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07 PDCA-1-1 環境を整える

 まず、学習動機や学習に対する気持ちをコントロールする「技」から考えて行きたいと思います。
 以下、いくつかご紹介しますが、順番には特に意味はありません。

 一つ目は、「やる気の出る環境を作る」を取り上げたいと思います。

 一般的に用いられているのは、目標ややる気がでそうな熱い言葉を目に付くところに貼っておく、という方法だと思います。

 「絶対合格」とか「初志貫徹」とか。或いは公式一覧や歴史年表を貼るというのもありますね。これだと覚えるためと、学習の雰囲気作りという二つの役割を果たすことになります。

 その他では、アロマテラピーカラーセラピーなんていうのもありますね。過信は禁物ですが、一定の効果があることは確かです。
 ラベンダーの香りが心をリラックスさせたり、レモンやペパーミントですっきりと前向きな気持ちになったり。色ですと、赤い色が興奮を誘い、紫色が憂鬱にさせるなどは、医療の現場でも考慮されています。

 ただ、これも感じ方の個人差が大きいので、使い方には注意が必要でしょうね。敏感な子どもだと、わずかな匂いでも「臭い」と感じてしまうこともあります。

 それから、部屋や机の上が片付いているかどうかというのも大きな問題です。何が何処にあるか分からないような状態というのは論外でしょうが、あまりに何もないと却って落ち着かないという場合もあります。これは個人差が結構大きいと思います。
 手の届く範囲にテキストや参考書が全部揃っていないとダメという子もいれば、机の上には何もない状態でないとイライラするという子もいるでしょう。

 周囲の音にしても同じで、一般的には、完全に無音の状態は却って精神の安定を乱し、若干の話し声などがあった方が集中力が高くなることが指摘されています。以前、「プレジテント・ファミリー」で紹介された、灘中学校合格者の家庭の紹介では、リビングで勉強をしたり、勉強部屋のドアを開けたままにしておいたりと、完全に隔離された個室で勉強しているという子は殆どいませんでした。
 一つにはこの音の環境という側面があるのですが、もう一つは当然親の目が届くということですね。
 でも、神経質な性質の子どもだと、些細な物音も気になって仕方がないという場合もあるでしょう。他にも、年齢・発達段階・性別などによる差もあるでしょうから、一概に家族の生活音が聞こえ、目の届くところで勉強する方がいいとは言いづらいと思います。

 もう一つ重要だと考えられるのが、姿勢です。
 だらけた姿勢では絶対にやる気は出ません。これは性格の問題ではなくて身体の反応の問題ですから、個人差は極めて少ないと言えます。
 姿勢が問題になる理由の一つは、体から心へのフィードバックです。笑えば明るい気持ちが湧いてくるように、だらけた姿勢ではだらけた気持ちになってしまうのです。
 二つ目は、呼吸の問題です。だらけた姿勢では胸が圧迫されて呼吸が不十分になり、取り入れる酸素量が低くなります。脳の活動には多くの酸素が必要とされますから、当然効率が落ちてしまいます。
 三つ目は、 一つ目とも少し関連していますが、緊張感の欠如です。集中して学習という知的な活動を行なうためには、適度な緊張感が必要です。
 四番目は、今のと矛盾するようですが、筋肉の緊張です。姿勢にもよりますが、無理な姿勢のために体の特定の部分が硬くなりすぎる場合があります。例えば椅子に浅く腰掛けて寝そべるような姿勢になっていると、気持ち的には楽なようですが、実は余計な筋肉を使っています。その所為で疲れやすくもなります。
 この三番目と四番目は、緊張と緩和の適度なバランスと言い換えることができるでしょう。
 最後は東洋医学の見地からですが、気の巡りが悪いということが言えます。これは、今言ったことを総括しているような感じですね。
 よい姿勢でなければやる気を持って学習するというのは難しい、そういう観点から開発されたのが、最近よく見かけるバランスチェア。

 膝でも体重を支えるようになっていますから、全体的に前に傾いた状態になります。そこで、自然とバランスをとるように上半身を後ろにそらすようになる。すると、背筋がまっすぐな状態になるという仕組みです。
 また、体重をおしりだけではなく膝にも分散しているので、おしりが痛くなりにくいという利点もあります。
 これはPISAで教育 大国として有名になったフィンランドのお隣ノルウェーで考案されました。北欧では学校などでも使われているそうです。
 それから、エクササイズ用のバランスボール。グーグルの本社でも使われているそうですが、最近では京都の中野製薬が2012年4月から事務所の椅子を全てバランスボールに置き換えました。正しい姿勢でないとバランスを崩してしまうので、自然と姿勢が矯正され、心身ともに適度な緊張が得られるんです。
 そう、まさに緊張と弛緩のバランスを取っているんです。

 しかし、学習の環境で一番大切なのは、学習している子どもが「自分だけがやってるんじゃない」と思えること。子ども達が自習教室や質問教室、或いは図書館に行くのは、それを感じ取っているからです。つまり、家にいると自分ひとり「やらされている」という気分になってしまうことになります。
 ということは、家庭の中がみんな学習しているという雰囲気だったら、子どもたちも家の中で学習できるということになりますね。兄弟がいる場合はそうした雰囲気になりやすいかもしれません。また、学者の子どもが学者になることがよくあるのは、学ぶということが家庭の雰囲気・文化になっているから、と言えるのかも知れません。
 この家庭環境の部分については、子どもが使う「技」ではなく、保護者が使う「技」ですから、後ほど改めて述べたいと思います。

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