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絵巻詞書集(30作)公開

先週、2015年に最初の10作をもって出発した特設サイト「絵巻詞書集」を更新し、あらたに15作を加え、あわせて30作とした。その内容の概要は、ブログ「絵巻三昧」に記した。(「詞書集30作」)。

サイトの目的は、あくまでも絵巻に含まれる文字を電子テキストの形で提供するものである。思えば、インターネットが普及しはじめた30年ほどまえから、古今東西の書籍を電子テキストに変えることは、まさに最初の応用分野の一つだった。その代表的なものを言えば、「青空文庫」とだれもが想起することだろう。日本の古典においても、「J-TEXTS 日本文学電子図書館」、「古典総合研究所」、「源氏物語の世界」など、個人あるいは少人数のグループによるものから、「古典選集本文データベース」(国文学研究資料館」)、「日本語歴史コーパス」(国語研究所)といった検索や分析などの環境を構築するものまでさまざまなものが公開されている。その中で、絵巻というジャンルに絞ったものとしたのは、このささやかな試みなのだ。

平安、中世の絵巻は、その詞書がこれまで繰り返し翻刻され、いまさら最初から作業を始める必要はない。このサイトに収録したものも、主に「日本絵巻大成」に依った。ただし、作品対象はあくまでも絵巻そのものであり、その多くは高精細の画像でデジタル公開されていて、対照確認も簡単に叶えられるので、特定の翻刻を再現することを前提にする必要はない。そのため、「日本絵巻大成」を用いながらも、消失した原文文字についての対応、句読点の打ち方、読み下しの文字遣いなどを随所に改め、原文文字の誤認や誤植の訂正なども、特別に明示しなかった。

古典を内容とする電子テキストは、ほとんどの場合、閲覧を第一の目的に想定されていない。それでも、このサイトは、読みやすさに拘り、縦書きを実現した。ほとんどの閲覧環境に対応していて、いささかな自慢である。絵巻の文字は、やはり縦書きで読むに限る。同時に、文章が引用される利用を考慮し、テキストをそのままコピーペストも可能にしている。利用している方法は、「h2vR.js」が提供しているJAVAスクリプトだ。あわせて感謝したい。

今年の一月、国立国会図書館は、「次世代デジタルライブラリー」と名乗り、一気に33.6万点の資料の電子テキストを提供し、古典テキストをめぐる環境も大きく変わった。その中には、絵巻詞書も多数含まれている。いずれはそのような大規模な自動作業で生成したものを気軽に利用するような方法も生まれてくることだろうけど、それまでには、この特設サイトが試みた慎重に校正し、丁寧にレイアウトする根気のいる作業がまだ必要だと信じたい。

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