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忍殺TRPGリプレイ【トゥルース・フォールズ・オン・ユー】04

 前回のあらすじ:キョート共和国、アンダーガイオン。その第八階層に探偵事務所を構えるタカギ・ガンドーは、ザイバツに敵対するニンジャスレイヤーの行動を密かに支援していた。だが彼は十年前に逮捕した因縁の相手、怪盗スズキ・キヨシことガンスリンガーに誘き出され、敗北してしまう!

「「イイイ……」」両者は同じピストルカラテの構えをとり……「「イイイヤァアアアーーッ!」」激突!BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!ガンドーはZBRタブレットを噛み砕き、ニューロンを加速させて攻撃を避け、反撃を繰り出す!まるでニンジャだ!だが……スズキ・キヨシは紙一重で躱す!

「イヤーッ!」スズキ・キヨシは拳銃でガンドーの胸骨を思い切り殴りつける!もはや銃弾はないが、速く重い一撃!SMAASH!「グワ……アバーッ!」胸骨が砕けた!ガンドーはのけぞり、仰向けに倒れ、意識を失う。両手には銃弾のない49マグナムを握りしめたまま。「……ハァ、ハァ、ハァ」

 スズキ・キヨシは息を荒げ、血を拭う。完璧な勝利とはいかなかったが、勝ちは勝ちだ。流石に自分のライバルだけはある男だった。敬意を払おう。そして、死んで貰わなくては!彼は生き残りのクローンヤクザにIRC通信を行い、ガンドーと少女をヤクザリムジンへ運ばせた。その行き先は……。

???

「オイオイオイオイ……何だこりゃ?」ガンドーは頭と胸に激痛を感じながら目を覚ました。冷たい夜風が頬を撫でる。眼の前に広がるのは、キョート共和国北東部の巨大な湖、琵琶湖の夜景だ。水面はくろぐろとし、周囲にいくらかの街の光。湖面には日本国からの侵攻を警戒する共和国艦隊がいる。

 体は直立したまま動かない。ロープか何かで厳重にスマキにされている。傍らにはクローンヤクザが立って支え、その横にはシキベに似せられたあの少女が、自分と同じ状態で立たされている。眼下には……見覚えがある。豪華客船『グランド・オモシロイ』。今いるのは船尾の巨大電波トリイの上。

 背後は湖面。海賊カトゥーンでよく見る処刑シーンだ。スズキ・キヨシは因縁のこの場所で、ガンドーと「シキベ」を葬り去るつもりらしい。頭突きでクローンヤクザぐらいは倒せるか、と考えたところで、足首の鎖に気づいた。隣の少女の足首と繋がっている。道連れというわけだ。「ブッダ……」

「ヘェーヘェーヘェー……こっちだぜ、探偵=サン」クローンヤクザの背後から、スズキ・キヨシが顔を出して笑う。傍らには握りこぶし大の十二面体ドローンが青い光を放ちながら浮かび、こちらにカメラアイを向けている。「オイオイオイオイ、何をしようってんだ?」ガンドーは対話を試みる。

「彼女は見逃してやってくれ」「駄目だ」スズキ・キヨシは冷たく答えた。「そのメガネ女は、お前のせいで死ぬ。俺は時間を巻き戻す。俺の黄金時代に」彼は狂っていた。ガンドーは歯噛みした。「お前と助手の死に様を、永遠に残してやる。喜べ」『重点!重点!』ドローンにはオムラの雷神紋。

交渉判定、難易度UH。11D6[31221315313]失敗

 ガンドーは必死に考える。こいつはシリアスだ。だが、口はきける。話術で引き込めばいい。あれだけのクローンヤクザやオムラのドローンを、脱獄囚のこいつがどうやって手に入れた?ニンジャのパワーでか?それとも……罪罰罪罰罪罰……思考にモヤがかかる。駄目だ。ならば、仕方ない!

「なあ、待てよ。俺が誰の依頼で動いてたか、知りたくねえのか?本来なら依頼人の事を明かすのはタブーだが、仕方ねえ。俺たちは両方ともそいつにハメられた可能性が」「無駄話は付き合わないぞ、探偵=サン。俺は知能指数が高いからな……」狂人はガンドーの話を遮り、涙を流し始めた。

「依頼人は……俺の親父だろう。俺を体よくダシにしてッ、会社を救いやがったッ!あのクソオヤジがッ!」「待てよ、他にも可能性が」「黙れッ!もう時間だッ!」スズキ・キヨシは銃を構えて威嚇し、興奮のあまり涎を垂らす。駄目だ。間違ったトリガーを引いてしまった。ガンドーは絶望した。

「……ヘェーヘェー、それじゃあ……練習した通り、やれッ!」『撮影重点』オムラのドローンは電子マイコ音声を発しながら撮影を開始した。「……ガンドー=サン、助けてェ……」少女が嗚咽と共に叫ぶ。「てめえ……この外道ッ!」ガンドーは我を忘れて激昂!スズキ・キヨシは一人満悦する!

「ウォーヒヒィー!もっと大きな声でッ!名探偵タカギ・ガンドー=サンに!助けを求めろッ!ドーモ!怪盗スズキ・キヨシです!コンバンワー!」「……コンバンワー……私の名前はシキベ・タカコです……ガンドー=サン、助けてェ……!」「ウオオオーーーッ!」ガンドーは叫び声をあげて突進!

拘束脱出判定、難易度UH2。[4425211]失敗、[2224626]成功!だが移動も行動もできぬ!SKは射撃[52563][42651][51433]3発成功。TGは回避H[51][66][466]回避!ゴウランガ!

 足は僅かに動かせる!倒れかかり、クローンヤクザごとスズキ・キヨシを道連れに……!「ウォーヒィーッ!」BLAMBLAMBLAM!スズキ・キヨシは笑いながら発砲!「ウオオオーーッ!」ガンドーは身を伏せて必死に回避!ゴウランガ!「アイエエエ!」シキベに似せられた少女がバランスを崩す!

TGとSKの間にはCY。TGは7D6[2264421]攻撃成功!突き落とす!SKは射撃[61536][65124][53344]3発成功。TGは[54][31][266]1発命中、昏倒し落下。

「ウオーッ!」KRASH!「グワーッ!」ガンドーは体当たりでクローンヤクザを突き落とす!「見苦しいぞ探偵=サン!だがそれでこそだ!」スズキ・キヨシは高らかに笑い、再び拳銃を連射!BLAMBLAMBLAM!「アッバーッ!」ナムアミダブツ!38口径弾がガンドーの額に命中した!

 ガンドーは白目を剥き、ゆっくりと傾きながら暗い湖面へ落下してゆく!「アイエエエーーーッ!」鎖に引きずられ、少女も失禁しながら落下!「サラバ!我が宿命のライバルよ!ウォーヒヒヒィー!」スズキ・キヨシの哄笑が遠ざかる……!暗い湖面が二人を迎え入れ、フートンめいて包み込んだ。

◆◆◆

エピローグ

REBOOT!REBOOT!REBOOT!REBOOT!

 私立探偵タカギ・ガンドーは悪夢を見ていた。冷たい水のフートンにかき抱かれ、静かに沈降しながら、リプル模様に歪むガイオンの月を見上げていた。冗談を飛ばす気にもならなかった。オイオイ、ブッダ、こいつは笑えねえジョークだぜ。サムライ探偵サイゴなら、こんな時、なんて言うだろな?

 ガンドーのサイバネアイ、網膜ディスプレイ内で、LEDミンチョ体の赤い文字が左右に揺れながら明滅する。「REBOOT」。再起動せよ、と。だが、ここからどうやって? 闇と月光だけのモノクローム的世界。色彩も、音楽も、暖かな灯もない。足には鎖。少女を助けなければ。しかし、動けない。

REBOOT!REBOOT!REBOOT!REBOOT!

 ……タカギ・ガンドーは死んだ。額に銃弾を撃ち込まれ、琵琶湖の水底に沈んだ。その映像はオムラのドローン「モーターチビ」によって撮影され、ザイバツ・シャドーギルドに送られた。スズキ・キヨシ、ガンスリンガーが所属する暗黒ニンジャ組織へと。ニンジャスレイヤーの協力者は死んだ。

REBOOT!REBOOT!REBOOT!REBOOT!

 010101010101「……ッ!ハァーッ!ハァーッ!」彼は使い古した医療用ベッドの上で悪夢から覚め、上半身を起こす。数年前に拾ってきたその武骨なパイプベッドは、クリーム色の塗装が所々剥がれ、錆びた鉄を晒している。「ア?」見慣れた光景。そこは……ガンドー探偵事務所だった。「夢か?」

 夢にしてはリアルだ。拍子抜けするほど穏やかな、レトロテクノのレコード音。オスモウTVの音。助手のシキベがコーヒーを淹れ、バタートーストを焼く香りまでする。死に際に観るソーマト・リコールというやつか。それとも、これまでの全部が夢で……ガンドーはZBR切れの頭痛と格闘01010101

「シキベ=サン、コーヒーをくれよ」新聞を開いたガンドーは、視神経のストを感じながら応接室側へ歩く。薄汚いボーダーニットにジーンズ、傾いた黒いセル眼鏡のシキベは、バタートーストをテーブルに置くと、驚いた顔で言った。「ウェー……所長?ZBRやらないんスか?」「ああ、夢の中だしな」

「……ハァ? 所長、何寝ぼけたこと言ってんスか?アー……遠回しに結局、ZBR寄越せってことなんスかね?眠気覚ましに」「オイオイ、違うぜ。それより……」ガンドーは事務所のデジタル時計を見た。物凄い勢いでゼロに向かってカウントダウンしている。時間がない。RING!RING!RING!

 さらにワータヌキ電話が鳴り始めた。ガンドーにはそれが何を暗示しているのか、直感的に解った。「出なくていいんスか?」「まだ少しだけ、大丈夫だ」彼は腰を落ち着け、シキベが焼いたアンコトーストを食べながら、笑って言った。「色々、ありがとうな。シキベ=サン」0101010101010101

REBOOT!REBOOT!REBOOT!REBOOT!

◆◆◆

 REBOOT!ガンドーの意識は、再び冷たい琵琶湖の中に戻った。額の銃弾は、シキベが……シキベのニューロンチップを納めた、ガンドーの防弾バイオ繊維強化頭蓋が守ってくれた。彼女の脳髄は依頼人が支払ったカネで加工され、チップになった。ガンドーは自分の脳漿で彼女を養っている。

 肉が盛り上がり、骨が超自然的に修復し、全身の負傷が瞬時に癒えていく。ニンジャソウル憑依に伴う超常現象だ。……ガンドーの体はスマキにされ、足首には鎖。その先には少女。さっきと同じだ。そして彼のニューロンには、先程のガンドー探偵事務所とは別のヴィジョンが映っていた。

 シキベ・タカコが撃たれた時の記憶だ。必死で何かを伝えようとするように。彼女が実際に視たものは何だったのか。罪罰罪罰罪罰罪罰

カラテによる拘束脱出判定、難易度UH。現有カラテ値9。[151445226]ギリギリ成功。ニューロン判定、難易度UH。現有電脳値9。[234236251]ギリギリ成功。彼は真実を掴んだ。

 ガンドーは四肢に力をこめ、ニンジャ筋力でスマキ繊維を引き裂いた!彼はほとんど無意識のうちに肉体を動かし、少女を掴んで湖面を目指す!そして……!罪罰罪罰罪罰REBOOT!REBOOT!REBOOT!真実を覆い隠そうとする何らかの邪悪な意志を、ガンドーは振り払い、カラスの目で見通す!

 記号化された無数の一つ目と格子模様。思い出した。これは罪罰罪罰罪罰ザイバツ・シャドーギルドのニンジャが身に着けている紋章だ。ガンドーの目から龕燈めいて光が放たれ、格子模様を打ち砕く!……彼はシキベ・タカコの死の一部始終を目撃した。自分が撃たれたような苦痛を感じながら。

 彼女を撃ったのは、ニンジャだった。ガンドーは彼の装束、メンポ、声、目、全てを記憶した。

◆◆◆

 ガンドーは右腕で少女を抱き、琵琶湖の湖面に立っていた。足元には超自然の黒い羽毛が浮かび、巨漢と少女の体重を支えている。彼はニンジャとなり、甦ったのだ。ジーザスのように!「嬢ちゃん、生きてるな?」「……アッハイ」少女は水を飲んでいない。長い時間にも思えたが、幸いだった。

 メガネは外れ、口紅は流れ、もとの顔に戻っている。十五歳程度だろうか。「何があったか、覚えてるか?」「アイエエエ……イエ」彼女は震えながら首を振った。ニンジャ・リアリティ・ショック(NRS)と、ロード・オブ・ザイバツから常時放たれるジツの影響で、記憶を失っているのだ。

 ガンドーはその謎を未だ知らない。「あ、あなたは」「ああ、ヘッドストロングって奴だ。運が良かった」ガンドーは笑って額の銃弾の痕を撫でた。「アッハイ……」バラバラバラバラバラ……豪華客船『グランド・オモシロイ』から、一台のヘリコプターが飛び立った。スズキ・キヨシだろう。

 彼はガンドーたちの死の確認を怠った。この場所でこの殺し方をすることに執着し過ぎていたのだ。「サイコ野郎め、ザマミロ。探偵が水に落下したら生きてるもんなんだよ!」ガンドーはタフに笑い、湖面を歩いて豪華客船の船体にしがみついた。「ジーザス……ブッダ……!」少女は神々に祈った。

 ガンドーは力強く船体をよじ登り、足場に到達した。今すぐにでも追いかけて殴りつけたかったが、まだやる事が残っている。鎖を切って少女を解放し、新たな49マグナムと銃弾を調達せねば。奴はまだまだ人を殺すだろう。復讐のために!「あの野郎と、決着をつけなくちゃならねえ……!」

【トゥルース・フォールズ・オン・ユー】終わり

リザルトな

タカギ・ガンドーはスズキ・キヨシ/ガンスリンガーに敗れ死亡。ニンジャ「ディテクティヴ」となって甦った。

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