見出し画像

Episode 44: Map of the Soul – Persona (pt.2)

Laura: そこで女性が出てきますね。MVの中でアメリカ人のHalseyが登場します。

Dr. Stein: 曲の最初に7人がステージに立ち、彼女はチケット売り場にいますが、突然呼ばれたことに気づき、売り場を離れて立ち去ります。その後7人が最初のパートを歌い、後に彼女が登場します。なぜアメリカ人をこの役に選んだのかという質問をする人もいましたが、私は彼女がこの役に選ばれたことに非常に感銘を受けました。韓国人の彼らが国際的に有名になり、アメリカでコンサートを行いましたよね。AnimaはPersonaの次の章に来るのですが、Animaというのは自身に根付いた文化とは全く違う文化の姿なのです。よって彼らのAnimaの描写はアメリカ人女性が最適だったのでしょう。無意識のAnimaをアメリカ人女性に描写し、その魂の姿を見つける。それはヨーロッパ人が中東やインド、中国などのエキゾチックな文化に魂の投影をしているのと似ています。例えばユングの友人の物理学者のAnimaは何度も夢に出てくる中国人女性でした。彼女と会ったこともないのですが、彼女は彼の性格の中で無意識のAnimaとなっていたのです。ここではHalseyがアメリカ人だということは重要であり、最初の曲で「where is my soul」という最初の曲の呼びかけに対し彼女が現れるというのは無意識の中での答えなのです。

そして曲のタイトルは「Boy with Luv」です。初期の歌には「Boy in Luv」があるそうですが、Boy with LuvとBoy in Luvには大きな違いがあります。in loveというのは感情に支配されていて、誰かに属しているという描写です。無力になってしまい、自我が感情の奴隷になり、時には狂った行動に出ることもあります。感情の統制が利いているのがwith loveの場合です。気持ちが入ってしまうのではなく、気持ちに寄り添っているのです。気持ちが寄り添えば良い効果が相手にも表れますし、状況のコントロールができれば自我はもっと成熟した位置づけとなり、精神的にもin loveよりも高いところにいる状態になります。

BTSは初期のころのin loveの時よりもはるかに成長し、今はwith loveだと表現しているのでしょう。美しい歌ですし、歌詞が印象的ですね。人を成長させ、気分を高め、時には危険になる愛の力を称えています。君がくれたイカロスの翼は、太陽ではなく君に向かって飛んでいるんだ言っています。ギリシャ神話ではイカロスの翼は太陽に近づきすぎて燃えてしまいました。歌の中では、翼は高いところに行って飛んでいますが、コントロールできていて、墜落もしません。翼を落としたり燃やしたりという空想に向かっているのではなく、誰か大切な人とwith loveになりその愛に向かっています。これをユングが言う個性という観点で見ると非常に面白い展開ですね。まず初めに「where is my soul」と問い、次に女性が現れる、そしてwith loveとなり、家族や大切な人、および世界に貢献しています。

Laura: 素晴らしい解説をありがとうございます。そこから次の3曲目へと展開していきますよね。3曲目はMikrokosmosという題名です。

Dr. Stein: Macrocosmは宇宙です。すべての世界、ユニバースということです。宇宙というのは自分自身を含む全てですが、Mikrokosmosは内なる世界です。内なる世界とういのは宇宙が存在する外側の世界の反映なのです。晩年ユングは病床で夢を見ます。「水たまりの中にひとつの星を見つけ、自分が無意識という水たまりの中にいるMikrokosmosのひとつだと気づいた。その時にものすごく気分がよくなったんだ」と彼は友人に話したそうです。この内なる世界が外と繋がっているという感じ、これがユングが自己 (セルフ) と呼ぶもの1つです。もし内なる世界にMikrokosmosを持っていれば、複雑さ、豊かさ、多様性などの大きなものも持ち合わせているといえます。よってMikrokosmosへと踏み出すことは個性への大事な一歩となります。なぜならそれは、外部に依存していない内の世界があると気づくからです。例えば、Personaで止まっているとしましょう。その場合、他人があなたの価値を見せてくれることに頼り切ってしまい、人から受け取る以外に自分自身では感情を持っていない状態に陥っています。Mikrokosmosという内なる世界を感じることにより、他に頼ることなく自分の価値を見出せるのです。

Laura: 彼らは「僕達なりに輝いて」と歌っていますが。

Dr. Stein: 僕達なりに輝いて、そしてそれぞれに輝くということですね。

Laura: この部分は個性を反映しているようですね。

Dr. Stein: その通りです。この部分は17世紀のドイツの哲学者、Leibnizが私達はみなモナド (単子論) だと言ったセオリーと似ています。私達はモナドであるが、他のモナドと宇宙で繋がっていて関係が成り立っているのだと言っています。70億個の星という歌詞がありますが、それは世界の人口と同じ数です。それそれが星であり、モナドであり、個性であり、魂を持っていますが、その単体が繋がって調和をなしています。Mikrokosmosは、はるか超越したものに自分が根付いているんだと気づき、自分を見つめている歌です。私達には自分自身の星になるという運命があります。死の際は自身の星に戻る運命なのです。それはユングが赤の書で書いたグノーシス哲学でもあり、運命があると知ることで心の平穏が訪れます。私はMikrokosmosの歌詞は自己 (セルフ) の感覚への突破口として読み取りました。7人の若者による個性はもがきながらもその道を見つけ始めているのです。そして4番目の曲 'Make It Right' へとつながりますね。


*出典元:Speaking of Jung Interviews with Jungian Analysts Episode 44: Murray Stein, Ph.D. ~ Apr. 14, 2019 ~ A Jungian interpretation of BTS’s Map of the Soul: Persona (https://speakingofjung.com/podcast/2019/4/14/episode-44-map-of-the-soul-persona) by LAURA LONDON

*意訳となりますのでご了承下さい。無断転載はお控えください。和訳を他のサイトやSNS等で紹介していただく場合は、引用元のリンクURLも貼り付けをお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?