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Xiborgブレード、アフリカ上陸 シエラレオネ編

シエラレオネという国

シエラレオネは、アフリカ西部の共和制国家、イギリス連邦加盟国である。首都はフリータウンで、空港から船で移動することが一般的。奴隷制から解放された黒人たちの移住地として1808年にイギリスの植民地となり、1961年に独立。10年以上続いた内戦と、高いHIV感染率による影響で、2020年時点で平均寿命が世界で11番目に短い。義肢装具やパラスポーツに関しては、活動に最も適していない国の1つであるといえる。内戦、エイズやエボラ出血熱、そして新型コロナと経済発展に取り残された国ではあるが、首相や大臣などの国の主要ポジションの5名が40歳以下と若い優秀なメンバーが国の行政を担うようになり、今後の国の発展が期待されている。

リハビリテーションセンターについて

国にいくつかの国立リハビリテーションセンターがあり、保健省により運営されている。首都のフリータウンには最も大きなセンターがある。ここでは認定義肢装具士が1名おり、クリニックで義肢装具を患者に制作しているが、設備や環境は非常に限定されたものである。シエラレオネの現首相のDavid SengehがMIT MediaLab博士課程出身であることから、MITと協業してアフリカに

  • 義肢装具サービスのセンター

  • 研究開発拠点

を作るべく活動を続けている。

また、遠藤も同じ研究室であることからDavidと昨年パリで面会した際に、「OECDの最貧国からのブレードランナーは一人もいない。シエラレオネからパラリンピックに出場できるランナーの育成ができないか。さらには子供でもブレードで走ることを普及して、スポーツの楽しさを広げる研究活動ができないか」という話をし、意気投合。ランナー候補が見つかったら招待するといわれ、今回の訪問に至った。

パラスポーツについて

東京パラリンピックでは2名の上肢障害のある陸上選手が参加。また下肢切断患者は多く、アンピュティーサッカーはとても盛ん。

https://www.facebook.com/SingleLegAmputeeSportsClub/

一方で用具にお金のかかる競技への参加は難しく、スポーツ用義足で走るランナーは1人もいない。

義足クリニック製作所

国立リハビリテーションセンターの中にある義肢装具製作所は、最低限の機材しかなく、決して恵まれた環境ではない状態であった。電気も作業中に3回ほどの停電がそれぞれ1時間続いた。カーボンのような高価な素材は使用されておらず、他の途上国と同様にポリプロピレンを熱してソケットを制作していた。クリニックには、一般的なプラスターを使った採型室、カービングマシン、オーブンがあり、他の途上国と同様の義足制作プロセスができる環境ではあった。ポリプロピレンは国際赤十字が使用しており、世界中で使われている材料ではあるが、スポーツの用途には強度が足りず壊れてしまうと言われている。我々は独自の手法とパーツを制作し、これまでのブータンやラオスでポリプロピレンのスポーツ義足のソケット制作を行ってきた。その手法をシエラレオネでも適用できると考え、現地の義肢装具士に手法をレクチャーしながら、スポーツ義足の制作を行った。被験者はAbdulrahaman Jalloh君19歳で義足をあまり使用しておらず、松葉杖を日常的に使用していた。


ランニングクリニック

2日目にはスポーツセンターでランニングクリニックを行った。上記のように被験者はこれまで義足を日常的に使用しておらず、松葉杖を使ってきたため、義足側の足の筋肉が少なくブレードで地面を蹴ることが非常に難しかった。そのため、両足で歩くトレーニングから始め、徐々にスピードを上げて、最終的にはジョギングするところまでのトレーニングを行った。今後練習を続けていくと、義足側の足に筋肉がつき、ソケットのサイズが合わなくなることが想定されるが、今後義肢装具士が同じ手法で義足を作り直し、走り方をサポートしていくとのこと。

今後の展開

シエラレオネでは、MITとの協業で義肢装具のサービスや研究拠点の展開を進めているが、ここにスポーツのコンテンツも取り入れたいという意向であった。そのために我々ができることとしては

  • ポリプロピレンでスポーツ義足を作成する手法の定着

  • 速く走るためのトレーニング手法

  • 一般義足ユーザへのスポーツ義足を使ったスポーツの普及

をシエラレオネ、そしてアフリカの義肢装具センターのサービスの一環として定着させることができればと思う。

↑首相David Sengehのポスト

↑首相David Sengehのポスト ブレードランナーが走り出した瞬間

謝辞

今回のシエラレオネ滞在はソニーコンピュータサイエンス研究所の研究の一環で向かいました。ソニーコンピュータサイエンス研究所はBlade for the One/Allのパートナーです。

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