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忍殺TRPGリプレイ【ザ・ピュア・ヤクザズ・キラー・キッス】06

 前回のあらすじ:ネオサイタマの政治的中立地帯ニチョーム・ストリートには、ハイデッカーに追われて日増しに難民が流入し、揉め事が増え続けている。非ニンジャの自警団では手に負えない事態が起きればニンジャ自警団が出動するが、限界は迫りつつあった。そしてついに、大規模な襲撃が!

「イイイヤァアアアーーーッ!」ブライカンは死にものぐるいのカラテを全身にみなぎらせ、ぼろぼろになったカタナでバイセクターのカラテを弾き逸らし、関節を狙う!SLAAASH!『ピガ……ガガガーッ!』ナムアミダブツ!バイセクターの両肘と腰関節が切断され、上半身が路上に崩れ落ちた!

『アバッ……ピガッ……!』バイセクターの残骸は火花を散らし、もがいている。だが腕も脚もなければ、もはやギロチンチャブを投げることはおろか、カラテすることも逃げることもできまい。「フーッ……ハイクを詠みなせェバイセクター=サン。カイシャクしやすぜ」ブライカンは息を調える。

 虫の息のバイセクターは、電子音声でうわごとを吐き続ける。『……スクエイク、アースクエイク、それでいい、俺たちの勝利だ……ミサイルが……全てを……アースクエイク、アース……』「「え」」それは電子的デジャブのもたらしたうわ言か?否!見よ!ニチョーム上空に飛来する戦闘機の影を!


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 一方その頃、アマクダリ・セクト地下秘密基地では!

 無人偵察ヘリのカメラ映像、残りヤクザ数、株価推移、情報統制状況、マッポの動き、交通封鎖状況……大型戦略UNIXには、刻一刻と変化する各種データが目まぐるしく映し出される。ニチョームに対する偽装電撃作戦は、アマクダリからソウカイ・シンジケートに対する大規模な社会戦の一環だ。

「アーララ、ディスエイブラー=サンもバイセクター=サンもやられちゃったのね」戦略チャブ前の椅子に座る恰幅の良い男に、女がしなだれかかる。彼女の髪は緑色、纏うのは白衣。その指は男のこめかみに突き刺され、グリグリと動かされている。彼女の名は……脳外科医ニューロサージ

 1年以上ぶりの再登場です。前にケオサキで事件を起こしてソウカイヤに捕縛されましたが、捕虜交換でオナタカミ/アマクダリ陣営に戻り、メイライ社に潜入してデータを盗み取った後、アシッドウルフのソード山脈地下のアジトを襲撃して潰滅させています。

「スペクター=サンはまだ活動中だけど、やる?」「……やる……」こめかみに指を突き刺された恰幅の良い男は、うつろな表情でつぶやいた。栗毛色の髪は薄く、黒い瞳は見開かれ、傷だらけの醜い顔には覇気がない。身につけたヤクザスーツや多数の高級装飾品から、ヤクザであることは疑いない。

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 おお、見よ!彼の胸元のネクタイには、クロスカタナのエンブレムが刺繍されているではないか!「そうね。ラオモト=サンやチバ=サンなら、きっとそうするわ。ウフフ」「……親父はともかく、女々しい混血の半端者に、ヤクザの矜持などわかるものか……ラオモト家の当主は、俺だ……!」

 ナムサン!彼こそはラオモト・カンの多数の庶子の一人、ラオモト・ヨルジである!チバの異母兄である彼は、複数のヤクザクランの管理を任され、複数のニンジャを手駒として持つ。だが跡継ぎ候補としてはチバに大きく水を開けられ、劣等感に苛まれていた。そこへアマクダリがつけこんだのだ。

 そういうことのようです。アイアンフィストとデッドラインはあのあと生還できたのでしょうか。つの次元ではラオモト・カンは総理大臣に就任するにあたりソウカイ・シンジケートとネコソギ・ファンドをゲイトキーパーにマルナゲしており、大御所として実権は握っていますが、カスミガセキの政治儀礼により自由に身動きが取れません。仮本部はオムラと癒着しており、チバはケオサキでオナタカミとの交渉に当たっていますし、トコロザワやネオカブキチョのヤクザクランはヨルジに任されていたのでしょう。

 ニチョームを襲撃しているのは、ソウカイヤ・ヨルジ派のニンジャやクローンヤクザたちだ。彼を操るアマクダリは注意深く準備を行い、この時を待っていた。ラオモト・カンやゲイトキーパー、フューネラルらはカスミガセキ・ジグラットでの交渉の席に引き出し、外界の情報を遮断させている。

 チバはケオサキを巡ってオナタカミと交渉中だ。ニチョーム周辺のソウカイニンジャには、オキナワ旅行やオンセン旅行、遠隔地への出張に行かせ、あるいは野良ニンジャや暴徒をぶつけて対処させている。しかしニチョームの防御は思ったより堅牢だった。そこで「プランB」の出番というわけ。

「プランBよ、デストロイヤー=サン。豚野郎の許可が出たわ。やっちゃって!」『コーッ、シュコー……ラジャー』大型UNIXモニタのひとつには、6本のLAN直結ケーブルを頭から生やし、操縦桿を握るニンジャが映っている。彼は湾岸警備隊に所属しジェット戦闘機を操縦するアマクダリニンジャだ。

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『キョート共和国のテロリストやその協力者が、ニチョーム・ストリートに潜伏している』との噂は、すでにNSTVのニュースで放映され、IRC-SNS上でももちきりだ。そこへヤクザの大群がなだれ込み、封鎖しているとなれば。謎の戦闘機がミサイルらしきものを投下しても、一発だけなら問題ない!

 ネオサイタマ最大級の繁華街の近辺でバンカーバスターやデイジーカッター、ニュークを使うわけにはいかない。高性能ミサイルに搭載されているのは、ニンジャのみに感染しカロウシせしめる「タケウチ・ウイルス改善」を積んだ弾頭である。爆発すれば周囲数kmに飛散し、数時間で死滅する。

 ニンジャを無力化すれば、あとはヤクザ部隊やハイデッカーを突入させて制圧すればよい。もし失敗すれば……どうとでもやりようはある。この事件を起こした時点で、ソウカイヤは分断させられているのだ。

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「み、ミサイル!?」「まさか!?」ドミネイターとブライカンは、路地裏から空を見上げる。重金属酸性雨の中、点のように小さな機影が上空をよぎりながら何かを射出!ナムアミダブツ!『ブツメツ……ピガッ』バイセクターは事切れた。「どうしやす」「なんとかする!」ドミネイターは叫ぶ!

12ターン目

イニシアチブ:ファイアランナー/FR(9)→ネザークイーン/NQ&ファイアキラー/FK(8)→ドミネイター/DN&ドゥームキラー/DK&スペクター/SP(7)→ブライカン/BK(4)→タギザワ/TZ(3)

チャカガンやハンドガンでは届かない。遠隔ハッキングは使用不可。スリケンや狙撃銃、ブライカンの内蔵型アーク放電ライフルなら届くとする。空中爆発させてもダメなので、軌道を逸らす程度は可能だろう。……ミサイルに飛び乗って軌道を修正するだって?君は狂ってるのか?

FR・NQ・FK・DN・DKは、全員ビルの屋上へ連続側転しスリケン連射!
難易度UH!与えたダメージぶん何かが起きる!
FRは[636332661262][1523121][516465]1発成功。
NQは[22432662][4215][2565]1発成功。
FKは[6443322541][3314343][251134]失敗。
DNは[52613261664][435144][56325]1発成功。
DKは[24511132611][262141][66255]2発成功。合計5ダメージ。
SPはまごまごしている。

「「「「「イイイヤァアアアーーーッ!」」」」」ニチョーム・ニンジャ自警団員たちは、全員ビルの屋上へ駆け上りながら、迫りくるミサイルめがけスリケンを連続投擲!ニンジャのスリケンは石礫や鋼鉄、銃弾とはわけが違う!カラテを帯びた武器なのだ!数発が命中し、僅かに軌道を逸らす!

BKは…集中して「内蔵型アーク放電ライフル」使用。
連射2、ダメージ1+電磁1、射撃HARD、マルチ・時間差可、バースト3×3。
[55444][1436]2発成功、戦闘兵器とみなし電磁ダメージ2倍!ダメージ6!

「こいつの出番ってわけかい!」ブライカンはその場に片膝を突いて空を見上げ、片方の掌を空中のミサイルへ向け、サイバネアイで照準を合わせる。ガションキュイーン……彼女のテッコが展開し、内蔵されたアーク放電ライフルを露出した!撃墜してもマズイが、軌道を逸らすぐらいは可能だ!

「ホノオ!」ZAAAP!稲妻が上空へ放たれ、ミサイルに絡みつく!『ピガガガガーッ!』ミサイルの電子機器が破損!大きく揺れ動くが、大質量の落下を食い止めることは不可能だ!「ブッダ……!」外からの狙撃手に撃たれたタギザワは吐血しながらブッダに祈り、スナイパーライフルを構えた。

TZは狙撃[655141151]成功、1ダメージ。合計12ダメージ。

 彼は自分の正気を疑った。ミサイルを狙撃するなど正気の沙汰ではない。だが彼は行動した。ニンジャたちに倣って。BLAMN!石粒のように小さな弾丸は、ブツメツ・ミサイルの尾翼をかすめて、弱々しい金属音を鳴らした。しくじったな、と彼は直感した。だが、あながち無駄でもなかった。

与えたダメージをDKKとみなしWasshoi判定、2D6[55]=10<12!

 微かに軌道が変わった。自動制御プログラムが働くまでの一瞬、理想的な飛行角度を生み出す。次の瞬間、ゼン・トランスの横の胸壁を蹴って、黒いニンジャが跳んだ。「Wasshoi!」禍々しくもくぐもった、何事かを押し殺すようなシャウトを放ちながら、黒いニンジャは……ミサイルに飛び乗る!

「「「エッ?」」」6人のニンジャたちとタギザワは、我が目を疑った。次いで周囲を見回し、自分たちのうちの誰でもないことを確認した。ならば、コブラ教団のニンジャか?それともアイアンコブラ総帥の鋼鉄製擬人像か?否!否である!ミサイルはそのまま落下していき……軌道を変えた!

「ワッザ……ファック……!?」ブライカンは眼前に降りてきたそれを見た。謎の黒いニンジャはミサイルの尾翼にロデオめいてしがみつき、空中でミサイルとLAN直結を行い、制御下に置いたのだ。ミサイルは路地裏の地上すれすれを飛行し、壁に激突する直前、再び上昇し……上空へ去っていった。

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「……は?」アマクダリ秘密基地。ニューロサージは唖然とした。UNIXモニタには、マイナスに変わって久しい着弾秒読み数字が流れている。だがニチョームでミサイルが爆発した様子は確認できない。不発弾か?「……もう一発よ!もう一発撃ち込んで、デストロイヤー=サン!」『……ラジャー』

 デストロイヤーは冷静かつ冷酷に通信を返した。タケウチ・ウイルス改善弾頭を搭載した「ブツメツ・ミサイル」はあと1発残っている。『只今緊急旋回を終了。再び攻撃可能空域へと……』その時!『……あれは!?コーッ、シュコーッ!そんな、まさか!?』デストロイヤーは激しく混乱した!

「今度は何!?カメラ切り替えて!」「ハイ」情報解析ヤクザは直ちに映像をデストロイヤーの視界カメラに切り替えた。おお、ナムアミダブツ!そこに映るのは、デストロイヤーめがけ飛んでくるブツメツ・ミサイル!そしてミサイルの上には……サーフィンめいた姿勢で立つ謎の黒いニンジャ!

 その掌には黒い炎が揺らめき、ユーレイじみたニンジャが頭を掴まれてもがいている!路地裏から回収されたスペクターだ!『コーッシュコーッ!? アイエエエ……アイエエエーーーーーッ!?』デストロイヤーはNRSじみてパニックを起こし……そしてカメラ映像は、横殴りのノイズに変わった。

エピローグ

 ……数日後。

『夜のオイランニュースドスエ』蛍光サイバーグラスをかけたオイラン・ニュースキャスターが、着物の前をさりげなく開き、左肩から胸までを露出させて淡々と原稿を読み上げる。『先日、ネオカブキチョのニチョーム・ストリートで発生した、ヤクザクラン同士による激しい抗争事件の続報ドスエ』

『ハイデッカー部隊が突撃し、催涙ガス弾を使用して鎮圧。ミサイルを発射する戦闘機を見たという噂が広まっていますが、これはキョート共和国のスパイである終末論教団の誇大デマゴギードスエ』オイランはデスクの下で大胆に脚を組みかえる。『観光中の民間人も多数巻き込まれましたドスエ』

『ミイラ取りが呪われてミイラになる。平安時代のコトワザです』社会派スモトリ・コメンテーターが渋い顔で言う。『怖い物みたさでそんな所に行く奴が悪い。それから勿論、ニチョームという低俗なグレーゾーンの存在自体が害悪なのではないかと、私はね、以前から申し上げてきたわけですよ!』

 画面後方では、非合法、薬物、癒着、キョート共和国のテロリストなどを連想させる画像が浮かび上がり、サブリミナル的にコラージュされた。『ニチョーム、コワイ!』客席から声が上がる。『ではここで、ヨロシサン製薬のCMドスエ』オイランは知性的な無表情を崩さぬままオジギした。

「……どうなるのかしら、結局」ファイアランナーは店主不在の『絵馴染』でTVを視聴しながらため息をついた。ドミネイター、ドゥームキラー、ブライカンは激闘で重傷を負い、闇医者のもとで療養中だ。店主のザクロことネザークイーンは、ニチョーム中心部のビルで各勢力と連日の交渉中である。

 あの夜ニチョームを襲撃したニンジャたちとクローンヤクザ部隊は、確かにソウカイ・シンジケートに所属していた。しかしゲイトキーパーやフューネラル、デンパルスらの証言によれば、ソウカイヤでは非主流派の連中であったらしい。オナタカミにそそのかされて暴走させられたというわけか。

 ならば悪いのはオナタカミだ。だが彼らはハイデッカー部隊をニチョームに堂々と駐留させ、ニチョームにもソウカイヤにも許可を得ず、不平分子を囲んで棒で叩き始めた。『ニチョーム自治会と自警団、コブラ教団、ソウカイ・シンジケートは反社会的勢力である』と主張し、法律を盾に粛々と。

 それはそうだが、彼らのやり方はあまりに強権的だ。ラオモトの持つ総理大臣の座は名誉職で、その命令は全て複雑怪奇な官僚機構にたらい回しにされ、ほぼ何の効力も発揮しない。重要書類にハンコをつくだけが彼の職務であり、日本国の政治的実権はネオサイタマ知事とその代行者が握っている。

「結論が出たわ」ザクロが憔悴した顔で裏口から戻ってきた。「ドーモ。どうだった?」「……ニチョームは自治権を喪失し、市議会およびハイデッカーの管理下に置かれることに決定。コブラ教団は……いつの間にか全員いなくなっていたわ」「そんな……ソウカイヤはどうしたのよ!」「それが……」

 ザクロはため息をつき、カウンター席に座った。「……ラオモト・カンやオムラとの癒着関係を始め、数々の不正行為を暴かれ……ニチョームやネオカブキチョ、ネオサイタマ中心部のいくつかのシマから手を引くよう市議会に勧告されたの。ラオモト=サンも総理大臣の座を追われるかもって」

「それじゃあ……」ファイアランナーは震えた。ザクロは頷いた。「ええ。全面戦争よ。ソウカイヤ・オムラ連合と、市議会・オナタカミ連合の激突が始まるわ。アタシたちは……巻き込まれないようにした方がよさそうね」

【ザ・ピュア・ヤクザズ・キラー・キッス】終わり

リザルトな

評価: ニチョームに侵攻したソウカイ・シンジケートのクローンヤクザ部隊を殲滅しソウカイニンジャたちを倒したが、直後に突入したハイデッカー部隊にニチョームを制圧され、アマクダリの監督官を置かれる。万札15ずつ、名声1、余暇2日を獲得。知識・交渉スキル1つを無償で獲得。

・ソウカイヤ・ヨルジ派はアマクダリに唆されてムーホンを起こし、ネオカブキチョやトコロザワ地区などネオサイタマ中心部を制圧、「ソウカイ・シンジケート」を名乗ったままアマクダリ/オナタカミに鞍替えした。
・これによりソウカイヤ勢力は(オムラ本社と癒着した仮本部)と西(ネオサイタマ中心部を抑えたヨルジ派)に分断される。南のケオサキにいるチバと駐留ニンジャ部隊は敵中に孤立。東の仮本部への脱出をはかる。
・ラオモト・カンはスキャンダルを暴かれて総理大臣の座を追われ、一民間人に戻る。自由に動けるようにはなったが政治権力を喪失、市議会およびハイデッカーやNSPDから逮捕令状が出される。ソウカイヤ・オムラ連合は、市議会・オナタカミ連合と再びの全面戦争へ。各勢力も呼応して動き出す。
・コブラ教団はニチョームからの庇護が期待できなくなり離脱、地下へ身を潜めて反撃の時を待つ。ソウカイヤやアマクダリと手を組むかは不明。どのみちお尋ね者のカルト教団なので現状ではジリー・プアーだ。
・あの黒いニンジャは一体……?

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