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WSMR-3:高すぎるTwitter API料金がスクープされる


ソーシャルメディアニュース

Twitterの新しいAPIの使用料がスクープ ー最安値でも約550万円(月額)か

APIの仕様変更が2月上旬に発表されてから様々な憶測が飛んでいましたが、ついに新しいニュースがWIREDから出ました。なんと、最も小さなパッケージで、月額42,000ドルで5,000万件のツイートアクセスというAPIになるそうです。1ドル130円のレートでは日本円にし月額550万円となります

このような高額の使用料の支払いは殆どの研究機関には不可能のように思えます。また、支払いができたとしても研究費の圧迫し、大きな負担になることは間違いありません。これまでTwitterは多くの研究者がデータの取得先として使用してきており、2020年以降には17,500本の論文がTwitterデータを使用したそうです。もちろん他のSNSプラットフォームもありますが、Twitterにはジャーナリストや政治家、ビジネス意思決定者が多く集まっているため、社会科学の研究対象として極めて重要な空間であり、この研究の文脈が途絶えてしまうことは人類にとって大きな損失になるかもしれません

MDPI、ハゲタカジャーナルに入ってしまう

MDPIグループのすべてのジャーナルがハゲタカジャーナルリストに入ったことがpredatoryreports.orgによって好評されました。MDPIのジャーナルには明らかにハゲタカジャーナルとはいえないジャーナルも含まれているため、研究者の間でも賛否が巻き起こりそうです。また、今年の年明けには浙江工商大学(中国)がMDPIやFrontiersに出版された論文を業績としてカウントしないことを発表したことがニュースになりました。急増する数新興ジャーナルの問題は高騰する投稿料やオープンアクセス費用の問題と合わせて今後も研究者の悩みのタネとなりそうです。


映画Winney公開される

ファイル共有ソフトWinneyの開発者である金子勇を題材とした映画『Winny』が3月10日全国公開されました。ファイル共有ソフトの公開を巡り、著作権法違反ほう助の罪に問われた裁判の過程を中心に描いています。監督は松本優作、主演はドラマ『ごちそうさん』や映画『寝ても覚めても』などで知られる東出昌大が主演し47氏を演じる。ソーシャルメディアにおいて切っても切り離せないインターネットと法の問題を扱った重要な映画になりそうです。

児童ポルノ法での逮捕者、10代が4割

児童ポルノ法で全国の警察に検挙された人は2000人余りで、10代が905人と最も割合として多いことが警察の発表でわかりました。10年前の22.7%から全体の44%となり、およそ2倍に増えています。10代の逮捕者のうち、高校生が542人、中学生が215人となっています。スマートフォンやSNSの普及が背景にあると指摘されていますが、これらの犯罪を未然に防ぎ未成年を犯罪から遠ざけるような施策の必要性が高まりそうです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230309/k10014003161000.html

回転寿司屋での迷惑行為をSNSに投稿した高校生、逮捕される

回転寿司者での迷惑行為を投稿した未成年者を含む3人が威力業務妨害の疑いで愛知県警中署に逮捕されました。犯罪や迷惑行為の動画や画像がSNSに投稿される事例は後を立ちませんが、プラットフォーマーによる対応の必要性など議論を呼びそうです。
https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20230308/3000028006.html

TikTokに「バックドア」が存在?

「TikTokのアプリにはエンジニアがアクセス可能なバックドアが存在する」というバイトダンスの元従業による証言が、対中強硬派として知られる米共和党のジョシュ・ホーリー上院議員はジャネット・イエレン財務長官に宛てた書簡の中で示されました。匿名の証言によると、米国のデータにアクセスするためのツールである「Aeolous」は管理者とデータセット所有者の承認によって使用可能なもので、これを使用しデータをバックアップ、分析するのを目撃したとのことです。この匿名の証言が真実かどうかはさらなる精査が必要ですが、SNS運営会社によるデータの管理は特に注意が必要という世論の高まりが起こりそうです。

米連邦取引委員会がイーロン・マスクに関する通信記録の提出をTwitter社に要請

米連邦取引委員会 (FTC)がTwitter社に対して、イーロン・マスクが行った社内の全ての通信記録などの様々な情報を提出するように求めていることが、アメリカ下院共和党の報告書によって明らかになりました。FTCは、Twitter社におけるユーザ情報の取り扱いやプライバシー問題に関して、以前の取り決めを遵守しているかどうかを調査しているようです。FTCはイーロン・マスクに関する情報以外にも、Twitter Blueに関する情報や、アカウントの現在の認証方法についてなどの説明も求めています。Twitter社における情報の取扱いについて今後どのように対応していくのか、注視する必要がありそうです。

気になった論文

社会科学者は社会変化の予測が得意でない

挑戦的な論文が発表されました。社会科学者に社会変化(生活満足度や分断などの数値に基づくもの)を予測させて、一般人の予測と比べてみたという論文です。社会科学者はその名の通り、社会に関しての専門家です。政府や市民、そしてメディアは、社会科学者の意見を頼りにし、自身の行動や政策意思決定に活かしています。そんな社会科学者は果たして本当に将来を見通すことができているのでしょうか。本研究では、社会科学者に社会変化(生活満足度や政治的偏向などの数値に基づくもの)を予測させて、一般人の予測や、単純な統計モデルと比較を行いました。
 
結果として、社会科学者は単純な統計モデルや一般市民よりも予測が平均して正確でないことが判明しました。詳細を見ると、社会のポジティブな感情は予測しやすく、ネガティブな感情は予測がしづらかったそうです(例えば黒人人権に関する社会運動によるものなど)。また、優れた予測者の傾向を見ると、理論だけでなく、事前のデータに頼っていました。さらに、精度向上に関係していました要因としては、専門分野に対する主観的な自信ではなく、トピックに関する出版実績が重要とのことでした(やはり専門家を選ぶときは出版実績が大事になりそうです)。

実はこれまでの研究でもいわゆる「専門家」の予測の正確性は議論がありました。例えばポートフォリオマネージャーの予測は平均を上回ることは稀ですし、同様に地政学でも専門家による政治的事象の予測は偶然のレベルであることが知られています。また、そもそも社会科学の仕事は、「予測よりも説明」であり、予測モデリングのトレーニングを社会科学者は受けるわけではないという指摘も紹介されています(とはいえその理論にだけ頼った人の予測力は低かったのですが)。

しかし、一般人からすると、そのような専門家の事情はわかりません。にも関わらず多くの場面(例えばコロナ禍)においての一般市民は専門家を頼らなければなりません。今回の研究で明らかになったように、専門家の予測は頼りになるとは限りませんし、専門家の中にも多種多様な専門性や実績を持った人がいます。そのような中でも専門家を峻別することは方法を、困難ではありますが、見つけ出すことが必要になるかもしれません。(論文実績の活用などはやはりヒントになりそうです。)

ヘイトよりも恐怖が有害になりつつある?

近年様々なヘイトスピーチの問題から、攻撃性のある投稿はSNSで厳しく取り締まられるようになりました。この論文では、そのような攻撃的な投稿に加え、「恐怖表現」を含む投稿(フィアスピーチ)の影響に注視すべきと警鐘を鳴らしています。フィアスピーチとは対象の恐怖を煽るような発言であり、その効果は絶大で、コミュニティが物理的な衝突に発展することも少なくないとのことです。そのようなフィアスピーチですが、必ずしも攻撃性を含むわけではなく、現状のプラットフォームの監視の目からは抜け落ちてしまいます。

本研究では、ヘイトスピーチを多く投稿するユーザーよりも、恐怖表現を多く投稿するユーザーの方が、より多くのフォロワーを獲得し、ソーシャルネットワークの中心的な位置を占めていることが明らかになりました。さらに、リプライなどを通じて、ヘイトスピーチのユーザーよりも善良なユーザに効果的にアプローチすることができるとのことです。このようなフィアスピーチですが、明らかなヘイトピーチよりも発見も削除も難しさがありそうです。この論文を受けてプラットフォームのモデレーション方針にどのような議論が展開されるかに注目です。

https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2212270120

シェアをするときに人は情報の正しさを考慮しなくなる?

フェイクニュースは未だにソーシャルメディアの大きな問題です。特に近年では、ソーシャルメディアでの拡散を意識すると、人々を情報の正確性への注意が薄れ、フェイクを拡散しやすくなるのではないかという議論が多くされています。しかし、実際にその因果性を確かめた研究は多くありません。そこで本研究では、心理学実験の手法を用い、実際に人々がソーシャルメディアでのシェアを考慮するだけで、記事の正確への判断がどれくらい低下するかの検証を行いました

結果としては、やはり見出しの正確性を判断する際、正確性のみに注意を向ける場合と比較して、正確性とシェアの両方を意識した場合は、真実と虚偽を見分ける能力が低下することがわかりました。この結果は、シェア自体がソーシャルメディアの本質的な機能の一つであることを考えると、そもそも人々はソーシャルメディア上のフェイクに騙されやすくなる可能性を示唆しています。

https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abo6169


ニュース記事から食糧危機の発生を予測

食糧不安は途上国を中心に大きな問題です。栄養不足の人々の数は2014年の6億2400万人から2019年には6億8800万人に増加すると言われています。そのため早期に食糧不足を予測し、緊急支援を行うことは重要です。しかし、援助機関が頼っている早期警戒システムでは、紛争、害虫、天候ショック、移住など様々な情報を活用しているものの、支援の遅れなどのリスクはまだまだあるそうです。

そこで本研究では、食糧不安国に焦点を当てた1120万件のニュース記事のテキストと深層学習の最近の進歩を活用し、食糧危機の前兆を予測したそうです。結果としては、テキスト情報を含まないベースラインモデルと比較して、12ヶ月先までの食糧不安の地区レベルの予測を大幅に改善できたそうです。
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abm3449


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