渡邊雛子

渡邊雛子

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肥料

日々、書くべきことは多くない。 それでも日記を書いていると、数行のスペースでは足りない日がある。 書き溢したことたちは、言葉になり切れないで胸の内に留めたことたちは、どこへ行くのか。ソファの奥の埃同様、脳の襞の奥に押し込まれて数十年先に掃き寄せ捨てられるのか。 以前友人と、あれは鎌倉だっただろうか、生活圏から少し離れたところに足を延ばして通りを冷やかして歩いていた。 ふと立ち並ぶ店の間に何を売っているとも知れぬ、飾り気もなく無頓着な表情の店がポツンとあって、店らしい外観で

    • 歩くこと。

      先日、井の頭公園から東京湾に面する晴海ふ頭公園まで歩いた。 神田川沿いに30余kmの道のりを、友人と2人で歩き切った。 友人が『サマーバケーションEP』という古川日出男の本を読んで、神田川沿いを歩こうと最初に持ちかけてきたのはまだ大学生のときだったから、言い出してからすでに4、5年が経っている。 当時は何が楽しくてそんなことをするのかと、気乗りのしない返事をして話は終わった。 そんな話をしたことすら忘れていた今年の2月頃、彼女が再びその話を持ち出した。 もしかしたらその間