曲線的プレスについて(Ipswich戦)

Ipswich戦での気づき

どうも~(*´з`)/ 先日のIpswich戦で、デレアリ、ソン、セセニョン、+ホイビュアの4人のユニットプレスが素晴らしかったので今回はこれを取り上げます。

かなり「1」から技術を説明するし、超ミクロともニッチとも言える内容ですが、話をもっと大きいことに繋げていくのでお付き合いください。

前方プレスの技術

プレスにもいろいろありますが、このnoteでは相手バックラインがボールを持った比較的ゆったりした局面で前線の選手たちが掛けるもの、組織としてはブロックのような規律のなかでの個々人が掛けるプレスと呼べるようなものを扱っていきます。

どんなプレスにも通じる技術が、減速のタイミング、体の向きなどですが、前途のようなプレスだとコースを切るために半身だけではなくゆるやかな弧を描いたランニングが特徴に。

瞬間的な状況というのもあるので、前方でも相手に近ければ「圧力」を優先して直線的に速く行くし、中盤でも間延びしていれば曲線的になることもありますが、それは無意識・デザイン外のこと。

では弧を描くことのメリットとは:【簡単に図式化】(体の向きも)

「茶色①」に対してプレスをかける「黄色①」

弧を描くプレス

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相手に早めの選択を促すことで、あとから連動していく味方の動き出しが早くなります。また、無駄なプレス距離を削ってプレスターゲットの変更ができるなどの利点も。フットボールで「相手に伝える」のが肝となるプレイの代表格がこれです。(もっとも、これがCBがキックキャンセルができたりドライブが出来たりが大事と言われる所為なのですが。)

言ってみれば、「はっきりコースを切る」の一言で済ませれる簡単なことなんですよね。(逆の意図での用途もありますがそれは後述で)

当たり前のことを細かくわざわざ解体して書きましたが昨季はこれが出来ていなかったことが多く、(特にケインとルーカスに)直線的なプレスが多かった記憶があります。頭のなかでは切りたいコースがあったのかも?しれませんが寄せる直前に半身を切るだけで、味方にも相手にも明確にコースが伝達できず。よって、無駄なプレス距離を走ってしまう、後ろが連動するときの走り出しが遅れたりというシーンが多々ありました。

逆に、Ipswich戦の前半では個々にこれが出来ていたおかげでユニットとして機能したシーンが始終見られました。

例えばこのシーン、各人が弧を描くだけでなく、複数人の弧の向きが連動。これによって相手の展開方向が読みやすく、プレスターゲットの変更が早くできたことによって生まれたチャンス。

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右から左へ、逆サイドのタッチラインへと誘導するかたち。意図を察したLCBが早めにキックモーションに入った段階で、ソンはRCBへとターゲットを変更。そして最後はセセニョンが奪うかたち。

ここで注意しておきたいのが、このソンの弧の向きは必ずしも正解ではないこと。逆向きに走る(まず相手に向かってボールへ向かうような)ほうが、相手からすると受けにくいし、それは状況によりけり。そもそもコースキャンセルしてこれだけ長い距離をカバーしたのが正解かも微妙なんですが。

全体図

始終描いていたプレスはこんな感じ。ホイビュアは中盤の選手になってくる・アンカーに前を向かせないことが重要なので、寄せの速さを重視した直線プレス。

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ここでポイントとなるのが、紫の〇くらいまで走った時点でそれぞれのプレスターゲットがパスを出していること。そうです、相手的にはゆったりしたパス回しをしているだけで、制圧されている感覚ではないでしょう。

ボールの流れを逆流させないために最初3人はそのままチェイス。セセニョンが縦を切ったあたりから圧力を高めるプレスのスイッチが入ることが多く、「静かなる制圧」からの慢心と綻びを突くシーンが目立ちました。

ちなみにこのセセニョンのプレス技術、かなりの高さを感じました。ボールホルダーの様子、デイビスやウィンクスのサポート、相手CHのサポート、などの状況に応じて弧の向きを選択。詰めていってゼロ距離になってもスッと体の向きを変えて切るコースを変更したり、胸でのプッシュというか「圧」も感じられました。

2点目のゴールシーン。ほとんど同じような流れから。

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タッチラインへと誘導したところで、セセニョンが縦を切るプレス(それまでと逆方向の弧)。相手RSBは中へと展開。

Ipswich目線で見ると、こういった局面でSBが両足が使えることがいかに大きいか分かりますね。ここで中にボールを引き取る選手がいないのと、このRSBが右足しか使えないためにゆっくりと体を大きく開いたあげく、右足でも精度の及ぶ後ろ方向(LCB)へと、慢心とも言えるゆるゆるのパスを送ります。

そしてこのあと、この緩いパスを受けたRCBにデレアリが素早いプレスをかけるも、GKまで戻され弾かれました。

チャンスは振り出しに・・・・・・、と思われたところに、

おや???

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画面の外から猛突進してくる何者かが・・・!

一同:「!?」

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「御社に120%を捧げます!!!!!!」

画面外から走りこんできたホイビュアがGK→CBのパスを暑苦しくインターセプト、これをソンが押し込んでゴールが生まれました。

やはりホイビュア、スペースに張るよりもプレスに積極的で、前の選手たちの連動の完結・回収のタイミングを認知して遠方から走り出せることを見せつけ、全体的に「8」のような動きが目立ちました。

おさらいすると

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・展開されていないサイドの選手は、左へのスライドを意識しながら前を見つつもスペースに張ってリスクマネージメント

至って普通のことではあるんですがね。これが機能したのもIpswichがその程度の相手だったとも言えます。

しかし、こういう類のゆる~い曲線連動プレスは、ドライブやキックキャンセルを持ったCB・SBの慢心というか「なんとなくのパス回し」を誘って綻びをつくような、相手の技術が高いほど効いてくる場合がある渋い連携なので今後注目。

もちろん、プレスにもデザインがいろいろあって、上記がいつも正解というわけではありません。最前線の選手が背中でアンカーを消すことを優先して「縦」や「CB間」を切るのも主流。

モウリーニョはハイプレスというより、深追いをしないハイブロックを敷くというので、今回はこういったピンポイントでのミクロ技術を取り上げました。



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