【遊戯王】デッキパワー問題について

皆さんこんにちは。直江津高校3年生、羽川翼です。

定期的に問題になる、遊戯王カジュアル環境のデッキパワーについて、また盛り上がりを見せてますね。
「カジュアル環境はデッキパワーの幅が広く、パワー差があるデッキ同士だとお互い楽しめない」みたいな話。

この問題に対しては、「いろんなパワー帯のデッキを組むことで、こっちの対応幅を広げよう」「対戦前にパワーを確認しあってうまいこと調整しよう「合わなかったらさっさと切り上げて次行こう」という、まあ無難な解決策が提示されてると思うんですが、今回はちょっと視点を変えて、
そもそも『デッキパワー』って何?」とか、「できるだけ多くのパワー帯に対応するためには?」みたいな話をしたいと思います。

このデッキパワー問題、毎年2~3回は大なり小なり話題に上がる気がするので、その度にこの記事をTwitterに挙げて、ドヤ顔しようと思います。


①そもそも「デッキパワー」って何?

「デッキパワー」と一口に言っても、いろんなファクターがありますよね。
展開力、打点力、除去力、妨害力、耐久力、etc…
さらにややこしいのは、遊戯王においては、1枚のカードのうちにこれらの要素が複数含まれることも多いということ。打点、除去、妨害を兼ね備えた「バロネス」なんかは典型的です。

このように、「デッキパワー」という言葉や、それを構成するカード単体のパワーには複数の側面があり、一言で「デッキパワー」を説明するのは難しいです。
そして、このややこしさがゆえに、幅広いパワー帯のデッキを組んだり、対戦前にパワーの擦り合わせをするといった対策を講じても、「このデッキちょっとパワー(打点力)高めですけど大丈夫ですか?」「あ、大丈夫ですよ〜じゃあこっちもちょっと強め(妨害力)のデッキ使いますね〜」→妨害されまくって打点を出力できなくて惨殺、みたいな悲しい事件が起きたりして、永遠にこのデッキパワー問題の根本的解決がされず、定期的に話題に上るわけです。

しかし、この理屈だと「デッキパワー問題はややこしくて解決不可能」という、悲しい結論しか導き出せません。それはあまりに非生産的な考え方です。

ここでは一旦、本質的な定義をすることから離れて、帰納的に「デッキパワー」について考えてみましょう。
つまり、「『デッキパワー』の違いを感じるのはどんな時か?」という考え方をするのです。

例えば、こんな場合はどうでしょうか。
”相手に2妨害立てられたけど、それを乗り越えて自分の最高の展開を通しきり、盤面を返し、ライフもそれなりに削った。しかし返しのターンで、こちらの盤面を処理され、ライフを削り切られて負けた”・・・⑴
細かいデュエル展開や出てくるカードなどにもよるとは思いますが、何となく「お互いにやりたいことをやりきった、良いデュエルだったんだな」と感じるのではないでしょうか。

では、こちらはどうでしょう。
"相手に耐性持ちの大型モンスターを大量展開され、それらのモンスターを突破できず、為す術なく殴られて負けた"・・・⑵
これも細かい内容によるものの、「パワー高いデッキに蹂躙されたんだな」と感じるのではないでしょうか。

しかし、実際には、⑴の状況でも「デッキパワーに差がある」のではないかと思います。
なぜなら、「こちらのフルパワーでも、相手を倒すことはできず、逆に相手は確実にこちらを倒している」からです。つまり、どう足掻いても勝ち目は無かったということで、それは完全に「デッキ全体のパワーが、相手の方が高い」と言えると思います。
逆に⑵は、「大量展開自体が妨害1つで止まる」とか、「耐性を崩す道が存在する」デッキかもしれません。有効な妨害カードや、対象耐性や破壊耐性をすり抜けられるカードが1枚でもあれば、一方的な展開にならなかった可能性もあり、つまりは「デッキ同士の相性の問題」が大きいのではないでしょうか。

「そんなの、⑵の事例に後出しで条件つけてるだけじゃん」と思われるかもしれません。それはそうなのですが、ここで重要なのは、「⑴のような状況でも、明確に『デッキパワー』の差があると言えるのに、それを感じることが少ないのではないか」「⑵のような状況も、デッキの相性の問題かもしれないのに、それを『デッキパワー』の差によるものと感じることがあるのではないか」という2点です。

なぜ、⑴では多くの場合で「デッキパワー」の差を感じにくく、逆に⑵ではそれを感じやすいのか。
それは、「自分のデッキコンセプトが達成されているか」どうかの違いによるものなのではないか、というのが僕の考えです。

あらゆるデッキには、なんらかの目的、すなわちデッキコンセプトが存在します。
勝利を目指すのはもちろん、好きなモンスターやテーマを活躍させたい、自分だけのコンボを見せたいなど……
そのデッキコンセプトが全く出せないような相手と対面した時に、私たちは「デッキパワーが違う」と感じるのではないでしょうか。
デッキパワーの話になった時、真っ先に手札誘発や妨害数が挙げられがちなのは、これらの妨害カードが、分かりやすくこちらのデッキコンセプトを潰してくるカードだからでしょう。

しかも、いわゆるカジュアル環境は、大会環境と違い、必ずしも「勝利」を最優先の目的とするデッキ・プレイヤーばかりではありません。
そのため、単純な勝敗よりも、「自分のデッキコンセプトが達成されているか」に重きがおかれる場合も多く、結果として⑴よりも⑵の方が「デッキパワー」の差を感じるのではないでしょうか。

①まとめ👉「デッキパワー」はデッキの勝率ではなく、「デッキコンセプトの達成しやすさ/させにくさ」であり、デッキコンセプトを達成させてもらえない状況において、人は「デッキパワーの差」を感じる


②幅広いパワー帯のデッキに対応するためには

上記の「デッキパワー」理解を踏まえれば、デッキパワーの幅に対応するために必要な行動は、自ずと明らかになってきます。

そう、「デッキの対応力を上げる」のです。

現代遊戯王では、様々な状況に対応できるカードがたくさん存在しています。
強固な耐性を持つ盤面でも、破壊耐性なら「トロイメア・ユニコーン」、対象耐性なら「トリシューラ」や「承影」、効果耐性だけなら「ホープ・ザ・ライトニング」などで対応できますし、何なら「効果を受けず戦闘破壊されない」などの耐性も、「クルヌギアス」や「壊獣」でどかせます。
相手の妨害に対応する札も多く、「サンダー・ボルト」「羽根帚」をはじめ、「一滴」や「冥王結界波」も強力ですね。

いや、結局汎用的なパワカ入れてデッキパワー上げろって言ってるだけじゃん」と思うかもしれませんが、僕が言いたいのはそういうことではありません。
確かに、ここではどんな状況・どんなデッキでも一定の貢献をする、まさに「汎用的なパワカ」ばかりを挙げましたが、実際にはこういった汎用的なカード以外にも、色々な対応札が存在しています。相手の耐性持ちモンスターを処理できるカードや魔法罠への対応札がテーマ内に用意されていることも多いですし、召喚権に依存しない複数の展開ルートを用意することも、どんどん容易になってきています。汎用的なパワカでなくとも、デッキの対応力を上げる手段は見つかるでしょう見つからない場合はKONAMI様と寝て強力な新規をもらってください

また、必要とする対応札は、デッキによって全く異なります。
メインギミックが破壊に偏っているなら、バウンスや除外が必要になるでしょうし、モンスターを処理する能力が高いなら魔法罠への対応札が有用になるでしょう。
最終盤面に耐性を持つモンスターが少ないなら魔法罠などによる妨害を積むべきでしょうし、逆に妨害を積めないなら、できるだけ耐性を持ったモンスターを選択するとか、相手の動きを通した上でも捲れるだけの展開力やリソース力、捲り札の採用が求められるでしょう。
メインコンセプトが、妨害を1つもらうだけで崩れるなら、他に妨害を吐かせるためのサブギミックを考えることも必要でしょう。「それサブギミックずっとやってたほうが強くね?」にならないよう注意しましょう

そのため、適当に汎用パワカを突っ込むのではなく、デッキごとに必要な札を見極めて採用する必要があります

②まとめ👉デッキの弱点や、必要なサブギミックを見極めて採用し、デッキの対応力を上げよう


③「デッキパワー」をどう調整するか?

でも、そうやってデッキの対応力を上げていったら、ひたすら自分のデッキパワーが強くなっていく一方で、結局『丁度いいデッキパワー』にはならないんじゃ?」と思っているそこのあなた。ご安心ください。そんなことにはなりません
なぜなら、先に述べた通り、私たち遊戯王カジュアルプレイヤーは特に、「自分のデッキコンセプトの達成」を重視する生き物だからです。

対応札によってメインギミックが阻害されては本末転倒になってしまうためたとえどんなに入れたい対応札があっても、「デッキコンセプトを担うメインギミックの枠」を削ることはできないのです。そうだよね、みんな?
必然的に、こうした「対応札」に割けるデッキの枠は、デッキコンセプトを担うメインギミックの枠によって、ある程度制限されることになります。であれば、「対応札を積めば積むだけデッキパワーが上がる」ということはあり得ずデッキに応じて一定の取捨選択がされることになり、「メインギミックのパワーに応じたレベルの対応札・デッキパワー」に落ち着くでしょう。そのバランスを探る時間こそ、あなたのデッキビルド能力の見せ所です。つまり、本当に良く練られたデッキならば、自然に適切なデッキパワーへと調整されるのです。

結局メインギミックの強さに応じたレベルに落ち着くなら、デッキパワーの差は解消されてないんじゃ?」と思うかもしれませんが、全然そんなことはありません。メインギミックで対応しきれない状況を処理する手段が、デッキの中にあるのとないのとでは雲泥の差です。
もちろん、「状況に応じて自在に対応する」ほどの能力はないかもしれませんが、ワンチャン握れていたときには、自分よりパワーの高いデッキにも対応することが可能になります
そうしたデュエルが5回に1回、10回に1回でもあれば、全く心持ちとしては変わってくるのではないでしょうか。

逆に、対応札を積むスペースが多く、多彩な除去や展開能力、リソース確保手段などを兼ね備えられる強力なデッキになったのなら、それがそのデッキの適性パワーです。遠慮無く使って相手を蹂躙しましょう。それだけ強いデッキを作る能力があなたに備わっていたということですから、誇って良いです。そして、相手のピン刺し対応札に全てを崩壊させられる瞬間を、震えながら待ちましょう。新たな弱点が見つかれば、さらにそのデッキを深く考える契機になります。

もちろん、それだけ深くデッキを理解し、考え抜いて組んでも、どうしても無理な盤面やパワー差というものはあるでしょうカオスアンヘルとか
しかし、しっかりと考え抜かれて、対応力を備えたデッキなら、そういった「どうしても無理」という場面はかなり減ってくるはずです。
そのデッキに対する思考の深さこそ、「勝敗」を第一に競わない、我々カジュアルプレイヤーが競うべきもののひとつなのではないでしょうか。

③まとめ👉デッキを深く理解して、メインギミックと対応札のバランスを考えて構築を練れば、適切なパワーに落ち着きつつ、より高いパワーのデッキにも対応できる


④終わりに

とまあ、ここまで偉そうに講釈を垂れてきましたが、僕自身、そんな深みのあるデッキ構築ができていると、自信を持って言い切ることはできません。
しかし、だからこそ常にその高みを目指して、新たなデッキ構築に挑み、既存デッキを改造する、そのやり甲斐があるというものです。

パーフェクトなデッキ構築をできているとはいえないものの、できる限りデッキに必要な対応力を備えさせ、かつメインギミックの意義を損なわないようにする、そこを目指す意識は決して忘れず、真摯にデッキ構築と向き合いたいものです。

そして、そうやって真摯にデッキ構築と向き合い、「対応力」を備えたデッキが増えていけば、少しずつ「デッキパワー問題」が話題に上ることも減っていくのではないでしょうか。

この記事を読んでくれたあなたは、きっとそんな真摯な姿勢でデッキ構築に向き合っている人だと思います。その姿勢を忘れずに、そうやって組んだデッキで、いつか私とデュエルしましょう。
その時は、最強のパワーデッキで蹂躙し、「パワーの違い」を思い知らせにいきます。

なんでもは知らないけれど、この記事を読んでくれたあなたのことは知っています。羽川翼でした。

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