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夕遊の連続劇

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連続ドラマは、見始めてからしばらくの間、現実を忘れさせてくれる元気の素です、映画よりも物語を深く長く描いてくれるのが素敵です。わくわくするドラマを、誰かにそっとご紹介。
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#女性の生き方

ノスタルジー上海。『長恨歌』王安憶(飯塚容訳)

予備知識ゼロで手に取った、王安憶の長編『長恨歌』。白居易の『長恨歌』と同じ名前の現代小説なんて、一体どんなだろうと読み始めたのですが、独特な文体にあっという間に引き込まれました。彼女の文体は、中国で「評論叙事文体」と名付けられたそうです。 凝った表現や、美麗な修辞でもなくて、一文、一文はシンプルで短いのに、それが一つ、また一つと連ねられると、他の誰とも違う雰囲気を醸し出す不思議。例えば、冒頭はこんな感じに始まります。 本書は、1945年の上海という都市の複雑に入り組んだ町

傷ついたからこそ、美しく輝く。台湾ドラマ『茶金 ゴールドリーフ』2021年

出張先の夜に一気見。評判以上のすばらしいドラマでした。植民地時代の日本語、台湾の人たちの台湾語、主人公一族の客家語、そして中国大陸からやってきた人たちの国語(Mandarine)や上海語、蒋介石の国民党政権を支えるアメリカ人たちの英語がいきかいます。そして、登場人物たちのセリフ以上のものを使い分けられる言葉たちが表現します。 主人公の張薏心(チャン・イーシン)は、茶虎と呼ばれる台湾最大の茶輸出会社「日光」の社長張福吉(吉桑:ジーさん)の一人娘。台湾の新竹県北埔鎮が彼とその張

中国の宮廷ドラマをもっと楽しむために。『東アジアの後宮』(伴瀬明美・稲田奈津子・榊佳子・保科季子編)

最近、中国の宮廷ドラマが日本でも気軽に見れるようになりましたが、そもそもどのくらいフィクションで、どのくらい実話に基づいているの?という疑問がわきます。 そこで、ちょうどタイムリーに出た論文集を入手しました。全くの専門外なので、読むのにはちょっと努力が必要ですが、それでも普通のお硬い論文よりは、かなりマイルドだし、短いし、コラムもあるしで楽しめました。 タイトルに東アジアとあるとおり、中国だけじゃなくて韓国や日本、ベトナムや沖縄(琉球)も含まれていて、しかも古代から近代に

壮大なシスターフッドの物語。中国ドラマ『ミーユエ』(羋月伝)

『家族の名において』で唐燦(タンツァン)がスタントをさせられそうになった孫梨(スンリー)という架空の女優さん。有名な実力派女優の孫儷(スンリー)の名前を借りたのだと思います。 私が初めてスンリーの名前を聞いたのは、中国残留婦人として苦労した日本人女性のドラマ。ベストセラー小説のドラマ化で、日本と中国が今ほどギクシャクしていなかった頃のお話。以来、スンリーってどんな女優さんか気になっていました。 今回、スンリーが主役のドラマは、なんと紀元前(!?)の中国の後宮が舞台のドラマ

強くてブレない女性の魅力。ドラマ『瓔珞』(延禧攻略)中国、2018年

とうとう見てしまいました。全70話もあるのでどうしようかと思ったけど、私の大好きな邱秋さんが主役の声とあっては見ないわけにはいきません。 『琅琊榜』で穆霓凰の声を担当した邱秋さん。(あと、アニメ『天官賜福』の風師も!)『瓔珞』ではイメージした宮廷ドラマを遥かに超えて、穆霓凰以上にイケメン役でした。 清朝は乾隆帝の時代。刺繍担当の女官になった魏瓔珞(ウェイ・インルオ)が持ち前の頭の良さで皇后の女官になり、令妃になり、ラストは皇后にまで上り詰める実話ベースのドラマ。インルオは、

わくわくしかない中国レトロミステリー『紳士探偵L 上海の事件録』2019年

3年くらい前、中国で話題になっているとき、第1話を見たんですが、あんまり好みじゃなくて、そのままになっていました。今なら、アマプラでも見れるし、日本のテレビでも放映になったそうです。すっかり忘れていたのですが、ふと思い出して見たら、第2話以降がおもしろかったので、ハマってしまいました。 BBCの『シャーロック』を思わせるテーマソング。武闘派女子が活躍するミステリー。しかも、舞台は1930年代の上海なんて、私の好みばっかり集めたみたいです。しかも、ドラマがすっごく標準語でわか

ライトで楽しいお仕事モノ。『校閲ガール』宮木あや子

大好きなファッション誌の編集になることを夢見て、出版社に入社した河野悦子。でも、配属されたのは作家の文章をチェックする校閲係。私はたまたま仕事で関係があるので、「校閲」と聞けばいぶし銀のプロをイメージします。でも普通、「校閲」って聞いたこともない人の方が多いんじゃないでしょうか? そんな、一般的には地味な「校閲」をテーマにすれば、普通なら三浦しをんさんの『舟を編む』みたいな話になりそう。でも、宮木さんは校閲のお仕事と、おしゃれ大好きな女の子を組み合わせて、がっちり校閲のお仕

強くて頭のいい美人は最高。BBCドラマ『SILK 王室弁護士マーサ・コステロ』

偶然見つけたBBCのドラマですが、これがもう最高におもしろくてハマりました。舞台はイギリス。王室弁護士を目指す弁護士マーサの物語。もし、年末に時間を持て余すことがあったら、このドラマシリーズをおすすめします。6話×3シーズンと、アメリカのドラマほど長くないの見やすいです。 シーズン1は、イギリスの弁護士の名誉ある資格「王室顧問弁護士」を目指すマーサ(マキシーン・ピーク)とライバルのクライブ(ルパート・ペンリー=ジョーンズ)、そして2人が所属する弁護士事務所の上級事務官のビリ