中学生時代に書いた小説

実家の引き出しを掘り起こしていたら、中学生の頃に書いた小説がごそっと見つかりました。
細かいことは記憶が曖昧ですが、当時小説の創作意欲がみなぎっており、通学中や授業中、部活中(バレーボール部)も小説のことばかり考えていた気がします。

執筆日の記載がないので推定ですが、他作品に書いてある日付や筆跡からするに、中2の頃に書いていたようです。

読み返してみると「当時の私の頭の中はどうなっていたんだ」という内容&センスのなさ、ツッコミどころの多さ・多量の矛盾で声に出して笑ってしまう仕上がりなのですが、せっかくなのでnoteで公開してみることにしました。
記事に書き写す際、漢字や送り仮名の間違いは修正させてもらいますが、表現はあえて原作のままにしたいと思います。

なお、中学生が書いた話なので内容・表現のヒドさはご愛嬌です(笑)

※書き写しながら思い出したのですが、この小説は、TSUTAYAで借りた坂本龍一さんのアルバム『BTTB』を聴いていた時に思いついたものです(ごめんなさい)。もし読んでみよう、という奇特な方がいらっしゃいましたら、ぜひ聴きながら読んでいただけると幸いです。。。

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この話は、とある国の不思議なお話です。

××××年4月、ここはホープ駅。人々はまるで死人のように暗い顔をして歩いている。そんな駅の片隅に、不思議な格好をしてギターを弾いている一人の青年がいた。青年は、グレーの神に黒い瞳。甚兵衛のような服に、下はジーパンだ。・・・と、青年の前を一人の女性が通った。すると青年は顔を上げ女性に声をかけた。
「オネーさん、今ひま?」
すると女性は振り返り「忙しい」と言って去って行った。青年はクスッと笑って女性とは逆方向に去って行った。
さっきの女性が裏道へ入った時、聞いたことのある声が呼び止めた。
「やっぱヒマじゃん。」
なんと、あの時の青年だ。女性は驚いて
「なんでここにいるの⁉」
と言った。すると青年は
「テレパシー?」
と言って笑っていた。怒った女性は青年に思いっきりビンタをした・・・が、しかし、女性の手は宙を仰ぎ、後ろから声がした。
「怒んないでヨー。」
なんと、一瞬で青年は女性の前から後ろへ移動したのだった。・・・と、驚いて振り向いた女性が振り向いて彼の眼を見ると腰を下ろしてしまった。
「やっ・・・どうなってるの・・・⁉」
すると青年は笑って、
「ふふ・・・そんなにびっくりした?」
と言った。
「キレーな黒髪ー。それに目ー青いネー。」
彼は彼女を無視しながら言った。
「ちょっと!!名を名乗りなさいよ!!」
「おっと失礼。私ウィル・イドと申します。」
「本当に名乗ってんじゃないわよ!」
2人の会話は、まるでコントのようだ。
「ところでオネーさん名前は?」
「ロータス。ロータス・サン。18歳。わかった?」
彼女は少しやけになったようにして言った。
「ふーん・・・ありがとう」
青年はニコッと笑って言った。
「は?何がー・・・」
と、彼女は突然話をやめた。青年の後ろの空間がゆがんでいる。彼女は眼をこすったが、その歪みは次第にはっきりと見えてくる。・・・扉だ。大きく、きれいな漆色の扉がそこにあった。そして青年・・・いやウィルは力いっぱいその扉を開けた。低い、鈍い音を立てて扉は開いた。
「さあ、おいでよ」
驚きのあまりその場に立ち尽くしていたロータスは、未知のものへの好奇心に後押しされ、小さくうなずき、その扉へと向かった。そして扉を抜けた。-・・・すると・・・そこには不思議な世界が広がっていた。石野タイルで出来た道に沿って大小さまざまな家が並んでいる。ウィルの後に続いてロータスも歩き出す。
「ねえ、えっと・・・ウィルさん・・・」
ロータスはウィルに話しかけたが、ウィルは反応もしない。ロータスは少しムッとして、少し強い口調でもう一度話しかけた。
「ちょっと⁉ウィルさん!!」
するとウィルは振り向き“静かに”と指を立てて言った。納得のいかない表情でロータスはうなずいた。しばらく歩いていると、また新しい街が見えてきた。ぐるぐるにねじられた家や、丸まった家、かくかくの家や動物の形をした家・・・。そしてその中心には一番大きくて背が高くて、不思議な形の城が建っていた。町の入り口には、“ソウルタウン”と書かれていた。町に入ると、ウィルはロータスの方を向いた。
「もう話してもいいよ。それに俺も18歳だからため口でいいし。」
ウィルの優しい表情に、ロータスはほっと胸をなでおろした。
「じゃあ、これから言う質問に全部答えてね」
「いいよ」
「何のために私を連れてきたの?」
ロータスの一言で、ウィルの表情は一瞬にして暗くなった。
「何か企んでいるの?」
「・・・」
ウィルは答えようとしない。
「答えてよ・・・」
ウィルはまるで何かにおびえているようだ。長い沈黙の末、ウィルは重い口を開いた。
「・・・どうしても知りたい?」
ロータスは大きくうなずいた。
「じゃあ家まで来て。」
ロータスはウィルの後について歩いて行った。少し歩くとウィルは足を止めた。
「ようこそ。俺の家へ。」
ウィルの家には看板がかかっていた。
「“歴史屋”・・・?」
変わった名前に、ロータスは思わず口に出して読んでしまった。ウィルは苦笑いして中へと入った。中に入ると、まず最初に大きな絵が目に入った。そこには炎に包まれた城の絵が描かれていた。そして、その絵の右下の隅には“ウィル・デーモン”と書かれていた。
「ねえ、ウィル・・・ウィル・デーモンって、あなたの・・・知り合い・・・?」
ロータスはウィルに問いかけた。
「違うよ。」
ウィルは意外に軽く答えた。
「その人は70年前、火事が起こり炎の城と化したラヴァーズ城を目の前に、まるで何かに取り憑かれたかのように絵を描き、翌年、愚か者として処刑されたデーモン一族の一人、ウィル・デーモンなんだ。処刑されたやつと同じ名前なんて嫌だよね。あはは。」
ウィルは笑っていたが、しかしロータスは申し訳ないという気持ちになった。
「・・・ごめんね、ウィル。」
「え?別に気にしてないよ?」
優しいウィルの声に、ロータスは自然と涙が出てきた。
「でもさー。」
ウィルは再び話始めた。
「冗談にならない話があるんよ・・・。」
「なに?」
ロータスは不思議そうな顔をした。
「・・・実はさ。処刑されたウィル・デーモンって、19歳の時に死んだんだ。そんでさ。ちょっとシンパイかなー・・・て。」
ロータスは胸の締め付けられるような気分になった。
「・・・大丈夫だよ・・・。」
ロータスはそう言ってウィルを抱きしめた。
「・・・ありがとう。」
ウィルは落ち着いたようだった。少ししてウィルが言った。
「そうだ、話、しなくちゃね。」
その一言で二人は離れた。数分の出来事で、二人の距離が一気に近くなったようにロータスは感じた。
「お茶入れてくるから他見てて」
そういうとウィルは奥へと入っていった。ロータスは周りを見回した。細工の施された鏡や木箱。古ぼけた人形や汚れた本や日記、アンティークのおもちゃなど、不思議ななつかしさを感じさせてくれるものばかりだ。・・・と、一段と目立つ・・・いや、見た目は地味だが温かみのある小さな木箱を見つけたロータスは、その箱を開けてみた。するとなかからは優しく、静かなメロディが流れてきた。箱の中には四つ折りにされた一枚の写真があった。ロータスは写真を開いてみた。そこには、一人の女性が写っていた。照れくさそうな顔をしている。長くてストレートの神。セピア色の世界に、その女性は立っている。そしてその顔は・・・ロータスにそっくりだ。そして写真の下には“世界で一番愛している ―ウィル・イド”と書かれていた。ロータスは驚きを隠せなかった。
「・・・うそ・・・。」
「おまたせ・・・」
ウィルは笑顔でやってきたが、ロータスの手の中にあるものを見て一気に困惑した表情に変わった。
「ウィル・・・これって・・・」
ロータスが話しかけると、ウィルは笑って、
「見つかっちゃったか。」
と言った。
「えっ・・・?」
「俺が君を連れてきたのは、その人に似ていたから・・・」
ウィルの真面目な顔をロータスは見つめた。と、ウィルはニコッと笑った。「冗談だよ。お茶にしよう。冷めちゃうし。」
「うそ。」
ロータスはウィルの話を遮った。
「関係ないなんて嘘でしょ?」
「・・・。」
気まずい沈黙。と、ウィルは大きくため息をついた。
「その写真の人、いや、ルビー・イドについて話すよ。」
ロータスの旨には抑えきれない感情があふれていた。
「ルビー・レイ・・・ルビーは俺の元婚約者。」
「婚約者?」
「ああ、そうだ」
二人の間に気まずい沈黙が走る。
「じ、じゃあなんで一緒にいないの?」
ウィルはしばらくの間黙っていたが、重い口をゆっくり開いた。
「彼女はデーモン家の血を引く者だったんだ。」
ロータスは困惑した。ウィルの婚約者が処刑されたデーモンの子孫?どうして・・・ロータスの心には様々な感情が浮かんできた。
「なんで、なんで⁉罪人の子孫だからって婚約を解消しちゃうの⁉その程度の気持ちだったの⁉どうして!!」
「うるさい!!」
突然ウィルは怒鳴った。
「・・・ごめん。でもあの時、兵が城から来て彼女を一般世界に戻すって言った時・・・抵抗できなかった・・・本当に愛していたのに、守ってやれなかった・・・追いかけられなかった・・・。」
今にも崩れ落ちてしまいそうなウィルを、ロータスは抱きしめた。
「ウィル・・・ウィル、ウィル・・・私がいるよ・・・あなたが転びそうになったら、私が支えてあげる。包み込んで、温めてあげる。手を繋いで歩いて行くよ・・・だから・・・一人になんてならないで・・・」
ロータスが話し終えるか終わらないかのうちに、ウィルはロータスを突き放した。
「・・・ごめん・・・。」
「どういうこと⁉」
ロータスのほほを流れ落ちた涙を小瓶に入れると、武装した兵隊たちが一斉に入ってきた。そしてあっという間にロータスを後ろ手に縛りつけた。
「ウィル!ウィル!助けて!ウィルー!!」
ロータスの呼びかけに結局ウィルは答えなかった。そしてロータスは城へと連れていかれた。ロータスは後ろ手に結ばれたまま、大きく、広い部屋に放り出された。
「いったぁ」
そういって顔を上げると、そこには細く吊り上がった目にゴールドの冠、2つに割れたアゴの男がいた。すると兵は男に向かい
「この娘がサン家の娘です!」
と話した。男はニヤッと笑い、兵に「下がれ」と命じた。すると兵はお辞儀をして下がった。
「グフ、グフ、グフフ・・・お前がサン家の娘か・・・わしは国王キング・ムーンという者だ」
「だから何⁉」
「おや、威勢がいいねえ。」
国王と名乗る男は気味の悪い笑いを浮かべている。
「サン家の娘よ。お前は我が息子、トルペド・ムーンの結婚相手に決まった。喜ぶがいい!」
「ちょっとま・・・」
ロータスは反対しようとしたが、変な薬を飲まされると、声が出なくなってしまった。
「ウィル!」
国王は、なぜか突然ウィルを呼び出した。
「このわが娘の世話係はお前に任せるぞ」
「ありがたき」
そういうと、ウィルはロータスの手を取り、外へと出ていった。

ー城の池ー
「ロータス、大丈夫?」
ウィルはいつも通りに戻っている
「    」
ロータスは一生懸命に口を動かしたが、声は全くでない。
「・・・ロータス、ごめん・・・。」
ロータスは首を横に振って笑った。
「全部話すよ。」
ロータスはうなずいた。
「キングは5年前、俺の店に来た。その頃はまだ事の重大さに気づいていなかった。キングは1冊の古ぼけた本を手に取り、内容を読み始めた。すると、小一時間もいないうちにキングは本を売るように頼んできた。しかし、祖父の代から店のものは売らないことにしてあった。もちろん俺は断った。しかしキングは諦めず、俺に“大臣の地位をやる”と言い出したんだ。もちろん断った。するとこのありさまだ。しかも挙句の果てにはサン家の血を引く者とその涙を持ってこいと言い出した。できなければ村人の家を燃やす。そう言い出すんだ。俺は仕方なく君を探し出した。・・・でもこの考えが間違っていることに気が付いたよ。もしも君を王に差し出しても・・・たとえ村人の命が助かっても、君の身体や心は、王につかまってしまう。人の命の重みは、1でも10でも同じなんだな・・・。」
ウィルは自分の過ちで自らを締め付けていた・・・。ウィルが話し終えると、不思議とロータスの声が出た。
「ウィル・・・私、まだウィルのこと、全然知らないけどさ、ウィルの優しさや考え方、優しい声、大きな声、静かで低い声・・・きれいな目・・・全部ひっくるめて大好きだよ・・・」
突然のロータスの告白に、ウィルも驚きを隠せなかった。
「ロータス、俺は・・・」
「いいの。」
ロータスはウィルの返事を遮った。そして、優しい声で話し始めた。
「返事はいいや。聞くの怖いし・・・それに伝えたかっただけ!でも、お願い・・・今から私のやること・・・止めないで・・・ね?」
ウィルは少し悩んだが、小さくうなずいた。
「・・・ありがとう。じゃあね!」
ロータスはにっこり笑って走り去っていった。・・・走っているロータスの目には、こぼれ落ちそうな涙がたまっていた。ロータスはそれを必死にこらえていた。
「あたし・・・バカだなあ・・・」
ウィルが見えないところまで来ると、ロータスは泣き崩れてしまった。しかし、しばらくすると、ロータスは涙をぬぐい、国王のいるところへとやってきた。
「キング、話があるんです。」
ロータスの真剣な表情を見ると、キングは兵をすべて部屋の外へと追い出した。
「話とは・・・?」
キングは挑発的な目でロータスを見据えていた。
「私、トルペド・・・トルペド様との結婚の話、喜んで受けさせていただきます。」
ロータスが話し終えるか終わらないかのうちに、キングは叫んだ。
「ウィルーーー!!!」
その声は白中はおろか、町全体に広がるほどだった。3秒もしないうちにウィルがやってきた。
「お呼びでしょうか、閣下」
キングはニマリと笑った。
「ウィルよ、よくやった。トルペドの結婚が決まった。明日は宴じゃ!」
ウィルは眼を見開いて信じがたいという表情をしていた。その目はまっすぐロータスを見つめていた。
「ロータ・・・」
ウィルがロータスに話しかけようとした、その時
「ロータスよ!お前は明日からロータス・ムーンじゃ!大いに喜ぶがいい!」
「はい、ありがとうございます」
喜びに包まれたキングは、思いもかけないことを言い出した。
「ロータスよ、サン家の娘であるうちに、ウィルと散歩にでも行ってこい」
少し驚いたが、素直にいくことにした。外に出ると、ウィルは激怒した。
「どうしてあんな奴と結婚するんだ⁉」
ロータスは黙っている。
「同情ならやめてくれよ!」
ウィルがそういうと、ウィルのほほに激痛が走った。ロータスがビンタしたのだ。そしてロータスはゆっくり話始めた。
「あたしはさぁ・・・ウィルのこと、本当に・・・好きなんだよ・・・だから・・・好きな人のために何かしたいんだよ・・・わかってよ・・・私、あなたが好きなんだよ・・・」
そういうと、ロータスは気を失った。

ロータスは目が覚めると大きなベッドに寝ていた。
「もう日が変わってるよ・・・。」
ロータスは苦笑した。それもそのはずだ。気を失ったロータスはそのまま翌日の朝まで眠り続けていたのだ。大切な時間が一気に過ぎてしまったのだ。・・・と、ふと窓の外を見ると、そこにはウィルが立っていた。
「・・・ウィル!」
ロータスは驚き、こっそりと抜け出した。
「・・・ははは、私、バカだよね・・・2回も振られたのに、まだ会いたいなんて・・・」
ロータスの言葉を聞いて、ウィルは戸惑いの表情を浮かべた。
「君に、見せたいものがあるんだ・・・」
そう言うと、ウィルはロータスの手を引いて走り出した。・・・朝の太陽が、ロータスの目に入ってきた。・・・池だ。大きな池が、二人の目の前に広がっていた。
「うわぁー、キレイ・・・」
ロータスは思わず言葉を失った。その池には、大きな蓮がたくさん、たくさん咲いていた。斜に見とれるロータスに、ウィルは話し始めた。
「ロータスってさ、東の国の言葉で“蓮”っていう意味なんだよな・・・」
「・・・!なんで知ってるの?」
ロータスは驚いていた。
「そうなんだ・・・。私、小さいころから父様や母様に、“大きな蓮の花を心に咲かせなさい”って言われてたんだ。」
「だから・・・こんなところで咲かせてしまうの?」
ウィルの言葉がロータスの言葉を遮った。
「君の蓮は、君の国で自由に咲かせなよ・・・帰りなよ、今のうちに・・・」
ロータスはウィルの言葉の意味が分からなかった。
「無理だよ・・・第一変える方法がないよ。」
ウィルはロータスを見つめた。
「あるんだ・・・城の中心にある階段・・・あれをすべて降りれば着ける。」
「・・・でも・・・私が帰ったら・・・村の人は⁉ウィルは⁉どうなっちゃうの⁉ダメだよ!」
「ロータス!」
二人はお互いに一歩も譲らない。
「ロータス、最初からこのことは君に関係なかったんだ!君は自分の道をまっすぐ歩くんだよ。歩かなければいけないんだ・・・さあ、池!今しかないんだ!」
「それは困るなぁ。」
突然何者かの声が入ってきた。二人がそちらを向くと、見たことのある釣り目に細い眉毛、銀の冠、緑の髪の男と城の兵たちが立っていた。
「その娘は僕の妃さ。・・・ウィル、お前パパを裏切るつもりかい?」
そこに立っているのは、紛れもない、トルペド・ムーンだった。
「トルペド様・・・!」
もはや逃げ道はなかった。・・・と、その時銃声と共にウィルの左肩から血が流れだした。
「謝るなら今のうちだよ・・・ウィル。」
いつの間にかウィルは後ろ手に縛られていた。
「今、土下座をして僕の靴をなめるなら二人とも無事に帰してやる。でも、NOと言ったら・・・君は傷だらけで地上に行くだろうね」
「・・・もしYESと言ったら彼女には何もしないんだな・・・」
「ああ。でも、NOでもどっちみちなにもしないさ。アハハハハハ・・・」
トルペドの汚く甲高い声がこだまする。ウィルはニヤリと笑い
「答えはNOだ」と言った。すると見る見るうちに、トルペドの顔は赤くなっていった。
「ウィル!お前は地上界へ追放決定だ!」
・・・城に戻ると、ロータスはウィルのいる牢獄へと足を向かせた。
「ウィル・・・いる?」
「ロータス⁉」
「しっ、ウィル、静かに・・・」
「どうしてここに?」
「トルペドの目を盗んできたの。」
二人は簡単な話を終わらせた。
「ごめん、ロータス、俺のせいで・・・こんな・・・」
ロータスは首を横に振った。
「残念だけど、君はもう地上界に戻れないんだ」
「え・・・⁉」
ロータスは驚いた。自分も地上界へ行き、生きていこうと思っていたからだ。
「どういうこと?」
ウィルは真剣に話始めた。
「俺と君の関係をやつらは重大に思っているらしい。もし君が地上へ来たら、君は殺されるだろう・・・」
「いいよ別に、あんな人と結婚するくらいなら!」
ウィルはロータスをにらみつけた。
「ダメだ。俺はもう二度と大切な人を失いたくない・・・だから生き抜いてくれ。君が生きていれば、この国も、きっと平和になる。君が笑えば、楽しく、みんな笑って生きていけるんだ。だから・・・生きろ。」

・・・あまりに重いウィルの言葉に、ロータスはぼーっとしながら部屋へと戻った。“君を必要としている人がいる”その言葉を思い返した。すると、自然と涙があふれだした。
「・・・ウィル・・・私にはあなたが必要なんだよ・・・」
しばらくすると、兵がロータスの部屋へとやってきた。
「追放が始まります。」
ロータスはゆっくり立ち上がった。ロータスは、ウィルと一緒に階段まで連れていかれた。
「・・・さあ、行け。」
トルペドの言葉でウィルは歩き出した。
「ウィル!いやぁ!行かないで!」
ロータスの言葉でウィルは立ち止った。
「ロータス・・・もしも俺がここにいたら、君は不幸になるよ・・・。」
「ならないよ!」
ロータスは力いっぱい否定した。
「早くいけよ・・・」
トルペドはウィルに早くいくよう促す。
「ロータス!俺、地上界で蓮の花、たくさん咲かせるよ!だから・・・俺・・・君のこと忘れないから・・・。君も幸せになって!」
ロータスはうなずいた。
「私・・・!忘れないから!」
ウィルは振り返り、にっこり笑った。そして・・・去って行った。トルペドは、いつまでも笑っていた。いつまでも・・・いつまでも・・・。

ロータスは部屋に戻った。そして、短い間に起った沢山の出来事を一つずつ、ひとつずつ思い出していた。と、その時、ロータスは立ち上がるとトルペドの所へと向かった。
「トルペド!」
トルペドは驚いたような顔でロータスを見つめた。
「何だい?」
「私、あなたと結婚できない!」
そういうとロータスは走り出した。
「あっっ!待て!」
トルペドも後を追う。ロータスの頭の中には、ウィルとの思い出があふれていた。始まりはあの夜、最初、ウィルに話しかけられたとき、ウィルのこと、信じなかったんだ。でもあのあと不思議な扉から不思議なこの世界へ来た。自分でも気が付かないうちに、彼が・・・ウィルが大好きになっていた。会いたい・・・会って話がしたい。もしも、あの時、ああしていたら・・・こうしていたら・・・ロータスの心にはたくさんの気持ちが次々に浮かんでくる。いつの間にかロータスの顔は涙でびしょびしょだった。トルペドはもうすぐそばまで来ている。足ももう限界だ。半ばあきらめたその時、父、母の声、ウィルの声が頭の中によぎった。

“きれいな蓮の花を咲かせなさい・・・”

“ロータスならきっと蓮を咲かせるよ・・・”

“蓮の花を地上界で咲かせるよ”

そうだ、あきらめたくない!ロータスは再び階段を駆け下りた。
「ウィル・・・ウィル・・・ウィル!ウィル!」
・・・と、その時、ついに下が見えた。
「ウィル!私、咲かせるよ!あなたのために・・・私自身のために!」
彼の笑顔を再び見るため、ロータスは降り続けた。そしてついに一番下までたどりついたのだ。扉を勢いよく開けると、そこにはウィルの姿があった。
「ウィル・・・!」
ロータスは思いっきりウィルに抱き着いた。
「ウィル・・・一緒に蓮の花を咲かそう・・・私、やっぱりあなたが好き。ゆっくりでいいの・・・大事にそだてていこう・・・」
と、ウィルの大きな手がロータスの涙をぬぐった。
「俺も・・・咲かせたい・・・。一緒に咲かせよう・・・」
二人の唇が触れ合った時、大きな光があふれた。そして、その光は、一筋の光となり、ロータスの降りてきた階段を照らすと、階段は光の粉となり大空へと飛んで行った・・・。
「ロータス・・・蓮の花、咲かせような!」

―こうして二人の新しい物語ははじまった。この池に蓮の花があふれる未来も、そう遠くはないであろう・・・。

THE END

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冒頭にも書きましたが、この小説は坂本龍一さんの『BTTB』を聴きながらアイディアとイメージを膨らませて書かれました(ごめんなさい)。
最後の階段を降りていくクライマックスは「tong poo」のイメージで書いたものなのですが、思春期の自分の中でこのシーンとこの曲を結び付けすぎた影響で、30歳を超えた今も、この曲を聴くとそのシーンが頭に浮かぶという(笑)

当時はPCもケータイもなかったので、ノートに手書き。この文字数を手書きするってすごいエネルギー。若いってすごい。しかもなぜかオレンジのペンじゃないと発想が膨らまず、全編オレンジのボールペンで書かれています。

ついでに主人公「ロータス」の由来について。この頃、たまたまTSUTATAで借りたチベット音楽のCDでチベットに異様にハマっていて、蓮の花が大好きだったんですよね。それ以外のキャラクター名の由来は思い出せません。

冒頭、ウィルの服装が「甚兵衛にジーパン」って、ダサすぎでしょ(笑)
という部分に始まり、「・・・」の多さ、急展開、「いや、そんなこと言ってない」など、ツッコミどころと矛盾がまあ~多い。でも一方で子どもの脳内ってすごいなと昔の自分に本当に驚かされたのも事実。

この頃の想像力、いつの間になくなっちゃったんだろうなあ。ちょっとさみしくなりました。

これ以上の大作たち(本編・続編・短編と続いているもの。やる気ありすぎでしょうw)があるので、そちらもそのうち(笑)

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