Scented spring
大切なものは持たない主義、とか、わたしはいつも周りに言っているけれど、それって要するに、そういうふうに言える自分、みたいなのを全力で守りにいってるわけで、なおかつ、わたしが他人の大切にしている何か(またはその人そのもの)を大切にできなかったときの言い訳でもあって、いわゆるよくある、普通とは少し違う生き方をわたしは肯定するし実践してますよアピール(心地いいんだ、これが)の裏では、めちゃめちゃ保守的で自分本位で過剰防衛で自意識過剰で責任逃れする気満々な(ちなみにわたしがこの世で一番嫌いな言葉は、自己責任。「貴様はわたしに『死ね』と? そうおっしゃる?」って気持ちになる)、まあ、いわゆるよくある精神的予防線でしかなくて、もっとあけすけに本当のことをいうなら、「わたしを大切にしてください! まじで! 人生の半分かけてわたしを(わたしが)死ぬまで守ってください! おなしゃす!」って叫びたいの、それで「ああ、愛しいジュリエット! もちろんだよ! たとえ世界のすべてが敵になったとしても、ぼくはきみを守ってみせる!」って若くていい匂いのするそこそこイケメンな細マッチョのロミオ(年収は1000万以上を希望)にぎゅってされたいの、いや現実に世界のすべてが敵になったらわたしはすぐさまロミオを売って敵方に寝返るけど(想像してみて、アメリカとプーチンとプーさんを同時に敵に回したらどうなるか)、つまりはそれくらいの気概と情熱と忍耐を持ってわたしを好きになってほしい、彼氏がほしい、彼氏落ちてないですかそのへんに、あっ、それわたしのなんです、名前とか書いてないですけど、わたし大切なものは持たない主義ですから、彼氏も別になくしたらなくしたでそれまでかなってとこもあったりなかったりなんですけど、とにかくそれはわたしのなんで、返して、あの、なんで急に別れるとか言うの、わたしに必要とされてるかわかんなくなったって、へーそーふーん(いや必要だから! 喉から『エイリアン』みたく手が出るほど!)、それってさ、あれだよね、当てていいかな、ほかに好きな子できたからでしょ、えっ、あ、はい、そうでしたか、本当にそうでしたか、ん、正直に話してくれてありがとう、わかりました別れましょうお幸せに、ああ、わたしのことならご心配なく、じぶん、大切なものは持たない主義なんで、ほいたら左様なら、みたいなね、誰しも心のどこかで思ってるような本音をさ、ぱっと見でわかりにくくするための渾身のキャッチコピーなんだけれど、たぶん聞いてる側もそこまでバカじゃないから八割方はお見通しで「えー、先輩なんですか、それ、えー、かっこいいですぅ、あたし子どもの頃からあるものとか愛着わいて捨てられなくてー、部屋とかちょーきたないんですよ、えー、憧れちゃうなぁ!」とか言ってんだろうなこいつ(どうせ処女は早々に捨てたんだろ、わかるよ、つけてる下着のセンスで、あとそのずっしりした胸見りゃな、わかんだよ、あとな、おまえの片付け能力の欠如とわたしのロックなポリシーを同列に語るな、縮毛矯正が効かなくなる呪いかけるぞ)とか思うと、顔から火が出るほど恥ずかしいけれど、それでもわたしは懲りずに言い続けるの、わたし、大切なものは持たない主「えー、じゃあ先輩、今度の合コ」「合コンは行くわ」「承知いたしました!」義でも君とならしてみてもいいよ、I wanna be with youなう。
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