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ハリネズミの針を柔らかくしたい(男性ブランコ『ヘッジホッグホッジグッヘ』感想)

今をときめく仲良しメガネの二人組最高コント師こと男性ブランコが2月に『ヘッジホッグホッジグッヘ』というコントライブを行ったんですが、相も変わらず愛に溢れていてTwitterだけではその感動をとても書ききれなかったので、noteを通じてその魅力を記していこうと思います。


今回のライブは全6本のコントで構成されています。
各コントのタイトルが分からなかったので仮タイトルをつけてみました。
(もし正式タイトルを知っている方がいらっしゃれば教えていただきたいです......!)

また、もしかすると偉そうな表現があるかもしれませんが、お笑い好きな素人の感想なので多めに見てください、、、何卒、、、


①タカナシ探偵事務所

凄腕として有名な「タカナシ探偵事務所」に妻の浮気調査を依頼するため訪れた男(浦井)。お茶を出しに現れた助手らしき女性(平井)が当の「タカナシ探偵」だと分かり……

タカナシ探偵耽美すぎません??
ボトルメールのマリさんや授業参観のお姉ちゃんなど平井さんの女装は様々なコントで見れますが、髪を払う仕草の美しさといい座り方の美しさといい黒いリボンと少しゴシック感のある可愛らしい衣装の似合い具合といい、平井さんの女装史上トップクラスに上品で麗しい女装でした。

古今東西様々な芸人が様々な女装をしていて、東京03の街中にいそうなチャーミングな40代女性代表こと豊美さんや、小松菜奈と見間違うほどアンニュイで「この子の良さに気づいてるのは自分だけ」とクラス全員が思っているタイプ代表こと水川かたまり女史など、女装にはその芸人ならではの良さが詰まっているわけですが、平井さんの女装もまた趣深いものがありますね。

あっさりとしたお顔に骨感のあるすらっとしたスタイルで、ゆるふわな女の子っぽさではなく知的でクールな大人の女性という雰囲気が絶妙にマッチしています。

コント内では「タカナシ」としか言われてなかったのですが、きっと「小鳥遊」じゃないかな……と思わせるほど上品でミステリアスで少しとっつきにくい「女性の探偵」としてピッタリすぎるキャラクターが、関西弁を話したときのギャップといったらもう……!!!

浦井さんが「!?」となったタイミングで私も「!?」となりましたし、めちゃくちゃ笑いました。「~ですわ」というお嬢様の口調あるあるがまさかフリに使われてたなんて……

凄そうな人に見えて何でも決めてかかる適当さといい、報酬の額に嬉しさと驚きの混じった声をあげてしまう素直さといい、とっつきにくいように見えて実は人間味あふれる人なんじゃないかな、と勝手に好感を抱きました。
一緒に服とか買いに行きたい。


オープニング

オ、オシャ~~~~!!!!Spotifyで注目を集めてる若手ミュージシャンのMVかと思った、、、

チルっぽいインスト曲にあわせてクレジット出すとか発想がオシャレすぎますね、中の人たちはメガネをかけたおじさんのはずなのに、どうしてこう洗練された芸術的な雰囲気がこんなにも似合うんでしょうか……

オープニング映像も宣伝用のフライヤーもデザインセンスが光っていてこんなにお洒落なのに、全然気取ってる風に見えないし身の丈に合っている感じがするのが男性ブランコのすごさだと思います。

ともすれば「尖ってる」とか「シュール」とか言われてしまいそうですが、アーティスティックな面と万人受けする面の絶妙なバランスを保っていてすごくカッコイイです。

以前インタビューで「学校をリノベーションした場所でコントをやっていた」というお話をされていたんですが、その頃に存在を知らなかったのが悔やまれますね……

お二人なら独創的でありつつもエンタメとして広く行け入れられる作品がきっとできたんだろうな、素敵だったんだろなと思いますし、想像するだけでワクワクしちゃうので、ぜひ美術館とか動物園とか劇場以外の場所で単独やってほしいです……!


②クレーム魔

ご飯屋さんで店員(浦井)に何かを必死に訴えている客(平井)。「僕はクレーム魔か!?」と絡み店員を戸惑わせる男は、正真正銘のクレーマーに見えたが……

「小うどんすぎやしないか?」の破壊力たるや……!!

絶対平井さんがおかしな客で浦井さんを困らせ続ける展開だろうと思っていたら、この一言で浦井さんの方がおかしいということが分かり「そうくるか~~~!!!!!」と笑いながら唸ってしまいました。

この世にある言葉の中で「小うどんすぎやしないか?」が一番面白い説ありますね、間もタイミングも言い方も器のサイズも平井さんの表情も浦井さんの(そうかな……?)みたいな顔も全部完璧でした。なんでピンと来てへんねん。

このコントの核は「小うどんとはいえ小さすぎる」という点だと思いますが、最初からそれを強調してしまうと面白さが半減してしまうような気がします。

例えば、
平井「すみません、親子丼と小うどんのセットください」
浦井「かしこまりました。少々お待ちください」(運ぶ)
平井「ちっさ!!!」
みたいなやり取りだと、多少笑いは起きてもあそこまでの爆発力はなかったんじゃないでしょうか。

最初に(店員さんに変な絡み方してるなあ……喋り方や言い回しがユニークなクレーマーだなあ……めっちゃ必死に何か訴えてるけど親子丼はめちゃめちゃ褒めてるしなあ……浦井さん大変だな……なんでこんな怒ってるのかなあ……)
と観客の頭に「?」をたくさんちりばめて期待値を高めておいて、「小うどんすぎやしないか?」の一言で一気に形勢逆転する鮮やかさといったら!!!!

それまで平井さんに目を奪われて気づきもしなかった器の小ささに初めて意識が向いて、「確かにちっちゃ!」「そりゃクレーム言うわ!」と納得して笑いが起こるのすごく爽快ですね。

このコントの良いところは店側が変だったという意外性はあっても、だからといって平井さんがまともな客だったかと言われればそんなことはなく、全然関係ない他のお客さんに「目をそらすなよ。」と話しかけちゃうしやっぱり平井さんは平井さんで変な客である、という点をブレずに示しているところだと思います。

変な人だけど小うどんの小ささに引っかかる常識的なところはある、親子丼を「パーフェクトエッグ」と褒めたたえる優しさもある、でも表現の仕方が独特、というバランスが最高ですね。

平井さんも浦井さんも変な人だけれど、ギリギリいそうでいなさそうな変加減でありそうでなさそうな会話を繰り広げているのが傍から見ている分にはとても面白かったです。(一番の被害者は話しかけられたお客さんかもしれないですね)


幕間VTR

オ、オシャ~~~~~~~!!!!!!!!

ハリネズミのヘジホジくん(勝手に命名しました)が真ん中でマイペースに飛んでるのも、感覚を揺さぶってくるアニメーションも、全部全部センスが良すぎてひっくり返りました、、、、、

しかも最後ドットで「LOADING...... please wait」ってゲームを立ち上げたときみたいな画面になった後に「omatase!」って出てコントインするんですよ、、、omatase!って、、、遊び心ありすぎるやろ、、、かわよ、、、、、

単独でネタとネタの間にVTRを流すというのはよくあることで、バナナマンが日村さんにコーラチャレンジさせたり、東京03が角田さんの歌に合わせてグッズ紹介したり、バカリズムが映像を使ったショートネタやったり、小林賢太郎率いるカジャラチームはあえてセットを動かす様子を可視化したりと、各芸人の味が存分に出るところで、男性ブランコは「omatase!」ですよ、、、、なんてこった、、、、

今回の公演はコントとコントの間に毎回この幕間VTRが入る構成だったんですが、流れるたびに「素敵すぎる、、、、」と頭を抱えておりました。あのVTRつくった人に感謝状送りたい。


③何食べたい?

何を食べに行くか話し合う浦井と平井。スンドゥブが食べたいと主張した浦井は、平井に「もっとスンドゥブを食べたいという気持ちを押しだしてくれ」と言われ……

二人でバカやってますね~~!ずっとニコニコしながら見ちゃいました。

「全然伝わってこない!」ととてつもない熱量で叫ぶ平井さんに対して、浦井さんは「いや、はよ食べに行こうや」とか一切言わず、同じ熱量で「僕はスンドゥブが食べたいよ!!!」と叫ぶんですよ、その対等な関係が素敵すぎて一生ご飯何食べるかで揉めててほしいなあと思いました。

明確なツッコミがいないところが男性ブランコの好きなポイントなんですが、変な人に見えてもそれを受け止めて同じだけ変なことをすればもはや変ではないというか、それが二人にとっての日常なんだというのが伝わってきてすごくあたたかい気持ちになるんですよね……

一人が「スンドゥブ👏 スンドゥブ👏」と拍子を取りだしたら、もう一人も「スンドゥブ👏 スンドゥブ👏」と拍子を取りだす。

一人が「実物なくても食べられるんだよ」と言ってイマジナリースンドゥブを食べだしたら、もう一人もイマジナリースンドゥブを食べだす。

今回はたまたまスンドゥブから鮭定食を食べに行くまでの流れをのぞかせてもらいましたが、きっとこの二人は映画何見るとか、誕生日プレゼント何が欲しいかとか、要所要所でこんなやり取りをしてるんだろうな……

この二人がどこまで本気でやってるのか分かりませんが、本気で揉めてるにしてもふざけてやっているにしても、強い熱量を相手にぶつけたときに同じだけの熱量を返してくれる存在がいるって本当に素敵なことだなあと少ししみじみしました。「友達ってなに?」と聞かれたときには黙ってこのコントを見せます。


④イギリス留学

「この物語は、恋人のことを思って友人のイギリス留学を阻止するという、ありきたりなお話です」と語るストーリーテラー(浦井)。どうやら主人公は「モモハラ カズオ」という男(平井)のようだが…

いや、ストーリーテラーが留学するんか~~~~い!!!!!!

その発想はなかったですね、語りは登場人物と交わらないという暗黙の了解を逆手に取った展開、めちゃくちゃ面白かったです!

前回の『てんどん記』というライブ内の「水族記」というコントでも「語り役の浦井さんが実は小説の出版イベントの宣伝をしていた」という展開はあったんですが(そのすごさはこちらで書いてます)、登場人物とがっつり会話するとこんなに爆発力が生まれるのか!と驚きました。

だって平井さんの「イギリス行くなよ!ストーリーテラー!」の後に照明暗くなって浦井さんにピンスポット当たって「そうです。私ストーリーテラーは本格的なストーリーテリングを学びにイギリスへ留学するのです」とか言い出すんですよ、おもしろすぎる……

平井さんが変な人を演じるときは小鳥遊さんや小うどんのお客さんみたいに一発で「あ、クセ強いキャラや」って分かる役が多い気がするんですが、浦井さんは見た目は普通の人っぽい役が多いので、口を開くまで変な人かどうか分からないんですよね。

低くて渋いお声もあってか真面目な雰囲気が漂っているので、変なことをしだしたときのギャップが本当に面白く、淡々と予想もつかないことをするクレイジーさがすごく魅力的です。

「誰かが誰かを幸せにするのに役名なんて必要ないよ」という名言が飛び出し、感動的なエンドを迎えるフラグが立ったのに、いまいちカッコつけきれないラストを迎えるのも人間味あって大好きです!


⑤つけ麺屋さん

つけ麵屋さんでつけ麺を残してしまった弟(平井)とそれを叱る兄(浦井)のお話。

全身緑ジャージの兄×全身赤ジャージの弟×紙エプロン=∞(無限大)

ビジュアルから最高ですね!!
めっちゃお兄ちゃん怒ってるし弟は頑張って弁明してるのに、赤ちゃんのスタイみたいな紙エプロンがだらんと垂れ下がってるインパクトたるや、、、

『てんどん記』にも浦井兄ちゃんと「兄者」呼びする平井弟が出てきたんですが、弟を諭す兄と末っ子全開の弟、という関係性がすごく可愛らしくて好きだったので、また会えてうれしい限りです。

残したのは弟なのにお兄ちゃんが「謝ろう」と言い出すのも、お兄ちゃんが店主に謝ろうとしている後ろでずっと弟がピースしてるのも、兄弟だな~~~って感じですね。(私もTSUTAYAの返却期限を過ぎたDVDをお兄ちゃんに探してもらって、代わりに謝ってもらってました……)

エコの観点 → エゴの観点 → おこの観点 という言葉遊びもあり、「胸ぐら何枚あんねん」というパワーワードも飛び出し、弟が形勢逆転したかのように見えた瞬間兄に反論され 兄>弟 の構図は変わらず、でも「きょうだ~い きょうだ~い ♪」と歌いだすほど仲良しで、男性ブランコの魅力がギュギュっと詰め合わさっていたようなコントでした。面白かったです!


⑥父と息子

帰宅した父(浦井)と素っ気ない態度をとる息子(平井)のお話。

思春期やな~~~~!!!気持ちわかるわ~~~~!!!!と絶賛反抗期中であろう平井息子に大共感しました。

中学生になったら小学生のときの友人関係がいったんリセットするよね、教科ごとの担当になって一気に色んな教科が難しくなるよね、恋愛に興味もちだす年頃よね、体力測定でみんな見てる前で50m走るから足遅い民は公開処刑よね、こんなに悩んでるのに親に「そんなことか」って言われたくないよね、、、、わかる、、、、私もひたすら小説読んでたよ、、、、、

浦井お父さんとの会話からして、平井くんはたぶんコミュニケーションが得意なタイプではないと思うんですよ。

コミュ力高くて目立つ人がクラスの中心にいる世界で、友人関係も勉強も恋愛も運動もうまくいかない上に、伝えたい気持ちに見合うだけの語彙力や伝え方をもっていない平井くんはすごく毎日しんどいんじゃないかなあ、と。

でも「友情の美しさ説いとるやんけ(本バーン)」ってできる強さとか、反抗期を迎えつつもお父さんの話に耳を傾けられる素直は、誰にもまねできない平井くんの良さだし、落ち込みすぎることなく大きくなってほしいな……と勝手に願ってしまいました。

適度にツッコミ入れつつ適度に心配してくれる浦井お父さんも良いですね。
子どもの向き合い方が上手なところもあれば、もうちょい真剣に考えてよと思ってしまうところもあって、全部含めてすごく「お父さん」って感じがしました。


……と思ったらラストでそんな展開ある!!!!!?????

予想の斜め上どころか隕石ぶつかったんかと思うくらいの衝撃でめちゃくちゃびっくりしたしめちゃくちゃ笑いました。

その情報クラスで流したらたちまち人気者になるだろうけど、平井くんはあんまり人に言いたくないんだろうな……末裔も末裔なりに悩んでるんですね。


エンディング

これまたお洒落なエンドロール流れたと思ったら、ちょっとしたミニコントをやってくれました。

平井さんのキリンの長袖ラブリーでしたね……
言い値で買うので売ってるお店教えてほしい……

浦井さん:(上手いことタイトルの由来であるハリネズミに繋げようとするものの上手く言えない)
→平井さん:「上手いこと言います、任せろ」「ハリネズミは心を開いた相手には針が柔らかくなるんですが……みなさまの愛を示していただいて、、、ハリネズミの針を柔らかくしていこうという…………フォローよろしく!」
→浦井さん:踊る
→平井さん:踊る
という流れがとっても微笑ましかったです。


男性ブランコの単独を見るのは2回目だったんですが、面白くてコントばかりで存分にグッヘグッヘしちゃいました。すごくすごく楽しかったです!

(手前みそですが、可愛いイラストが描けたのでついでに見てやってください)


愛を伝えて針を柔らかくするお手伝いが少しでもできていることを願いつつ、来月のコントライブも心待ちにしています!

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