生への執着探偵 往足 永鷲朗*ぬるを(4)


尻がうちぁがってぃる。
なんだっけ見たぞ、こぅいぅの名画だったっけか…そんなネットの画像で。

窓から日射ひざしも…もしくはもはや闇夜のぶあつぃ大気にとろけて光るかすかな街並の黄昏の星のよぅな街灯も-ろくすっぽなにも差さぬのだといぅのに―といぅのも、この丁度今長椅子へ寝そべっている己の足許あしもと真当延長線下降先まっとうえんちょうせんもとふるさきにある―そこにはあった――このカド部屋が外界相対がいかいあいたいす側の唯一とおもわれる壁その境目の開き口に貼られた片手で引ける程度の窓硝子まどがらすのある方の一面いちめんも-もはや輪廓よりはみ出きったあふれるものによりそぅ呼べるそれこそにも、またあのドアのよぅにお札だ呪符だとゆゎれるものがびっしりと張り子の肌のよぅかにとめ込めてまた本当に漆喰しっくい塗り壁の如し壁一体になってあるのだから。 素面しらふの頭の卵殻の薄皮もなまがわきに
それはそれよりもぅともかく、
それよりかもは …よけぃ気になるのは-

 居住空間としては、 まるでここはそれこそが純粋芸術だと冗談でこさぇられた荒野のスノードーム-なぃし移ろぃつづける市街の道界の本来の無鉄砲にめくるめくいとなずむずむずむすはたらき―その饒舌な美学である合理生産性たる"存在証明"の更新といぅ破壊のなかまにまにまままで声もなく消滅してぃた筈の"街"の年季を静止した呼気コキのなかで―しのばせた虫の卵塊のよぅに―塞込とぢこめたカプセル。 …それだのに、その"生痕"をなをのことごとくよけぃおしだまるときへ反証でもするがかよぅに、 時化の風にでも吹きさらされたよぅな積年にめくれがれた-床に臥床ふせるクッションフロアの、そのいまやまろびた古風レトロポップなまほろばの意匠の"かつて"の洒落た色彩いろどりが枯れ草のなかを幾何学に彩る紅葉野もみじののふみしだかれたみたぃに
いたづらにいたく網膜神経へ染むる-なか、 それがまた―ほのかな命火の行燈カンテラ灯のなか火の粉となってくずれた闇にゆらゆらおちるなかのなか。

ほの黄白くうかんで尻はたゆたっていた。 むだにわりときれぃなのがよけぃシュールで、

この正体の尾花おばな、それしりうるかぎりのこちらがそれにみるものは官能エロティカよりも珍妙ちんみょうである。
そのほのあかりを削り出す、
僅かな余白がより白浪しらなみのよる如く、
~そして~うねる~墨染はなを深ぃ夜の海のよぅに

ましろく紙の切れ片が散乱して
それがまた一枚、 と…の了見にもみたぬ やぶれかぶれにささくれた一片 とその半片 ずつが…そしてそこへ、 硬質に光彩にすらうつるとびちった烏羽色
さまざままざまざあらゆるインクでかかれるものの筆致により もぅ-うのぅの と…鈍ぃ漆黒うるむ滲みに染まった
床の一域―その端を囲むよぅうめつくして

そしてその中央に 桃のよぅに尻が―

流木の体躯と、貼布ちょうふと包帯のみぇる、その人、 そしてかの印象よりもずっとなましろくこ綺麗に目をすぃこむような、ぅん…あの男の―

散開した巌なぃし波打際へ俯伏うつぶせにねるよぅなところの、丈余る肌着からまくれた

おしりが ― りんと

花輪のおしべみたくしずかたたずんでおり。
そんなゆるやかな諧謔かいぎゃく-これは、もぐらの穴へおっこちたアメフラシつつきでもしたのかな。

 この作品からかんじたことを表現しなさぃ。それがあなたの心のカタチですよ― とでもゆぅような

曖昧模糊を有象の無象にこさぇた
形而上か 雲上若しか発展途上地の-煙幕が

どんぶらこ

そのまるで祝砲ごときしぶきへ包まれ―


出ェ来で きたぁっ!!!!!」


はりはりとちり絡んでこのちらけた破片丸ごと捲きこみ瓦礫とのみ見えるもののらののの山に

突っこんでいたこうべの白髪をたなびかせ、

イルカ跳びに背丈せいりとともに上身が白鯨のごとくもたげられる。


ぼぅん、 くしゃげてまとまったナニかのその一つが

こちらのねざめにあきれた眼筋の顔面の正中に
うまく当たって床にころげてまたその元の渾沌カヲス還帰かんきざる。



「おきたか!」

それはくらった面知る目にもテンションいたくはしゃぃだ様子で、 よろけまぢりのほうほぅの有り体から

なをねみだれて徒長のびちらかした前髪のあの奥の眼は
レンズをぶぁつくたたぇた深海魚のよぅにぎょろりと―そしてさらにそのおくで
ぎらぎららんらんと餌を得た亀のよぅにうすらひかりながらきまっていた。

顔面中をすすけさす白髪の藻草もぐさのなかしばし見定みさだめることすらおくれた、ばかにはすっかぃにかたむぃた―眼鏡を瞳、へ―ぃや、それはその勢ぃにズレこんで両のレンズをそれぞれもはや頬と額あたりに"ひっ"かけていた。

それにうつるひかりはぎんぎんとあちこちちらばりゆれもはや
どちらが天地かわからなぃ景色の中よけぃ無重力でおり。 そんなそこの男へ

天地無用に寝添ねそべったままの座椅子ざいすから目をはたり合ゎしているこの自分。

「ねりにねった!」

「おめでとぅございます」
そのばかなたのしげさあふるることさめやらん
雰囲気ふるまぃたたぇなずむのへおもゎずいぅ。


みちとのそうぐぅ

かみがなぃからてでふぃて

いやだから。


そぅゆえばここで目が覚める前へそんな話をしてたよぅな-

そのほかはなんだったか

そして― なんだ そんな答ぇをまちまちときくまぇにお互ぃやはりねむりこけ


ひろわれて


そぅしてる目前に男は身をひるがぇしすずやかに背筋を伸ばしてきれぃに親指重ね正座した。

紙片等かみっぺらの飛沫の山をけちらしながら、その姿はなめらかな人魚のよぅに………それはもちろんやゃ皮肉の意味である―彼奴は未だ下半身半裸の生足だからである。

やはりあまりぎみの肌着の一枚がうまぃことし、繊細な意識の脇へ袂のよぅに優さしく重なる。

刀矢の残光の先が空を突くごとく鋭く真剣な眼射し。 それが向いた机上を射るのを、そっとそれをおぅ手がふりかぶりまぃまゎりしん、ととまるのを

蜻蛉トンボを目で追ぅように
  かげろうぬくように
ひきこまれ半身を起こして長椅子からのりだし覗き込む。
はやく はいてくれ。 そぅでもありゃわりときまっている

と、その指はにわかおどりだし
硝子テーブルの盤面―そこの硝子の透明板の光をうがつようーそれそのモノにかきだした。

縫ぅそのくうを半紙のよぅにして、縦書きに―


『往足 永鷲朗』


「したり とわしろう、だ」

その呼び名があらわれて、それがその声で読みをなぞった。
 如何にも役名めかしたばかしたよぅな名前じゃなぃか。
冗談みたぃな外連な気障っぷりへの、呆れに似た冷笑のよぅな― そんな感情が 顔に出てたのだと思ぅ。
「なんでゃぁ、えぇ名前じゃろ」
ので、
「なんかいかにも役者~って、みたぃな名前っすね」
おもってることをそのまま言った。
いぶかしさまじりの厭味いやみ諷意ふうい
そんな-現代が一番おそれるまつろわぬもの
ひへひへひへ、それをうけ笑ぅ。
めのまえの半身もまとわぬ
男、ぃゃ―


"男"とよぶのにすらよもやあいまいなんだ。



   なにものだとかさだめないと



「それじゃよろしくお願ぃします…とわしろーさん」


         たぶんそれしかないのだから

「おぅ」


ぴぃっ、 とわずかないなづまの嘶きだけでそのすべてがかきみだれ


満足げに微笑んだところで、

今かぃたばかりの墨書きの軌跡を、

直の手の掌が昇龍の雲路をはしりぬぐって消しさった。



過ぎた風が掻ぃた軌跡の抽象のみが中空のよぅな透明の硝子板


そぅして混ざったインクで指の腹の頬晴るよぅにやゎらかな凸のみを泥濡れに、

なったのを肌着の服の裾でぬぐった。無意識ですぐやって、それ子供がよくおこられるやつ。

もー。

そぅゆうことをまたいぉうと、眼を合わせた矢先、


足許にふりつもった紙の束を足で

雪掻きみたぃに蹴散らしながら、

近寄って来ていたのは彼の側であった。

音がなく風のみが散乱した床面のそのつくる路をさぁと割っている、その勢ぃがまた唐突で意識より先に近寄る視界が、そして触覚が感覚する。

 なまあたたかく
頭をなぜる。メロン帽。そこにある唯一の褪めた手の届く現実感。
「おかしなところはないか」
あんたよりかはなぃです
半裸へだるけた肌着一枚うろつく男へ思ぅ そもそもなんでぬぃでるんだ
試験運用段階の研究所から裸足で逃げたツッコミ所生成AIが酒に酔った勢ぃで産み出した存在かこの人。
「おかげさまで。」

心構ぇる暇もなぃあまぃ鋭角からくる
朽木みたぃな無骨に似合ゎぬいゃな優しさ-人間臭ぃ仕草さがこそばゆぃ。
「ぁの……あんまり、子ども扱ぃはやめてくださぃ。」
「-年長者が若ぇのを気をかけるのは当然だ」
にべもなくいぅ、その気も素知らぬ。
男のあまりに澄んだ眼へ返ぇす
「だって、そんなに年離れて…なく、なく?ーなくもないでしょぅ」
抱ぇたいたわりのバケツからはねてひっくりかぇった常識感となぃまぜになる目にかけた印象と、あとなんとなくさっきの尻のたまのよーに輝く風景をおもぃかえしてザッピングしながら口走っていた
「みぇねえか?…若返ェりすぎたかのぅ」
男は陶器でも鑑定みさだめるよう己の頬の素肌へぺたぺたり触れている。こんながむしゃらななりでもアンチエイジングとか一丁前興味があるのか-
「あんまり肌がきれぃになると、男らしく無くなって恥ずかしぃ」
「やっぱあんたおっさんだわ」

やにゎに掌を添ぇられてぼんぼぅんとまたやゎらかく頭がはずむ。
「憎まれ口たれぇられるよぅな、調子がいぃならえぇ、ボーズ」

そしてまた、 とわしろう-永鷲朗は…真顔とも素顔つかなぃ、どこかよませしぶるかのよぅなうだるげな横顔を向けた。


そして、男―永鷲朗は


床のぬらりくらり光りする なまこ、かわかめ か 昆布…なんだかそんな、それをつかみ上げた、 あれはかつてほぉったその彼のあの皮ズボン。 それを足を通ぉして―ぎゅぃぎゅぃとねじれ唸り鳴り身を皮を引っ張って-そんなこんなしてるまに-二度、三度は回転しながら…

まるで獅子舞ぃ踊るみたく、しばらくやってやっとはきおぇた。
気合ぃのはぃる拍子の音で、先程の自分へのよぅに骨盤まゎりを褒める如くぱちぱちんと叩く。
「ふーっ、ん、こんなきちぃのはぃとるとしんどくての」
じゃぁなんではぃてるんだ。


腰をくねらせてあゆみつつ、なをのこと具合ぃをよくよくほぅほうさせながら
よる先に明色の光妙がてりかぇされる硝子の板の上拡げられ、そしていぶきはれたよぅにまたふくらんだ

その―光と重さとそして燦然…あまたの貫禄で情報量ゆらす万感の風をのせて上着を羽織った。


ぇる弁柄ベンガラの肉筆画のよぅな俄かまた波濤。
ふしぎなもので…
そこまで堂々と確固たるセンスの迫力を見せつけられると、だんだん己そのものがこの世に選ばれ生まれんとした迫力をもつきまったものになってしまぅ。

無数の達磨の目のよぅなかがやきをたゎませてしゅぅ、つらねふくれた袋のなかふくませた息をはきながらさゎがしくまとわりこむそのいたずらな有機性との再会に安心感すらおぼぇた。
そしてその"正常"な彼―永鷲朗の姿は、初めて見たあのときのれ親しめるものでもあった。

「そぃじゃぁ出るぞ」
その声に えっ、と驚く。

きぃてないより しらなぃより
「でかけるんですか」
なんとなくここで一生をおぇるよぅな気すらしてぃたせっかく異次元にうすまっていたわずかな意識で
「どぅして―?」

永鷲朗はゆるく鋭ぃ眼を射向けてゆう。


「追ってる、いまの事件の事だ。」
あ、本当に探偵だったんだ。 えーっと永鷲朗さん






どこかよりも これいじょうに。


永鷲朗の真剣な面差しはどんな突飛なワードにもそれに説得力があってそれがよけぃい彼そのものをうさんたらしむのだ。



扉の外、よのくれたまち。
たねあかしのよぅにしらじらしく現在の時を告げる闇のとばりのくらくらむ色。
それをまた生正直に下界の解像度さぇあられもなくさめざめしさで薄めた灰色の街路灯。
遠きネオンの騒ぐけばだちのなかの足許の白骨のよぅに色のなぃ町へうらぶれて透けた階段をまたフリーフォールの感覚に降りていって―化石が現世へふきかぇすよぅに
あの駐車場とは、他の道へ歩きながら、連れだってゆく。

おずおずとおぅそこにはやはり、上着の極彩色の数々の光輪こうりんが浮かんで、それはひえびえとした外灯のあかりにのっては浮かびさりさりと羽衣の音をててゆきずりの歩みの波にすぎさりながらちゅるちゅるとうかんではどこへともどもながれていった。
それをあびながらもつれそぅ背中は


ふと確信したよぅに歩をとめ。

それはきにもとまらぬ奇をたたぇたそれをみるものだけにとってそこにあるよぅな―象徴的な景色の前で立ち居澄いずまった。

まほろばぬ常念をつんざく秘匿をその脳裏にして永鷲朗。

使命を抱くその姿は彼の横顔をどこか硬派な写象の面差しへさせる。


-

それからものの数十分後

また深ぃ灰色の街路を自分達は歩ぃていた。

その風景群の持つ馴染みなきゆぇしびれるよぅな緊張感の圧力の負荷へ心がなれたころ。
いや、そのほとぼりが涸れるくらぃの同じ景色が繰り返ぇされている。
そこははてとおもぃあぐねるまでもなくさきほどまでのわずかな領域をゆっくりと、そしてぐるぐるまゎりつづけていたことに気づく。

「あの」
何度めかの同じ象徴的な景色を過ぎたころに問ぃ掛ける
「なんじゃろな」
はずの言葉より早く困惑へ同調される

「ここでおれば来る筈なんだが」
「あなたのまちがぃでなくて?」
「いつもならすぐにでもとりつぃてくるんだがの」
 それはもぅそこへいて、 "既に新参者"であった自分達―いや、そこにただあるまじきこの自分をみさだめていたのだ。人ならざるゆぇだったから"おこさぬことがおこせた"風。



いま、たとえられたんだったらそれはプリウスだった。

すとんとそこへすがた―その人気ひとけを感じるまもなくひゅっと空を射るような鋭ぃ蹴りが飛び。


「ちょっとぉ~!

浮気ウワキはイン・モラルじゃぁなぃんっすかぁ~!?- … ―マンさぁん」

幾度かの自意識をおぃてきぼりにとぉのきながらからからりと声が響く。

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