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校歌のキー

 先日、「元はニ長調の校歌が20年前(?)からハ長調に下げられて歌われているのがわかった」というニュースがあった。

 昨年赴任して来た校長先生(教科は音楽、地元吹奏楽団の指導者)が校歌を聞き、「音域が低い。若々しい中学生の声域なら、もう少し高くていい」と疑問を持った。その後、校長室の書架から出て来た資料で、「元はニ長調の曲をハ長調に全音一つ下げて歌うようになった」「変える前は3割の生徒が歌いにくいと感じていた」ことが分かった。


 曲の「調」により、人が受けるイメージは変化する。一例としてハ長調では「単純、素朴、安定」、色のイメージでは「白黒」だが、元のニ長調では「喜びの頂点、祝祭的、ファンファーレ」、色のイメージでは「黄色」とされる。ハ長調に変えた際には「落ち着いた」「安定した」感じに変わったはずだ。

 一方で最高音が全音一つ違うので、周波数では約12パーセント変わることになる。ニ長調の曲をハ長調で歌うようになると、かなり楽に歌えるようになったはずだ。



 なぜ、校歌は歌いづらかったのか?。もしくは歌いづらくなったのか?。


仮説① 生徒の地声が低くなった。

 1960年頃、校歌が作られた時の14歳男子の平均身長は155センチ、これが2000年には6.8パーセント増の165.5センチに伸びた。女子は151センチから3.8パーセント増の156.8センチに伸びた。体格が大きくなっている→声帯も大きくなっている→声が低くなっている、と言える。男子については半音一つ分、声が低くなっていると推測されるので、このため歌いづらくなったのかもしれない。


仮説② 中学生男子は元々あまり歌わない。

仮説③ 中学生男子には歌いづらい音域だった。

 校歌の映像をみると、音域はレ(D4、mid2-D)から上のレ(D5、hi-D)までのようだ。女声のソプラノであれば丁度良いが、男声テノールなら1オクターブ下(D3〜D4)で丁度、男声バスなら1オクターブ下でもきついなあ(裏声では行けても地声では、ね)。その前に中学生男子が校歌を真面目に歌うか?と聞かれると、恥ずかしがって歌わないでしょうねえ(特に裏声)。


 ちなみに「ドレミの歌」がド(C4)から上のレ(D5)なので、これが歌えないと新旧どちらの校歌も歌えない。

 また、成人男性には「音域的に歌いづらい」ことで有名な「君が代」の主旋律はレ(D4)から上のレ(D5)で、旧校歌と同じ。



 ただし、ニ長調版を全く歌えないか、と言われると、必ずしもそうではない。結局はトレーニング(というか場数)なんだよね。合唱部なら歌える、というかどうにかして歌う。


 平成期、日本のポップスはキーがどんどん高くなった。吉田美和とか華原朋美から始まって、MISIAなんて2オクターブ上のソ(G5、hihi-G/忘れない日々)だっけ?。男性でも稲葉浩志が地声で上のレ#(D#5、hi-D#)だものなあ(ウルトラソウルは上のド#、C#5)。

 これらをカラオケで歌っている人は元キーで、また1オクターブ下で、問題なく歌える可能性がある。


(※オリジナルは、2024年4月8日 23時22分、「小説家になろう」に投稿された)

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