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忍殺TRPGリプレイ【ニンジャ・ウォッチズ・オーヴァー・アス】02

 前回のあらすじ:ネオサイタマの全寮制のカチグミ学校・スナリマヤ女学院で、生徒「モロ・キリエ」が失踪した。彼女の父キリオはソウカイヤに事件の調査と解決を依頼し、2人の女ニンジャ・マーダーシュトロムとヴェノムパピヨンに白羽の矢が立った!潜入調査開始!カラダニキヲツケテネ!

「校内でニンジャらしき人影を見た、なんて噂もある。もしそうならニンジャ案件だ。生徒や教師、学校ぐるみでこの事件に関わっている可能性も否定はできねェが、相手は政財界にも多数のOGがいるカチグミ人脈の根っこだ。ソウカイヤとはいえおいそれと手出しはできねェ。そこで、テメエらだ」

 ソニックブームは2人を指さした。「新任の女教師と転校生として、潜入調査をしてこい」マーダーシュトロムは実際この女学院のOGであり、ヴェノムパピヨンは一応元女子高生だ。しかし……「テメエらは犯罪者だが、表社会じゃ死んだことになってるし、別人の人生を書類上で作成してある」

「顔や声は特殊メイクとかでごまかせるだろ。それにニンジャだ」「アッハイ」「ヨロコンデー!」ヴェノムパピヨンは涙を流して深々とオジギ!ついにあの女の園、スナリマヤ女学院に堂々と潜入調査ができるのだ!しかも、マブな女ニンジャのセンパイと協力して!ゴウランガ!なんたる役得か!

 ソニックブームは制服姿の少女の写真を机に出した。彼女がモロ・キリエだ。彼女や学院、自分たちの欺瞞のためのプロフィールも書類で提示され、2人はニンジャ記憶力でたちまちそれらを記憶する。下手を打てばソウカイヤのメンツとソンケイに関わるのだ。真剣にやらねばならない。「それと」

 ヴェノムパピヨンを指差し、ソニックブームは警告した。「テメエの同性愛趣味は知ってるが、奥ゆかしくしとけよ」「アッハイ!」……かくして、2人の女ニンジャはスナリマヤ女学院への潜入調査を開始した!


行動開始

 スナリマヤ女学院高等部の掲げる理念は「知性により律する」であり、学園内のあちこちに、この文言のショドーをおさめた額縁と、創設者の肖像画を見る事ができる。校章のモチーフは古事記に由来する「一粒の梨」で、心や愛を象徴するとされ、制服の胸にも奥ゆかしくあしらわれている。

 神秘的でモデストな礼拝堂を中央に据えたこの全寮制の学園は、ネオサイタマのやや外れに位置しており、周囲には美しいバイオ松の森が広がり、小川のせせらぎや鳥たちのさえずりが爽やかな風に乗って届けられる。寮の朝は早い。起床は4時30分。「『健康な暮らしが知性と美を育む』……ねェ」

原作では女学院の制服はブレザーですが、Bingがセーラー服にしたのでそうします。

 ヴェノムパピヨン……転校生「コトリ・ヒラカワ」は寝ぼけ眼を擦りながら起床し、身支度し、食堂に赴く。朝食は海藻とコメを主体とし、終われば清掃と朝のショドー、それから授業が始まる。まるで軍隊だ。だがこれは「伝統に則った情操教育の一環」とされ、保護者からも賛同を得ている。

 創立当初の大正エラ、100年以上前からの伝統だ。各教科は成績ごとに10段階の序列がつけられ、試験のたびに再編成が行われる。かように苛酷な学園生活ではあるが、生徒たちは溌剌な若さと、気力体力、前途への期待を胸に、日々の暮らしに楽しみを見出し、お互いに笑いあい、憎み合う……。

「どうしたの?ヒラカワ=サン。手が止まってるよ?」寮の部屋は2人一組の相部屋だ。早朝の掃除中、ルームメイトのユマナ・オミヤが話しかけてきた。彼女は明るく溌剌とした性格で、物怖じせず、正義感も強い。ヴェノムパピヨンでさえ、ユマナのあまりの眩しさに手を出せなかったほどだ。

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「その……慣れないもので」「そうだよね。そのうち慣れるよ!」ユマナは明るく笑い、手伝ってくれた。カチグミの子女とはいえ、誰もが無慈悲な競争社会に適応し切っているわけではないようだ。だが、やがては彼女もそうなってしまうだろう。教育とはそういうものだ。誰が悪いわけでもない。

情報収集。ニューロンかワザマエで難易度HARD。「交渉:欺き」で+2。ヴェノムパピヨン/VPはワザマエが12なので14D6[34115421616662]成功。だいたいわかった。原作小説や元シナリオとは少々異なる展開になります。

???

 ……ヴェノムパピヨンは彼女と親密になり、それとなく失踪生徒のことを尋ねてみた。「モロ・キリエ=サン?ゴメンナサイ、知らないわ」「そう」「授業とかについていけなくて、退学しちゃう人は時々いるけど」「それならそれで仕方ないけど……ね」ヴェノムパピヨンは肩をすくめた。

「そう言えば、私の前のルームメイトだった子も、突然退学しちゃって……結構仲が良かったのに、相談してくれても……」ユマナは暗い表情をした。「その娘の名前は?」「チコ・ケヒタ=サン。成績は悪くなかったんだけど、そう言えば……他の生徒と揉めてたみたいで、そのせいかも……」

「ふうん。全寮制の学校だし、そういうこともあるかもね」ヴェノムパピヨンは室内を掃除しながら手がかりを探る。と、机の引き出しの中から紙片が出てきた。開くと「ナカヨシ」と書かれている。「ナカヨシ?」「……チコ=サンの字ね」ユマナが顔を近づけた。「選ばれた生徒の集まりよ」

 ユマナによれば、「ナカヨシ」とはスナリマヤ女学院創立の頃から受け継がれる、エリートたちのソサイエティ(社交界)だ。ナカヨシのOGたちは、社会に出た後も実業家や政治家夫人、チャのセンセイなど多くが高い地位を得ており、卒業後も互いに交流を持つなど固く結束しているという。

 ナカヨシの長は「グランドマスター」と呼ばれ、学院の教師よりも強い権力を持ち、学年に関係なく入学時に選ばれた者が卒業までの間その座に君臨する。現在その地位にあるのは、ヤヨイ・シンケイド。学年一の名家の出身で、成績も最優秀だ。「私やチコ=サンの家柄じゃ、ナカヨシには……」

「キョートみたいねェ」ヴェノムパピヨンは眉根を寄せた。グランドマスター。キョートの暗黒ニンジャ組織、ザイバツ・シャドーギルドの大幹部の呼称でもある。この学院がザイバツと関係があるかは定かでないが、ありえなくもない。「……興味あるわね。ひょっとしてチコ=サン、ナカヨシに……」

「まさか!」ユマナは青褪めた。「もっと聞かせて。ナカヨシについて」ヴェノムパピヨンは瞳を輝かせる。NRSを応用してモータルを籠絡するカナシバリ・ジツの一種、ゼゲン・ジツだ。「……ええ。彼女たちは日曜日の夜に礼拝堂に集まるの……そこで何か、儀式をしているって噂よ……」「ふうん」

???

マーダーシュトロム/MSは調査判定、ニューロンかワザマエで難易度HARD。「知識:犯罪」で+2され15D6[464631136652536]成功。だいたいわかった。

「……儀式?」新任の女教師イヌジマ・テリハ……本名イヌイ・テルカことマーダーシュトロムは問い返した。「ええ……毎週日曜日の、ウシミツ・アワーに……」「オカルチックだな」「そうかも……ただ、その直後に、退学する生徒が時々」「そこで何かしていると?」「怖くって……教師より権力が」

 保健室。養護教諭ユキ・ヒヤデスは震えた。彼女のバストは豊満である。「こわいな」マーダーシュトロムは冷たく微笑んだ。校内での集団イジメ。よくあることだ。エリート集団ならなおさら、自分たちをカチグミの中のカチグミとするために、そうした儀式を行っていても不思議はない。

 彼女が在籍していた頃にも、ナカヨシの存在やそうした噂は聞いていた。あくまで学校の噂話、怪談としてだ。しかし……社会に出て、様々なことを体験した彼女は、そうしたことが実際にあることを身をもって知っている。閉鎖的なエリート集団が、自分たちのために何をするかを。「ありがとう」

 マーダーシュトロムはユキの頬に掌を触れ、立ち上がった。ヴェノムパピヨンとこの情報を共有せねばならない。そして、さらなる調査を行わねば。

???

 夕刻。学院の敷地内、木立に包まれた場所で、2人のニンジャは密かに落ち合った。雑談めいた会話を行いつつ、符牒を用いて情報を交換する。2人はほぼ同じ情報を得ていたようだ。『じゃ、日曜の深夜に踏み込みますか?それとも』『証拠を抑えてからだ。彼女とは無関係の可能性もある』

 ……その時!

ニューロン判定、難易度UH。MSは9D6[225151143]失敗、VPは10D6[1364334553]ギリギリ成功!

「……誰?」ヴェノムパピヨンは微かなアトモスフィアを感知し、木立の背後に潜んでいた存在を誰何した。マーダーシュトロムもそちらを見る。……現れたのは、黒い髪、空色の目をした小柄な生徒。2人には見覚えがある!「……ドーモ。モロ・キリエです」

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続いて交渉判定、難易度HARD。MSは13D6[1514236146542]成功。VPは12D6[361413443211]成功。情報を聞き出せる。

「……ドーモ、イヌジマです」「ヒラカワです」2人はアイサツを返す。彼女からは微かにニンジャアトモスフィアが感じられる。ニンジャなのだ!「……生きていたのか」「ハイ」「じゃあ、なんで姿を隠していたの?」「それは……」キリエは周囲に素早く視線を走らせ、駆け寄った。

「……私は、殺されたの。ナカヨシに。そして蘇った」

 ……彼女によれば、こうだ。ナカヨシは恐るべきカルト集団であり、時々立場が弱く家柄もさほど良くない生徒を選んで、礼拝堂に連れ込んでいる。そして……殺すのだ。秘密を共有し、結束を強めるために。キリエも数日前に殺されたが、運良くニンジャになって蘇った。そして、身を隠した。

「……礼拝堂の下には、生徒たちの死骸が積み重なっていたわ。白骨化したものも、かなり古いものも。きっと、ずっと昔から……」キリエは震えた。「私は死んだことになっているし、寮の部屋にも学校にもいられない。外へ逃げて教師や警察に告げても、もみ消されるかも知れない。だから……」

「だいたいわかった」マーダーシュトロムはうなずいた。「あなた達、ニンジャでしょう。そして、ナカヨシについて調べてる。だからこうして出てきたの。私もナカヨシたちを殺すわけにもいかないし、このまま連れ出して欲しいの」キリエは涙を流す。わけがわからないまま孤立無援だったのだ。

「……どうします」ヴェノムパピヨンは眉根を寄せた。このまま彼女を連れ帰れば一応解決だが、ナカヨシの邪悪な儀式を放置しておくのもよくなさそうだ。ユマナのような何も知らぬ善良な生徒たちが犠牲になる。それは、イヤだ。かといって、カチグミたちを敵に回せば……「相談してみよう」

 マーダーシュトロムは判断を上に仰ぐことにした。キリエが無事……と言っていいか分からないが、生きていることは確かだ。ニンジャ化しているため、このままソウカイヤに所属することになるかも知れない。期せずして新たなニンジャをスカウトできたわけだが、これで一件落着とも行くまい。

 ……その様子を、校舎最上層の窓から眺め下ろす怪しい人影があった。

【続く】

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