見出し画像

舞台けいどろにたくさんしあわせをもらいました

記事タイトルの通りである。
これは私というオタクが、舞台けいどろに心を奪われ世界を鮮やかに染められてしまった話を語る場である。
ぶっちゃけTwitterで連日、延々と語っているので、私のフォロワーは耳タコだと思うが、それでも言わせてほしい。ええい離せ。私は舞台けいどろにたくさんしあわせをもらったんだ。本当だ信じてくれよ。

《 けいどろってなーにー!? 》

けいどろとは、「錦田警部はどろぼうがお好き」という作品の愛称である。早速だが、この漫画を知っているだろうか?

もう一度言おう。「錦田警部はどろぼうがお好き」である。
なんだこのタイトルは。少なくとも初見の私はそう思った。そもそも誰だ錦田って。警部が泥棒をすき?は?好きではなく、お好きって言い方よ。
いや、細かい所へのツッコミを無視しても、まずタイトルが超〜〜〜恥ずかしい
アニメイトで本を探す時に親友に「一緒に探すよ〜。なんてタイトル?」って聞かれて、「えっ…。や…ははは…えっとね…あの、なんかね、に、錦田…警部?は、泥棒がお…お…すきーみたいなやつで…」と、むしろ恥ずかしさに輪をかけてタイトルを口にした私の気持ちをちょっと想像してほしい。まぁとにもかくにも、錦田警部はどろぼうがお好きなのである。

この漫画のジャンルだが、「ゆるふわ追いかけっこコメディー」である。…えっ。なにもう1回言わせんの?「ゆるふわ追いかけっこコメディー」だよ!きゃっやめてよ恥ずかしい!
なんだそのジャンルは。私が知らんだけでじつは存在するのか?そういうジャンルが?SF、アクション、ドキュメンタリー、ゆるふわ追いかけっこコメディー、ってか?
少なくとも私の人生では、そんなジャンルは聞いたことがない。サッカーRPGという字面と同じくらい、初めましてたぶんここでしか会わないだろうけど、な字面である。

察しのいい方ならここで既に勘づいたと思うが、そう、とにかくこの漫画、いろいろぶっ飛んでいる
一応、上記のリンクから、アプリで漫画は3話までは無料で読めるからね。読むのが一番わかりやすいよ。
ストーリーは至ってシンプル。

錦田健吾(32)。怪盗ジャックという大怪盗の逮捕に執念を燃やす刑事である。毎度奮闘するが、華麗な身のこなしで盗みをこなすジャックを捕まえられずに今日も逃してしまう。去っていくジャックの背中に彼は叫ぶ。「おのれ怪盗ジャック!次こそは捕まえてやる!…次は、次は…次はいつ会えるー!?」

…はい。そういうことです。この男、明らかに「なんか違う感情」を抱いているわけです。怪盗ジャックにゾッコンなわけです。
つまりはBLなんですか!?と思ったところで、この作品のずるいところであり、私が大好きなところをお伝えします。
この作品は一貫して、恋愛感情を直接的に表現している言葉は一言も使われていないんですよね〜〜〜!!!

警部もこの感情がなんなのかわかっていないわけです。
だから読者は「いやいや警部!それってつまり恋だよ!!」とツッコミを入れるのも自由。
「オタクの見せる推しへの面白おかしい狂いっぷり」と見て共感を示すも自由。
私のように、「初めて自分の人生を鮮やかに染める存在に出会って、恋に限りなく近い執着心と依存心を抱き、自分にとっての世界の意味そのものでありそれを生きがいにしている」と解釈しても自由なわけです。(逆に厄介な解釈をするな)

そして原作においても舞台においても、公式の発言として徹底して、欠片もBLとカテゴライズされていないのも特徴である。そう言ってしまえば全部がそうなるからだ。BLとコメディーとヒューマンドラマの交わったギリギリの瀬戸際の線を見事に攻めてくる。
この世界観にもどかしさすら感じる。ただ、オタクはそのもどかしさというものが大好きなのである。なるほどオタクの情緒というものをよくわかっている。捉え方を完全にこちらに委ねてくる。じゃあいったいこれはなんなのかって、前述した通り、ゆるふわ追いかけっこコメディー!なのである。

(※恋愛感情の表現は無いとは言いましたが、見ていてニヤリとする要素として、抱きつく・壁ドン・頭を撫でる・うっかり押し倒す…等の表現はあります。苦手な方は一応ご注意くださいね!)

…本音を言うと、警部のアゴを割りたい(後述参照)ので、漫画はぜひ紙媒体で購入して読んで欲しいんですけど、きっかけなんてなんぼあってもええですからね。

([アゴ割り]とは…新装版として発刊された際に、作者様より『表紙の隅に描かれている錦田警部のケツアゴの線を書き忘れてしまった』との報告。重版がかかったら2刷で修正できるそうです。なのでぜひたくさん漫画媒体を購入して皆で警部のアゴ割ろうぜ!、という話です。おっと、ツッコミは受け付けないぜ。)

さて、この作品がとにかくぶっ飛んでいるということは理解頂けたと思うので、次からは、「このぶっ飛んでいる作品を舞台化するというはちゃめちゃに情緒を乱されるオタクの狂っていく様子」を順を追って綴っていく。こっからが本題なのになんかここまでが長くなった。


《舞台化発表》

2020年12月9日、けいどろ民の間で「けいどろが舞台化するってよ!」というツイートを見かける。それを見た私の反応、「HAHAHA!!!」である。
なんか知らんがこのジャンルの民は集団幻覚を見ることが多い。私もハマりたての頃はまんまと騙されたものだ。アニメ化してるんだと思った時期もありましたちくしょうめ。
今回の『舞台化』というワードも、けいどろ民の呼吸壱ノ型 幻覚芸であると、この時は信じていたのだ。
その証拠に、この当時Twitterの検索欄に「けいどろ」と打つと「けいどろ 舞台化」のすぐ下に「けいどろ 集団幻覚」と出てきた。

公式Twitterと公式サイトがある…?

ずいぶん器用な集団幻覚である。えっ。ちゃうねん。マジやんけこれ。どういうことだ。信じるのにだいぶ時間がかかった。
心を落ち着けて脚本・演出の欄を見て、嬉しすぎて奇声を上げた。この舞台、脚本・演出が川尻恵太さん…!!!?

ご説明しましょーう!(幸運の星ボイス)
私が心から愛してやまない、モブサイコ100という作品の舞台化もこの川尻さんが担当されていたのである。
モブサイコ100の舞台は、少年の心の葛藤や兄弟間のすれ違いという繊細なテーマを丁寧に表現しつつ、間にはクスッどころかしっかり爆笑してしまうようなボケを挟んで、観る人を決して飽きさせない、素晴らしく緩急のついた脚本だった。
そんなに偉そうに語れるほど川尻さんの作品を知っているわけではないが、表現を惜しまない、人を楽しませることに全力を注いでくれる、作り上げるということに妥協がない脚本・演出家、という印象だった。
つまり、川尻さんという時点で、熱い信頼と期待しかない。

しかし、心配があった。
あの世界観を…本当に人が表現できるのか…?

役者さんを信頼していないわけではない。
そうではなくて、前述したように、錦田警部や怪盗ジャックを筆頭にこの作品、全キャラクターがぶっ飛びすぎているのである。
以下はツイートこそしなかったものの、舞台化発表直後の私の心の叫びだ。

「錦田警部の表情や仕草やセリフの面白みって実際に人が出来るもんなの!?ビジュアル見ただけの印象ですけど、えっ…この錦田健吾かっこよすぎ…?大丈夫!?錦田健吾かっこよくなっちゃわない!?(いろいろな方面に失礼)
アンリくんの面白いツッコミも、世界一かわいい子(公式設定)の顔が、ドン引きしながら縦線めっちゃ入れてるあのギャップも、漫画だから出来てるんじゃないの!?
それに怪盗ジャックなんて、あの衣装だよ!?マントだよ!?実際にやったらなんか、こう…ダバダバしない!?下手したら浮いたコスプレじゃない!?ヒィ!」

…書いてて心苦しいので先に言っておくが、観劇後これらはとんでもなく失礼な心配だったことを知ることになる。今私はこの文を自分の横っ面を殴りながら書いている。
「えっ。けいどろ舞台化するんですか……?」
いったい何が起こるのか考えては、宇宙を背景に焦点の合わない目で虚空を見つめる猫のあの画像と同じ顔になり、そう何度も呟く日々を繰り返した。

《いよいよ公演の日が近づいてくる》

『カーテンコールでは、サイリウム・ペンライト、うちわなどの応援グッズは大歓迎です!』
公演2週間ほど前に、公式サイトに公演に関するお知らせが載せられる。感染予防対策等、全文ちゃんと目を通しつつ、この文だけ五度見した。もう1回書くね。

『カーテンコールでは、サイリウム・ペンライト、うちわなどの応援グッズは大歓迎です!』
…いよいよ何が起こるのか本気でわからなくなってきた。
刑事と泥棒の追いかけっこの物語に、サイリウム…?うちわ……??いったい何を見せられるのかもわからないまま、計3公演分のチケットをとる。

ネイルもけいどろ仕様に変えた。
そして、自分の持っているサイリウム(舞台おそ松さんの時に買ったサイリウム、つまり6色+白)では水色が出ないため、
「キャラクターそれぞれのカラーなんて全くわからんけど、少なくともアンリくんは水色じゃろ!」
と思い、急いで12色変化のサイリウムを購入した。仕事の休憩時間に。

このあたりでそろそろ自覚し始める。私はこの舞台の観劇が楽しみで楽しみでしかたないのだ。
思い返せば去年は、1月にデスノートのミュージカルを観に行ったのを最後に、その後見に行くつもりだった舞台や劇がいくつかあったが、このご時世のため、また諸々の都合で、延期や中止が相次いだ。仕方の無いことだとは思いつつも、すごく寂しかった。
追いかけている推しの俳優さんが特にいるわけではない。ただ、舞台やミュージカルで、人が全力で何かを作り上げる姿、目の前で頑張ってくれる姿が与える感動とエネルギーが大好きだった。そういうものに約一年間触れていなかった。
だから、この公演直前のそわそわとした気持ちが久しぶりで、その落ち着かなさも引っ括めて楽しんでいた。

そんな中で、とあるインタビュー記事が公式Twitterに載せられた。

お恥ずかしながら、役者さんに関する知識がゼロだったため、この記事を読むまでお二人がどんな方なのかを知らなかった。
でもこのインタビューを読み、心が楽しみで震えるのを感じた。あぁ本当に舞台化するんだ…!と胸が熱くなってくる。
作品やキャラクターがだいすきな気持ちや、稽古場の和気あいあいとしている雰囲気がやり取りで伝わってきて、既にハッピーをもらった。

お二人が言ってくれたように、この観劇を心から楽しもう!!!と、感謝と楽しみで胸がいっぱいになる感覚が嬉しくてたまらなかった。

《そして迎えた公演初日》

フェイスガードが必要になる1列目であった。キャパオーバーで確実に記憶が飛ぶであろう初見が1列目…?…1列目って…私の数字の知識が間違っていなければ、最前列という意味だが…?は………?
フェイスガードへのマスクの反射を防ぐ為には黒マスクがベストだという知識を得て、人生初の黒マスクを数日前に購入。

電車に乗って品川に向かいながら、もう既にどうにかなりそうである。移動中、マスクの中でめちゃくちゃに小さい声、というか息だけで「タスケテクレ~~~!」と言葉を繰り返す。人は緊張が過ぎると「たすけてくれ」って自然に口をついて出るもんなんだな。
緊張と興奮で大変なことになってたから、駅構内の移動はエスカレーター使わずにぜんぶ階段使ったし、アンミラのお手ふきは勢い余って引きちぎった。

これは開演1時間前のツイートである。頼むから落ち着いてほしい。
アンミラで震える手で紅茶を飲み呼吸を落ち着けて、開場時間になったのでクラブeXに向かう。

座席表は事前に知らされていなかったので、着席まで自分がどこの席だかあまりよくわかっていなかった。
自分の席を見つけ、着席する。と同時に気づく。

ほぼド真正面である。

パニックである。一度落ち着いたはずなのにパニックである。パニックパニックパニック全開なぁみさえ言うてる場合ではない。たすけてくれ。

この期に及んで幻覚でも見たか?と思い、トイレに逃げ込む。頭を抱える。

おかしい。こんなのはおかしい。なんださっきのあれは。だってどう考えてもあんなのはもう関係者席じゃん。むしろ原作者様の席じゃん。え…?私は…かんばまゆこ先生だった……?(刺される前に謝りな)

このままだとラチがあかないうえに思考がおかしいことになり始めているので、というかトイレの個室を精神と時の部屋にしてはいけないので、観念してトイレを出て目薬をさして席に戻る。

もうこうなったら、いろいろ「これ見よう」とか「見逃すまい」とか考えながら観劇したら、情報量で頭パンクする席だと察した。もう考えるな。全身全霊で感じろ。状態で臨むことにする。

もしかしたら開演と同時に、病院のベッドの上で真っ白な天井を見ながら目を覚まして、「あなた3ヶ月間も目を覚まさなかったんですよ」と医者に言われるんじゃないだろうか。
そんな不安と戦いながら、警官たちの作戦会議(という名の、観劇に関する諸注意説明)の時間を待つ。

「いっちに!いっちに!ぜんたーい止まれ!いっちに!」

ぴょこぴょこしながら登場した警官たち。こ、これがあの田んぽぽ警官たち…!あわわわわわ…喋ってる…!

「これより怪盗ジャック特別対策捜査本部の作戦会議を始める!ロビーで捜査をしている警官たちは、なるはやで着席するようにっ!」

なるはやっつったよ今。こんなハキハキ丁寧に喋ってるのに、なるはやっつった…。

「作戦中のサイリウム、うちわの使用はお控えください。作戦中にそれらをジャックに対して使用していいのは、錦田警部のみとなっております!」

ここでドッと笑いが起きた。肩の力が一気に抜ける。そうだ…今から始まるのはけいどろなんだ…!と改めて思い出すようなこのぶっ飛んだ発言。
その後も、手すりにうっかり置いておいた警察手帳を紛失したにも関わらず、警部には言わないで〜><な田所と、それに対しておっけー!と笑顔で返す他の田んぽぽ。
やべ〜!開演前に察してしまった。既にやべ〜〜〜奴しかいねぇ〜〜〜!!!すき〜〜〜〜〜!!!
…と同時に、この会場の私達は捜査本部の一員という設定がとても嬉しかった。この場にいられることが、奇跡だと改めて感じる。

このご時世、職場や周囲の人々との生活環境もあり、現地での観劇を涙を飲んで断念した方もいらっしゃると思う。この公演だって中止になってしまわないかと、直前まで不安でいっぱいだった。
それが今、目の前で『けいどろ』が始まろうとしている。『けいどろ』に命が吹き込まれていく。私はとても幸せな奇跡に立ち会えているのだ。
さぁいよいよ始まりますよ、めいっぱい楽しんでいってくださいね、そんな気持ちが伝わってくるニッコニコの笑顔で話す田んぽぽ達を見ながら、既に感激で涙が出そうになる。(※開演前です)

開演して出てきた瞬間に最前列で号泣してる奴がいたらこえぇだろうな…という理性と、泣いてしまったらフェイスガードが汚れて見えづらくなるかもしれんという現実的な心配で、涙を堪える。
手拍子の練習が普通にめちゃくちゃ難しすぎて結構必死になった。最初の繰り返しのところは、スーパースターマンの歌の導入部分とリズム一緒だから覚えやすいな…などと思ったりした。

さぁ、いよいよ開演である。
※ちなみにここから先は本編ネタバレしてます。

サイレンの音。ライトアップされる壇上。マントを華麗に翻し、ステージ中央に走ってきて、宝石を掲げて妖艶に笑う怪盗ジャック。えっ怪盗ジャック…?あっ!?うそうそ!?えっ!!本当に怪盗ジャックがいる!!!?

登場の瞬間から「俳優さんが怪盗ジャックを演じている」なんて見え方は吹き飛んだ。紛れもなく「怪盗ジャックが目の前にいる」!
なぜそう思わせたのだろう。あのジャックの衣装の再現度が完璧だった。それに加えて廣野さんのマントさばきが本当に素晴らしい。華麗かつ勝ち気な「ふっ…捕まえられるものなら捕まえてみろ!」からの、自分のペースを乱されて素の少年らしさが出る「は?」「まぁ本当にわかんないんだけど」の抑揚の変化。しゃべり方、オーラ…雰囲気から身にまとっているとしか言い様がない。こんな…こんなことがありえるのか…!

「次はいつ会える-!?」「待ってるから-!!」と叫ぶ、真っ直ぐな伸びのあるイキイキした錦田警部の声。ジャックに想いを叫ぶ照れくささや恥ずかしさなんて無い。錦田健吾というピュアッピュアな魂が目の前に存在している!

テレレテレレレッテレッテ~♪
おっ!ここでオープニングか!もしかして踊ってくれるのかな!?とわくわくっとした直後、

「盗まれたのは宝石だけじゃない~♪絵画だけじゃない~♪」

歌うのォ!!!?えっ!っていうか歌うま!なにそれ!いや歌うのは聞いてたけどもう歌うの!?踊って歌ってるぅ!!っていうか歌うまぁっ!!!
稽古風景の情報もほぼ皆無だったため、何が起こるのか全くわからない、という事実にある程度の心の構えはして挑んだはずなのに、思ってた以上に全力でパワフルに冒頭からエネルギーを浴びせてくる。

「これはめちゃくちゃ歯がゆい物語、誰も気づけない物語、全然捕まえられない物語、二人を見守る物語」

そしてこのオープニング、歌詞が最高にかわいいのだ。
かわいくて、おかしくて、これでもかというほどめいっぱいに、けいどろを表す言葉たちが、楽しくポップなメロディーに乗せられている。
中央の錦田警部とアンリ巡査を大切に見守りながら、ステージ全員がくるくる踊る。見ている人を巻き込んでくれる。
まるで夢のようにあっという間に、とんでもない熱量のオープニングが終わると、強く熱い拍手を送っていた。(アーカイブで確認したが、この時の自分の拍手の手の位置が顔くらいまで高くて、本当に嬉しそうにめいっぱいに拍手を送っていた。我ながら、こいつ幸せそうやな~って思った。)

本編は終始、間髪入れずに小ネタのオンパレード。ついさっきのセリフでまだ笑っているのにも関わらず、次から次へとどんどんボケを投下してくる。まさしくボケのガトリングである。

そして素晴らしい脚本。
見たかったあのエピソード、あのシーン、全部を詰め込んできている。まさか大好きな水泳回をやってくれるとは思っていなかった。
ブロマイドでビート板の存在を確認した時の私「へぇ〜。原作に出てくるこんなアイテムも、わざわざブロマイド撮影のために用意してくれたんだ~!この回がないと二人の心の歩み寄りや信頼関係がより輝かないわけだけど…でもまぁ水のシーンだし舞台でやるのは無理だろうな~!」………

セェイッ!!!!(自分の横っ面を平手で叩く音)

そうだ…そうだった…川尻さんは、「ここを表現したい!」と思ったら、どんな環境・シチュエーションであろうと全力で演出をしてくれるそういうお方だった。

丁寧に作り込まれた脚本、それぞれの役者さんとキャラクターとの相性を見てこだわって作られた衣装やウィッグ、タイミングばっちりのライティング、場面をその都度盛り上げてくれて終わっても耳に残るメロディー、頭のてっぺんから爪先までの全身で表現してくださるキャストさん達…。

アンリくんという存在が…錦田警部という存在が…、大切に息を吹き込まれて、目の前で生きている。
舞台化発表時、実際にけいどろの世界観を表現できるのかと心配していた諸々は、とんでもない杞憂だった。むしろたくさんの人の想いと情熱によって、息を吹き込まれた世界がそこに広がっていた。

さらにすごいのは、この舞台、暗転時間が本当に短い
あのキャスト人数で、あの場面転換と衣装の多さで、あそこまで「待たされてます感」が全然感じられないのは本当にすごいことだよ…。
明らかにセットに時間がかかるところ(応援中のお布団準備や、「何待ちぃ?」「犯行予告時間です!」のジャックお着替え待ち)に関しては、いっそ潔く「ちょっと待ってくださいね!」ってことを素直に言って会場を温かい笑いで満たしてくれたのも良かった。

お布団なんて結構大胆な準備が必要なはずなのに、「いったい何を準備しているんだろう?」って気にする暇が無いくらい、集中力が必要な手拍子をさせることで、そっちに意識がいってしまう。
そして忘れた頃にスゥッ…とせり上がってくるお布団の面白さよ。笑いの取り方と準備に余念が無さすぎる。
一秒も退屈な時間など作らせないぞ!、すべての瞬間を楽しませるぞ!、という情熱が演出の方々にもキャストさん達にも貫かれているのが本当に素敵だと思う。

初日は帰ってきて急いでアーカイブ配信を購入して、何度も何度も繰り返し見た。劇中の歌を覚えて日常で口ずさむようになった。
お夕飯時には必ず「ジャァック~お腹が~空いて~る~だろう~♪晩ご飯の準備は~でき~てるぞ~~♪」と歌う癖がついてしまった。なお、私は一人暮らしである。部屋には自分以外に飯を振る舞う奴はいない。(こわ)

もうすっかり虜になっていた。次の公演を見に行ける日が待ち遠しくてたまらなかった。思い出して語ったり、アーカイブを見ながら改めて気づいたことを呟いたり、舞台のことを語るツイートが増えた。
とにかく、人の全力が与える喜びとエネルギーってすごい!公演期間中ずっと元気がもらえる。現地に行けない日だって「この瞬間も頑張ってくれているんだな。あの舞台の空間を作り上げてくれているんだな。」と思うだけで、自分のことを頑張ろうって思える!
数日前まで、腰痛が悪化していたのか、仕事中冷や汗が止まらなくなるほどずっと背中が痛かったのだが、なぜかけろっと治った。もしかしたら治癒効果もあるのかもしれない。すごいぞ舞台けいどろ!

《2回目の観劇》

2回目の観劇は3/16の公演。再び、廣野さん&藤田さんペアの日である。
アーカイブを狂ったように見ていたので、歌はもちろん、もうこのお二人のやり取りが定着し、そろそろセリフの抑揚や間の取り方を覚え始めてしまっていた。腕が痛くなるほど家で練習し、カラーチェンジの順番も設定し、サイリウムを振る準備は~でき~て~るぞ~!♪

Twitterで毎日レポ(書いてくださっていた方々本当にありがとうございます)の検索をしていたので、日替わり要素がどこなのかも理解し、前回より心に余裕を持って挑むことができた。今回はアンミラのお手ふきは引きちぎらずに済んだ。

そしてこの公演、初日よりものすごくパワーアップしていた!
舞台って、その瞬間瞬間が完成品となるわけだから、公演中もどんどん成長していく。あんなに繰り返しアーカイブ見て予習しているんだから、展開もセリフも知っているはずなのに、声の迫力やそこに込める感情が記憶の中のものよりもっとずっと強くなっていて、新しい感動がまた目の前で生まれていく。舞台って…呼吸してるんだ…生きているんだなぁ…。

この日、アンリくんが警部のことをくすぐるシーンが、まるで抱きついたように見えて、ああこの子は本当にこの人のことが(自覚はしていなくても)だいすきなんだな…と温かい気持ちになった。

たくさん笑って、心を震わされて、エンディングの歌詞、「ハッピーな追いかけっこ~!♪」のところでぼろぼろと涙がこぼれた。本当にハッピーをありがとうという感謝の気持ちで胸がいっぱいになってしまって。
だいすきだなぁ、この舞台が…。本当にありがとう、ハッピーたくさんもらったよ、明日もがんばろう、私も誰かをハッピーにできるように、マスクしてたって零れちゃうくらいの笑顔で人と接しよう。そんな風に考えながら、帰り道いい歳こいてスキップしちゃったわね。

《3回目の観劇》

3回目の観劇は3/17の公演。ゲネプロ映像で見てはいたが、初めて実物を拝見する、大崎さん&高木さんペアの日だった。

ちょうどしゅんりーさん(高木さんこっちが愛称らしいのでこっちで呼ばせてもらっちゃおえへへ)のお誕生日の日で、アイスの売り子さんが「誕生日おめでとうございます」とアドリブを言い、ほわっと温かい拍手のあがる会場。

アンリくんの「泳げたぁー!」[よかったね!!]の時も、ジャックのプーラモ~♪の時もそうなんだけど、会場から自然な温かい拍手が上がることの多いこの舞台の空気、素敵だなぁ…。
なお、部下田を傷つけてしまう拍手は、公演を重ねるごとにしっかりしたものになっていくのはすごく面白かった。私が見た時はまだ戸惑いの拍手だったというのに…千秋楽ではあんなに強く大きな拍手になって…へへ…(鼻の下こすり)

ダブルキャストの舞台を両方観劇するっていうのが初めての経験だったんだけど、それぞれの役者さんが、錦田警部、アンリくんというキャラクターを理解して、自分の解釈で表現して、でもその解釈は決して奔放すぎるわけではなくて、愛を持ってキャラクターに歩み寄ってくれていて、「自分はこう表現しよう」「こういうパターンで区別してお客さんに楽しんでもらおう」という丁寧さが本当に素晴らしいと思った。
皆さん役者さんだからそりゃ当たり前だよって話なのかもしれないけれど、本当に、演じる・表現するということが心からだいすきなんだろうな…というのが伝わってきて、その楽しそうな様子は千秋楽のオーディオコメンタリーからも伝わってきた。

「昔は死んだ目で生きてたんだ すべてのものがどうでもよくて いつ死んでもいいと思っていたけど かけがえのないものに出会ったんだ」

エンディングのこの錦田警部の歌、真っ直ぐに手を伸ばしてイキイキと笑顔で歌う姿がだいすきだ。
私はこの舞台を見るまで、錦田警部は面白い人っていう印象が強かったんだと思う。舞台化決定のビジュアルを見た時に「錦田警部かっこよくなっちゃうじゃん!」といらん心配をしていたが、バーローちげーよかっこいいんだよ錦田警部って男は…!もちろんぶっ飛んでるし面白いんだけど、それ以前に、生き方がこれでもかってくらい真っ直ぐなのだ。
真っ直ぐに、大好きなものを大好きとはっきり言い切って生きられる人はかっこいいのである。一生懸命の人は眩しいのである。錦田健吾という男は本当にかっこいい男なのだ。

そんな風に温かく、幸せいっぱいな自分がなんだか誇らしく、清々しい気分で観劇を終えられたと思う。

《ありがとうでいっぱいの千秋楽》

千秋楽は、後日、昼夜両公演ともアーカイブ配信とオーコメ付き配信を購入して見た。

見たら本当に終わってしまう…見なければ「私行けないだけでまだ全然公演期間中ですし?」という幻覚を一生見続けられるという狂った思考と戦いながら、昼の再生ボタンを押す。

藤田さんのアドリブの連発。汗だくになりながら、全力で錦田警部を楽しんでいる姿。自由に大胆にかっ飛ばしながらも、ふとした時に見せる繊細な表情。

初日から度肝を抜かれたお二人の歌唱力。お互いの声を聞いて、真正面から目を見つめて、アドリブにも全力で食らいついていく。
あのやり取りや会話の間のテンポの良さ、セリフの面白さとスピード感、全てを自分のモノにしている。駆け抜けてきた集大成がそこにあった。

お腹が痛くなるほどたくさん笑って、廣ンリくんの「まぁ、今日も怪盗ジャックを捕まえに行きましょうか!」の力いっぱいの言い方と笑顔で、胸がいっぱいになって泣いた。

そんな全身全霊のバトンを受け取って繋がった、大崎さん、しゅんりーさんの夜公演。
本当に終わっちゃう…寂しいよ…でも見届けたい…そばにいてくれ……、とめそめそしながら夜の再生ボタンを押す。

一言で表すなら、優しさと信頼に溢れた回だった。

最初の大崎さんの「ブラッディローズ!」の言い方が本当に、さぁ始まるぞ!!!楽しませるぞ!!!楽しむぞ!!!の気合いがぎゅっと詰まってて、この一言の熱さと強さでスイッチがバンッと入った気がして、めそめそした気持ちが一瞬で吹き飛んで、見ていてすっごくすっごく嬉しかった。

プリンセスリングが所定の場所から落ちてしまい行方不明になったハプニングも、瞬間的な意思疎通でプラン変更をし、見事に乗り越えてみせてくれた。
演技の中で、観客に勘づかせない程度の一瞬で的確に事態を伝える大崎さんの役者としてのプロ根性、この時のしゅんりーさんの『大丈夫だ任せろ』と伝えるかのような小さな頷きが、互いの信頼を感じてとてもかっこよかった。
すごいな…役者さんって…。舞台は呼吸をしている、生きているって、こういう、人の努力と信頼と情熱が濃縮されたものがそこにあるから、そう感じられるのかもしれない。

そして、「やりたいことなんて一つも無かった。いつ死んでもいいと思ってた。でも、生きてりゃいいことあるんだよ。」のセリフが、まるで自分のことのように響いた。

やりたいことや夢中になれることがないままだと、ゆっくりと心が死んでいくような気がして、ばかだなぁって笑っちゃえるくらい、何かに全力で夢中になりたかったんだ。
あの日に、舞台の初日に突然目の前に広がった鮮やかな世界が、自分の心を震わせて、全部がキラキラ輝いて見えて、最高の景色に出会えたことが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
ジャックに初めて出会った時の警部も、こんな感覚だったのかなって思ったり。その奇跡に一瞬で心を奪われたような感覚。そりゃあ、キモチワルくもなるよ。なりふり構ってられなくなるよ。おまえが…おまえがいたから……。この流れだと私は舞台に家を爆破されるので、ポエムはこのへんまでにします。

それから最後、エンディングでアンリくんが歌っている時って、今まで基本みんな後ろで好き勝手してたよね。バレーボールとか誕生日パーティーとか三点倒立とか。
この千秋楽で、大ンリくんは自分から両手広げて皆の所に向かう瞬間があって、それでいてばかやってる皆を振り返って、あーぁもうって顔で愛おしそうに笑う。
オーコメを聞いた後だと、より一層、どんな気持ちで今まで一緒にこの舞台を作り上げてきた仲間たちをそんな表情で振り返ったのか、アンリくんという存在としても、大崎さんという役者さんとしても、幸せな気持ちが染み入るし、感謝がこみ上げてしまって、千秋楽夜公演ここで号泣した。

オーコメ付き昼公演の話に戻るけど、最後のエンディングの時に「ここでのお客さんたちの笑顔が、めっちゃすきなんですよね」って大崎さんが言うのがすごく嬉しかった。
客席の表情見てくれてたんだなぁ。こっちがマスクしていても声が出せなくても、笑顔とありがとうがちゃんと伝わっていたんだなぁ。


こんなに温かい楽しさに包まれるのは、あの舞台が、自分と誰かを大好きでいる物語だからだと思った。

誰かを馬鹿にしたり貶めるような笑いじゃなくて、誰かを大切にする喜び、そんな愛情がいっぱいすぎて振り切れちゃった変だけどハッピーな人達を見続ける、温かい笑いだから。

この一年で、人との交流も繋がりも以前より薄くなってしまうなかで、「配慮する」「相手が言わずとも察しようと努力する」「言葉を飲み込む」という経験が少なからずあって…。
そんな時だからこそ、この”好意も自分の考えも、相手にはっきりと気持ちを込めて伝える”ってことがとても素敵なことだって、真っ直ぐに伝えてくれる物語に魅せられたことがとても嬉しい。

本当に、本当に幸せをたくさんもらった。
たくさん笑わせてくれてありがとう。
夢中になれる喜びを教えてくれてありがとう。
大好きを教えてくれてありがとう。
私は、舞台けいどろが心から大好きです。




…はい。順を追った狂いの様子は以上になります。
これだけ長く語っても、まだこの感動と興奮と喜びを言葉にしきれていない気がする。このnoteを書き終えることが惜しい。

この狂いは今も現在進行形で、目の裏に焼き付いた配信アーカイブを脳内再生しては、Twitterでまるでついさっき見てきたかのように語り出す奇行ムーブをかましている。
その度に、脳内の部下田が「なぁ〜にやってんだってぇ〜!」と跳ね回る。瞳を閉じればあなたが目蓋の裏にいることで…どれほど強くなれたでしょう…の気持ち。(名曲を汚さないで)

自分の気持ちを"感想"というものに起こして、そしてそれを終わらせるのは、一つの閉幕であるような気がして、それが寂しくてなかなかこうやって言葉としてまとめられず、気づけばあの夢のような公演期間から、1ヶ月近く経ってしまった。
未だに、「終わった」という感覚はない。感動がそこにあり続ければ、幕は上がり続けているのかもしれない。なんちゃって。

今となっては、文字に起こしてやっぱりよかったなと思っている。この想いをちゃんと形にしよう、大切に言葉にしよう……そう思って、ただひたすらに言いたいことを書いただけのnoteだが、こんな乱雑極まりない文章を最後まで読んでくれた人がいるのなら、私はきっと、また嬉しくて嬉しくて泣いてしまう。


好きすぎていっぱい語ってしまったけど、舞台を見たことのない人でも全然構えずに見れる、それでいてたくさん笑って、幸せのおすそ分けをそっともらえる、素敵な舞台だと思う。
DVDの発売も決定しているので、ご参考までにリンクここに置いときますね!

【DVD】舞台『錦田警部はどろぼうがお好き』 https://www.animate-onlineshop.jp/pn/pd/1908045/

11月末に発売予定です!
〔2021.5.30追記〕発売予定日が早まり、9月9日に発売決定と発表されました!ちなみに、発表された日は錦田警部の誕生日、発売予定日はアンリ巡査の誕生日です。こういう粋なことしてくれるところが本当にだいすき!





「それではまた逢おう。約束の時間に。」





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?