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【聖杯戦争候補作】Der Mensch ist Boese

「はぁ、はぁ、はぁ……!」

 宵闇の中を、彼は必死で走る。なにか、恐ろしいものが追ってくる。

 ぞるぞる ぞる ぞるぞるぞる・・・・ 闇が、地面を這ってくる。

「たす け……! ?」

『お父さん、おかえりなさい!』

 彼は……その場に居るはずのない存在を見た。死んだはずの我が子を。聖杯を手に入れれば、奇跡の願望器によって、生き返らせることが。では。

「ち……チクショウ! お前! お前、幻なのかッ!」

 彼は涙を流し、我が子の幻を抱きしめた。自分のサーヴァントとは引き離され、呼んでも来ない。倒されてしまったのか。周囲に人の気配もない。これは罠だ。罠だとわかっているが、それでも。

「ウッ、ソッ、でぇ~~す」

 我が子は不気味な塊に変わり、目の前に巨大な顔が現れた。道路からせり上がってくるのは、右半分を奇怪な紋様に埋め尽くされた醜悪な顔。額には五芒星。それは巨大な鎌を振り上げ、振り下ろした。死神のように。

「全部嘘♪ 全くの嘘♪ アホは死ななきゃ治らねえ♪」

 男は……聖杯戦争に呼ばれたマスターのひとりは、為すすべもなく昏倒した。殺してはいない。『吸わせる』必要がある。大きな顔は消え、同じ顔の大柄な女がそこに立っていた。肩には死神めいた大鎌。

「一丁上がり。ちゃっちゃとやりな、『セイバー』」

 無言で闇から進み出たのは、チャイナ風の衣服に身を包んだ黒髪の少女。無表情で、右手に大きな剣のようなものを手にしている。それで男にトン、と触れると、彼はびくんと痙攣し、動かなくなった。死んだのだろう。

「これで、こいつのサーヴァントも消えちまうねえ。弱っちいアンタの餌にしても良かったのにねえ」

 女は顔を歪めて嘲笑う。セイバーは最も優れたサーヴァント、とは知識を与えられたが、自分のは少し違うらしい。少なくとも、強くなるのに手間がかかる。まあ今は予選だ、せいぜい魂を喰って強くなるがいい。

「そいじゃ、行こうかあ」

 ぱちん、と指を鳴らすと、草むらや木陰で複数の人影が動いた。腐ったような肌、白い目、牙が並んだ口。生ける死者(リビングデッド)だ。セイバーのマスターである彼女が、このあたりの住民の血を吸い食屍鬼(グール)にした。東京都の人口は1400万近いという。ほっておけばどんどん増えてくれる。ラクなものだ。異変に感づいたマスターやサーヴァントを誘き寄せることもできる。そして、幻術で始末する。彼女はタバコに火をつけた。

「聖杯! 聖杯と来たか! このゾーリン様が頂いてやろうねェ!」

【クラス】
セイバー

【真名】
マキーナ@魔剣X(エックス)、魔剣爻(シャオ)

【パラメーター】
筋力- 耐久B 敏捷- 魔力A 幸運C 宝具EX

【属性】
中立・中庸

【クラス別スキル】
対魔力:B
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:EX
 「乗り物」という概念に対して発揮されるスキル。セイバー自身は動けないが、接触した存在のイマージュ(霊魂・自我)を吸収し、肉体を乗っ取って動かすことが可能(ブレインジャック)。吸収したイマージュはやがて消滅し、肉体は抜け殻となる。イマージュを帰すことも可能。

【保有スキル】
神殺し:A
 盤古の化身「天尊流星」を倒した神殺しの魔剣。神霊特攻。神霊、亡霊、神性スキルを有するサーヴァントへの攻撃にプラス補正。

自己改造:EX
 自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる適性。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。他者の肉体を乗っ取って操る在り方そのもの。戦いの業前や技巧も記憶ごと吸収する。

【宝具】
『天尊流星盤古剣(デウス・エクス・マキーナ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
 かつて世界を救った剣であるセイバーそのもの。イマージュ(霊魂・自我)を有する存在に接触して、そのイマージュを吸収する。物理的破壊力はないが、イマージュを奪われた者は死体も同然となる。またイマージュを奪った肉体を乗っ取って操作し、その記憶を我がものとすることができ、支配した肉体の得意な武器に変化する。その性質上サーヴァントにも効果はあるものの、乗っ取ることは現状不可能。接触すれば魔力や記憶を吸い取り、スキルや宝具を使用不能にする程度は可能かも知れない。イマージュを吸いすぎたり聖杯を吸ったりすると、天尊流星が覚醒する可能性もある。

【Weapon】
 自身が武器。使い手となる肉体を乗っ取って振るわせ、支配した体の得意武器に変化する。マスターやサーヴァントを乗っ取るのは現状では不可能だが、イマージュをたくさん吸えばマスターならば可能になるだろう。現在は相模桂(さがみ・けい)の肉体を模した霊体を仮に持ち手としている。

【器物背景】
 ゲーム『魔剣X』『魔剣爻』の主人公。正式名称は「Deus Ex machina」。イマージュ(霊魂・自我)を切り離して修正する事が出来る、画期的な医療器具として開発された人工生命。人工脳を搭載し、自ら思考・判断する事ができる。実は創造主・盤古の脳髄にして人心を支配する魔剣「天尊流星」のコピーであり、イマージュ世界に本体を持つ天尊流星を倒すために作成された。目的を果たすためならば善にも悪にもなる可能性を秘めている。

【サーヴァントとしての願い】
 天尊流星打倒後のため、特になし。マスターに従う。

【方針】
 マスターに従う。

【把握手段】
 原作ゲーム。PS2の『魔剣爻』の方が手に入りやすいか。林田球によるコミカライズは傑作なので読むべし。

【マスター】
ゾーリン・ブリッツ@HELLSING

【Weapon】
 死神めいた大鎌。吸血鬼の膂力で振るわれ、人体を容易く両断する。

【能力・技能】
 強力な幻術。右半身に刻まれた魔術的な刺青が蠢くようにして発動し、自身が巨大化しているように見せたり、相手に「怪我をしている」と完全に錯覚させたりする。幻覚の射程範囲は非常に広く(邸宅程度は十分)、同時に大量の人間を術中に嵌めることが可能。さらに相手の記憶を汲み取った幻覚を見せることも出来る。ただし「視覚」に頼らない者には効果がない。

 また人造吸血鬼として高い戦闘能力を有し、反射神経、集中力、第六感、耐久力、回復力、膂力なども人間を遥かに凌駕する(おそらく魔力も)。不老不死で通常の弾丸は効かず、日光は嫌いだが浴びても灰にはならず、流水を渡ることも可能。銀の弾丸や聖別・祝福された武器には弱い。

 さらに、血液を吸った人間(処女・童貞含む)をゾンビめいた食屍鬼(グール)として蘇生させることも可能。グールは人の肉を好んで食らい、動きが鈍く知能は低く(銃器程度は操作可能)、親たる吸血鬼の意志のままに動く。グールに襲われて噛みつかれた者もまたグールとなり、ねずみ算式に増えて大きな被害を与える。親たる吸血鬼が死んでもグールは残る。

【人物背景】
 漫画『HELLSING』の登場人物。CV:沢海陽子。南米に逃れたナチスの残党組織「ミレニアム(千年王国)/ラスト・バタリオン(最後の大隊)」に所属し、異能を持つ幹部集団「ヴェアヴォルフ(人狼部隊)」のひとり。階級は中尉。金髪の短髪で大柄、筋骨隆々たる女吸血鬼。歯は尖り、胸は豊満。タンクトップにパンツルック。額に五芒星、右半身に奇怪な紋様を刻み、右目は斜視気味。喫煙者。死神めいた大鎌を振るい、強力な幻術を行使する。残忍で好戦的かつサディスティックな性格をしており、敵を虫呼ばわりし、わざと苦痛や絶望を与えてから殺す。

【ロール】
 なし。地位のあるNPCを幻術で籠絡して手下にしたり、幻術で姿を変えることも出来るかも知れない。

【マスターとしての願い】
 一心不乱の大戦争。皆殺し合って真っ平らになればいい。

【方針】
 聖杯狙い。邪魔する者は鏖(みなごろし)。幻術や吸血で手駒を増やし、マスターを探し出して物理的・社会的に追い詰め、始末する。セイバーにマスターやサーヴァントを斬らせて魔力や記憶を吸収させ、強化する。

【把握手段】
 原作漫画。OVAにも登場する。

【参戦時期】
 死亡後。

 セイバーが少ないし悪いやつが少ないので、なんかないかと考えたらこいつがいた。剣士というより剣そのものだが、ルートによっては世界人類を救うのだから英霊化しても文句なかろう。しかし基本的に武器であって自我は薄く、今回はマスターの命令通りに動く。把握はしにくいと思うが、上の記事とかを参考にしてくれ。リマスター版が出たりしないだろうか。

 で、悪くて厄介なマスターを探したらこいつがいた。前にヤン・バレンタインをどこぞのパロロワに召喚したので縁召喚だ。イマージュを吸ってオーダーメイドな幻覚を見せられるし、グールを増やして屍海戦術できるし、野放しにしておくとヤバい。まあ強いサーヴァントにあたったら危険だが、なんとかなるだろう。

 さて、これで七騎が揃った。後はシールダーとかアヴェンジャーとかのエクストラクラスだな。思いついたら投下してみる。

【続く】

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