見出し画像

日本のThe Backroomsコミュニティが大好きなので紹介してみた

日本のThe Backroomsコミュニティが大好きなので紹介記事を書いた。

前提:The Backroomsについて

この文章を読んでいる方が「The Backrooms」というものをどのぐらい知っているのかわからないので説明。


2018 年 、海外のある「不安になる画像スレ」的な掲示板に一枚の画像が投稿された。

元画像は著作権上の問題で引用できなかったので、ここから引用。
元画像は「Level 0」で画像検索すると出てきます

絶妙にズレたカメラアングル、黄ばんだような質感、違和感のある間取り……などが特徴的なこの不気味な画像はものすごく話題になり、2019 年には「The Backrooms」の起源となる以下のような物語が付け加えられた。

The Backrooms

あなたが注意を怠って、おかしな所で現実から外れ落ちると、古くて湿ったカーペットの匂いと、単調な黄色の狂気と、最大限にハム音を発する蛍光灯による永遠に続く背景雑音と、約十五兆 m2 を超えて広がるランダムに区分けされた空っぽな部屋部屋に閉じ込められるだけの、 ”The Backrooms” へ行き着くことになるのです。

もし、近くで何かがうろうろしているのが聞こえたら、それはきっとあなたが出す音に気付いていることでしょう。あなたに神の救いがあらんことを。

https://backrooms.fandom.com/ja/wiki/Level_0_(1)
 外れ落ちる:「現実で壁抜けバグを起こす」的な意味の用語 気にしないで

こうしてできあがったThe Backroomsは、上記の「Level 0」の画像のような特徴的な場所の画像(これらを際の空間 (Liminal Space)と呼ぶ)をそれぞれ一つの世界とみなし、もっともらしい説明文をつけて楽しむシェアワールドコンテンツである。

際の空間(Liminal Space)って何?

際の空間の定義について、日本版Backrooms Wikiの説明を引用してみる。

「際の空間」とは、不自然さ不気味さなどを内包していて、「そこに私がいたら……」と孤独感不安感などを感じさせるような、しかし、怪物や幽霊などの露骨な恐怖の要素は含まれておらず、むしろ日常的あるいは現実的な要素も多く含んでいて、「どこかに、こんな所もあるかもしれない……」と浮遊感超現実感なども感じるような、そして、理想的には「そこに私はいたことがあるかもしれない……」と既視感懐古感などを感じさえするようなものです。
ただし、このような理想的な際の空間の画像は少ないので、実際には、どこかしらの空間を表現していて、孤独感がある(人が写り込んだりしていないなど)上で、不安感超現実感郷愁感のいずれかを含んでいれば OK とします。

https://backrooms.fandom.com/ja/wiki/Backrooms_Wiki:ルール

……何やらすごい量の形容詞が出てきた。まとめると、日常に潜む不安・孤独・超現実・郷愁空間ということである。あまりにも抽象的な概念なので何枚か画像を挙げると、

と、こんな感じである。なんとなく雰囲気を掴むことができたなら嬉しい。上記の際の空間(Liminal Space)特有の雰囲気を、界隈では際性(Liminality、リミナル性)と呼んでいる。

日本の The Backrooms コミュニティ形成の経緯

ここで、The Backroomsについての説明に戻る。「Level 0」の画像の強烈なインパクトもあり、海外のThe Backroomsコミュニティは多くの執筆者で賑わい、どんどんシェアワールドコンテンツとしての設定が完成されていった。まずは、様々な空間が存在できるような便利な設定として階層(Level)の概念ができ、それぞれの階層は接続されるようになった。(例えば、「Level 0」で下り階段を見つけ、降りると「Level 1」に移動する。みたいな)また、現実世界にいない危険な実体であるエンティティや、使うと病気が治ったりあるいは死んだりする物資であるオブジェクト、そしてThe Backroomsに迷い込んでしまった者を保護するための巨大組織M.E.G.が設立されたりした。このようにして、The Backrooms内はどんどん開拓され、"未知"が解明されていった。
また、エンティティがわんさか居てとにかく危険な階層ができたり、ドラマチックな物語を含んだりしてどんどんThe Backroomsは緊迫感のある場所になっていった。

………ここで、際性の定義を振り返ってみる。際性とは、際の空間特有の雰囲気であり、孤独感・不安感・超現実感・郷愁感であった。
たくさんのエンティティの存在は、時として孤独感を失わせてしまう。特に"特定の名前があり、複数の階層に跨いで普遍的に存在するようなエンティティ"の存在は、ホラーSF感を強めてしまう。マジックアイテムめいた、普遍的なオブジェクトの登場も同様である。
The Backrooms内の様々な組織やグループの存在も、孤独感・不安感を弱めてSF感を強調してしまう。M.E.G.のようにデカすぎる組織は猶更である。
また、「エンティティ」「オブジェクト」「M.E.G.」………といった様々な複雑な用語があることで日常感が薄れ、「どこかに、こんな所もあるかもしれない」「そして、そこに私はいたことがあるかもしれない」と思うような日常と非日常の狭間にある超現実感・郷愁感を失わせてしまう。
ドラマチックな物語も、時として空間へ感情移入する隙をなくしてしまう。
(このあたりの詳細な説明は下記。Hexirp氏執筆)

そこで、「より際性を重視したシェアワールドをやろう」という文脈で立ち上げられたのが、日本版Backrooms WikiThe Backrooms JP Wikiである。前者は上記の記事の執筆者でもあるHexirp氏によりFANDOM Wiki上に、後者はSOYA-001氏によりWikidot上に設立された。(似たようなWikiが二つも設立されているが、決して仲違いしたわけではないので安心してほしい)
名前が長くてややこしいので、それぞれFANDOM-JAとかWikidot-JPとか呼ばれている。

FANDOM-JAは、誰でも手軽に編集可能なFANDOM Wikiの長所を活かし、ルールさえ守ればすぐに参加できるし執筆もできる活発なコミュニティに、Wikidot-JPは、シェアードワールドの大先輩であるSCP財団から記事の評価システムや批評システムなどを導入し、記事の読み応えと品質が保証されたコミュニティに仕上がっている。

階層紹介

そういった経緯を読んでもらった上で、ようやく好きな階層紹介。

Level 4 η: "プレイルーム"

プレイルームや廊下などがぐちゃぐちゃに接続された、無限に広い空間。現実世界(コミュニティではThe Frontroomsと呼ばれている)のプレイルームでマットの隙間に手を突っ込むと、そのままこの空間に迷い込んでしまうことがあるらしい。かわいそうに。
ちなみに、"η(えーた)"ってついてる方がFANDOM-JAの階層、"N(えぬ)"ってついてる方がWikidot-JPの階層である。この階層はWikidot-JPにもある

Level 500 η: "青に沈んだ公営団地"

常に曇っていて青みがかっている、無限に広い公営団地。ところどころに広場や小さい公園もある。この団地には首のない人間が住んでいるらしい。
時々、この団地であなたの親しい人物と出会えることがあるが、あまり近づかない方がいいかもしれない。
この階層はWikidot-JPにもある

Level 65 η: "前衛"

記事のために画像をトリミングしました

前衛芸術作品展のような広大な空間。空間の構造が不安定なのか、一度来た道を戻っても同じところに戻れなかったりする。この階層の作品を鑑賞していると、作品を観る以前の自分の記憶の中のありえない場所(電車の隣の席とか、枕元とか)にその作品が現れることがある。その他作品を観ることによって良くない影響をいっぱい受けてしまうので、ここには長居しない方がいいかも。

Level 1 N: "リトル・トーキョー"

埃っぽい空気が漂っている、無限に広い地下鉄のホームのような空間。雨漏りという形で水が、"落とし物"という形で食料や、その他いろいろ変なものが手に入ることがある。たまに電車が来る。そのほとんどは通過するが、停車したときはちょっと怖い目に遭うかもしれない。

Level 34 N: "門限遅れの帰り道"

記事のために画像をトリミングしました

じめじめした6月の夜の住宅街のような広大な空間。遠くからバイクの音や犬の鳴き声などが聴こえることがある。ごくまれに掲示板を見つけることができ、そこにはたくさんの紙が貼りつけられている。「みどり(柴犬)を探しています」とか書かれている。たまにランドセルや通学カバン、割れた一升瓶などが落ちている。怖い。

Level 71 N: "狭小なアダルトビデオ販売店"

記事のために画像をトリミングしました

空調が効きすぎて寒い、薄暗いアダルトビデオ店のような空間。これまでの階層と異なり床面積は非常に狭いが、階段があり上下方向に無限に広い。ここで売られているDVDはどれも抽象化されすぎていてよくわからないものばかりである。てんとう虫がたくさん集まって概ね人型を成したような謎の存在がDVDを吟味している。
この階層はFANDOM-JAにもある

まとめ

何より雰囲気が良い。

現在、YouTubeの動画で紹介されている階層のほとんどは海外産のものである。ここまでで紹介したように、日本産の階層はこれらとは路線が異なり、直球なホラーや恐ろしさではなく、孤独感・不安感・超現実感・郷愁感などが追い求められたものが多い傾向にある。YouTubeで紹介されている階層だけ見て「微妙だな………」「よくわからないな………」と思っていた方にも、ぜひ日本のThe Backroomsコミュニティを知ってほしい。

あと私も別名義で階層を書いている。お気に入りの自著はこれ
いっぱい読んで!!!!!!!面白いから。

スペシャルサンクス

この記事を執筆するにあたって、Hexirp氏、SOYA-001氏に内容のチェックをしていただきました。また、Hoojiro_san氏に紹介する階層の選定に協力していただきました。ありがとうございました!




ライセンス表示

この記事は、その全文が CC BY-SA 4.0 で公開されます。

https://backrooms.fandom.com/ja/wiki/Backrooms_Wiki は、その全文が CC BY-SA 3.0 で公開されます。

http://japan-backrooms-wiki.wikidot.com/ は、その全文が CC BY-SA 3.0 で公開されます。

以下は、この記事で Level 0 の画像として使用したものです。

この画像の著作権者は Huuxloc、SOYA-001 です。この画像は 2022 年に CC-BY SA 4.0 の元で提供されました。

Level 4 η: "プレイルーム" は 2022 年に Hexirp が作成したものです。この記事は CC-BY SA 3.0 の元で提供されます。

以下は、この記事で Level 4 η の画像として使用したものです。

この画像の著作権者は UE-PON2600 です。この画像は 2003 年に CC-BY SA 3.0 の元で提供されました。

Level 500 η: "The Public Housing Complex Sunk In Blue" (青に沈んだ公営団地) は 2022 年に SOYA-001 が作成したものです。この記事は、画像を除き CC BY-SA 3.0ライセンスの下で提供されます。この記事の画像は、CC BY-SA 4.0ライセンスの下で提供されます。

以下は、この記事で Level 500 η の画像として使用したものです。

この画像の著作権者は 東京団地鉄道 です。この画像は 2019 年に CC-BY SA 4.0 の元で提供されました。

Level 65 η: "The Avant-garde" (前衛) は 2022年 に incorrectsummary が作成したものです。この記事は、画像を除き CC BY-SA 3.0ライセンスの下で提供されます。画像は DALL·E 2 によって生成され、Incorrectsummary によって改変されました。画像には著作権に関する情報がありません。

Level 1 N: "リトル・トーキョー" は 2022年 に Pain_Candy が作成したものです。この記事は、CC BY-SA 3.0 の元で提供されます。

以下は、この記事で Level 1 N の画像として使用したものです。この記事で使用した画像は、Pain_Candy による加工が施されています。

この画像の著作権者は PekePON です。この画像は 2011 年に CC-BY SA 4.0 の元で提供されました。

Level 34 N: "門限遅れの帰り道" は、2023年 に zoni999 が作成したものです。この記事は、CC BY-SA 3.0 の元で提供されます。

以下は、この記事で Level 34 N の画像として使用したものです。

この画像の著作権者は zoni999 です。この画像は 2023 年に CC-BY SA 3.0 の元で提供されました。

Level 71 N: "狭小なアダルトビデオ販売店" は、2022年 に Wanazawawww が Level 71 η を元に作成したものです。Level 71 η: "The Narrow Adult Video Shop" (狭小なアダルトビデオ販売店) は 2022年 に Wanazawawww が作成したものです。この記事は、CC BY-SA 3.0 の元で提供されます。

以下は、この記事で Level 71 N の画像として使用したものです。

XXX

この画像の著作権者は Matt Wattsです。この画像は 2005 年に CC-BY SA 2.0 の元で提供されました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?