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料理の向こう側にあるもの

広島市中区中町にある「ブラッスリーワカノ」の恒例イベント、キノコ祭りに行ってきた。
フランスで行われるキノコ祭りにシェフ自ら参加し、その味と雰囲気を広島で味わってもらおうという試みだ。

店に入るとシェフとマダムが出迎えてくれて「セップのポタージュはぜひ!」と言われた。
僕は一人だったが、友人のグループを見つけて一緒に座り、ワインをもらって料理を物色する。
この日はいつもと違い、バンケットに近い形で料理が供された。

最初に取ったのはトロンペットのカイエット。
クロラッパタケという、日本ではあまり食べないキノコが使われている。

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豚の網脂に包まれ、こっくりとした味わい。
独特の香りがあって、この香りがトロンペットかと堪能した。

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次に取ったのは豚スネ肉とセップの煮込み。
大きなセップのスライスが一緒に盛り込まれ、香りよく食べごたえがあった。
豚スネ肉はよく煮込まれてホロホロだ。

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そしてお待ちかね、セップのポタージュをもらった。
これは現地のキノコ祭りを統括するシェフから、ワカノシェフがレシピを伝授されたもので、完全に現地の味わいだ。

これがものすごく濃厚!
スープのように、そのまま飲むのは濃すぎてしんどい。
だが、バケットを浸して食べると抜群に旨かった。
クリーミーでセップの風味が濃厚で、このカップ一杯のポタージュで、僕はバケットをもりもり食べ、ワインをガブガブ飲んだ。
鶏肉と合わせてソースとして使っても旨いだろう。
どの料理もこっくりして重めなので、その理由をワカノシェフに訊いてみた。

どれもクラシカルで重めだけれど、伝統料理だから?
すると「この祭りが肉体労働者のものだからです」という答えだった。
そうか!
これは農夫たちのお祭り料理なのだ!

「ポトフがあるじゃないですか。あれも農夫の料理で、朝、パンを焼き終わった後の石窯に、鍋を入れておくんです。すると夕方にはポトフが出来上がるという仕掛けです」とのこと。

なるほど、料理の向こう側には生活がある。
そのことを全く考えず「この料理はヘビー過ぎる!」とジャッジするのは大変な見当違いだ。

先日、インドのケララ州を中心に旅をしたが、現地に行くまでベジ料理は宗教的な理由だと思っていた。
カーストがバラモン(司教)の人たちはベジタリアンなのだ。

しかし、現地で食べると特殊な階級の人たちの特殊な料理ではないことがわかった。
インドは暑い。
冬に入った11月で気温が30度まで上がる。
そうすると血液が筋肉に集中し、内臓機能が低下する。
僕たちが真夏の昼ご飯にそうめんを食べるのと同じ。
暑くても胃腸に負担がかからないベジ料理は食べた後で疲れない。
僕はそれを知らず、初日に肉料理を食べて胃もたれしてしまった。

さらに一般家庭で料理を教えてもらってわかったが、肉や魚は旨味が強いためシンプルに仕上げるが、野菜料理はテクニックを駆使し、様々なスパイスを積み重ねるので、料理的完成度が高い。
僕は旅行中、何度もベジ料理の店に通い、その素晴らしさを堪能した。

どんな地域のどんな料理も、その土地の文化や気候を抜きに語ることはできない。
背景を学ばずに食べ「旨い!」「マズい!」とジャッジするのは簡単だが、浅薄の謗りを免れない。

料理とは、人々の「生きる営み」そのもの。
その料理がどのようにして生まれ、どのように伝わったのか。
来し方行く末に思いを馳せながら食べれば、より一層味わい深い。
そんな食べ手になるため、料理とその背景をもっと学習しなければならないと痛感した夜だった。

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