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3/25 FRONTLINE FESTIVAL@川崎クラブチッタ

 Sable Hills主催のメタルフェス、FRONTLINE FESTIVALに行ってきました。当初は3/26のラウパに行く予定だったので、「流石に前日はなー…」と買い渋っていました。が、いつの間にかラウパのポスターから"and more…"が消え、ラインナップが個人的にそこまで引きのあるメンツじゃなかったためラウパからこちらへシフトしました。

 前日の残業が響き、だいぶ身体はしんどいですが11時頃には着弾し黒Tシャツの群れに合流。入場してほどなくするとO.AのTake This to Heartが開始しました。


○Take This to Heart

 2022年に1stアルバム『Hypernova』をリリースした、新進気鋭のメロディックメタルコアバンド。メタルコアなのにも関わらずブレイクダウンを使用することがあまりなく、「メロディックメタルコア的」なピロピロスタスタと疾走するフレーズで勝負していくスタイルです。なぜ「メロディックメタルコア的」と強調するのかというと、スラッシュメタルやメロデス由来のフレーズとは明らかに毛色が異なるからです。テクニカルかつ叙情的で、爽やかさすら感じるフレージングは、先達のメロディックメタルコアバンドへの愛を感じ、その直系の音であることを瞬時に理解できます。
 常にピロピロスタスタ疾走し続けるスタイルは、ここ近年のメタルコア界隈に蔓延るローチューニング・ブレイクダウン至上主義に一石を投じていますね。「そんなもんに頼らんでもかっけえメタルコア作れるわい」という信念を感じます。(実際どうかは知らん)

 んで、ライブですが、開始時点で5〜6割程度が埋まっていた印象でした。最初のうちはそこまで観客のエンジンが暖まっておらず、おとなしーくしていました。が、最後の方ではサークルピットが発生し、ついオレも参加してしまいました。朝活朝活。
 最近出てきたバンドなので知名度的にまだ浸透していない部分があったのと、上述の曲調的に、暴れることが目的のコアキッズには「?」だったかもしれませんが、非常に質の高いライブだったと思います。音源よりもボーカルの獰猛な感じが出ていたのと、上手ギターのヌルヌル運指による滑らかなリードフレーズが特に良かったです。


○Sailing Before The Wind

 Sable HillsやGraupelなどが出てくる前から国産モダンメロディックメタルコアシーンを牽引しているバンドです。ベースのビトクさんは国産メタルコアの有名バンドにことごとく参加してるので、名前を聞いたことがある人も多いんじゃないすかね。
 実際のところはどうなのかよくわかりませんが、なんとなく、SBTWは国産メタルコアの先鋭化を加速させたバンドだなーって認識があります。疾走パート、ツーステパート、チャグ、ブレイクダウン、叙情パートなど、様々な「メタルコアらしい」パートを極端化し組み合わせるというスタイルは、数々の後続に影響を与えているんじゃないかなと。

 定番の無音ブレイクダウンから開始し、一気にスイッチが入ったフロアでは、バカでかいモッシュピットが出来ており、治安も激悪でした。正午から元気ですね皆さん。ステージパフォーマンスがやはり凄く、メンバーは同じ場所に留まってる時間がほとんどないんじゃないかというくらいに竿や腕、足を振り回し続けていました。こういった、空間を大きく使う動きはデカいハコのほうが引き立ちますね。
 それにしても、ボーカルが厳ついスクリームからいきなりめっちゃ線細い感じのクリーンボイスになるとつい笑っちゃうのは僕だけですかね。本当に同じ人が歌ってるんかあれって疑うレベル。


○Graupel

 お次はGraupelと、メロディックメタルコアが続きます。Graupelは1月のUnearth来日公演で観たばかりなのですが、チッタでもそのパフォーマンスは変わらず安定していました。もはや安心安全のGraupelクオリティって感じですな。
 ドラムの金物がかなり音量小さい気がしましたが、単にそういう仕様なのか、立位置の問題だったのか、PAが単純にオーバーヘッドマイクの設定ミスってたのかはよくわかりませんでした。逆にギターの音は良く、輪郭がはっきりしていて聴きやすかったです。
 それにしてもまあ治安の悪いこと悪いこと。Graupelの時のフロアが今フェスで一番治安が悪かった気がします。SBTWの時よりはるかにステージダイブが多かったし、ブレイクダウン時のピットはマジでカワサキシティって感じでした。それだけGraupelがコアキッズから人気を集めてきたってことなんでしょう。

 ↑早速動画上がってました。いやー乱世乱世。
でも実際Bereavementが来ると脊髄反射でブチ上がっちゃうんですよねー。


○明日の叙景

 本日の目当ての1つである、最近話題沸騰中の国産ポストブラックメタルバンド。ポストブラック然としたブラスト&トレモロによる爆走、高音絶叫の中にスポークンワードを織り交ぜる日本語ボーカル、メランコリックかつエモーショナルさを感じさせる音作りとメロディーライン、そして随所に「メタルさ」を感じさせるリフやヒロイックなギターソロが散りばめられています。
 2022年発表の最新アルバム『アイランド』は傑作として評価されており、オタクの間でかなり話題となっていました。「夏」がアルバムのテーマとなっており、前述のような音楽性に加え、Jポップ・アニソン的な爽やかで高揚感のある雰囲気が感じられ、独特な世界観を構築しています。
 Sable Hillsとの対談動画にて言及されていましたが、音楽的根幹にあるのはEnvyやheaven in her armsなどの激情系ハードコアだそうで、そこにDeafheavenなどのポストブラックやDir en greyを始めとするV系、アニメ・アニソン的ニュアンスなどの要素を取り入れた結果がこのスタイルだそうです。

 さて、実際のライブについてですが、開幕からのメロディックメタルコア3連発によって作られていた流れを良い意味でガラッと一変させました。ライブ開始から間もなく、フロアは完全にその音楽に圧倒されていました。演奏力も高く、音源そっくりそのままのクオリティを維持しながらも、ライブならではの質感が伴っていて非常に良かったです。最後の曲は人気曲「キメラ」で、イントロが流れた瞬間にフロア中から歓喜と興奮が混じった感情がグワッと湧き上がるのを感じました。オレも「キメラ」のイントロが来た瞬間に天を仰ぎながら拳を掲げまし  たし、ギターソロのチョーキング一発で完全に昇天してしまいました。
 今度単独公演があるそうで、クリマンがバックに付いたみたいですね。BorisのEUツアーにも帯同しますし、これからも躍進が続きそうです。


 流石に腹が減ったのでPromptsは見ずに会場近くのバーキンへピットイン。かなりエグい音出してたそうで、ピットもクソ治安悪かったらしいですね。


○DEXCORE

 名古屋拠点のV系メタルコア/デスコア。電子音を使用した、ダウンチューニングバチバチの極悪ヘヴィサウンドなモダンメタルコアに、The  V系メタルって感じの高音クリーンボイスによるメロいコーラスが入る、ってのがざっくりとしたスタイル。正直音源だけだと、クリーンが入らなかったらV系とか分かりません。まあ、様々な音楽ジャンルのエッセンスをミックスするV系特有の感じからピンとくる人もいるかもしれませんが。
 HNIBやGYZEなどで活躍したMAKIさんがサポートドラマーで入ってるのは知りませんでしたが、定番の背面頭上にセッティングされたチャイナシンバルで一発特定でした。あんなんあの人しかおらん。
 ちゃんと聴いたことなかったので「落とし」一辺倒なのかと思ってたら、意外とメロディックで多彩なパターンがあってビックリ。キレキレのパフォーマンスで盛りあがってました。ていうかクリーンボイスめちゃ上手くてビビりましたね。ピッチ感もノビも良く、イヤモニが故障しながらもあれだけ歌えるのはシンプルに凄いなって思いました。
 印象的なのはMC。V系への偏見についてや、女に頼らんと生活出来ないV系業界について、とてもアツく語ってました。暑苦しく感じる人もいそうですが、フロアからはかなり好意的に捉えられていたんじゃないかなと。

 


○Thousand Eyes

 最強の国産メロディックデスラッシュバンド、我らがデスラッシュメサイア、通称千眼。かなりメタルコア系ラインナップに寄っている今回のフェスにおけるトゥルーメタル枠です。ギターのKOUTAさんはメタルコア嫌いで有名なので、ようこのイベント出るってなったなとは思いました。まあ、Sable Hillsとは元々仲良いので多少はね。
 なんやかんやで2年位観れてなかったのですが、やっぱり高校時代から大好きなバンドなので、「Dawn of Despair」からの「Day of Salvation」の流れで完全に火が付いてしまいました。マジでカッコいい……。正直そこまでハマらなかった新譜の曲も、ライブになるとやはり高まってしまうので、千眼曲の平均クオリティの高さは凄まじいなと。
 最初から最後まで慟哭しっぱなしでしたが、特に「Bleeding Insanity」と「Bloody Empire」で爆上がりしてしまい、あわや大号泣でした。そら身体が勝手にサークルピットに突っ込んでいきますよ、僕の青春なんですから。
 フロアのメタルコアキッズ達にも好感触だったみたいで、悶絶しながらメロイックサイン掲げて首振るメタラーに若干戸惑いながらも盛り上がってる様子でした。

 圧倒的漢。圧倒的慟哭。圧倒的救済。全てを実力で薙ぎ倒していく姿に改めて惚れてしまいました。


○a crowd of rebellion

 「コシヒカリーモ」を自称する新潟県産ラウドロックバンド。なんやかんや結構息が長く、高校生の頃にSatellitearをちょくちょく聴いてた覚えがあります。昔は女声のようなクリーンボーカルのピコピコ系メタルコアって感じがしていましたが、近年はよりポップで、ラウドロックな方向に寄せに行った楽曲が多い感じですね。今回はSable HillsからのリクエストでSatellitearとか昔の曲もやってました。
 ライブは、端的に言うとノレませんでした。スクリームボーカルのオラついた感じの煽りがまず結構キツかったのと、クリーンボーカルの音程がヨレヨレだったのが要因として大きく、さらに千眼の後だったこともあり、音楽的にもノリ的にも薄っぺらさを凄い感じちゃったんですよね。ま、これに関しては出演順が悪いかな。フロアは結構盛り上がってて楽しそうでした。昔の曲はノスタルジーを感じることができて良かったです。


○Ailiph Doepa

 SOADやホルモンをベースに、モダンなヘヴィリフやポップなメロディー、変態展開をマシマシにしたスタイルの、変態アヴァンギャルドラウドロックバンドです。ノリ的には野性爆弾くっきーの世界観ってのがマジでしっくり来ます。このバンドも高校生くらいから知っているバンドですが、なんやかんやで生き残ってるもんですね。最近の曲は全然知らなかったんですが、良い意味で全くブレてなくて安心しました。
 モニターの具合が決まらなかったのか準備に若干手間取っていましたが、ゆるーい感じのノリで、ランドセル背負ったり派手な格好したメンバーが入場してきてライブへ。めっちゃチークつけてたドラムは元Phantom Excaliverで現SEX MACHINEGUNSドラマーのトーマスさんだったそうで。
 初めてライブを観ましたが、ボーカルがいや上手いこと上手いこと。朗々と歌い上げるパートもコミカルなパートもハイレベルにこなすあたりは、まさしくSOADのサージ。中音域が太くて良い感じでしたし、スクリームも粒立ちがよくて好印象でした。
 やっぱコミックバンド(語弊あり)は確かなテクニックの裏打ちがないとダサいですからね。その辺りは安心のクオリティでした。



○Phinehas

 今フェス唯一の海外枠。エピックな単音リフとリードギターが主体的でありつつも、爽やかなクリーンボイスとブレイクダウンが要所で挟まれる、王道ゼロ年代メタルコアです。特徴的なのは、リフやギターソロなどのフレージングが、メタルコア的というよりはオールドスクールメタル的な質感を持っていることです。そこをダサいと捉えるか、「漢」を感じるかはあなたの感性次第です。私については言うまでもありませんね。
 4人編成なので、サイドギターは同期音源を使用しており、そこの調整に手間取っていたのか若干セッティングに時間は掛かっておりましたが、それがクリアしてからはチャチャッと準備を終え本番へ。
 しかし、めっちゃ演奏上手い。特にギターが超ノイズレスでヌルヌルかつ泣きまくりのリードを弾き倒しているのが印象的でした。パキッとしたいかにもメタルな音色なのに不快感が無く、音作りもめっちゃ良かったです。ドラムも若干後ろノリなのが、オールドスクールな感じが増してて個人的には好みでしたね。フロアもかなり盛り上がっており、ツイッターを見るに、Phinehasを知らない客層にも好感触だったっぽいですね。ラストで代表曲「I Am The Lion」がプレイされ、メチャクチャ盛り上がっていました。イントロリフはもちろん大合唱、疾走パートでつい我慢できずサークルピットに突入してしまいました。最高ギターソロでは無事悶絶し、非常にエピックな時間を過ごせました。


○Imperial Circus Dead Decadence

 本日最大のお目当て。日本中のナードメタラーから崇め奉られているバンドです。エクストリームメタル全般、パワーメタル、V系(特に色濃いのはDir en grey)、Sound Horizon、同人ゴシックなどなどの様々な音楽をミックスしたうえで、日本人的感性を以て超ハイレベルにまとめあげ、ICDD独自のサウンドを形成しています。
 2022年発表の『殯――死へ耽る想いは戮辱すら喰らい、彼方の生を愛する為に命を讃える――。』は、個人的には2022年のベストアルバムだと考えていまして、あまりのクオリティの高さに他バンドの新譜があらかた霞んでしまうほど。よりメロディアスに、よりブルータルに、よりテクニカルに、よりヒロイックに、従前のスタイルを徹底的にブラッシュアップした結果大傑作と相成りました。
 中でも、アルバムラストを飾る「天聲」があまりにも最高でして、誇張なしに、聴く度に涙を流しそうになってしまうんですよね。なんだったらマジで流してます。退廃的かつブルータルで複雑な楽曲が続いた後の、眩い光に包まれているかのようなド直球飛翔系メロスピはまさに救済。カタルシスそのものと言っても差し支えないでしょう。

 実に久しぶりのライブということもあり、リハの段階でオタクは既に大興奮。シンセオケやギターがデンと鳴ったら脊髄反射で声が漏れている人が多数いました。私もその一人。本番ではやらない曲として人気曲「劇愛の呼声が溺哀の叫声を喰らう」が途中まで演奏されましたがもうブチ上がりですよ。なぜ本番でやらんのだってみんな漏らしてました。
 しばらくセッティングに時間が掛かっていましたが無事開始。とは行かず、PAトラブルによりほとんどボーカルが聞こえない状態でした。前の方にいたんでその弊害かな?って思ってたんですが、そんなことはありませんでした。このPAトラブルは後半まであまり改善されずかなり残念な状態でした。
 とはいえ、新譜1曲目の「禊祓の神産は宣い、禍祓の贖罪は誓う」からスタートし、テンションはいきなり最高潮に。声はあんまり聴こえませんでしたが、不思議と脳内補完によりどこのパートか分からないってことはありませんでした。曲中のKIMさんのギターのみになるパートで接触不良?だかの機材トラブルでブツブツ音が途切れたのはちょっといただけませんでしたね。あそこはかなりの爆上げポイントなので。
 続く「邪神の婚礼、儀は愛と知る。」はイントロの少女の語りが流れた瞬間オタクが大絶叫してました。はい、私もです。正直音響の関係で何がなんだかよく分からん状態になってたのがとても悔やまれます。
 次曲はなんと「分裂した道化と≒発狂した修道女」がプレイされました。この曲がチョイスされるなんてカケラも考えていなかったのでマジで混乱してしまいましたよ。Dir en greyの初期曲「schweinの椅子』のオマージュパート"Geist Seele Wille Zelle"はもちろんみんなで大合唱。
 この辺りでボーカルの音量も若干改善されてきており割と聴こえるようになってきており、「黄泉より聴こゆ、皇国の燈と焔の少女」では結構ボーカルラインも分かるように。この曲も人気曲なので、サビの「皇国の燈を享け〜」のところは今日一の合唱コンクール会場になっておりました。
 最終曲は「天聲」。イントロSEのクワイアが流れた瞬間、結構デカい声で「おわぁ……」って声が漏れてしまい、ちいかわみたいになってしまいました。PAバランスも、この頃にはちゃんと全体が整っており、しっかりとバンド全体が聴こえるようになっていました。曲は前述したように最高で、1サビの入りではつい大号泣してしまいました。いやー、ほんとヘヴィメタルっていいもんですね。
 途中のMCでワンマンライブを6月に開催すると発表されたので、もちろんチケット確保しました。キャパ350程度の渋谷Eggmanでチケットが40〜50分程度売り切れててマジでビビりましたね。


○Sable Hills

 本日の主催バンドかつ大トリです。Graupelと同様に、Unearth公演でも観たばかりです。なんとこの前日にフィリピンでBorn of Osiris、Within Destructionらとライブをし、終了後即飛行機でトンボ返りしてFrontline Festivalを開催するという、控えめに言っても頭のおかしいスケジュールで動いていました。タフすぎるだろ。「こっちは死ぬ気でやってんだよ」というMCにとても説得力がありました。
 セトリはUnearth公演から曲順を変更しつつもほぼ同じ選曲でしたが、アンコール的に「The Path」でRictさんがギターソロを弾いてから「Embers」に繋ぐという激アツ展開が追加されておりました。やっぱそういうのはトゥルーメタル的な感じがして良いですよね。そういった演出も含め、Sable Hillsはやはりデカいステージ映えをするなあというのを改めて感じました。今のセトリがデカ箱映えする曲をチョイスしてるのもありますが、海外フェスで経験を積んできてステージ上での立ち回り方がこなれてきた感じがします。

 大トリ特有の、電車の都合や目当てのバンド終わったから帰るわっていう客が多くてフロアがガラガラになる現象はあまり気になりませんでした。若干ピットが広く取れるかな?って程度だった気がします。つまりそれだけ「Sable Hillsを観たい」としてライブに来てる人が多いってことですよね。なんとも喜ばしいことです。 


 非常に満足度の高いイベントでした。第2回以降も楽しみですし、もっとデカいイベントになると良いですね。

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