業績書を書こう(1) ~研究業績編

WuYongです。事実上最初の記事は、元のブログでも参照回数の多かったものを再編集してお送りします。

この記事は、

・教員公募に応募するときの研究業績書の書き方

についてのものです。

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大学が指定してくる書類のうち、教育・研究についての業績を示す書類について話をしていきましょう。
だいたいは教育業績を書いてから研究業績を書くようになってるのですが、この「教育業績」がクセ者なので、先に研究業績から見ていきます。
書類のフォーマットで問われるのは、おおむね、

1.著書・学術論文等の名称
2.単著・共著の別
3.発行又は発表の年月
4.発行所、発表雑誌等又は発表学会等の名称
5.概要

といった項目です。そして、大学によって差異はありますが、だいたいは、

1.著書
2.学術論文
3.その他

の順で書いていきます。

簡単そうに見えますよね。しかし、イチから書くとなると、これが結構、面倒な上に、注意しなければならないこともあるんですよ。

まず、これから大学の職を得ようとするひとの大半は、「著書」に相当するものがありません
そのため、だいたいは「なし」と書くことになります。ただ、最近は就職活動もかねて、自分の研究成果を著書として刊行するひとも増えてきました。著書の刊行については、折を改めて考えることにしましょう。

そんなわけで、いきなり空欄ができてしまいます。
しかし、これでは印象が悪いですよね。そんなわけで、博士の学位を取得したひとはここに博士論文を入れてしまいましょう。ただし、書式指定で「学位論文は学術論文に含める」とある場合は、その限りではありません。
また、修士論文をここに入れてしまうひともいますが、それはあまりにも格好悪いのでやめましょう。審査するひとの印象を悪くするだけです。
なお、当たり前ですが、応募時の業績に修士論文を送るのもやめましょうね。分野によって事情が異なるとは言え、それでも、「修士論文くらいしか送るものがない」という研究者は採用されないと思います。コネじゃない限りは。

「学術論文」には、あなたがこれまでに書いてきた論文を順番に書いていくことになります。日本学術振興会の特別研究員申請書類や科学研究費補助金の申請書類だと、論文は新しいものから書いていきますが、教員公募の場合は多く、古いものから順番に、つまり公にした順番に書いていきます。ただ、これも最近は新しいものから順番に書くように指定してくるものが増えてきました。
いずれにせよ、公募要領をしっかり読むようにしましょう。

ここで重要なのは、「査読の有無」です。分野によっては、教員公募を出す時点でも査読論文がゼロで紀要論文しかないのが当たり前、ということもありますが、そうでない分野の場合はその有無を明示しましょう。
※「査読ってナニ?」という方もいらっしゃると思いますが、記事を改めてそのへんの話をします。

書き方は2通りで、
1.すべての論文を時系列順に並べ、論題の前に査読の有無を示すパターン
2.査読を有する論文を時系列順に並べたあと、査読を有さない論文を時系列順に並べるパターン
があります。

もしもあなたの業績のうち、査読論文が多くあるならば、2のパターンが有効です。ズラリと並んだ査読論文!それはあなたが特別に有能名研究者であることを客観的に証明してくれることになるはずです。ただ、「紀要だけど、査読があるから『査読誌』扱いにしよう」というのは、分野によってはアウトです。むしろ、他に学会誌に掲載された業績がある場合、それらの価値も下げてしまいかねません。

「発行所、発表雑誌等又は発表学会等の名称」を書くときは、収録雑誌や単行本の書名、学会名もしくは出版社名、雑誌の場合はあわせて巻号を、そしていずれの場合でもページ数を「pp.x-x」もしくは「Px-x」あるいは「x-xページ」のようなかたちで示しましょう。

「概要」には、その論文の要旨を200字程度で示します。ただダラダラと書くのではなく、最初に数十字で「何を対象として」「どういう手法で」「どういうことを明らかにしたのか」を示すと、内容が締まります。

審査する側は、数十件から百件をこえる資料を読まなければなりません。そのとき、読むことにストレスを感じような資料は印象が悪くなりかねません。

「その他」の項目には、著書や単行本以外の業績を書いていきます。例えば、論文ではないが学術雑誌に掲載されたレポートや書評など。あるいは、学会発表、科研費その他補助金の獲得歴、受賞歴など。
これらは、レポートならレポートだけ、外部資金の獲得歴のみといったように、内容のまとまりごとに書くと見やすいですね。

学会発表では、「著書・学術論文等の名称」の欄に発表題目を、「発行所、発表雑誌等又は発表学会等の名称」の欄には学会名とその会の開催場所を記入しましょう。

科研費等の外部資金獲得歴を書く場合、科研費のように研究課題番号がある場合は必ず書きましょう。また、その研究費を代表者として獲得したのか、分担者として得たのかがわかるようにします。さらに、直接経費の総額と間接経費の総額を明示しましょう。そうそう、日本学術振興会特別研究員の特別研究員奨励費も科研費の一種ですから、ここに書きましょう。人文系といえど、外部からお金を引っ張ってこられるかどうかが問われる時代になってきました。

それと、「その他」だけでなく、「学術論文」でも同じことなのですが、業績はただ並べるだけではなく、通し番号を付けましょう。業績全体を一つの番号でまとめる方法もありますが、私は内容ごとで数字を改める方法をとっています。


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いかがでしょうか。
これまでに業績書を書いたひとも、これから書くひとも、少しでも参考になったならば幸いです。

業績書全般で重要なのは「書式を統一して、見やすく書くこと」と「なるべく多くの情報を『盛る』こと」です。学術研究に関する活動履歴で、詰め込めそうなことは多く詰め込んでいきましょう。これから研究をしよう、というひとは、ここに書けるような内容の活動を多く進めていきましょう、ということでもあります。本末転倒ではありますが、業績書に書けないような研究活動は趣味といっしょ、と割り切りましょう(もちろん、そういった研究活動が、より大きな成果へと結びついていくこと自体を否定しているのではありません)。

ただ、身内の勉強会での内容だとか、ブログで自分の研究成果を発表しました、みたいなのは書かないほうがいいでしょう。業績としてはプライベートに近いということもありますし、審査をするおじさんおばさんの失笑を買うような行為は避けるのが吉というものです。

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