを買った。少し苦みが口に残った。
「なぁ、」
俺は口を開いた。

「な。(笑)」
激シャバ君は少し笑った。

俺も少し笑ってしまった。(終)

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