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DevRelConLondon 2023を振り返って

本記事は、DevRel Advent Calendar 2023の17日目の記事です。

今年、2023年、私のDevRel的に一番大きなトピックは何と言っても「DevRelCon London 2023」の参加でした。参加したセッションの内容、イベントの雰囲気、出会えた人たち、その他感想など、社内報告用のメモのみでしたので、これを機に公開します。


概要

  • 目的:DevRelおよびコア スキルについての知見の共有、DevRelグローバル コミュニティのネットワーキング

  • 会期:2023年9月7日、8日 9:00-18:00

  • 会場:CodeNode(イギリス、ロンドン)2トラック

  • 人数:150名程度(正式な発表がなく、概算ですが)

  • 参加料:一番安価なSuper Early Birdで400GBP(7.3万JPY程度)。今回適用。

メインのセッション会場
メインのセッション会場を後ろから見たところ(基調講演でないので参加者がばらけてる)


Developer Relationsについて

Developer Relations(以降、DevRel)は、開発者向けの活動です。主に、製品・サービスを提供するベンダーが、対象顧客となる開発者にいかに自社の製品・サービスを使ってもらえるようにするかアプローチする施策です。
PR(Public Relations):広報活動や、IR(Investor Relations):投資家向け活動の開発者向けというものです。私がこれまで関わってきた活動としては、下記のようなものがあります。

  • Developer Advocateと言われる、開発者による使用を促す活動

    • イベントやミートアップでの啓蒙活動

    • 使用中の困りごとを解決する手助けなど

    • ブログ執筆

    • ソーシャルメディアでの発信

  • コミュニティ運営、コミュニティ参加

  • 開発者向けイベントの開催

  • ドキュメントの整備(製品自体やAPIなどの外部から利用するためのもの、ドキュメント内容だけでなくWEBでの公開方法なども含む)

コア スキルについて

コミュニケーションや、プレゼンテーションなど、対外活動のコアとなるスキルです。

参加目的

前々職のオラクル時代から含めて10年以上継続していた自分のコアとなる活動として、さらにブラッシュアップしたいというのもあります。ただ、それだけでなく現在所属している会社の製品、HULFT Square(MFTのHULFTとは違うiPaaS製品)やDataSpiderに対してDevRelが重要ではないかと思い、日々の業務の活動の一段上を目指すためでもあります。また、HULFT Squareのグローバル展開にあたって、さまざまな国のDevRelについてセッションを聴講したり、DevRelグローバル コミュニティとのつながったりして、知見を得るというのも目的の1つとしています。

セッションについて

2トラックあり、すべてのセッションを聴講はできないので、印象に残ったものをピックアップして共有します。

【DevRel Insights from 650k Developers (Jon Gottfried)】

65万人も開発者がいる、MLH(Major League Hacking)への調査によるデータが興味深かったです。

  • コミュニティ イベントは技術トレンドの指標になる(好んで使っているモノを調査する)

  • クラウド採択はAWS一強だったが、MLHのクラウド公式パートナーにGoogleがなってからはGCPが逆転した

  • 開発者は購買決定に影響を持つ(キャリアが浅くても)

    • 37%:MLH卒業生で最初にハッカソンで習ったテクノロジーを就職先で本番用に紹介する

    • API、フレームワーク、SaaS製品など

  • 上記2つから、開発者のキャリアの早い段階(学生など)から自社の製品の認知度向上のために投資し、継続する

  • 優れたノベルティの提供は、計り知れないブランド インプレッションにつながる

    • MLHの場合(Tシャツ):

      • ハッカーの数:150, 000(年間)

      • 配布割合:20%

      • 着用率:36.5%(各週)→ <10,950名>

      • 通りにいる人:200名(平均)→ <<約2,200,000imp/週>>

インパクトあるこのセションから得られた知見:

  • 学生は貴重なターゲット オーディエンス

  • DevRelで扱う製品ブランドを本当のブランドのように扱うこと!

DevRel Insights


【Host Your Interviews Like a Golden Globes Winner (Kai Katschthaler)】

コア スキルのセッション。インタビュー コンテンツ作成の際に役立ちます。興味を持って相手に接すれば、心を開いてくれて良いインタビュー コンテンツが出来るようなことを主張していました。

ここで一番気に入ったのは、シンプルかつ美しいプレゼンテーション スライドです。一部を紹介。


BREAK:ランチやパーティーの会場


【Write Fewer Blog Posts and Reach More Developers (Adam DuVander)】

これ、タイトルに惹かれました。トークから人柄もうかがえました。

「聞いたことも無い会社の、興味ない製品のリリースについて」耳が痛いタイトル

「ブログ、書きゃぁいいってもんじゃないんだよ!!」と現状の問題点について訴えます。

サンプルのロゴにビビる(あ、もう違うけど、他人事じゃない)

「『pleased to announce』なんて思ってるの、出してる側だけだから!」なんて感じで吠えてました(いや、馴染みのある表現です、確かに)。

散々おどかしておいて、見せたいものを提示

最後に「で、どうすればいいの?」に対してきっちりと提案していました。今後のブログ記事作成の際に気に留めておきます。


【Playbook for a Successful Developer Community Operations Team (Alfredo Morresi)】

コミュニティOps.(運営)について、興味があったので細かくメモしてみました。コミュニティの「サイエンティスト」って初めて聞きました。

Alfredo → Google Italyのコミュニティ サイエンティスト
コミュニティのビジョンを実行するために、その中間としてOps.(オペレーションズ)が必要
実際の活動結果の背景を知ることで、今後の活動をより円滑にする
ビジネス価値とコミュニティのニーズを結合することで、長続きできる
  • コミュニティOps.としては、データに裏付けられた洞察を提供することで、よりスイートスポットに近く活動出来、結果として優れたコミュニティ活動となり得る

  • データは単に集めるだけでは不十分

    • ソートして、アレンジして、可視化するだけでも不十分

    • ストーリーとともに説明する必要がある

  • コミュニティのデータはキレイではない

    • 外部要因が数多くある

    • 大規模に収集するのは現実的でなく不可能

  • 小さな成功が重要

    • 信頼を得られる

    • ポジティブな影響をコミュニティに与える

    • さらに複雑な洞察を得るための時間を稼げる

  • マラソンであり、短距離走ではない

    • データドメインのナレッジを構築する

    • 新たなデータを得るためにクリエイティブになること

    • 正しい洞察は得るのが複雑

  • なるべく自動化すること

    • 時間の節約や、より多くのデータ取得に繋がる

    • 手作業もある程度はOK

「有用でタイムリー、かつ信頼性の高いデータからインスピレーションを得た洞察をコミュニティチームに提供し、スイートスポットでの活動をさらに充実させましょう」(DeepL翻訳)

コミュニティのOps.チーム大事ですね。あると絶対いいですね。

Alfredoさんとはパーティーでも少し話してみました。日本でも話して欲しいと思っています。

中津川さんとAlfredoさんと私


【Neuroscience of Communities (Alessandro Vozza)】

「コミュニティの神経科学」というタイトルに惹かれました。心理的安全性が大事。オキシトシン大事。

脳とは
 
  1. 言語とは、我々が共有できるユニークな能力である。
    我々は共通の言語/価値観を持つ必要がある。

  2. コミュニティはネットワークである。神経結合は実在する。

  3. 私たちは一緒に仕事をするとき、プログラムされた通りに行動する。

  4. 共に働くための適切な条件を設定することが、我々の共同体意識を高める。

  5. DevOpsは自然な進化であり、DevRelは進化の圧力を受け入れている。

  6. コミュニティの一員となり、他者を助けることが究極の最終目標である。

  7. 自分の周りに積極的にコミュニティ意識を作ることで、有意義でやりがいのあることの一部となる能力を向上させ、身体的だけでなく精神的な健康全般をサポートすることができる。

"I am the master of my fate, I am the captain of my soul" という言葉が響きました。


【Navigating the Blurred Lines Between DevRel and Dev Marketing (Gary Gozalez)】

このテーマについて気になっていたので、興味深かったです。

DevMars = Developer Marketing

Garyによると、以下の3つが鍵。

  1. 役割と責任の明確な区分がなければ、組織はその両方で失敗する。

  2. 一方が欠けても成功はあり得ない。

  3. 成功の鍵は、モデルを明確に伝え、組織の賛同を得、両方を同時に実行する能力にある。

Developer Journeyのフェーズによってそれぞれの役割がある
なんですよね。アプローチはさまざまですが。
ちょっと狭めな気もしますが、理解はできます。
右の図、強く共感(ちなみにこれはサノスの指です)


【その他のセッション】

まだいくつか気になったセッションもありましたが、また別の機会に。【こちら】にいくつか動画が公開されています。

他の参加者について

イギリスでの開催ですが、ほかの国からも数多く参加していました。登壇していたり、コミュニケーションできて分かっただけでも下記の国があります。

  • イギリス

  • アメリカ

  • フランス

  • イタリア

  • ドイツ

  • オランダ

  • チェコ

  • オーストリア

  • ロシア

  • インド

  • 中国

  • オーストラリア

お話ししたうちの何名かと

日本からは私の他に、DevRel/Tokyoコミュニティの主催者の中津川さん、Findyから山田さんが参加していました。中津川さんとは前回の2019年に続き2回目、山田さんとは初めて今回一緒に参加させてもらいました(協業の仕事のお話も)。会場だけでなく、この写真のように何回か食事をご一緒してさまざまなお話ができ、こちらも貴重な体験でした。ありがとうございました。


次回はロンドンではないという話も

まとめ - 今後のアクションなど

2019年に続いて2度目の参加ではありますが、4年ぶりということもあり、コロナの時代を超えて新しい知見が数多く得られました。また、会社や分野は違えど同じようなミッションを持っている人たち(コミュニティ)との交流によって得られることも同じくらいありました。

オフラインでわざわざ会場まで足を運び、登壇者や参加者とコミュニケーションする価値を再認識しましたし、日本のDevRelコミュニティの一員としても、海外まで来られない、あるいはまだそこまでDevRelに入り込んでいない人たちのために、あの場の参加者にぜひ日本でのカンファレンスにも参加するように促しました。

今回の貴重な経験のためにカンファレンス チケット代を支援してくれた会社、11月末の海外展示会*の出展に向けた準備真っ只中に10日も留守にしたのにカバーしてくれたグローバル マーケティングのメンバーに感謝いたします。大変ありがとうございました。

コンテンツや、自社イベント、コミュニティ イベント、展示会などに、今回の参加で得られた知見を活かていきますし、周りのメンバーにもアウトプットしてシェアします。そして、また2024年もどこかの海外DevRelConに参加します!

オマケ:
「11月末の海外展示会」とは、AWS re:Invent 2023でした。社内報告会を部内、経営会議、全社向けと3回しましたが、好評価でホッとしています。顛末はこちらでアウトプットしています(継続中)。


今回もすてきなビールがパーティーに出て満足です

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