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夕遊の厨房

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おいしそうな本、写真、旅で出会った素敵なお店など、食いしん坊が喜ぶあれこれをまとめています
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#女性の生き方

シェフと料理と人生の物語。映画『マーサの幸せレシピ』ドイツ・オーストリア・イタリア・スイス、2001年

映画の舞台はドイツのハンブルクのレストラン。主人公は腕のいいシェフのマーサですが、彼女は精神的なストレスを抱えていました。料理に絶対の自信があるのに、理解のあるいいお客ばかりではないからです。レストランのオーナーは彼女を信頼してくれていますが、客に対してはマーサに譲歩をうながします。でも、マーサは料理に関して絶対に譲らず、お客とケンカもしばしば。 マーサは親しい友人もいなければ、パートナーもいない一人暮らし。レストランのオーナーにはカウンセラーに通うように指示されて、一応通

自然の恵みと山の村の暮らし。『リトル・フォレスト』五十嵐大介

以前から気になっていたけれど、きっかけがなかったマンガ。映画館で見た韓国リメイクの予告編があんまりきれいだったので、ようやく読みました。この『リトル・フォレスト』は田舎の農作業の日常が、地道に技術的に淡々と描かれていて、ファンが多いのも納得の内容。マンガの舞台は岩手がモデルとのこと。 私は信州の山のムラで育ったし、祖母の山菜採りや農作業、保存食作りにつきあわされた経験があるので、ムラのご近所とのやりとりも、町とムラの生活の差も、いろいろわかる部分があります。 山のことにつ

傷ついたからこそ、美しく輝く。台湾ドラマ『茶金 ゴールドリーフ』2021年

出張先の夜に一気見。評判以上のすばらしいドラマでした。植民地時代の日本語、台湾の人たちの台湾語、主人公一族の客家語、そして中国大陸からやってきた人たちの国語(Mandarine)や上海語、蒋介石の国民党政権を支えるアメリカ人たちの英語がいきかいます。そして、登場人物たちのセリフ以上のものを使い分けられる言葉たちが表現します。 主人公の張薏心(チャン・イーシン)は、茶虎と呼ばれる台湾最大の茶輸出会社「日光」の社長張福吉(吉桑:ジーさん)の一人娘。台湾の新竹県北埔鎮が彼とその張