雨が降ると悲しみが見えない


三年前まで住んでいた寮は宅配物を管理人が預かるようになっていて、部屋番号を告げて受け取った。部屋に駆け込み絨毯に座り込み夢中で読んだ。
それが初めて読んだ田村隆一の詩集


東京に就職するのがその頃には決まっていた。
別のクラスの年下の男の子が「いらないからあげますよ」と言ってくれたCDはちょうど30枚位あって、上京して寂しくなったら一日一枚ずつ聴こう、そしたら一ヶ月は気が紛れる、よくそう思ったものだ。実際はほとんど手付かずになってしまったのだけど。

四度目の春が来る。
もう会わない人の分だけ私はもう少し優しくなろう。春に降る雪のことも信じよう。

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