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人も本も縁がつなぐ

数日前から、

何年も積読状態だった本の中から一冊、

毎日30分程度のペースで読み進めている。


1冊目に選んだのは

村上由佳さんの

『ダブル・ファンタジー』。

まだ半分ほどしか読んでないが

なんというか…、

私かっ!

と主人公の女性の中に自分を見る。


一狼太とのメールの交換で

突然、激情の中に放り込まれた奈津は、

その渦に飲み込まれ、

一狼太に依存し、

突然冷めた一狼太に戸惑い、

一度話したいと繰り返しメールを送るが、

一狼太からは音沙汰がなくなる。


一狼太のようなハンター的な男性は、

狩るまでが興味の対象なのであって、

掌中に収めれば次の獲物を求めるのである。


対して、かかる男性に認められ求められることに

自己価値を見出した女性は、

常に彼からの承認を待ち、

その気持ちが急速に自分から離れて行っていることに気づかない。

気づいたときには、男性は完全に冷えている。

突然、放り出されたように感じ、戸惑い、泣き崩れ、縋る。


自分では物わかりのいい女であると信じ、

それをアピールしながら、

その言動は確かに泣いて縋るみじめな女である。


同じ過ちを私も犯したことがある。


文字を追うのが困難になる程、

苦笑と赤面を交互に繰り返す。

自分の内側を暴かれているようで、

時にはあまりの恥ずかしさに

思わず声を発しそうになる。


ただ、その一方で、

変に感情移入することもなく、

客観的な視点を維持する自分が、

読書から遠ざかっていたこの5〜6年の

成長の証なのかもしれないとも思う。


8年前に発表され、

その後間も無く私の手元に来たにもかかわらず、

開かれることもないまま

ここに置かれ続けた物語との縁を

感じずにはいられない。


今だから読むことができたし、

このタイミングでこそ読むよう

巧みに仕組まれていたのだったのだろう。


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