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夕遊の厨房

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おいしそうな本、写真、旅で出会った素敵なお店など、食いしん坊が喜ぶあれこれをまとめています
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#読書記録

スリリングでミステリーでおいしい小説は反則『炒飯狙撃手』張國立(玉田誠訳)

狙撃手(スナイパー)のイメージといえば、孤高。人付き合い苦手。無駄なことしない。無口。ストイック。百発百中の仕事人。なのに、本書のタイトルは「炒飯」+「狙撃手」。炒飯ですよ、チャーハン!!! この矛盾率高過ぎな言葉の並びだけで、中華好き&言語好きの10人中7.3人は本を手にとってしまうはず。 主人公の狙撃手「小艾(シャオアイ:艾礼)」は、組織の指示通り、ローマで東洋人のターゲットを射殺しました。あちこちにある防犯カメラを想定して、変装と移動を繰り返し、完璧な仕事をしたはずな

おいしいってなんだろう?『人間は脳で食べている』伏木亨

とっても興味をそそられるタイトルの本。いくつものトピックがほどよい文章でまとまっていて、その1つ1つが面白いです。でも、この本をまとめて何がいえるか、というとなかなか全体像がイメージしにくい。それは、著者の伏木先生も書いているように、おいしさに関わる脳の情報処理のメカニズムは、未だよくわからないことが多いからなのかも。 ともあれ、内容がおもしろかったことは間違いないです。例えば、甘味と旨味を感知する受容体は、人間に1種類づつしかないけど、苦味や酸味に対しては30種類もあると

あたり前の今ができる限り続くように。『世界からコーヒーがなくなるまえに』ペトリ・レッパネン、ラリ・サロマ―

世界中で手軽に飲まれているコーヒー。コーヒー豆の世界の取引額は、原料の中で石油の次に多い。そして、石油と同様、産出される地域は限られている。ブラジル、ベトナム、コロンビア、インドネシア、エチオピアが5大生産国。数百万人以上がコーヒー産業に従事している。 コーヒーの灌木は、赤道を挟んで北回帰線と南回帰線に挟まれた地域が自然の生育に適した地域で、コーヒーベルトと呼ばれている。気温は年間通じて摂氏二〇度を超え、火山灰の土壌が好ましく、日光と雨量がバランスよく降り注ぐ必要がある。

牡蠣好きにはたまらない。『牡蠣礼讃』畠山重篤

牡蠣大好きな私は、よくスーパーや魚屋の特売コーナーで牡蠣を買っていました。ただ、娘が甲殻類や貝がダメなので、ほとんど買わない年もあれば、自分の仕事のためにエネルギー確保で買う年もありした。 手頃な牡蠣が入手できたときは、以前はブロッコリーと牡蠣のグラタンが定番でした。でも、最近ではおいしいものを少しだけ食べたい年齢になったので、年に一、二度くらいが普通になっている気がします。 夫が職場から持ち帰ってくれる、殻付き牡蠣を電子レンジで1分ちょっとチンして、白ワインと一緒にいた

おいしいと楽しいがつまってる。『リンゴの文化誌』マーシャ・ライス

マーシャ・ライスは、ニューヨークの歴史と建築に関する本を書いているライターさん。ガーデナーでもあるので、植物に関する本もあるとのこと。本書は、自宅にあるリンゴの木の由来から、世界各地のリンゴまで、幅広く語ってくれる内容になっています。 中央アジアからシルクロードを経て、世界に広まったリンゴ。そんなリンゴにまつわる、山盛りの知的コラムとステキなカラー写真が最高です。なんせ、写真がオールカラー! なのに、お値段が手頃で本当にすごいです!! 例えば、1935年にアメリカ・ヴァー

こんな和菓子のお店で働きたい!『和菓子のアン』坂本司

お正月そうそう怪我をしてハビリ。こういうときは、がっくりきているので、ほっこりやさしい小説が読みたいと手に取ったのが、この本。読むとほっこりして、お腹がすくらしいですが、読み終えた感想はただ一言。こんなお店で働きたい! です。 主人公の杏子ちゃんは、ちょっとぽっちゃりの下町商店街育ち。食べるの大好きなお母さんやお兄さんと暮らしています。高校を出たけれど、大学に進学するほど勉強が好きではないし、かといってなにかやりたいことはないし。そんなある日、デパ地下の和菓子屋さんにバイト

台湾グルメと鉄道の旅と百合。『台湾漫遊鉄道のふたり』楊双子(三浦裕子訳)

予告されたときから、すごく楽しみにしていた本。『台湾漫遊鉄道のふたり』というタイトルもそうですが、表紙のデザインがレトロかわいくてステキ。台北駅がモチーフになっていて、昭和のおしゃれな女性2人が楽しそう。広告のキャッチコピーも「グルメ、鉄道、百合」って情報量多すぎで、わくわくしかありません。 舞台は昭和13年5月、作家の青山千鶴子は台湾の講演旅行に招かれます。妖怪と言われるほど食いしん坊な千鶴子は、台湾の珍しい食べ物に興味津津で、片っ端からチャレンジしたがります。でも、当然