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【聖杯戦争候補作】宇宙は大ヘンだ!

 朝の通学路。学ランとセーラー服の男女が、並んで歩いている。

「……お。その赤い紐、どーした? 右手首の」
「目ざといのね。似合う?」
「似合ってるよ。願掛けかなにか? ……誰かから貰ったのか?」
「ふん、どうだっていいでしょ。あんたなんか、ヘアピンひとつくれたことないじゃない」
「そんなことないって……おおい、待てよ!」

 爆発、殺人、放火……東京都内では様々な事件が相次いでいるが、この街はまだ平和だ。平和過ぎてつまらないほどに。この街は……こんなにも平和だっただろうか? セーラー服の少女は、べらべらと話しかける学ランの少年のほうを振り向かず、カバンを手に空を見上げる。文字通り、上の空だ。

「AAARGHHH!」「ぐわあッ!?」

 路地裏の闇。褐色肌の女が牙をむき、敵の首筋に噛みついた! そのままワニのように体ごと回転し、肉と頸動脈をむしり取る! 否……首を切断! 大量の血液が噴き出し、相手はそのまま昏倒、即死した。彼が操っていた英霊、サーヴァントも、これで消滅するだろう。

「一丁上がり。いただくぜ」

 女は切断された生首を噛み砕き、血と脳漿をすする。さらに残った死体を片腕で吊り上げ、大きな口を開いて丸呑みにした。彼女は大食らいなのだ。背丈は高くたくましく、肌の露出度は高く、バストは豊満。赤い巻き毛に、傲慢そうな表情。両こめかみからは角が生え、左手首には赤い紐が巻かれている。契約のあかしだ。

「よっす、おかえり」
「……ただいま」

 夕刻。学校から帰宅した少女は、部屋の惨状を見て頭をおさえ、ため息をついた。そこらじゅうに食物や漫画本、雑誌、駄菓子袋、おつまみ、空いたビール缶などが散らばり、その真ん中には大柄な褐色肌の女が寝転んで、酒を飲みながらテレビを眺めている。

「片付けなさい!」
「めんどくせえ。俺に命令すンな。母親かよ」
「御主人様でしょ! それに、ここは私の部屋よ!」

 セーラー服の少女は、褐色肌の女の髪の毛を掴んで引っ張り上げる。女はぶつくさいいながらも、適当に室内のものを片付け始めた。少女も片付けを手伝い、指示を飛ばす。

 そうだ。この迷惑な女が現れてから、何もかもがおかしい。聖杯戦争とやらに巻き込まれて、いつものうるさい連中のほとんどがいなくなって。死にたくもないし、元の世界に戻るには彼女に戦ってもらうしかないのだが。

「いつものボーイフレンドは、一緒じゃねえのか?」
「ただの幼馴染よ。ガールハントでもしてるんでしょ」
「けっ。そのうち誰かに取られちまうぜ」
「のしつけてくれてやるわよ」

 少女はもう一度、ため息をついた。

【クラス】
バーサーカー

【真名】
ラハブ@旧約聖書、ユダヤ教民間伝承

【属性】
混沌・中庸(狂)

【パラメーター】
筋力A+ 耐久B 敏捷C 魔力A 幸運C 宝具B(EX)

【クラス別スキル】
狂化:EX
 理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。現界のための魔力を大量に消費するようになる。海の怪物/天使としての姿を顕現させ、あたり一帯を紅い混沌の海(ケイオスタイド)で満たす。「巨怪蹂躙」を含む。

【保有スキル】
混沌龍の神核:A
 ティアマトの娘、混沌女神ラハム(Lahamu)の神格を取り込んでおり、海に対する限定的な権能と神性、龍性を有する。「完全流体」を含み、無敵貫通を含む攻撃でなければダメージを与えられない。

【宝具】
『過越赤線区域(レッドライン・ディストリクト)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:40 最大捕捉:100
 旧約聖書『ヨシュア記』において、都市国家エリコの遊女として斥候たちを匿った逸話による宝具。血のように赤い紐を特定の場所や仲間に目印としてつけることで、外敵から標的として認識されにくくなる。川などに浸せば水が赤くなり、同様の効果を薄いながらも広範囲に及ぼせる。風俗店や飲み屋街などに対しては結界効果が高まる。

『神秘天使書断片(セフェル・ラジエル・ハ・マラーク)』
ランク:-(EX) 種別:対己宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 天使ラジエル(神の秘密)が、楽園追放後のアダムとイブにもたらしたとされる魔術書。嫉妬した別の天使に奪い去られ、海へ投げ込まれたが、神は海を司る天使ラハブに命じて引き揚げさせた。この書はエノク、ノア、ソロモンなどの手に渡り、彼らに神の知恵を授けたという。バーサーカーはこの書の所有者ではなく、返却したため手元にもないが、神の恩恵によりいくばくかの秘密を習得して高い魔力を有している。

【Weapon】
 己の怪力。原初の龍種の化身として、凄まじい怪力と魔力を有する。

【人物/怪物背景】
 Rahab/Rachab。旧約聖書『ヨシュア記』に登場する、ヨルダン川西岸の都市国家エリコに住む遊女(娼婦)。ヨシュア率いるヘブライ人がヨルダン川を渡ってエリコに攻め込もうとした時、彼女の家にヘブライ人の斥候(スパイ)たちが宿泊したが、エリコの衛兵がやってきて家宅捜索しようとした。この時ラハブは「エリコを攻め落とした時、自分と家族を助けてくれるなら」と約束し、斥候たちを匿った。また彼女の家は城壁にくっついていたため、彼女は家の窓から綱をおろし、斥候たちを密かに逃がしてやった。

 やがてエリコが攻め落とされると、ラハブは(「過ぎ越し」の時のように)赤い紐を窓から垂らして目印とすることで助命され、ヘブライ人の仲間に加えられたという。彼女はユダ族の長サルモンと結婚し、ダビデの曽祖父にあたるボアズを生んだ。従ってダビデの子孫たる歴代のユダの王の、またナザレのイエスの先祖である。異説ではエフライム族の長ヨシュアと結婚し、預言者エレミヤやエゼキエルの先祖になったともされる。

 人間ラハブの記述は以上だが、『イザヤ書』や『詩篇』『ヨブ記』には別のラハブ(Rahab)が現れる。これは原初にヤハウェによって打ち砕かれた海のドラゴンとされ、多頭龍レヴィアタン、カナアン神話のヤム・ナハル、バビロニア神話のティアマトと類似している。後世の伝説では傲慢なる海の天使(堕天使)とみなされ、エジプトの守護天使であった。ラハブはモーセたちがエジプトを脱出しようとした時に彼らを阻んだが、ヤハウェの放った風によって断ち割られた。しかしラハブは不死身であり、エジプトはその後も詩的表現として「ラハブ」と呼ばれている。

 娼婦ラハブは「広がり」を、海龍ラハブは「傲慢」を意味するとされ、ヘブライ語では微妙に綴りも違う。バビロニア神話でティアマトがアプスーと交わって生んだ泥の女神ラハム(Lahamu)と結びつける説もあるが、やはり綴りが違う。しかしどうせ混沌なのだし、ここでは結びつけてしまうことにする(こうした語呂合わせによる習合はよくあることだ)。すなわち混沌の海龍にして娼婦、ティアマトの娘、多くの水の上に座る大淫婦バビロンにも類した、ビーストめいた英霊である。背丈は高くたくましく、褐色肌でバストは豊満、髪は赤い巻き毛で、両こめかみから角が生えている。

【サーヴァントとしての願い】
 特になし。マスターの願いを叶える。

【方針】
 マスターを宝具で守りつつ、敵を狩って魔力を食らう。気に食わないやつはぶん殴り、ムカつくやつはブッ殺す。享楽的だが面倒見はいいので味方は護る。

【マスター】
三宅しのぶ@うる星やつら

【Weapon・能力・技能】
 怪力。握力計を軽く破壊し、猛獣をも撃退し、教室の机でお手玉ができる(お手机)。怒り狂うとそこら中の物を手当たり次第に投げつける。

【人物背景】
 漫画/アニメ『うる星やつら』の登場人物。練馬区立友引高校に通う女生徒(1年4組→2年4組)。小柄で清楚なセーラー服の少女。座敷わらしめいたおかっぱ頭で、細身だが太りやすい独特の体型。性格は良くも悪くも普通の女子高生。自称清純派でかしましい。諸星あたるの幼馴染でガールフレンドであったが、ラムが出現して以降は取り合いとなり、結局あたるに愛想が尽きて振った。のち面堂終太郎に惚れるも進展はなく、人外や男装女性から好意は持たれるものの、普通の男運は非常に悪い。

【ロール】
 練馬区立友引高校の生徒。諸星あたるたちは友引町ごと存在しているが、全員NPC。ラムや宇宙人、面堂財閥、いつもの人外の存在たちはいない。

【マスターとしての願い】
 元の世界に帰りたい。

【方針】
 戦いはバーサーカーに任せる。善良な主従がいれば匿わせる。

【把握手段】
 原作。

【参戦時期】
 不明。原作終了後か。

 イースターこと過越祭の日なのでラハブにした。マスターはおれのハンドルネームのもととなったあいつだ。いろいろ不幸でかわいそうなやつだが、結構たくましいししたたかだ。作者の化身のひとつではないかとおれは見ている。ラハブはラハム、ラムとコトダマ的に繋がるため寄せてみたものの、神話学的にあいつは金星の女神イシュタルと関係が深そうだ。『うる星やつら』は現代における様々ななんかのルーツであり、今年ノイタミナで再アニメ化するというし、原作漫画も面白いので読むといい。

 ところで、やはりしたらばに書き込みができない。Janeでもブラウザでもだめだ。ブラウザだと「正引きと逆引きの結果が矛盾しています」とか出てきて書き込めない。仕方ないのでここに書いて置いておく。代理で投下できればしてくれ。だめならまあいい。したらばは古い文明なのでこうしたことがしばしば起きる。面倒なことだ。

https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1648303280/

【続く】

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