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「北京整風」を発動か─習近平政権で党内大粛清説(2012年12月)

 11月の第18回中国共産党大会で就任した習近平総書記が2013年春、「北京整風」運動を発動するとの説がインターネットなどで流れている。この呼称は故毛沢東党主席が1940年代、権力基盤を固めるため党内で粛清を展開した「延安整風」に倣ったもので、汚職を摘発する「反腐敗」キャンペーンにより党内で大規模な粛清を行う可能性がある。
 
■政権崩壊に危機感
 
 「腐敗問題がどんどんひどくなれば、最後には必然的に党が滅び、国が滅びるということを大量の事実が我々に告げている。我々は警戒心を高めねばならない」―。習総書記は就任直後の11月17日に開いた新指導部初の集団学習会で演説し、危機感をあらわにした。
 習総書記は演説で、幾つかの国で近年、汚職に対する民衆の不満が政権崩壊につながったと指摘した。エジプトなど「アラブの春」を念頭に置いた発言とみられ、習総書記が汚職を体制の存続に関わる大問題ととらえていることが分かる。
 また、自由な議論や選挙がない中国では、「反腐敗闘争」が政局を左右する。習総書記が「整風」を口実に、この闘争の主導権を握ることができれば、自らの権力基盤を早期に固めることになる。
 反腐敗の先兵は警察や検察よりも強大な権限を持つ党中央規律検査委員会。中央規律検査委書記は、第18回党大会で政治局員から政治局常務委員に昇進した王岐山氏が就任した。
 王氏はこれまで副首相などとして金融政策をたびたび担当してきた。このため、「王氏が金融に関する豊富な経験を新しい仕事に十分生かすことができれば、(金融機関幹部などの)腐敗摘発で極めて大きな『殺傷力』となるだろう」(米国の中国語ニュースサイト・多維新聞網)との見方もある。
 
■新中央委メンバーを検挙
 
 「整風」は事実上、既に始まっているのかもしれない。
 中国公式メディアは12月13日、党中央が四川省指導部ナンバー3である省党委副書記の李春城氏を重大な規律違反容疑で解任したと伝えた。李氏は第18回党大会で中央委員候補に選出されたばかりで、新しい中央委メンバーが不正疑惑で検挙されたのは初めて。
 李氏は胡錦濤国家主席(前総書記)や李克強副首相(次期首相)と同じ共産主義青年団(共青団)出身だが、近年は前党中央政法委書記・政治局常務委員で江沢民前国家主席派の周永康氏に近いといわれていた。李氏は同副書記になる前に省都・成都市の市長や党委書記を歴任し、周氏は1999~2002年、四川省党委書記として李氏の上司だった。
 香港誌「亜洲週刊」(12月16日付)は、成都での開発プロジェクトなどに絡んで李氏が不正に利益を得ていた疑いがあり、これに周氏も関与していたと報じた。江前主席派は第18回党大会人事で胡主席派を大幅に譲歩させたといわれるが、大会が終わって早々、反腐敗で反撃を受けた形だ。
 
■党内で抵抗も
 
 また、胡主席派の汪洋氏が省党委書記を務める広東省では11月下旬から、省国土資源庁副庁長(副局長級)、前掲陽市党委書記、元英徳市副市長、元深セン市副市長と党・政府要人の不正摘発が相次いだ。
 こうした中、習総書記は12月7~11日、就任後初の地方視察として広東省を訪れ、反腐敗や改革に積極的な汪書記を評価する姿勢を示した。汪書記は反腐敗を重視する習総書記に呼応して、汚職摘発を強化しているとみられる。
 ただ、中国における官僚の不正・腐敗は捜査機関も裁判所もメディアもすべて共産党が支配する政治体制自体が主な原因で、汚職は既に各界で普遍的と言えるほどまん延している。これを徹底的に摘発しようとすれば、体制が動揺する恐れもあり、党内の抵抗が強いとみられる。(2012年12月16日)

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