見出し画像

中古(リース落ち)PCを活用してなるべくお金をかけずにStable Diffusionを動かそう

この記事では、Dellの業務用ワークステーションPrecision Tower 5810の中古(リース落ち)を活用し、費用を抑えつつ、Stable Diffusionの動くPCを構築します。本記事では、主に中古PCを使う際のリスクやStable Diffusionを動かすために必要なアップグレードに焦点を当てます。


1 使用するPCについて

Dell Precision Tower 5810を使用します。本機は、2014年に発売された業務用ワークステーションです。Xeonという発売当時の最先端技術を使ったCPUを搭載しており、10年落ちの割に比較的高い性能を発揮します。
使用感についてはこちらの記事を参照して下さい。

2 リスクとデメリット

中古(リース落ち)PCを使用するため、リスクとデメリットがあります。ただし、グラボに関してはRTX 3060 12GBを購入するため、総額が非常に安くなることはありません。予算が許すのであれば、新しいPCを購入することをオススメします。2.1~2.3については特に注意して下さい。本記事は、1万円でも安く済ませたい人向けです。

2.1 マザーボードの電源コネクタが特殊

中古PCで最も故障のリスクが高いのは電源ユニットです。本機種は業務用ワークステーションであるが故に、マザーボードの電源コネクタとCPUの補助電源コネクタの形状が特殊です。従って、電源ユニットが故障した場合、市販の電源ユニットを購入し、外部からマザーボードに対して電気を供給することができません。従って、電源ユニットが故障した場合、中古のDell純正の電源ユニットをメルカリ等で購入する必要があります(そしてそれが割りと高い)。
業務用ワークステーションであるPrecision Tower 5810は、比較的堅牢な電源ユニットを搭載していると思われますが、いつ壊れてもおかしくないと思っておいたほうが良いです。もちろんですが、電源ユニットを2重化するとかもできません。また。中古の電源ユニット購入に際しては、電源ユニットの型番に注意する必要があります(同じワット数の電源ユニットであっても、使用できるものとできないものがあるようです。)。

特殊な形状のマザーボード用電源コネクタ

2.2 電源ユニットのアップグレードができない

Precision Tower 5810には、電源ユニットの容量が425W、685Wの2機種があります(非公式には825Wの機種もあるようです。)。電源ユニットは取り外し式ですが、425Wの機種には685Wの電源ユニットは使えません(電源ユニットが物理的に入りません。)。あとから電源ユニットのアップグレードはできません。

2.3 Windows 11へのアップグレード非対応

主に第4世代のCPUを使用します。Windows 11は第7世代以前のCPUは非対応です。このため、Windows 11へのアップグレードはできません。windows 10のサポートは2025年10月14日に終了します。注意が必要です。

※無理やりWindows 11を入れることはできるようですが、Microsoftのサポートを受けれなくなる可能性があります。メルカリ等にはWindows 11を搭載したものが見受けられますが、これらは無理やり無理やりWindows 11を入れたものです。

2.4 使用するメモリがECCメモリでやや高い

サポートしているメモリの規格はPC4-17000(DDR4-2133)のECCメモリです。ECCメモリですので、通常の非ECCメモリよりやや高いです。非ECCメモリと混在して動くかは不明です。

2.5 CPUのシングルコア性能が低い

2014年発売のCPUなので、シングルコア性能は低いです。ターボブースト時でも動作クロックが低いです。Precision Tower 5810は業務用ワークステーションなので、CAD等の用途で使われていたようですが、現在の3DCAD(具体的にはFusion360)ではシングルコア性能の低さに起因して、ファイルサイズが大きいと処理がもたつく場合があります。

2.6 デフォルトでは古い規格のSSDしか使えない

デフォルトではM.2のスロットがありません。M.2 SSDを使用する場合、PCIeスロットを使用した拡張カードが必要です。Stable Diffusion のモデルは容量が大きいですので、使用するSSDは読み書きが早いほうが望ましいです。

2.7 使用するグラボによっては蓋が閉まらない

2連ファンのグラボで電源コネクタが出力端子の反対側の端についている場合、電源ケーブルと蓋が干渉して閉まらない可能性が高いです。

2.8 消費電力が多い

これは古いので仕方がないです。

2.9 ライセンスによっては他PCのへの移行が制限される

入っているWindowsのライセンスの種類によっては他のPCへの移行が制限される場合があります。パッケージ版が入っている場合は、他PCへの移行は問題ありません(詳しくはこちらを参照。)。

3 メリット

3.1 本体が安い

Precision Tower 5810は中古価格が安いです。搭載されているCPUやグラボにもよりますが、2万円程度あれば十分なものが買えます。Stable Diffusion は高性能なCPUは必要ありませんので、CPUの性能を下げれば1万円ちょいで購入することができます。

3.2 拡張性が高い

グラボは2枚(ただし電源容量や排熱に注意)まで、メモリは128GB(一説では256GB)まで搭載できます。

補助電源不要のグラボなら2枚同時使用可能。
ただし、2枚が密着する場合、排熱に注意が必要。

3.3 Windows 10 Proが入っている

Microsoft純正のリモートデスクトップが使えますが、正直あまりPro版であるメリットを感じません。

4 選定のポイント

Precision Tower 5810購入時の注意点は以下のとおりです。メルカリ等では電源容量を表示してないケースが散見されますので、注意が必要です。

4.1 電源容量

必ず、電源容量が685W以上のものを購入して下さい。425WではRTX 3060を動かすことはできますが、電源容量的にギリギリです。Stable Diffusion ではグラボをフルで使用します。電源容量がギリギリではPCが落ちる可能性があります。

4.2 CPU

Stable Diffusion だけを使う場合はなんでも良いですが、Precision Tower 5810は2014年発売の古いPCです。従ってなるべく性能の良いものを選ぶのが無難です。具体的にはターボブースト時(CPUの瞬発力のようなものです。)の動作クロックが高く(数字が大きい)、PassMarkが発表しているスコアが高いものを選びましょう。Stable Diffusion で生成した画像をPhotoshopやLuminarなどの画像編集ソフトで処理する場合、PassMarkのスコアは1万以上が望ましいです。
Precision Tower 5810はワークステーション向けのE5-16XX v3シリーズとサーバー向けのE5-26XX v3シリーズをサポートしています(v4を搭載したものもあるようです。)。
E5-1650v3E5-1680v3あたりはターボブースト時の動作クロックが高く、PassMarkも1万を超えているのでオススメです。ターボブースト時の動作クロックはそこそこでもPassMarkが高く、並列処理に強いものが欲しい場合はE5-2699 v3(ただしサポート対象外)やE5-2695 v3がオススメです。

4.3 メモリ

Stable Diffusion はDockerを使用して構築するのが楽です。この場合、メモリは最低でも32GBは欲しいです。メモリは後から追加できますが、搭載メモリが多くて安い機種があればそれを買いましょう。中古メモリは16GBで5千円くらい(2023年9月時点)でしょうか。

4.4 SSD容量

購入時はSSDの容量は気にしなくても構いません。モデルの容量等を考えると、Stable Diffusion は別のSSDに入れた方が良いです。

4.5 グラボ

Precision Tower 5810はグラボがないと映像出力できません。従ってメルカリ等で販売している中古品には古いグラボ(Quadro K2000など)が付いてくることが多いです。Stable Diffusion 用には後で述べますが、RTX 3060 12GBを購入し使用します。このため、本体購入時についてくるグラボはなんでも良いです。

5 アップグレードと費用

本体が2万円、以下のパーツをアップグレードすると最大で合計8万円程度でStable Diffusion が動くPCを構築できます。
メモリやCPUはAliExpressの方が送料込みでも若干安いです(特にCPU)。何故かパソコン工房(店舗)はグラボやSSDが安い印象があります。

5.1 グラボ(4万円)

RTX 3060 12GBを購入します(8GBではなく12GBです。)。なぜこのグラボが良いかはこちらを参照。
PCの電源からグラボの補助電源までのケーブルが付いていない場合は、クーラーマスター製電源ユニット用のケーブルを流用します(手に入るなら純正ケーブルが望ましいです。)。

電源容量が685Wの場合、電源ユニットのグラボ用補助電源は8pin1個だけですので、電気を沢山食うグラボは使用できない(と思われます。)。また、でかいグラボはケースに入るか検討してから購入しましょう。

5.2 メモリ(追加16GBで5千円程度)

最低でも32GBは欲しいです。ECCメモリはメーカーが異なると相性問題が発生する確率が高まりやすいと言われています。なるべく同じメーカー(恐らくSamsung製かMicron製が多いと思われます。)が望ましいです。

5.3 SSD(SATA SSD 1TBで6千円程度) 

Stable Diffusion 用にSSDを調達します。2TBが推奨される傾向があります。個人的には1TB程度あれば十分かと思います。なるべく読み書きが早い方が望ましいです。古い規格のSATA SSDでは大きなモデルの読み込みに1分程度時間がかかりますが、待てるのであれば問題ありません。

5.4 CPU

もっと強いCPUが欲しくなったら換装で良いと思います。
CPUは公式には最大14コアのものまで対応しているようですが、18コアのものでも動作はします。ただ、これが原因かはわかりませんが、E5-2699v3使用時、ターボブースト時の動作クロックが最大まで上がりません。

6 Windows 10サポート終了後の運用

Precision Tower 5810は公式にUbuntuをサポートしているため、Ubuntuを導入してStable Diffusion専用機にしようかと思っています。ただし、PhotoshopはUbuntu非対応なので、使用する場合はWindows11に対応したPCを購入する必要がありそうです。

7 まとめ

中古(リース落ち)PCを利用し、8万円程度でStable Diffusionの動く環境を自宅に作る方法について解説しました。13万円程度出せば新品のRTX 3060 12GB搭載のPCを買うことができますが、なるべく費用を抑えたい方は参考にして下さい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?