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岐阜スゥープス3年目のシーズン総括

岐阜スゥープス20-21シーズン 13勝27敗8位

理想と現実はどちらが重いか。ずっと思いをめぐらしながら取材を進めていたが、天秤はどちらにも傾くことなくシーズンを終えた。岐阜スゥープスにとって内面的には難しい3年目だったのではないだろうか。

勝率5割を目標に置いてスタートした今季の岐阜スゥープス。ディフェンスに誇りを持ち、失点を70点台に抑えることが今季の戦い方の基本となった。

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岡山での開幕戦は、最終盤までもつれる接戦。最後に厳しい守備から得点を積み上げ逆転勝ち。次の岩手とのホーム初戦は、ゲーム1こそ岩手に完敗を喫したが、ゲーム2では意地を見せ、最後は荒川凌矢のパスカットから吉田健太郎が運び、田中昌寛のブザービーターで劇的な勝利を挙げた。4連敗もあり得ると思われた強豪相手に2勝2敗と好スタートを切り、続く鹿児島戦は2試合とも目標の70点以下に抑えて連勝と、上々の立ち上がりをみせた。

今季、田中聡HCを迎えたスゥープスは、新たな戦術に挑戦していた。攻撃では24秒の制限時間をしっかりと使って攻めること。これは「攻撃する回数が増えれば、実力差どおりになってしまうことが多い」(田中昌寛)という分析からのもので、スゥープスのPG陣が得意としていた速いバスケットとは一線を画する。もちろん速い攻撃が全否定されていたわけではないが、選手間のリズムを合わせ切ることが出来ずに、思い悩む心の内を聞くこともあった。

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それでも前半の20試合で9勝11敗と十分に勝率5割を狙える成績。だが変則日程で上位との対戦が多かった後半戦は思い通りに進められない試合が続く。静岡との4連戦では4連敗を喫し上位との差が開いていく。

その中で5月8日の東京エクセレンス戦はターニングポイントになる試合だった。守備面では「それまでマンツーマンだけでやってきたが、ずいぶん研究されているなと思ってゾーンやゾーンプレスを取り入れた」(田中HC)こと、さらにセンタープレーヤーが負傷で不在になったことで「PG陣が得意なアップテンポなバスケットに切り替えた方がいいのではないか」(田中昌寛)と、PG陣が得意とするバスケットに軌道修正を加えた。

これによりチームに躍動感が出た。その東京EXとのゲーム1では今季最多の100得点で勝利。「センターのいないピンチだったが、選手の特長が分かった」と田中HCも納得の表情を見せた。それ以降94、91、94と得点力は上がっていたが、なぜかそれ以上の失点を喫してしまい勝利を掴み取れない。理想とする時間を使うバスケットは戸惑いが多く、現実的なアップテンポのバスケットは面白いが勝ち切れない。そこに大きなジレンマがあった。

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最終節の八王子戦は勝てば7位で終われる大事な試合だった。第4ピリオドの勝負所で速攻が外れ、直後の相手の攻撃ターンで3ポイントを沈められた。このシュートを決め切って勝利につながっていれば、自分たちの特長を最大限に活かしたバスケットがいいと思ったかもしれない。いや、たぶんそれが一番なのだろう。全選手が特長を出し切って笑顔でプレーする、理想はそこにあるはずだ。だがプロチームとして勝てない以上、分析を基に勝利を追求するプレーも必要だ。

バスケットボールは、得点の積み重ねで勝敗が決まる。岩手戦のブザービーターのように、接戦をものにして勝利した時の喜びはひとしおだが、相手に勝負所を作らせず、序盤からきっちりと得点を積み重ねる盤石な試合運びが理想の流れかもしれない。そのためには選手を迷いなくプレーさせ、実力をいかんなく発揮できるようにすることも大事だし、選手は勝ち切る場面でしっかりと割り切って戦うことが大事。上位チームに対しても遜色ないゲームができるようになった今、そのバランスをどう取りながら試合を進められるか。チームの実力としては着実にステップアップしている印象のスゥープス。Bリーグ参戦4年目のシーズンは、迷いなく開幕に備えられるように準備を整えたい。


最終戦後コメント

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田中聡HC
--今シーズンを振り返って
「私自身(Bリーグで)初めてのチームの指揮ということで、選手よりも私の方が分からないことがたくさんありまして、もっともっと勉強しないといけないと思いました。来シーズンに向け、指導者としてもっともっと勉強して、 B 3で通用するオフェンス、ディフェンスをもう一回しっかりと整理分析をして、オフの間に選手とともに練習していきたいと思います 」
--園田選手が引退試合だったが?
「彼は三重県出身ですが、三重からスゥープスに入りたくて、会社を辞めて岐阜まで来たということで、僕は1年しか付き合っていませんが、今年はキャプテンを務めてくれて、練習やゲームを見ても、非常に真面目で一生懸命取り組んでくれました。派手なことはせずにそういった点で、今年のチームは園田くんが引っ張ってくれたと思いますし、だからこれだけの成績が収められたと思っています。彼には感謝でいっぱいです」

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田中昌寛 取締役兼選手
--今季の総括を
「まず目標は勝率5割、失点は70点以下に抑えるというところを目標に掲げていましたが、それを満たすことが出来ませんでした。そういった意味で来季は、ディフェンスのチームとして、もう一度作り直さなければ、勝率5割や B 3の上位に入るのはなかなか難しいのではと感じたシーズンでした」
--来季は B 2リーグライセンス申請するが?
「後半、なかなか勝ち星を増やせない中で、もっと危機感を持ってやらないと、ファンやブースターなど、応援してくれる人達に顔向けできないなと思っています。もう1回本当にディフェンスにプライドを持てるチームを作っていきたいと思います」
--後半戦で失速してしまいましたが、その要因は?
「分析して一番大きかったのは、PGの荒川(凌矢)選手が怪我で離脱してから4勝しかできていないというところです。今シーズンは”いかにボールと人を動かすか”というバスケットを練習してきましたが、そこで一番遂行力が高かったのは荒川選手だとHCも言っていました。少しずついるメンバーの得意なものを出していこうとしましたが、攻撃する回数が増えれば、やはり実力差通りになってしまうところがあって、その怪我でコーチの理想像から少しバランスが崩れてしまったんじゃないかなと思います。
スタートしてPGが3人いる時は、それぞれの色を出せて競り勝つ試合が多かったのですが、後半に入って(吉田)健太郎や(岩松)永太郎はトランジションが得意な選手なので、苦手な部分をやらせるよりかは、彼らの得意なアップテンポなバスケットに切り替えた方がいいんじゃないかというところで、惜しい試合も多かったんですけど、そこで競り負けてしまったというところが反省点として残っています」

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園田大祐キャプテン
--最終戦が引退試合となりましたが?
「スゥープスではクラブ時代からやってきましたが、それよりももっと前からやってきたものの最後という感覚だったので、とても感慨深いというか、勝ちたかったんですけど、でもみんなが自分にシュートを打たせようというか、チームで戦ってくれたというところが本当に嬉しくて、自分にとって素晴らしい試合になったと思います。ベンチの選手たちも、結構自分に打てという感じで声かけをしてくれていたので、本当に頼もしいチームメートというか本当に感謝しています」
--コートに入った時の気持ちは?
「うまくやろうというよりも、本当に出し切ろうと、一生懸命やろうと。本当にこういう舞台に立てているというのは、いろんな方々の支えがあってのことなので、自分のできる範囲で、全力でプレーしたいという思いで入りました」
--どんなバスケット人生でした?
「僕の場合は、バスケをしたいと仕事を転職して、クラブ時代の岐阜スゥープスに入りました。結構波乱な道のりだったので、苦しいというか大変な時期も多かったですけど、こうやって本当にみなさんのおかげで素晴らしい舞台に立てて、最高のバスケット人生だったなと今は思いますし、感謝しかないです」
--出し切りましたか?
「そうですね、自分の中では出し切りました。今日は、自分の得意なところが出た試合になったと思います」
--ブースターを含め、クラブ時代から大きく環境も変わりましたが?
「今シーズン最後で、コロナという状況でも、こうしてたくさんのブースターの方が来てくださって、クラップで応援してくれて、本当にこういう環境でプレーできたことが幸せだなぁと、本当に噛み締めてプレー出来ました」

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吉田健太郎
--今季を振り返って
「厳しい部分が多かったんですけど、監督が求めているバスケットが何なのかというところをPG3人で考えながら体現してきたつもりです。正解はないとは思いますが、できるだけ監督の求めているバスケットに近づけるように、3人で話し合いながらやりきることができたと思います」
--どんなプレイヤーになりたい?
「自分は、スピードや得点が取れるところが持ち味だと思うので、そこを伸ばしつつディフェンスにもフォーカスしていかないといけないと思います。もっとアグレッシブにディフェンスをしていけば、と思う部分が今季は何度もあったのでそういったところと、あとは接戦の中で勝ちきるという、PGとしてのゲーム運びの部分、ゲームメイクのところをもっと考えないとステップアップできないんじゃないかなと思います」
--怪我なく40試合プレーできました
「去年は怪我で10試合中ぐらい離脱してしまって、自分としてはすごく責任を感じていましたし、とりあえず40試合やりきれたというところは収穫かなと思います」
--監督が求めるバスケットと、自分の特長とギャップがあった感じがしますが?
「岩松もそうですが、後半になって自分たちの色が出てきたのかなとは思っていて、それが結果に出ていないという部分は苦しい部分ではあるんですけど、でも自分たちとしては、色が出せた部分はあるんじゃないかなとは思います。相手のチームとの兼ね合いもあるし、後半は上位と当たった部分もあるかなとは思うんですけど、自分としては後半になるにつれて色は出せたのかなと思います」

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今シーズンのホーム戦は無観客で始まり、難しい環境の中で多彩なコラボもこなしつつ、レパートリーも増やしていった岐阜スゥープスチアリーダーズ。キャプテンのYUUKAさんにも特別に話を聞いた。

YUUKA
--無観客から始まった今季でしたが?
「今後どうなるのかわからない状況からスタートしましたが、途中から有観客になって、以前のように声は出せないんですけど、ブースターのみなさんと一緒になって応援できたので、めちゃめちゃ良い一年間になりました」
--厳しいスタートの中、どういう思いで踊っていましたか?
「コロナだからとかそういったところは関係なく、自分の中では、スゥープスを応援する気持ちは当初からずっと変わっていません。ただただ全力で応援するという気持ちをずっと持ち続けていました」
--やはりお客さんの前でのパフォーマンスは輝きが違いましたね?
「最初にお客さんが入ってきた時は感動しましたし、今日も最終戦なので、すごくたくさんお客さんがみえたと思うんです。お客さんあっての自分たちだし、選手たちもそうなんだなとすごく感じました」
--チアリーダーズもどんどんパワーアップしてきた感じがしましたが?
「曲のレパートリーがシーズンの途中で増えたので、自分たちも間違えるんじゃないかなって不安はありましたけど、やっぱりいろんなパターンがあった方が、ブースターのみなさんも見ていて楽しいと思うので、もっと成長した姿を見せていけたらなと思います」
--いろんなコラボや映画やミトカの観光大使とかもありました。活動が広がっていますね?
「頼まれたからやるという訳ではなくて、自分自身もっと発信していきたいという気持ちがあります。もっとスゥープスに貢献がしたいし、仕事をもらえてすごく嬉しいです。自分のためだけじゃなくて、みんなのためにという思いでやっていました」
--来季も、もっともっとチアの存在価値を上げたいですね?
「そうですね。来シーズンは自分がどの立場になるか分からないですけど、どの立場になっても、気持ちは変わらずに応援していきたいと思っています」
--3年やっていてもオーディションがあるんですか?
「そうなんです。知っている人の前でもオーディションは緊張するんですよ。もちろん頑張ります」

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