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熊野古道・伊勢路から中辺路の旅_1

2019年のGW10日間を利用して、伊勢神宮から熊野速玉大社、熊野那智大社、熊野本宮大社を経由して、紀伊田辺市の滝尻王子まで抜ける歩き旅をした。
距離は250kmくらいだろうか。
美しい経験だったので、後に続く人たちの参考になるように記録を残す。

歩いて痛感したのは、どこの民宿もスタッフがご高齢で、もしかしたら5年、おそらく10年以内に閉業し、この旅の実現が困難になるということ。
やってみたいと思うならば、早めに計画してほしい。
素晴らしい旅になることは保証する。

世界遺産認定された「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」と並ぶ巡礼の道なので、歩いても楽しいし、朝と夜にたっぷりとご飯を食べても、身体から脂肪だけが落ち、体型がすっきりする。
体重は変わらなかったが、体脂肪だけ4%落ちた。
昔の人が痩せてたのはこれか〜!と理解した。
しかも当然だが移動にお金がかからない。
ほとんど宿代だけで、民宿だと一泊二食付きで8,000円前後。
一日の予算は10,000円くらいにしかならない。
お金を使わない上、ダイエットにもなり、さらに楽しく観光もできてしまうのだ。
お金は使わなかったが、地元の素材や料理も結構楽しめた。

クルマで熊野本宮大社に行くのは簡単だが、ヘリコプターで山の頂上に立つのと変わらない。
登山というのは、自分の脚で歩くからこそ、頂上という場所に価値が生まれるのだ。

昔の人は草鞋だったし、道も今より悪かった。
雨が降ると草鞋では歩けなかったようだし、午後からの峠越えは危険が多かった。
掲示物を読むに、現代の1/3か1/2くらいしか進めていなかった。
地図もなければ情報もないので、街道沿いの茶屋で情報収集しながらの旅だったのだろう。
それを考えると僕たちは非常に恵まれている。
体力は彼らに劣るだろうが、道の整備と装備の快適さで、彼らの2-3倍移動できるのだから。

まず装備だが、日中に行動するウエアは上下1セットだけ。
日中は毎日同じウエアで過ごし、2セット用意するのは下着と靴下のみ。
帽子とウインドブレーカーは必ず用意。
それ以外のウエアはパジャマ兼用のジャージを上下用意すること。
宿には浴衣が用意されているが、ウインドブレーカーだけでは寒い時、非常用として中へ着るためでもある。
ジャージ素材は乾くのが早いので、汚れたら洗って一晩で乾かすことができる。
コットン素材は重くて乾かないのでNGだ。

行動中のウエアの下にはファイントラックのドライレイヤーが必須。

汗冷えは本当に怖いし、旅行のQOLが格段に向上するので、持っていなければ必ず購入してほしい。
僕はパワーメッシュを使ったが、冬ならスキンメッシュもアリだろう。
必ずピチピチサイズを選ぶこと。

ソックスは武田レッグウェアーの五本指メリノウールが圧倒的にオススメ。


雨で濡れてもマメなどのトラブルが極めて少ないからだ。
ウルトラマラソンなど長時間の運動を行う際、これ以外のソックスは考えられない。

シューズは履き慣れたものであればランニングシューズでも構わない。
僕はイノベイトのトレイルランニング用を使った。

山が多いので登山靴でも良いが、重厚になりすぎる。
荷物も靴も全部軽くして、身軽に動けたほうが身体は楽。
荷物は最小限で、軽ければ軽いほど良いのだ。

ザックも登山用よりもトレイルランニング用が軽くて機能的。
僕はアルティメットディレクションの製品を使ったが、初心者にはパーゴワークスのラッシュを勧める。
日本人の体型を意識して作られており、軽いけれど柔らかく身体にフィットする。

熊野古道を歩く人はトレッキングポールを使っている人が多い。
重心が揺れてしまうので僕は使わなかったが、年配の人や脚力に不安がある人は使うのもアリと思う。
ただし使いこなすのは割と難しいので、慣れておかないと邪魔になるだろう。

手が冷えると調子を崩しやすいので、手袋もあったほうがいい。
スマホ操作が可能なランニンググローブが便利。
洗っても一晩で乾くものを選ぶこと。

行動中の飲物は水が基本。
怪我をした時に患部が洗えるし、熱中症になりかけた時は、頭や身体に水をかけると気化熱で冷やすことができる。
さらに、疲れた時に最も飲めるのは水なのだ。
ペットボトルをそのまま使っても良いが、開閉が面倒なのでサーモスのワンタッチオープンに入れ替えて使うと飲みやすく、冷たさが持続する。

ぬるい水は身体を冷やす効果が少ないため大量に飲んでしまうが、冷たい水は一口で身体の深部を冷やしてくれ、乾きが癒やされる。
水の温度は割と重要だ。

雨が降ることを考慮して、全ての荷物はビニール袋に小分けして収納する。
ザックは濡れても一晩あれば乾くし、ザックカバーは完全防水ではないので使わない。
中身が濡れなければ良いのだから、ジップロックなどに入れておくのだ。
雨具は重くなるので携帯せず、折りたたみ傘、または寒くなければウインドブレーカーだけ着て、濡れっぱなしで行動する。

衣服以外はファーストエイドキット(特にロキソニン)、ヘッドランプ、エマージェンシーブランケット、非常用のジェルや塩タブレット、テーピング、薄いタオルなどを入れておく。
クレジットカードや電子マネーは使える場所がほとんどなく、コンビニも少ないので、現金を多めに用意する必要がある。
僕は途中、コンビニで現金を引き出した。

行動パターンはしっかり朝食を食べ、なるべく涼しい時間に出発して距離を稼ぐ。
昼ご飯はおむすびなどの簡単な食事で済ませる。
僕は朝食で余ったご飯でおむすびを作って、昼に食べることが多かった。
宿には15時か16時に着くようにする。
その予定で行動計画を立てると、道迷いなどがあっても暗くなる前に宿に着ける。
一日の行動時間は6-9時間が目安だ。

宿に着いたらすぐお風呂に入って、ウエアを全て洗濯して干す。
夕食までの時間は休息したり、次の日の行動計画を検討したりする。
晩ご飯を食べたら速攻で寝て、8時間以上は睡眠時間を確保する。
そうすると疲れが残りにくい。

おそらく2日目か3日目にドッと疲れが出て、倒れるように眠ってしまうだろうが、それを乗り越えたら身体が慣れて楽になる。
筋肉痛は残るかもしれないが、気になるのは歩き始めだけで、筋肉が温まれば気にならなくなる。
人の身体は思っている以上に強いのだ。

ここに書いた知見は、今回の旅だけでなく、40歳の沖縄本島自転車一周500km、44歳のゴビ砂漠マラソン250km,45歳の九州全県縦断マラソン500kmなどによって得られた。
ぜひ活用してもらいたい。

次に地図だが、スマホアプリのジオグラフィカとイラスト地図の併用がベストだった。
どちらも無料。
熊野古道のPGXファイルをダウンロードし、ジオグラフィカにインポートすると、地図の上に赤い線でルートが表示され、自分がどこにいるのかが表示される。
これはスマホの電波が届かない場所でも作動する。
大容量の予備電源も忘れないように。

もう一つ、イラスト地図にはトイレの場所やコンビニや商店の情報、橋の形や間違えやすいルートが書き込まれていて、非常に役立った。
標準移動時間も記載されているので、それよりも自分が速いのか、遅いのかを判断して、行動計画が立てられる。
遅ければ遅いように行動すればいいのだ。
一人がジオグラフィカ、一人がイラスト地図のダブルチェックで進むとほぼミスがないだろう。

伊勢路では稀に日本人とすれ違うくらいだったが、中辺路では結構多くの人たちとすれ違い、半分以上が外国人だった。
当然、数少ない宿にも外国人が多く、宿のおっちゃん曰く「普段は9割以上が外国人だよ」とのことだった。

普通に「おはようございます!」とか「こんにちは!」と挨拶すると、皆、笑顔で挨拶を返してくれるので、楽しく歩けるだろう。

準備編だけでかなり長くなったので、記録編は別に書く。

追記:装備が弱いという指摘があるけれど
 ・濡れない登山靴より、濡れても問題ない靴とソックスの組合せ
 ・使うかどうかわからない重いレインウエアを持つのではなく、濡れても問題ないウエアリングにし、ザック内も工夫
 ・重くてぬるい水を大量に携行するより、薄着で発汗を抑え、冷たい水を少量飲む
 ・食料は少なめにして、カロリーは飴などで補う。大量に食べると胃に血液が集まりすぎて行動が鈍る
つまり、全て一般的な登山の逆をやっています。
安心感を得たくて重い装備を持つ気持ちはわからなくもけれど、体力のない初心者がそれをやると歩荷訓練になって楽しくない。
軽量化してスピードハイクにしたほうが、少ない体力を前に進むためだけに使えるので、距離が稼げて楽しい。
それが僕のやり方なのです。

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