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夕遊の連続劇

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連続ドラマは、見始めてからしばらくの間、現実を忘れさせてくれる元気の素です、映画よりも物語を深く長く描いてくれるのが素敵です。わくわくするドラマを、誰かにそっとご紹介。
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#おすすめ本

新しい世界は闇から始まる。『闇の中国語入門』楊駿驍

「歌は世につれ、世は歌につれ」。それは歌だけでなく、言葉も同じ。新しい言葉ができたり、海外から入ってきたり。そして、それがその国独特の言葉に変化していきます。もともとネガティブな言葉が普通になって、さらにポジティブな意味も加わったり。言葉をめぐるおもしろさは、単純なコミュニケーションの道具というだけじゃなく、世の中の変化を定点観察できる部分にもあります。 楊先生の文章は、noteの記事をもとに書かれたそうですが、1冊の本として読むと、その構成力や深みのある洞察、なにより、1

中国ドラマや小説を楽しむために。『古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで』柿沼陽平

出版直後からすごく話題でしたが、ようやく手に取ることができました。きっかけは、中国ドラマ。とりあえず、古代中国の基礎知識が欲しかったので。絶対おもしろいことはわかっていたのに、期待の3倍おもしろかったです。 この本でいう古代は、秦漢(紀元前3世紀~後3世紀)+αです。私の見たドラマでは『羋月(ミーユエ)』あたり。あと、『三国志』関係は本もマンガも結構読みましたが、『三国志』は戦争とか政略がメインなので生活方面の記述はあまり出てきた記憶がありません。どうでもいいですが、この時

リアルと漫画はどこが違う?『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』中川裕

楽しみに待っていた1冊。わくわくしながら読みました。アイヌ研究の中川先生の文章は、『ゴールデンカムイ』を読み始めたあたりから、結構読んでいましたが、まとめて読めるとは本当に最高です。いろんなところで講演会とかあっても、遠いところはなかなか行けないので。 実際に『ゴールデンカムイ』の漫画に出てくる明治時代のアイヌ文化の概略とか、当時の明治の北海道のようすなんかも詳しくわかるので、とても楽しい内容になっています。 『ゴールデンカムイ』の野田先生はとてもよくアイヌ文化や、明治時

ヒット作はあたり前だけどおもしろい。『チーム・バチスタの栄光』海堂尊

東京から実家まで、新幹線+在来線で約3時間。当時は電子書籍がなかったので、駅の本屋で気になっていた本を購入。どの書店でも山積みだっただけの理由はありますね。期待通り、もう新幹線に乗っていることさえ忘れ、乗り継ぎの短い時間も面倒で、ずっと読み続けていたいほどでした。3時間があっという間に過ぎて、スリリングで楽しかったです。 物語の舞台は、架空の東城大学医学部付属病院。アメリカの心臓専門病院から心臓移植の権威、桐生恭一を招き、彼の外科チームは通称“チーム・バチスタ”として100

ライトで楽しいお仕事モノ。『校閲ガール』宮木あや子

大好きなファッション誌の編集になることを夢見て、出版社に入社した河野悦子。でも、配属されたのは作家の文章をチェックする校閲係。私はたまたま仕事で関係があるので、「校閲」と聞けばいぶし銀のプロをイメージします。でも普通、「校閲」って聞いたこともない人の方が多いんじゃないでしょうか? そんな、一般的には地味な「校閲」をテーマにすれば、普通なら三浦しをんさんの『舟を編む』みたいな話になりそう。でも、宮木さんは校閲のお仕事と、おしゃれ大好きな女の子を組み合わせて、がっちり校閲のお仕