看取りの教育

もう、10年くらい前になります。その頃、私のいた病棟は悪性疾患が少なく、「緩和ケア」とか、看取りの場面があまりありませんでした。その病棟に就職して3年目になる看護師Aさんは、はじめて悪性疾患の終末期患者のうけもちになりました。

両側胸腔ドレナージもされていたその患者さんは貧血も強く、輸血、そして高カロリー輸液(!)をすることになりました。

看護師たちは、非難の嵐です!中には「税金の無駄づかい」という人もいました。

その中で、Aさんは、「貧血で苦しんでいる患者さんにどうして輸血してはいけないのですか?食べられなくて栄養が摂れない患者さんに高カロリー輸液をするのがなぜいけないのですか?」と尋ねてきました。

私は、その時、「輸血や高カロリー輸液をすることで、さらに腫瘍を成長させて、患者さんを苦しめることになる可能性があるからよ」的な回答をしたような記憶がありますが、Aさんはあまり納得がいっていないようでしたし、私も、自分の説明にしっくりきませんでした。

その患者さんの亡くなられた日、Aさんは、患者さんの手を握りしめてわんわん泣いていました。私は、看護師としてこの行動はいかがなものかと思いましたが、Aさんの情緒があまりにも不安定だったので、敢えて注意しませんでした。

しばらく経って、その患者さんのデスカンファをしようとAさんに持ちかけたところ「絶対に嫌です」と言われました。

あれから、10年経っても心にひっかかっているできごとです。

どの職業にも、よくも悪くも固有の価値観があり、長くその仕事をしていると、それにとらわれやすくなります。

今、看護大学では、「看取り」に関しての講義があるのでしょうか?緩和ケア病棟の新人看護師には、どのような指導をされているのでしょうか?

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