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Episode 53: Shadow Interlude

Laura: ユングのShadowのコンセプト、そしてPersonaとの関係というのは何なのでしょう?

Dr. Stein: Personaは他人に対してや社会に対して持っている顔です。ただその顔も誰と一緒にいるかということで変わってきます。親しい人といる場合は親しみあふれるpersonaになるし、フォーマルの場に行けばフォーマルなpersonaが出てくるはずで人は様々なpersonaを持っています。言い換えればたくさんの自分を持っているとも言えますね。一方、shadowは私達が隠している部分です。外には見せないですし、自分の中に隠しているものです。クローゼットの奥深くや地下にしまっているようなものです。誇りに思えず、あまり知らない人や、信用できない人、親しくない人に見られたら恥ずかしいと思うような一番深いレベルにある部分にあり、それは強欲、色欲、傲慢といった七つの大罪にもあるような我々が見たくないものです。自身のshadowに気付くということは非常に難しい問題です。Shadowのレンズを通して自分を見ると言う事は楽しいことではないですもんね。

Laura: 自己否定もshadowではないのでしょうか?思ってもいなかったような自分というものを誰かに気付かれたとき、それがshadowへのヒントになるような気がします。Shadowは無意識にあるのでしょうか?自分の中にある何かを誰かに気づかれたくない、これは無意識ではないですよね?その場合はshadowなのでしょうか?

Dr. Stein: Shadowにもレベルがあります。自身を省みたときに気付くshadowは自己を内省しているので、自分に正直になっていますが、ほとんどのshadowは抑圧されています。無意識というのは奥深いところにあるのでほとんどの場合気づくことが不可能です。パートナー、夫、妻、親しい友人にあなた自身についてのフィードバックを聞いてみる。これはshadowを知る方法のひとつです。自分の無意識の中にあるものを他人から見つける傾向もあります。あなたの敵、嫌いな人、嫌いな人の嫌な部分を見てみてください。そこにあなた自身を見つけるヒントがあるはずです。そして夢の中でも自分を見つける方法もあり、夢の中で出てくる事柄に関して自身と関係づける何かを見出してこれが自分の一部なのか?と問いかけることもできます。こういったことがshadowの世界を探求することの始まりになります。Shadowというのは個人が持っているものに限らず、もっと大きな政治や国家関係にも当てはめられます。相手が悪で自分たちはいつも善、神は我々の見方で悪魔はあちら側という形で世界を分割し分極化してしまう傾向にあります。Interlude: Shadowではshadowを否定したいのだけれど、shadowは自分たちの一部であるという認識をしています。

Laura: なるほど。Interlude: Shadowは今週出たばかりで3分間の曲です。メンバーのSugaだけが出ています。彼は、はぁ、、、すごく強烈でした。リリース直後には何人かの人から怖かったと連絡をもらったし、驚きがあったようです。MVの中にある激しさやむき出しな感情について少し話していただけますか?

Dr. Stein: 激しいというのはいい表現ですね。なぜなら感情は激しいものですから。 Shadowの領域に入ると、それが自己投影でも、内にある自分だとしても非常に強い感情が出てきます。あの3分間の間にSugaが恐怖と不安の中で断言すること、背景に影が襲い掛かってくることでその強さが分かると思います。鏡の部屋にshadowがありますね。あれはshadowを経験している過程です。ユングはshadowと向き合うのは自己が打ち砕かれるような経験だと言います。自信が打ち砕かれ、自分が誰かと問いかけまあす。そういった問いはとても感情的なものであり、MVの中ではそれが強く表現されています。

Laura: ShadowとEgoの関係は何なのでしょう?どう成り立つのですか?

Dr. Stein: Shadowはegoの隠れた部分です。Egoは「I (私)」です。’I want to be a rap star, I want to be the top, I want to be a rock star, I want all mine’、これらの歌詞はすべて「I、I、I、I」ですよね。これはegoが話しているのです。「I (私)」という言葉を使うとき、egoを語っているのです。Egoは意識の中の核になる部分ですが、egoにも隠れた部分はあります。それが私達がshadowと読んでいるものです。Shadowはegoの中で最も冷たい部分で、shadowは自分の中の一番利己的な部分だということです。意識の中にあるegoも時には迷子になったり、取り憑かれてしまうこともありますが、これは人の性質の一部です。誰でもがegoがあり、その中の利己的な面も持っています。一方、私達は愛も持っています。愛はshadowには属しません。愛が欠乏したもの、これがshadowなのです。愛は他人に寄り添い、shadowは他人をコントロールしたがり、egoはこの両方の側面を持ち合わせているものなのです。

Laura:ではegoとpersonaの違いは何なのでしょう?

Dr.Stein: Personaはegoであり、社会的に受け入れられるように自身を表現してくれるのがegoです。Egoがshadowに支配されているときは社会的に受け入れられるような状態ではありません。

Laura: 映画でも悪役や悪のテーマが人気があったりします。これはなぜなのでしょう?

Dr. Stein: それに魅了されるのでしょうね。Shadowを持った役に自己投影することで、安全な方法で自身のshadowを解き放つすることができますよね。いつも良い人でなければいけないというのはあまり健康的なことではないとユングは言っていました。よい人であろうとすれば中に溜め込んでしまい、それが抑圧されていくと裏目に出てしまいます。だからshadowを解放できるような映画があるのは良いことだと思います。 

Laura: Shadowに支配されるということも可能な訳ですよね?

Dr. Stein: もちろんです。

Laura: どうやったらそれを防ぐことができますか?

Dr. Stein: 意識です。Interlude: Shadowの曲の価値はそういったところにあります。気づきが歌われているからです。闇に包まれたものではなく割と穏やかなshadowだと言えますが、shadowを非常にストレートに表現しています。そしてそれに気づき、曲の最後ではshadowと向き合っています。shadowとegoとが語り合ってるようですね。それはユングの答えでもあります。

Laura: MVでのビジュアルについても話しませんか。赤いドアがとても印象に残っているのですが。

Dr. Stein: 赤というのはとても活気のある色ですね。血や命の色であり、怒りのような強い気持ちを表すものです。Sugaが廊下に立ち、たくさんの人がいる初めのシーンは印象に残りますよね。それぞれが孤立をしているようでお互いの関係性があるようには見えません。この曲ではSugaだけがパフォーマーなので、孤立というものを見せてshadowを表しているのがポイントだと思います。グノーシス主義にヤルダバオートという神が出てきます。創造神なのですが他の神がカップルで創作するのに対し、彼は1人で創作するという点で他の創造神とは少し異なります。彼は1人で悪に満ちた世界を創ります。“I wanna be rich, I wanna be the king, I want it all mine, I wanna be me, I want a big thing”というフレーズ、これはすべて欲ですよね。これはegoを通してshadowが話しているのです。単独でMVに登場し、孤立した危険な状態に陥ってしまった不安や恐怖を表現しています。そして強い光と同じくらい暗さもあるという真逆のことも描写しています。高くいけばいくほど、底は深くなる。てっぺんに早く到達しすぎたがゆえに落ちていくことの恐怖ですね。

Laura: 曲の最後にある “I am you, you are me, now you do know” という部分に関してですが、これに関いてもう少しお話いただけますか?

Dr. Stein: なかなか複雑な歌詞ですが、この部分に非常に興味をそそられました。これは自己受容の対話だと私は見ています。「I (私)」 だけではなく「You」 も登場しますよね。彼は1人ではないのです。そしてこれは誰がしゃべっているのでしょう? Shadowがegoに話しかけているのか、shadowがSugaに「俺らは1つだ、分かったか?」と話しかけているのか、、これはどちらにも取れると思います。

Laura: その他何かありますか?

Dr. Stein: 次作も楽しみですね。発表されたらまたお話ししましょう。


*出典元:Speaking of Jung Interviews with Jungian Analysts Episode 53 Shadow Interlude ~ Jan.12, 2020:(https://speakingofjung.com/podcast/2020/1/12/episode-53-shadow-interlude) by LAURA LONDON 

*出典元:  Speaking of Jung, Ep. 53: Shadow Interlude with Jungian analyst Murray Stein, Ph.D. (https://www.youtube.com/watch?v=f1B95Ry_tlU)

*途中の解説をいくつか省いた超意訳となりますのでご了承下さい。無断転載はお控えください。和訳を他のサイトやSNS等で紹介していただく場合は、引用元のリンクURLも貼り付けをお願いします。

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