見出し画像

忍殺TRPGリプレイ【コーリング・フォー・ユア・デビルサイド】03

 前回のあらすじ:ザイバツのネオサイタマ駐留部隊主力を追い払ったソウカイヤだが、オナタカミを筆頭に反ソウカイヤ勢力はまだ多い。ソウカイヤはこれに対処するため、ネオサイタマにおける様々な情報工作活動を強化することにした。これも立派なイクサなのだ。カラダニキヲツケテネ!

「よろしい。では、ついでにを広めて頂きたい。『オナタカミはネオサイタマ市政と手を組み、伝統的な裏社会を抑圧する血も涙もない悪党だ。だがソウカイヤは違う。ヤクザを救うのはソウカイヤだ』と……!」ブルータルはカワセマの手を握り、そう告げた。「ハイヨロコンデー!」契約成立!

「……というわけね」マキーナは中間報告をデンパルスおよびネザークイーンに行う。「心底感謝マジアザッス」「やるわねェ」二人はマキーナの的確な情報収集能力を賛嘆した。失敗を即座にカバーし、さらなる情報を引き出す手段を調達してくるとは、ソウカイヤ外交部門の面目躍如である。

「ニチョームはネザークイーン=サンに任せるけど、ネオカブキチョの方の被害者救済はソウカイヤでやるね。慈善事業も支持を集めるには必要よ」「了解りょッス。問題のニンジャは、オレらが踏み込んで捕縛つかまえりゃ解決ッスね」デンパルスは拳を鳴らす。さらに裏を洗わねば。

 かくてブルータルとマキーナは工作活動を成功させ、ソウカイヤの評判を裏社会で高めることになった。その頃、フォーコは……?


活動継続

カネモチ・ディストリクト

 ネオサイタマ有数の富裕層居住区、カネモチ・ディストリクト。高台に立地し、隣接ディストリクトとの境界である坂の下には、高さ3メートルの電磁金網が張り巡らされている。さらに広大な強化樹脂製の分厚い透明ルーフが地上百メートルの高さに築かれ、ビル群や鉄塔によって支えられている。

 これらにより、内部の住民は高級パックド・スシめいて侵入者による危害と重金属酸性雨、汚染大気などから守られている。警備体制も厳重だ。裏を返せば、この地区内で大きな事件が起きた場合、マッポにはケジメも含む大きなマイナス点評価が下される。ゆえに、実際は犯罪行為の隠匿も多い。

「久しぶりね、ここ来るの」フォーコは偽造IDカードで難なくセキュリティゲートを潜り抜け、感傷的な表情を浮かべた。彼女、モータル名「アン・チーウェイ」はチャイナ系カチグミの家に生まれ、カネモチ・ディストリクトの邸宅で何不自由なく育てられ、繁華街「カネモチ8」で遊び明かした。

 悪友たちと夜な夜なつるみ、酒やドラッグに溺れた彼女は、スリルを求めて盗みに手を染めた。手先が器用な彼女は錠前破りの才能があり、危険な香りのカネモチ・ワナビーたちとハック&スラッシュを行ったのだ。だがある時毒ガストラップに引っかかり、仲間たちは全滅。彼女だけが蘇った。

 死んだ身となってカネモチ・ディストリクトを飛び出した彼女は、ニンジャの力でヨタモノたちをまとめ上げ、無軌道な愚連隊の長となった。やがてソウカイ・シンジケートに屈服し……ここにいる。彼女は過去の感傷を振り捨て、享楽に目を細める。また盗みができる。あのスリルが味わえる。

行動開始

ミッション28:非協力的カチグミやヤクザクランへの工作。正確には「ソウカイヤに友好的でないエスタブリッシュメント層に提供される移植用臓器やサイバネなどの物資の強奪、およびヤクザクランのオヤブンや幹部への適正価格による横流し」。要はカチグミ層からの物資強奪だ。
フォーコ/MFはワザマエ9、サイバネアイで+1、「知識:カチグミエリア」で+1、「生い立ち:錠前破り」で+1され判定ダイス12。
[145255414642]成功。出目6により貢献度+2。

 ……フォーコはニンジャ野伏力を発揮し、タワーマンション高層階の一室に忍び込んだ。情報によれば、ここにはソウカイヤに比較的友好的でないカチグミ層へ提供される移植用臓器やサイバネ、薬物、高級嗜好品などが密かに持ち込まれているという。それを強奪すれば、ソウカイヤの得になる。

「フンフンフン……フンフンフン……」彼女は小さく鼻歌を歌いながら、慣れた手付きでドアや金庫の錠前を開け、セキュリティを解除していく。ニンジャになった彼女の技術は、まさに超人的。見張りのクローンヤクザはすでに全員始末されている。「なるべく全部持ち帰りたいけど、難しそうかなあ」

 隠密の任務ゆえ、手下のクローンヤクザは持ち込めない。ソウカイヤのしわざという証拠を残してもならない。あくまで野生のハクスラチームか、野良ニンジャがこれをしたということにせねばならない。フォーコはニンジャアトモスフィアやにおいなどの痕跡をなるべく消去し、素早く行動する。

 彼女は単価の高い薬物、持ち運べるサイズのサイバネや臓器を盗み取り、何食わぬ顔で部屋を退出した。あとは、これをソウカイヤ系のヤクザクランに横流しし、売りさばいて貰えばいい。「ちょろいもんだわ」フォーコは口笛を吹きながら手配された車に乗り込み、セキュリティゲートから去った。

???

「……確かに」ネオサイタマ某所、デスモグラ・ヤクザクラン事務所。オヤブンはフォーコが持ち込んだ品々を受け取り、深々とオジギした。「売却利益の分配は、ソウカイヤとの協定通りね。……ところで、他に何かお困りごとはないかしら?」フォーコは客人用の高級スシを食べつつ尋ねる。

「困りごと、ですか」「そ。ウチらソウカイヤは、ヤクザ同士の揉め事とか解決するのもビズのうちだから」フォーコはチャをすすり、ソファに脚を組んで座りながらネイルを弄りだした。彼女はソウカイニンジャであり、オヤブンよりも目上の存在なのだ。「……ございます。モデルの件でして……」

「何?ここのモデルになれって?」「いえ。ウチではカタギの看板として、オイラン・アイドルや若手グラビア・モデルのスカウトや育成もやってるんですが、最近そいつらの失踪事件が増えてンですよ。他の事務所でも被害が増えてるらしくて」「ふーん。調べてみるわ」「アリガトゴザイマス!」

ミッション26:若手モデル失踪事件に関する調査と情報拡散。
ワザマエ9、サイバネアイで+1され判定ダイス10。[2352626534]成功、出目66で貢献度+3。現有貢献度5。

 様々なツテを辿って情報を集めたところ、芸能界で頻発する若手モデルの失踪事件の影に、ネオサイタマTV(NSTV)の動きが見えてきた。広告、映画、ゲーム、アニメ、エンタテイメント全般までを包括する総合的な暗黒メガコーポだ。当然、芸能界を含むマスメディアをほぼ牛耳っている。

 その上層部に、若手モデルの何人かが枕営業めいて差し出され、奴隷オイランとなっているのだろうか?だとすれば事務所側の売り込み活動の一環であり、スキャンダルだが怪しくはない。しかし、当の事務所側が知らないとは奇妙だ。フォーコは各方面と相談し、この件をさらに調べていった……。

 失踪したモデルたちの所属事務所は、皆ソウカイヤ系列だ。そこから人気モデルを失わせれば、間接的にソウカイヤへのカネを奪うことになる。となると、NSTVの上層部はソウカイヤからオナタカミへ寝返ったのか?「なんか、嫌な予感がする……」フォーコは眉根を寄せ、親指の爪をかじった。

 マスメディアがオナタカミ側につけば、ソウカイヤ・オムラ連合にとっては不利だ。その件については上に対策をとってもらうとしても、まずはNSTVに潜入捜査を行い、スキャンダルを暴いて脅さねばならない。

???

ミッション12:マスメディア関係者へのケツモチとしての関係構築。
ニューロン判定、難易度HARD。MFはニューロン値6、生体LAN端子で+2、「知識:カチグミエリア」で+1、「交渉:威圧」で+1、伝統的礼装で+1され判定ダイス11。[13551552214]通常成功。貢献度+1、現有貢献度6。

 フォーコはアイドル候補生を装ってNSTV社に潜入し、生体LAN端子を介してUNIXに接続し、セキュリティを破って機密スキャンダル情報を入手した。失踪した若手モデルたちは各地から拉致され、NSTV上層部や上位株主へ分配されている。特にNSTV筆頭株主「カラカミ・ノシト」への配分が大きい。

 所詮は暗黒メガコーポ、叩けば埃はいくらでも出る。だがマスメディアは情報を握る権力者であり、多少のスキャンダルは握り潰してしまう。しかもカラカミ・ノシトといえばカラカミ・ファンドCEOの大富豪で、ソウカイヤとの関係も浅くない。彼がオナタカミ側についたとなると由々しき事態だ。

 再び寝返らせるとなると、相応の利益提供と脅しがいる。暗殺するにも有名人過ぎて面倒だし、手練れのニンジャの護衛や私兵部隊がいるだろう。あるいは、彼自身がニンジャかも知れない。フォーコは状況判断し、NSTV社をしめやかに離脱して情報を持ち帰った。彼女はあくまで外交部門なのだ。

???

『了解しました。各方面へネマワシを行い、スキャンダル情報を拡散しましょう』電脳部門筆頭ダイダロスはフォーコから機密情報を受け取り、IRC-SNSへ拡散し始めた。フォーコも夜の街に繰り出して噂話を広め、誘拐に注意するよう呼びかける。実行部隊はヤクザ組織かクローンヤクザだろう。

ミッション30:敵対衛星組織の洗い出しと妨害・挑発。ワザマエ判定、難易度HARD。ワザマエ9、サイバネアイで+1。[6144566521]成功。出目66で貢献度+3、最終貢献度9。

 さらに自らを囮として実行部隊に接触し、彼らのアジトへわざと連れ込まれる。フォーコはニンジャのカラテで彼らをぶちのめし、ハッキングやインタビューを行って芋づる式に情報を引き出していく。幸いアジトにニンジャはおらず、何人かの若手モデルを救出できたが、薬物を射たれていた。

「ムカつく連中ね」フォーコは舌打ちする。オナタカミやNSTV、官公庁や湾岸警備隊、ハイデッカー、暗黒メガコーポ、アナキスト、ヤクザクラン。「敵」の手はネオサイタマの表にも裏にも広がり、じわじわとソウカイヤを包囲している。ザイバツの駐留部隊もそれらを構成する要素の一部だ。

 果たして「敵」の頭目は誰なのか?オナタカミのサイデン・マルティネスか?それともネオサイタマ知事代行シバタ・ソウジロウか?情報によれば彼らもニンジャのようだし、末端の自分たちが立ち向かって勝てるとも思えない。ネオサイタマそのものを敵に回せば、ソウカイヤもオムラも滅ぶ。

 ともあれ、フォーコはデスモグラ・ヤクザクラン事務所に若手モデルを連れ帰った。これで恩義が売れるだろう。「ドーモ、アリガトゴザイマシタ」オヤブンは深々と頭を下げる。「ソウカイヤにかかればこんなもんよ。また困ったことがあれば解決してあげる」フォーコは強気な態度を崩さない。

 裏社会でも表社会でも、マッポーの世では『ナメられたらオシマイ』だ。きっちりケジメとオトシマエをつけ、恐怖とソンケイを誇示せねば食い物にされ、社会的にのっぴきならない状態に陥る。「……ン」フォーコの携帯IRCに、マキーナからの秘密メッセージが届いている。『ネオカブキチョへ』。

???

 ウシミツ・アワーのネオカブキチョに急いで戻ると、ブルータルやデンパルスらもいる。「ドーモ」「ドーモ。これから何やんの」「捕り物ね。ここのヤクザクランがNSPDと癒着して違法薬物取引してるね」「しかも、オナタカミのニンジャも同席しているとのこと。イチモ・ダジーンの好機です」

「了解」フォーコは笑って頷く。結局のところ、外交には武力が不可欠だ。防衛や勢力均衡ばかりでなく、容赦なくブチのめして屈服させ、こちらの要求を押し通してこそ最大の利益が望める。つまり、カラテだ!

【続く】

つのにサポートすると、あなたには非常な幸福が舞い込みます。数種類のリアクションコメントも表示されます。