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忍殺TRPGリプレイ【マン・ウィズ・ア・ミッション】02

 前回のあらすじ:ネオサイタマ、ギョクヤマ・ストリートの場末サルーン「アタマ・ハンザイ」に四人のニンジャが集った。彼らは複雑な経緯により十年以上前に死んだヤクザ・オヤブンの遺産を受け継ぐ権利を持つが、遺産分与に関する発言権の優先順位は決まっていない。ダンゴウの時だ!

 ゴセの遺書の内容などを踏まえ、事前に各組織間で合意された手続きは、まさにヤクザ式。すなわち代表者それぞれが己の「ソンケイ」を見せつけ、それが偉大である順に優先権を得るのだ。機械的、システム的に相続するのが不可能ならば、フェイス・トゥ・フェイスで納得を得るしかない。

 暴力沙汰は当然禁止だ。事前の合意は全員のハンコが押された正式なものであり、それに背けばソンケイも権利も喪失する。たとえ実力行使で他の三人を皆殺しにし、ハンコを奪って契約書を作成したとしても、他の三つの組織は決して従わず、それを行った者とその組織が滅ぶまで戦うことになる。

 優先権が一位になっても遺産全てを得られるわけではない。正当な権利のある者に分配しないのはソンケイにもとるからだ。オヤブンたるもの子分に利益を公正かつ公平に配分するのが義務であり、それを怠ればムーホンされても文句は言えない。第四位になろうとも、遺産はそれなりに受け取れる。

 イニダの派遣も事前の合意によるものだ。彼を脅したり殺したりしても、相続権は当然無効となる。彼からすれば今回のダンゴウはどうにも合理的ではないのだが、途中の経過がどうであれ、最終的に参加者全員のハンコが押された契約書が完成すれば問題ない。「……以上、よろしいでしょうか?」

「「「「異議なし」」」」四人が頷く。「それでは、始めさせて頂きます。存分に、ご自身のソンケイを見せつけて下さい!」四人は互いに視線を走らせた。……大気にカラテが満ちる。一触即発アトモスフィア!

談合開始

ルール
イニシアチブ値が最も低いPCから、自身のソンケイを高めるようなエピソードを話す。ニンジャ、ヤクザ、傭兵、邪悪の4つの武勇伝表から1つ選び、1D6を振って内容を決める。
・他のPCたちは語りの内容に応じて評価ポイントを0-2つ与える。
・エピソードの中で最も重点して使われていたと思われる能力値を語り手PCが宣言し、その能力値と合計評価ポイントを足した数の1D6を振る(難易度NORMAL)。判定の成功数がソンケイポイント(SP)となる。
・これを1手番とし、次にイニシアチブが低いPCに手番が移っていく。これを2回(2ターン)繰り返し、最もSPが高い者が優勝する。
・2ターン目はイニシアチブが高い順とする。

1ターン目

イニシアチブ(低い順):デッドリーシャドウ/DS(4)→ファイアトゥース/FT(5)→ヘルウルフ/HW&キルドッグ/KD(6)

「まずはデッドリーシャドウ=サンからご発言を。その後は時計回りということになっておりますので」タチアイニンのイニダが録音機を向けると、恐るべきアンタイブディストのニンジャが頷き、立ち上がった。武器の使用は禁止されているが、彼は邪悪なフランベルジュを手放そうともしない。

DSは当然「邪悪な武勇伝表」を選択。1D6[6]=唯我独尊。能力値は最も高い「ワザマエ」を宣言。

「アアダブ……!栄華を手にするのは、俺一人でよい……」デッドリーシャドウはジゴクから響くような恐るべきデスボイスで告げた。「ブッダを殺し、ボンズを殺し、オヤブンを殺せ……!俺は無慈悲なブッダセイタンの化身!天上天下唯我独尊!如何なる裏切りも非道行為も思いのままに行う!」

 三人は訝しんだ。彼はここにダンゴウに来たのではないのか?「デッドリー・ヌエ(鵺)とはまさに、デッドリー・シャドウ(影)なり!」彼は無慈悲に宣言した。言葉の意味は分からないが、とにかく凄まじい自信だ。恐るべきキリングオーラだ。ABBMたちにはカリスマとして写るのだろうが……。

同じ「ニンジャソウルの闇」持ちのHWはやや評価し+1。他の2人はヤクザ的ソンケイではないとして0。6+1=7D6[6565612]=5ポイント獲得!ブッダは寝ている。

「つまりアンタは、遺産を独り占めしようってわけだ。それはソンケイにもとるんじゃあないかなァ?」キルドッグは鼻白む。「そもそも、ヤクザってのはカルト教団じゃあないんだぜ。わかってるか?」ファイアトゥースも頷く。「フン……俺は多少評価してやる。ヤクザには邪悪さがねェとな!」

 ヘルウルフは邪悪に嘲笑った。「そこの腰抜けどもよりは、キアイが入ってるぜ!」「そうかねェ」三人はそれぞれに評価していく。イニダには全く不可解な世界だ。彼は失禁をこらえ、次の発言者へ録音機を向ける。「そ、それでは、次の方へ。ファイアトゥース=サン、お願いします」

FTは「ヤクザ的武勇伝表」を選択。1D6[3]=伝統の重み。能力値は「ニューロン」を選択する。

「ああ、では……ブッダやボンズはともかく、オヤブンを殺せとは聞き捨てならねェな。俺の属する『スピリット・オブ・ヌエ』クランでは、そんな事を言う者はケジメかムラハチ、カマユデだ。俺たちは毎朝神棚に合掌して、クランの祖であるゴセ・ダイセン=サンに祈りを欠かしたことはねェ」

「ダムアミナ!」デッドリーシャドウが憤怒のシャウトを上げた。「愚かなブディストめ!」「おいおい、伝統の重みってもんを重んじろよ。ま、あんたらには理解できんか。ヤクザじゃあないもんな」「まあ、そうだなァ。ヤクザってのは上下関係が大事だ」キルドッグは頷く。ヘルウルフは唸る。

DSは当然0、HWは0、KDは2。2+5=7D6[3435223]=2ポイント獲得。ブッダは寝ている。

「そんな軟弱なことだから、テメエのクランは勢力争いに負けてンだよ!」ヘルウルフは鼻を鳴らす。「覇気がねェ!」「奥ゆかしいと言え。ゴセ=サンが化けて出たなら、俺ンとこのクランに感謝すると思うぜ。正しい意味でのソンケイってのはな……」「ええと、次の方、よろしいでしょうか」

HWは「傭兵的武勇伝表」を選択、1D6[2]=非情なるプロフェッショナル。能力値は「ワザマエ」。

 ヘルウルフに録音機が向けられる。「おう。だいたいヤクザってのは暴力団、暴力の集団だろうが。必要ならなんだろうと切り捨てて、為すべきことを成し遂げる非情さがなけりゃならねェ!俺は前のオヤブンもワカガシラもブッ殺して、今の地位にのしあがった。実力が全て!それがソンケイだ!」

DSは2、KDは1、FTは0。3+5=8D6[55133321]=2ポイント獲得。ブッダがちょっと起きた。

「アアダブ!」デッドリーシャドウは力強く頷く。意見が一致したのだ。キルドッグも頷くが、ファイアトゥースは首を横に振った。「全く、アンタらとウチは相容れねえな。だいたいヘルウルフ=サンは、傭兵がヤクザクランを裏切って乗っ取っただけじゃねェか。傭兵としての信義すらねェぞ!」

「先に裏切ったのはあいつらだ!」「裏切り者ってのはいつもそう言うンだよ!」「ア?」「ま、まあまあ、お平らに」タチアイニンが失禁をこらえながら仲裁する。この場での暴力沙汰は事前合意により御法度だ。「つ、次はキルドッグ=サンです。一巡しましたら、もう一巡ということで」

KDは「ニンジャ的武勇伝表」を選ぶ。1D6[5]=ワザマエを見せる。一番高い能力値はニューロンだが、ワザマエも5あるのでダイジョブだ。

「アイアイ」キルドッグは全身のバイオサイバネを見せつけながら立ち上がり、ポージングした。「暴力沙汰は御法度だが、実力が物を言うってのは賛成だ。筋肉は全てを解決する!」彼はトックリに向かってチョップを構え、瞬時に首を刎ね飛ばした。「力を見せ合おうぜ!」「店の物を壊すなよ」

DSは2、HWは2、FTは0。4+5=9D6[145623313]=3ポイント獲得。

 ファイアトゥースは肩をすくめるが、デッドリーシャドウとヘルウルフは邪悪に嘲笑い、頷いた。「ヴォイド!」「へへへへ!」恐るべきキリングオーラが部屋に満ちる!「ま、マッタ!」イニダがマッタをかける。「暴力沙汰は!」「おいおい、力比べだよォ、タチアイニン=サン。平和的な!」

現有ソンケイポイント DS:5 FT:2 HW:2 KD:3

2ターン目

イニシアチブ:キルドッグ/KD&ヘルウルフ/HW(6)→ファイアトゥース/FT(5)→デッドリーシャドウ/DS(4)

KDは「ヤクザ的武勇伝表」を選択、1D6[5]=輝かしいソンケイ。「ニューロン」を用いる。

 キルドッグは掌を向け、一同を落ち着かせる。「それじゃあまあ、俺も奥ゆかしいところを見せようかね。俺の属する『フォールンドッグ』クランはこう見えて地元住民に人気がある。催事の管理監督、危険な余所者の排除、貧困者への炊き出し。こういうのは立派なソンケイだと思うが、どうかね」

HWとDSは0、FTは2。2+6=8D6[43524232]=3ポイント獲得、合計6

「そうそう、そういうのだよ」ファイアトゥースはほっと息をつく。「ヤクザってのは社会の弱者を守る顔役だ。義理人情ってもんがなけりゃ、ヤクザの風上にもおけねえ」「善人気取りとは胸糞悪いぜ!」「ヴォイド……!」ヘルウルフとデッドリーシャドウは顔をしかめ、嫌悪感をあらわにする。

HWは「邪悪な武勇伝表」を選択、1D6[1]=弱者の蹂躙。「ニューロン」を用いる。

「ヤクザは社会の弱者を守るだァ?そいつらを囲い込んで、食い物にするのがヤクザだろうがァ!女はオイラン、男は奴隷!暴力で全てを搾取し、気に入らなけりゃ嬲り殺す!それがヤクザだ!テメエらもヤクザでニンジャだろうが!綺麗事でおためごかしてんじゃねェ!」ヘルウルフは吠えた!

DSは2、KDは1、FTは0。3+5=8D6[32351616]=3ポイント獲得、合計5

「いや、建前は必要なんだよ。本音はそうでも」キルドッグは彼を宥める。「善人の真似をしたら実際善人、ってミヤモト・マサシも言ってるだろ。ラオモト・カンだってあんなやつだが慈善事業もしてるし、子供に人気があったりするぜ。騙せば効率よく搾取できるってわけだ」「気に入らねェな」

FTは再び「ヤクザ的武勇伝表」を選択。1D6[3]=伝統の重み。振り直して[1]=優秀なテッポダマ。「カラテ」を選ぶ。

 ファイアトゥースは苛立った。「ヤクザってのは……」「テメエのヤクザ倫理学の講義は聞き飽きたぜ。カラテはできねェのか?イサオシは?」ヘルウルフがあくびをしてみせる。「できるさ。俺だって、敵対ヤクザクランの幹部を単身討ち果たし、ニンジャになって生還を遂げた男だ!」

DSは1、HWは1、KDは1。3+5=8D6[2411616]=3ポイント獲得、合計5

「そうそう、そうだったな」ヘルウルフが目を細める。「おかげで俺の乗っ取り作戦がうまくいったんだったぜ」「ヴォイド……」「やっぱり実力があってのソンケイだよなァ」他の二人も頷くが、ファイアトゥースは不満そうだ。ソンケイとはそういうものではないが、しかし、言葉にはしにくい。

DSは再び「邪悪な武勇伝表」を選択。1D6[5]=漆黒の憎悪。「ニューロン」を用いる。

善人は殺す」デッドリーシャドウは言い放った。「俺は悪魔の化身だ……この世に炎を放ち、ボンズの首を斧で切断して、ブタの首を乗せてやる!」彼は狂っていた。彼の体からチロチロと炎が立ち昇り、あたりに焦げ臭いにおいを漂わせる。それでも暴力沙汰には出ないのだから大した自制心だ。

HWは2、KDとFTは0。2+4=6D6[624164]=4ポイント獲得。合計9!おおブッダよ、寝ているのですか!

途中結果

現有ソンケイポイント DS:9 FT:5 HW:5 KD:6

ソンケイポイントが同値のPCがいた場合、任意の基礎能力値で対抗判定を行う(難易度NORMAL)。HWはワザマエ、5+1=6D6[533134]=2成功。FTはニューロン、5D6[66665]=5成功。FTの勝利!1位はDS、2位はKD、3位はFT、4位はHWとなる。

 ……四人は剣呑なアトモスフィアを放ちながら睨み合い、喧々諤々と議論を戦わせる。しかし、次第に……意外なことだが……デッドリーシャドウの邪悪なアトモスフィアが場を支配し始めた。彼は明らかに危険で、ヤクザの範疇には収まりきらないが、四組織の中では最も大きな勢力を率いている。

 ヘルウルフは彼と意気投合しつつあり、自分の取り分を減らしてでも彼を推挙し始めた。おそらく彼と同盟して傀儡として担ぎ上げ、後から裏切って取り分を奪う腹積もりだ。デッドリーシャドウは凶暴かつ邪悪だが単純で、策謀を見抜けるほどの知能指数はない。だが、そうなれば他の組織は……。

「フーム、まだまだ主張し足りないという方もいらっしゃるでしょうが、ここらへんで休憩を入れましょうか。なにせもうウシミツ・アワーですから」イニダはZBRアドレナリンを注射してキアイを入れ、仲裁した。彼としては誰がどうなろうと問題はないが、このままではどうもまとまりそうにない。

 ……その時!

死神のエントリーだ!1D6[6]=マップ上にいるNPC1人が死神の変装だった!その場にいるDKK1以上のニンジャ全員(HWと闇持ちのDS)は側転難易度+2!

「ドーモ、失礼します。スシとサケのお代わりをお持ちしました」フスマの向こうから男性店員の声。「ああ、どうぞ!」イニダは汗を拭き、外に出て一息つこうとフスマを引き開けた。次の瞬間、彼は手首を掴まれ、外へ投げ飛ばされた!「グワーッ!?」KRASH!壁に上半身が突き刺さり気絶!

「「「「!」」」」四人のニンジャは一斉にフスマの側を見た。男性店員はスシもサケも持たず、しめやかにサツキの間へ足を踏み入れる。その装束が内側から燃え上がり、赤黒いニンジャ装束となった!彼の顔を覆うのは、おお、ナムアミダブツ!「忍」「殺」と刻まれた鋼鉄のメンポである!

「オヌシらに休息の必要などない。この後はジゴクで納得いくまで話し合いとやらを続けるがよかろう。ドーモ、ニンジャスレイヤーです」

時系列シャッフル:このエピソードは時系列上ネオサイタマ・キョート戦争の開戦前に起きたことになります。トコロザワ・ピラーはまだ崩壊していません。ヌンチャクはありませんがナラク化も共振化も可能です。つまりいつものフジキドです。DSへ真っ先に襲いかかり、残りも状況判断で殺します。

【続く】

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